MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士
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042話
ウォーゲーム最終決戦、第一、二、三戦と勝利を上げて来たメルの面々だが次の相手は全くの油断をすることが出来ない。突如として現れたクイーン付きのナイトのシグルド、アラン曰く6年前のウォーゲームにそれらしく影は見たことはあるがその実力は完全に闇に包まれている人物。真紅の鎧に身を包み仮面で素顔を隠している全てが謎の男。解っているのはディアナが認めている実力者と言う事のみ。
「最終決戦第三戦、メル スノウ!! チェスの兵隊 クイーン付きナイト、シグルド!!開始!!!」
ポズンの紹介の仕方からしても特別な人物である事は明らか。なによりこの男から溢れている魔力は尋常ではない無いほどに強く今までに出てきてナイトクラスの中でトップに立つほどに強い。
「先手必勝!アイスドアース!!」
空気中の水分を一気に冷却し氷の刃に変化させてそれを飛ばしシグルドへと攻撃する。だが氷の刃はシグルドが抜刀した太刀を一振りすると一瞬で砕かれキラキラと地面へと落ちていく。
「スノウの氷が解けたぞ!?」
「炎使いっすか!?」
「否あれは抜きぬいた剣で氷を切り刻んだ」
太刀を腰から抜き放った次の瞬間に迫っていた氷を切り刻んだと口にするアラン、だが難病も無いたったの一瞬でそこまでやってのけると言う事は手練れの剣士という言葉では利かないほどに強い事になる。スノウもアイス・リングで氷の剣を作り出し戦う事が出来るがそこまで件の扱いが上手い訳でもない。
「今度は此方からっだ!!」
「っ早い!!」
地面を蹴り滑走するかのように迫り来るシグルドに驚くスノウは後ろに飛び一閃された剣を回避するが直ぐに飛んできた第二撃をギリギリ展開に成功したアイス・リングの剣で受け止めた。
「お、重いっ~!」
「良く反応した物だ、だがまだまだ甘いっ!!」
「カハッ!!?」
剣を受け止めているスノウだがその重い重い一撃が自分に降り注がんとするので精一杯だったのかシグルドの足には注意が行かずにそのまま重い蹴りを喰らってしまう。まともに腹部へと蹴りを受けたが上手く受身を取って立ち上がる。
「遅いっ!!」
「ユキちゃん!!」
即座に背後へと回り込んだシグルドが剣を振り下ろそうとした瞬間愛用しているガーディアンARM スノーマンをシグルドの頭上へと展開する。突如として上から襲来する雪の塊には反応が遅れたのかそのまま押し潰される。
「やったぁっ!潰したぞ!!」
「でも相手はナイトっすよ!?エモキスみたいに持ち上げてくるはずっす!!」
「それは解ってるだから、ネイチャーARM アイスキーチェーン!!アイシクル!!!」
嘗てのビショップ戦でエモキスにも使った戦法だが直ぐに破られてしまった事をスノウは忘れてしまったわけではない。更なる戦術を考えていた。スノーマンを巨大化させ重量を肥大化させた上でスノーマンを更に凍結させ氷漬けにしてしまった。雪の重さと氷の牢獄で封じ込めるという作戦。これにより相手の動きをほぼ完全に封じる事ができる。
「中々良い手を考えやがるぜスノウの奴」
「やったのぉスノウちゃん!!これでスノウちゃんの勝ちじゃ!!」
完全にナイトの行動を封じた且つ氷で相手は寒さと雪の超重量の二重苦。これでも戦う事等出来ないと誰もが思った。メルのメンバー、観客、他のナイトも戦えないと思っていた。そしてポズンがコールをしようとした瞬間氷に亀裂が走り始める。
「まっまさか!?」
氷から響いてくる亀裂が走る音に驚きを隠せずに驚愕するスノウ。更に走っていく亀裂から漏れ出してくる恐ろしいまでの魔力に思わず距離を取り攻撃に備える。そして次の瞬間、氷が弾け飛びスノー漫画吹き飛ばされる。
「アイスドアース!!!」
一瞬気押されそうになったが気持ちを強く持ち再び氷を飛ばして攻撃をする、今度は氷は砕かれずに命中した音が響き少々安心するスノウだが煙が晴れていくそこには平気そうに立っているシグルド、が仮面には罅が入っており徐々に割れて行き遂には仮面は崩れ去ってしまった。
「くっ……すまん折角賜った仮面を………」
仮面を壊された事を悔いるようにその表情を右手で隠し指の隙間から鋭い眼光をスノウへと向かって飛ばす。誰が思わずその鷹をも凌駕する眼光に、そして顔に当てていた手を離し剣を握り締めた。
「ディアナから賜った仮面をよくも………やはり容赦はしなくていいようだなスノウ姫」
「えっ………ど、如何して貴方がッ!!!!!????」
「ええええ!!!!??」
「ど、如何いう事っすかあれ!!?」
手によって隠されなくなった素顔を見たメルのメンバーは驚愕し大声をあげ混乱した。
「おいなんでてめぇがそこに居やがるんだ!!?」
「な、何故なんだ!!何故君がそこに!!」
「しっかりせいや!!お前さんがなんでチェスにおんねん!!?」
鋭い瞳に白銀のような髪、聖人のような気高い雰囲気。そこにあったのは誰もが知っている顔だった、救世の騎士、竜騎士など人々は彼をそう呼び称えていた。数々の激戦を潜り抜けカルナとの対決は伝説と語る者も少なくない。それ程の人物がそこに居た。
「ジ、ジーくん………無事、だったの………?で、でも何で…如何して……チェス側に居るの!!!?」
竜殺しの騎士、ジークフリードがそこにはいた。
「ジーくん……ディアナでも俺をそう呼ばない筈だがな。お前にそう呼ばれる筋合いは無い、ディアナの妹」
「―――ッ!!!!」
冷たい言葉がドロシーへと投げかけられた、今まで利いたこともなければ向けられた事もないようなジークの言葉に思わず思考と心が凍りついてしまうドロシー。自分が恋人をそう呼ぶ筋合いが無い、まるで数度しか顔を合わせたことが無い顔見知り程度のような対応だった。
「ジークどうしちまったんだよ!!?」
「そうだドロシーはお前の恋人だろ!!?」
思わずギンタとアルヴィスが叫ぶ、ジークは明らかに可笑しいと感じる。あれだけ愛し合っていたドロシーにあのような事を言うなど有り得ない。ドロシーが恋人と聞いた時、ジークは納得したような表情をする。
「そうか……君の言う通りだよディアナ。こいつらは嘘を私の真実に思わせようとしている、信用出来るのは君だけのようだ」
「な、何を言っているんだよ!?」
「俺はジーク、ジークフリードだ。ディアナを護る剣であり盾でもある騎士。そして、ディアナの伴侶だ」
それを聞いたドロシーは一気にディアナに対する憎しみと怒りが湧き上がってきたがそれよりも先にARMを取り出し発動した。自分を抑えながら発動したそれはディメンションARM ハートシー。それを使用しジークの心へと入り記憶を見て取るが
「ジ、ジーくんの記憶が書きかえられてる!!!??」
「言い掛かりは止めて貰おうか、さあウォーゲームの続きと行こうか」
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