MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士
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043話
「竜穿!!!」
「きゃああっ!!」
敵となったメル最強の騎士、その実力に変化は無い所か以前よりもキレが増しているかのように見える。剣から放たれる砲弾は地面を抉り石つぶてをスノウへと飛ばし攻撃する。強力な斬撃を逃れても耐える事を知らない攻撃の嵐、たった一人だというのにその姿は止まる事を知らない嵐。
「身体が流れているぞ、死にたいならじっとしていろ―――一瞬で楽にしてやる」
「くぅうう!!」
つぶてで体勢を崩した所に突撃してくるジークは凄まじい速度で斬り付けるが間一髪回避したスノウへ地面に剣を突き刺したまま腕で体を持ち上げ体を回転させて重く鋭い蹴りを腰へと入れる。全く手加減していない一撃は体を貫通するかしないかの狭間を彷徨いながらスノウを吹き飛ばした。
「スノウォオ!!!」
「だ、駄目っすよ直ぐにギブアップするっすよ!!ジークさん相手じゃ勝ち目がないっす!!!」
「ジャックの言う通りだ直ぐに負けを認めろ!!」
激痛に苦しみの声を出しながら身体を必死に起こして戦う意思を見せるスノウに必死にギブアップを進める三人。ジークの実力はスノウを含めメルのメンバー全員が承知している、勝ち目など最初からある訳が無い。
「負け、ないよ……ジーク、さんを救う、為にも………!!」
「スノウ……!!」
強い意志。その源は此処まで一緒に戦ってきた仲間を救いたいという一心から来る強い感情、義理の母に惑わせられ真実を見れなくなっているのならばそれを正すのも自分の役目だと思っているのかもしれない、だが
「俺を救うか、随分と勝手な言い草だな。俺は何も苦しんでなどいない。お前に救われる義理もなければ意味も無い、俺にとってお前はディアナの義理の娘というだけの事だ」
「それは……誤った認識なんだよ………!!貴方、はジークフリードは………そこにいるドロシーさんの恋人なの!!!!!ウンディーネ!!!」
立ち上がりながら前回の魔力を放出させながらウンディーネを召喚する、自分の身体のコンディションから考えて近接戦は圧倒的に不利だと考えガーディアンでの戦闘へと切り替えたのだろう。召喚されたウンディーネはスノウの傷だらけの姿と敵側に居るジークを見て歯軋りするような表情を見せた。
『スノウ……事情は把握していますが……これは』
「全力で行くよウンディーネ。ジークさんは出し惜しみしてて勝てる相手じゃない!!」
『それが命令なら喜んで従います!アクアニードルス!!』
次々と間欠泉の如く地面から噴出し溢れだして来る水の槍。飛び出してくる槍を全て回避しスノウへと接近しようとするジークを必死に止めようと槍を繰り出し続けるウンディーネ。
「随分としつこいガーディアンだ。無駄だと解って同じ攻撃を繰り返すか」
『無駄かどうか試してみて差し上げますわ。アクア・グングニル!!』
アクアニードルスが噴出した事で水浸しになったフィールド。その水分が一点に収束し巨大な槍へと変化しジークの身体へと向かい直撃する。
「当たった!!」
「いやダメージになってねぇぞありゃ!」
アランの言う通りその一撃は間違いなくジークに直撃している、威力も申し分なく大抵のガーディアンでも蹴散らすことが可能―――だがそれでも威力不足、ランク的にはBが精一杯。悪竜の血鎧で無効化出来る範囲内に収まってしまっている。
『掛かりました、スノウ!!』
「うん、待ってたよこの時を!!!アイシクルフルパワー!!」
直撃したグングニルは四散しジークの周囲へと飛び散っていくが同時にジークもびしょ濡れにした。空気を伝ってスノウが強烈な冷気を送り込み水で濡れきっている体を一瞬で凍結させていく。
「嵌められたかっ……!」
分厚い氷は頑強な拘束具となって騎士の行動を最低限に抑制する。―50℃にまで低下した氷が筋肉を硬直させ間接の動きも制限し完全に動きを封じる事に成功する。
「お願い思い出してください!!貴方は私達の仲間なんです!!」
「………耳障り且つ不愉快だ」
怒りを瞳を染め上げ顔を上げ睨みつけてくるジークに思わず怯んでしまう二人。完全に拘束した筈の体はゆっくりと動き氷に亀裂を走らせていた。直ぐにそこへ水を送りこみ凍結させていく二人だがそれでも動きを止めないジーク。
「お前たちなど敵で十分だ、ディアナだけが俺を認め求めてくれる女性だ。彼女の為なら俺は命さえも捧げよう」
魔力を放出し一瞬で氷を溶かした上で周囲の水分と共に蒸発させ容易に氷を作り出せないようにした上で一気に迫り、ウンディーネとスノウの腹部へと同時に拳を突き立てた。水のガーディアンであるウンディーネに触れる事は難しい筈なのにいとも容易く触れた上でウンディーネは余りのダメージにARMに戻ってしまいスノウは意識が朦朧とし地面に倒れこむ。
「これで終わりだ」
そういいながら取り出したARMを発動する、それは粘性を持った闇を生み出しスノウの周囲の空間を取り込むように広がっていき球体状になりスノウを閉じ込めた。
「なん、なのこ、れ………?」
「ディアナからの頼みだ、お前を連れて行く。ではなメルの諸君、姫を助けたければ城に来るがいい。その時は」
視線を動かしドロシーへと向き直り太刀ではなくバルムンクを引き抜きそれを向ける。
「ディアナの妹、貴様の相手は俺がする。覚悟しておけ」
「スノウ―――ッ!!!」
その言葉を最後にジークはスノウを連れ去って行った。その場に響いていたのはギンタのスノウの名を呼ぶ声だけだった。呆然とする一同にポズンがジークの勝利を告げるコールが木霊するが誰一人として、それに耳を傾けていなかった。
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