ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~
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SAO:アインクラッド
第24話 悪魔の亡霊
「終わったか……」
宙に漂いながら落ちていくポリゴンの欠片を眺めながら俺は呟いた。
そして、呆然としながら眺めているとシステムメッセージが表示された。
《サキとのステータスの共有を終了します》
俺は右手を見るといつの間にか指輪が無くなっていた。
俺は気にせずサキの方を見るとサキも呆然としていた。
だが次の瞬間にサキの体が揺れ崩れるようにして後ろへ倒れる。
俺は慌ててサキに駆け寄る。
神速スキルを解除していた為間に合うか不安だったが、ギリギリのところでサキの体を支えることに成功し安堵する。
「サキ、大丈夫か?」
俺が呼びかけるとサキはすぐに意識を取り戻した。
サキはふらつきながら立つと笑みを浮かべて言った。
「もう大丈夫だよ、カゲヤ君」
「そうか」
すると後ろから足音が聞こえ振り向くとクラインが声を掛けてきた。
「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと2人死んだ……」
「ボス攻略で犠牲者が出たのは67層以来か……」
「こんなのが攻略って言えるかよ。コーバッツの馬鹿野朗が……死んでしまっちゃ何にもなんねぇだろうが……」
クラインは吐き出すように言った後ため息を吐き、気分を切り替えるように訊いてきた。
「そりゃあそうと、オメェ何だよさっきのは!?」
「それは俺も気になるな」
いつの間にかアスナと一緒に近くまで来ていたキリトが言うがキリトもクラインに同じ台詞を言われてしまい困った表情を浮かばせる。
「言わなきゃダメか?」
「ったりめえだ!見たことねぇぞなんなの!」
「……エクストラスキルだよ。《二刀流》」
おお………というどよめきが軍とクラインの仲間の間に流れる。
「同じエクストラスキル《神速》。もう1つはサキのスキルだが……」
そこまで言うと俺はサキに視線で言っていいかどうかを問う。
サキが頷き了承するのを確認するとクラインたちに言った。
「サキのもエクストラスキルで、名前は《LINK》だ」
またしてもおお………というどよめきが流れる。
「しゅ、出現条件は」
クラインの問いに俺は首を横に振る。
クラインはキリトにも視線で問いかけるが同じように首を横に振った。
「わかってりゃもう公開してる」
「まぁそうだろなあ」
クラインは唸るように言う。
「ったく、水臭ぇ……え………な………」
何か言おうとしてクラインは途中で言葉を止め目を見開いた。
まるで有り得ないものを見ているかのように……
周りの軍の連中やクラインの仲間たちも俺たちの後ろに目を向けて目を見開いていた。
突然の事に困惑しながらも俺は振り向いてクラインたちが見ているものを確認した。
そして俺もクラインたち同様に驚愕した。
部屋の中央に黒い円のような物が現れていた。
それに加えポリゴンの欠片は黒い円に吸い込まれるように落ちていく。
しかも色を鮮やかな青から漆黒の黒に変えて。
そして徐々に黒い円は大きくなっていく。
「な、何なんだよありゃあ……」
クラインが言うが誰も応える者はいなかった。
応えられなかった。
この場にいる全員が初めて見る光景だった。
俺たちが沈黙して見ている間にも、ポリゴンの欠片は黒へと変色しながら吸い込まれていく。
全てのポリゴンの欠片が無くなると同時に黒い円の拡大も止まった。
そのまま誰も一言も発するこのなく見続けていると急に黒い円が渦を巻きながら天井に向かって伸びていく。
数秒で天井に着くと黒い柱は渦を巻きながら状態を維持する。
不意に黒い柱の数カ所が溶けるように小さな穴が開く。
それは次第に大きくなっていき数秒で黒い柱は消え去った。
そして柱の中にいな何かが姿を現した。
姿形はグリームズアイズに酷似していた。
違う所は、姿が闇で形作ったようになっていること、本来のグリームズアイズより少し小さいこと、そして背中に禍々しい翼が生えていることだ。
黒い円は急速に小さくなっていき、消滅した。
それと同時にカーソルが表示される。
カーソルの色は赤。
そして名前は《The Devil Phantasma》─── 悪魔の亡霊
「どうする?カゲヤ」
「戦うしかないだろ」
「でもこの人数じゃ厳しいよ」
「それにさっきより強そうだよ」
その間にも悪魔はゆっくりとこっちに近付いてくる。
「キリト!カゲヤ!どうすんだよ!」
後ろでクラインが叫ぶ。
「クライン!お前たちは軍を安全な所へ連れて行け。あいつの相手は俺たちがする」
「死ぬんじゃねぇぞ!」
クラインはそう言うと軍と仲間たちを連れて移動する。
「大丈夫なのか?」
キリトが不安そうに聞いてくる。
「可能性は低いがやるしかない」
「そうね。それにこいつを倒さないと上の層に行けないもの」
「わかった。だが無茶はするなよ」
「言った本人が一番無茶しそうだけどね」
その言葉に皆クスッと笑う。
キリトは頭を掻きながらぼやく。
だがすぐに気を引き締めると先にキリトとアスナが飛び出した。
「行くぞ!アスナ!」
「うん!」
悪魔の亡霊はキリトに反応するとグリームズアイズが持っていたのと同じ剣を振り上げるとキリトに向けて振り下ろす。
だが、その剣も闇で形作ったかのような剣だった。
キリトはその剣を受け止めると押し返す。
すかさずアスナが飛び込みソードスキルを撃ち込む。
「サキ、俺たちも行くぞ」
「わかった」
俺たちは拳を合わせると同時に「リンク!」と言う。
グリームズアイズと戦った時と同じ現象が起きステータスの共有が完了される。
それと同時に地面を蹴り悪魔の亡霊に向かって走った。
戦闘から1時間が経過していた。
悪魔の亡霊のHPバーは4本中2本削り、3本目に突入していた。
全員グリームズアイズの戦闘で疲労していた。
だから短期戦で決着をつけるつもりだった。
だったのだが、そう簡単にいく筈もなく持久戦になった。
理由は至ってシンプルで悪魔の亡霊が飛んだからだ。
悪魔の亡霊が飛んでいる間は俺たちは攻撃できず降りてくるのを待つしかなかった。
悪魔の亡霊が降りてくる時は攻撃してくる時で、回避して攻撃しようとしてもすぐ飛んでしまうため思うように攻撃出来ないのだ。
だが、ずっと飛んでいるわけではないので悪魔の亡霊が降りてきて地面に着くと同時に攻撃する。
そうして時間を掛けて悪魔の亡霊のHPを地道に削り、1時間でやっとHPバーの2本目を削りきったのだ。
2本目を削りきると同時に悪魔の亡霊から離れ距離をおく。
俺たちが距離をおくと同時に悪魔の亡霊は怒りの咆哮を上げた。
空気が震えるほどの咆哮を上げた。
凄まじい音量の咆哮に俺たちは思わず耳を塞いだ。
塞がずにはいられなかった。
塞いでいても悪魔の亡霊の咆哮はうるさく、眩暈がする。
必死に耐えながら俺は悪魔の亡霊を凝視する。
咆哮の間にも攻撃して来ないとは限らないからだ。
膝をつき耳を塞ぎながら悪魔の亡霊を睨む。
まだか……と思ったのと同時に悪魔の亡霊の咆哮が止んだ。
耳鳴りと眩暈に耐えながらも落とした剣を拾い立ち上がる。
だが体勢が立て直るまで待ってくれるはずもなく悪魔の亡霊は一気に近付くと剣を横一線に振るう。
俺はバックステップで剣を避ける。
キリトたちも避けるが少し反応が遅れていた。
このままじゃまずいな……
疲労が溜まれば反応が鈍る。反応が鈍れば攻撃を喰らう確率が高くなる。そして死ぬ確率も高くなる。
「キリト。20秒耐えれるか?」
「ああ、大丈夫だ」
「その後1分間だけ俺に任せてくれないか?」
「わかった。アスナとサキにも伝えておく」
「助かる」
キリトはアスナたちのところへ向かいおれは後方へ下がる。
俺は壁際まで下がると目を閉じ全ての力を抜きリラックスする。
そして限界まで集中力を高める。
段々周りの音が小さくなっていく。
そして完全に音が消えた。
それと同時にゆっくりと眼を開ける。
よし、やれる………後はどれだけもつかだけだが……こればかりはしょうがないか……
俺は一息つくと悪魔の亡霊に向かってダッシュする。
制限時間は1分……それを越えれば神速スキルに冷却時間が課せられる……だから、その前に削りきる!
俺は神速スキル突進技《ストレイトライン》を発動しながら悪魔の亡霊に向かった。
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