どうやら俺は主人公を殺したらしい
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六話、どうやら俺は、…………何なんですかね?
前書き
タイトルはすみません。
とっくに日も暮れ、黒く塗りつぶされた空。
時刻はもう晩御飯を食べている頃だろう。
教会内でも、みんながみんな、それぞれの食卓を乗せたテーブルにある椅子に腰を下ろし、和気あいあいと、晩御飯を口に運んでいた。
俺は、その光景を横目に、教会内から外へ足を運ぶ。
ちなみに俺はというと、みんなのように晩御飯は食べていない。まず、食べること自体が出来ないしね。
理由は、簡単だ。
身体が壊れているからだ。
不幸自慢なんかしたくないから、それしか言わないけど、俺はゼリーしか食えない。
なんか透明だけど、透明じゃないという染色をしたゼリー。
正直………グレープ味なんで美味しいです。
まあ、そこまで不都合はない。そのゼリー自体が、開発チートと言わざるおえない、とあるクソ堕天使からのパイプだし。
ただ、ゼリーしか食べない俺に対して、周りの侮蔑と疑問と違和感の視線が痛いだけ。
もちろん、俺の身体が壊れてしまった原因である“過去”を話したことはないし、これからも話すことはないだろう。
ゆえに、周りの奴らは、ただただ疑問視する。
まあそれも2年前の事であって、今はもうみんなが慣れたというか、俺も慣れたというか。誰も気にしなくなった。
………あと、俺は別にボッチじゃないからね。
いつも一人で、みんなのいないところで、ゼリー食っているからって、“ボッチ”って決め付けは良くない。
いつも任務であるはぐれ悪魔狩りも、一人でやっているからって、“ボッチ”って決め付けは良くない、いくない。俺、聖剣持てば、チート並に強いから、別にはぐれ悪魔狩りとか、一人で十分ですし。
『フッ、勇者の過去は我だけのものだからな。……ウム、我だけのもの、ムフフっ』
「いや、お前いきなり何言ってんだよ、マジキメーよ」
俺がこうやってやり取りしている相手は、聖剣………名前は聖剣。
呼び名も聖剣。
正式名称は………何だっけ。
『また来たよそのセリフ、ねぇっ! 何でいつも勇者は、我の名前忘れるのだ⁉︎ 』
と、いきなり怒鳴る聖剣。
「ちょっと黙ってくれよ、聖剣。お前を腰にかけているもんだから、いちいちあんたが怒鳴るたびに、お前というか、聖剣自体が揺れるもんだから、ズボンが下がる」
とは言っても、俺自身が、聖剣の位置を変えるだけで済む話だが、自分が妥協しているみたいで嫌だ。
『くっ、そんな真顔で言われると、勇者には逆らうことは、流石の我とて出来ん。……だがッ、いつも通り言わせてもらうが、我の名前は“天閃の聖剣”だ! 以後忘れるな、自分の魂に刻めろ! あと、呼び名は、“エクスカリバーラビットリィ”ね‼︎』
ふわりと、点滅しながら、そう言う聖剣。
でも、こう言っても何だけどさ、こう言う正式名称ってすごい大変だよね。
だって、戦闘に入る時、いちいち長ったらしいその正式名称というやつを、言うんだぜ。
俺の場合、聖剣って略すか、それか何も言わずに、go-goだし。てか、聖剣と言わなくても、別に、戦闘には、害があるわけじゃい訳で、
だけど、まあ俺以外、無論、仲間、敵関係なくに、几帳面なのか分からないけど、長ったらしい名前を言うのだ。敵を前にしてだ。
しかも、しかもだ。その能力の詳細ご丁寧に説明しちゃってくれて。そんな余裕があれば、別にいいんですけどね。
でも、あれ何なのさ。自分の能力自慢したいの? だからあんなドヤ顔してるんすか。
お前らそんな悠長に、ペラペラ喋ってんの。普通に戦えよ。
てか隙があり過ぎて、切りたくなるよね。……いや、切ってますけども。
俺は、聖剣の言葉に、こくりと適当に頷く。聖剣は、あまり納得とはいかないけど、どうやら妥協したのだろう。そこから先は、喋ることはなかった。
大人しくなった聖剣を横目に、ポケットから、ゼリーを取り出す。
………なんかゼリーという単語出すと、緊張感がなくなる。
そう思いながら、“ザ・科学” 的な、プラスチック製の容器に入ったゼリーを、自前のストローで飲み込んだ。
『うえぇぇぇん! ゼノウィア、私っ、また負けたよぉぉぉぉぉおおお‼︎』
「うおっ……」
教会の外だというのに、この音響大にして聞こえるこの声。
この声の主くらいは特定できる。
恐らく、ではなく、確実にあの人だ。
いつものように、教会を覆っている白い壁のコンクリートに、耳を、そっと当てる。
『また、デクタに負けたのか? イリナ』
『そうっ、そうなのよ! またデクタ君に負けたの!……ううっ私、彼の先輩なのにぃ〜』
喋ったのは、左から順に、ゼノヴィア、そしてイリナ。
ちなみに、紫藤イリナの言う、負けた、というのは、今日やった“聖剣をかけた模擬戦”の話である。
察しがつくように、もちろん俺の圧勝ッス。何か文句でも?
『まあ、今は落ち着け。みんなが迷惑がっているぞ』
そう諭すゼノヴィア。対してイリナ自身は、納得しきれないのか、一時は、抵抗はしたけれど、
『……でも………うん、わかった。………でも、食べ終わったら、ちゃんと私の話を聞いてよね、ゼノヴィア』
最終的には、こう言ってだいだいは、収集がつく。
うん、まあ、それだけ。別に、俺がいないところで、悪口言われるか心配だったから、盗み聞きしたわけじゃないんだからね!
として、俺は、コンクリートから耳を離し、自分の寮へと向かうことにした。
結局、原作介入となる当日になった。なってしまった。うん、今更だけど、原作介入って、何処まで介入と見なされるのかね。まあ、それは後回しに。
昨晩は、寮に帰ってからはというと、ただ今日のための荷物諸々、準備をしただけ。
そのあとは、俺が命を賭けた任務という訳で、何かしらの送別会みたく、それぞれの飲み物を注いだコップで、乾杯とかした。
ただし、男限定でね。まあ、そこは、しょうがないよね。寮には、男しかいない訳でだし。女性なんかは、別寮だし、わざわざ集まるほどのことでもないらしい。
今はこうして、ドア越しに寄っ掛かりながら、ぼーっとしている俺ことデクタである。
寝起きというか、全然頭が働かない。何時もこの時間帯に起きるとか、慣れないもんだから、頭がガンガンしてキツイ。
てか今深夜の2時に近いからね。12時に寝たのに、この時間に起きるとか。
窓から差し掛かる光は、太陽の光ではなく、月光。
その光に、眩しさを感じながら、俺はキツキツに詰まった2つのボストンバッグを、両肩に背負い、極めつけに、白い包帯で、雑に包み込んだ聖剣を越しにかける。
そして最後に、………トランクに厳重にしまってある、もう1つ聖剣を片手に、もつ。
ガタガタッ、ガタガタと不気味気に、揺れていることは気にしてはダメだ、うん。
まあ、これは、俺の切り札みたいなもの。ドラゴンに有効な一撃を与えることができる俺だけの切り札。
「はぁ………眠たい」
愚痴をこぼし、俺は扉を開けた。
だるい。だるい。そして寒い。
俺は、外の冷たい外気にさらされながら、ヘックシュンっ、と下品なクシャミを漏らしてしまう。
申し訳程度に俺は、ズズッと鼻を鳴らす。
そんないかにも「風邪を引きました」というリアクションを見て、俺の隣を歩いていたゼノヴィアさんは、たぶんだけど、心配そうにこちらを向き、
「デクタ、風邪を引くとはだらしないぞ…………ズズッ………………あ」
いや、君も鼻、鳴ってるけどね⁉︎
その注意した本人が、その直後に、注意した相手と全く同じことをしてしまったという、まさに赤っ恥。
当の本人であるゼノウィアさんも気付いたのか、一瞬、少し気まずそうな顔をして、こちらからフイッと顔を逸らす。
……いや、顔逸らすなよ。こっちも気まずくなるじゃん……。
どう収拾すんだよこの状況……。うん、これしかないわ。
「……うす、すみません。これから気を付けますゼノヴィアさん」
俺はぶっきら棒にそう言った。
うん、俺偉い。あえてというか、そこに触れずに自分から謝っていくスタイル。なんかいいことをした気分である。……自画自賛乙。
「………フン、そんなことより、私はお前に聞きたいことがある、デクタ」
唐突に俺に問いかける彼女。その時のゼノヴィアさんの表情は何故か神妙な顔つきであった。
いつものクールな表情ではなく、何かに突き動かされたような、焦燥立った感情も入り混じっていたような気がした。
そんないつもと様子が違うゼノヴィアさんに違和感を抱いた俺は、無意識のうちに足を止めてしまう。
「何がすか?」
「……………いや、私の心配のしすぎかもしれないな。気にしないでくれ……(チラッ」
うっわー、何その『チラッ』!?
しかも何そのいかにも聞いてくれウェルカムアピールさぁ⁉︎
しかもしかも、ゼノヴィアさんから伝わるこの「聞かないと殺す」アピール。
てかやめろよその目。めちゃくちゃ怖いよ。睨まないで、俺怯えてるから。
少しだけ、目の前の少女に臆す俺。いや、一応俺、男なんですけどね。まあ、ゼノヴィアより一つ年下だけども。
そこは主張したいよね。俺男なのに、こんな立ち位置だということを。
それはさておき、俺はふと考えてしまう。
勿論のことだけど、その思考の根元の先にあるのは、彼女が何を話そうとしているのか、である。
…………うん、少し考えはしたけど、全くわかりませんでした。
結局俺は、ゼノヴィアさんに聞こうとするしかない。
だけど、俺が聞く直前に、ゼノヴィアさんは、あっさりと言った。
「我らの主のために全力を尽くせ。………あとは………フッ、まあいいだろう。お前自身が一番分かっている筈だからな。……それにお前より弱い私が言うことではない」
「………ん?………すみません、何のことですか?」
「馬鹿者、つまり死ぬな、ということだ」
「あ、ああ」
「貴様、本当に分かっているのか? いや、分かってないからそんな間抜けヅラを晒すのだろう。……全く情けないな、お前は。今日は、私たちにとって、いや、お前にとって天使様直々のご命令にあたった任務だというのに」
「あー、そのことすか」
“任務”という単語を耳に、俺は、今更ながら分かった。というか、理解した。任務を遂行するために、こんな朝早く来ているわけだし。
まあ、俺の任務とはなにか、……それは、断片的に説明するとこうだ。
“今から”日本へ行き、盗まれた聖剣の回収及び破壊。そしてその主犯である堕天使幹部、それに加担したバルパーなんとからが潜伏していると思われる駒王町の偵察。
さらに、俺は偵察から得た情報を、上層部である天界と、後から日本へ来るだろうゼノヴィア、紫藤イリナに流す。
そのあとは、先ほども言ったけど、ゼノヴィアとイリナの二人と、俺の拠点で合流し、今回任務の本筋である、聖剣の回収と、主犯である、堕天使幹部、バルパーなんとかと、それに加担したであろう“はぐれ”エクソシストらを排除する。
それが、これから原作介入にあたって行う俺の任務である。
「漸く自覚したようだな。……だがまあ、自覚する以前の問題だがな」
「………いや、ゼノヴィアさんの言い方が回りくどいというか」
「なら、分かれ」
「は、はあ…………ん? てか、さっきの言葉を直訳すると、俺のこと心配してくれてるんすか?」
「は?」
うん、その“こいつ何言ってんだ?”なんて、嘘偽りのない純粋無垢な顔をされると、俺いっそ清々しいですわー。若干泣きそうになっている俺をよそに、ゼノヴィアそんは、続けた。
「確かに、死んでしまったら、元も子もない。だが、我々の主のためならやむ終えないことだ。例え、お前であっても、私だとしても、イリナにしてもだ」
そうだ。ゼノヴィアだけではなく、こいつらのような輩は、簡単に“死んでもいい”なんて言う。
その言葉の後に付け加えられるのは、いつも、我々の主のために………と。つまり、神様だ。
それは、彼ら彼女らにとって、ある意味自分たちの生きる糧なのだろう。そういう風に小さい頃から教育されたのているから。
原作では、ゼノヴィアとイリナは、死ぬということを分かっていて、堕天使幹部クラスに立ち向かうことを、決意し、挑んだ。そして、当然の如く、自滅した。
俺だったら、しっぽ巻いて逃げるだろう。ただし、今俺が持っている転生特典を持っていなかったらの話だ。
俺から聖剣取ったら、何も残らないしね。逆にあれば、最強に近いにクラスにのし上がることも可能である。
まあ、ね。俺はそんなことよりも凄い気になることある。それは……
「みんなはどうした⁉︎」
「は?」
俺の心の叫びに、一言で済ます。
「いや、ゼノヴィアさんが、ここにいるのは、俺を見送るためだよね?」
俺たちの周りには、誰一人もおらず、俺ら二人だけ。
「ああ、そうだが。……それがどうした?」
「なら、みんなはどうしたの。イリナさんとか、教会のみんなとか」
「何を言うのかと思ったら、そのことか。安心しろ、お前の言うみんなは、寝ている」
「……え、えー」
安心できる要素皆無です。
こういうのは、みんなで見送るものじゃないのかね。
いや、こんなこと言うのって、俺図々しいのだろうか。いやいや、一応、命のやり取りをする訳で。
それでも来ないというか、何かしらメッセージすらないということは、………もしかして、俺本当に一人ボッチ?
『我がいるゾ! 勇者!』
「よし、サッサと行こう、ゼノヴィアさん」
「ああ、早く行かないと、予定の時間にも間に合わないしな。……だが、いきなりだな」
「なんでもないすよ」
『オイ! 勇者! 聞こえてるであろう⁉︎ 無視するな、せめてうんとかスンと言って⁉︎』
「スンッ」
『……………』
おし黙る聖剣。てか起きてんたんかい。天閃さん。
『………………絶対に許さないからな』
「スン」
『……………』
そんな些細なやり取りを、幾分か終えた俺は、再び道中に集中する。
そういえば、今の原作はどこまで進んでいるのか。そんな疑問がわく。
日本の季節は、恐らく春であり、五月から6月の中間らへんだろうか。
多分、原作は、それよりもちょっと後くらいだった気がする。まあ、おおよそだから、分からん。
多分、すでに原作は始まっていらはずだ。
あとは、原作で、ゼノヴィアと紫藤イリナが登場したよりも、早く原作に介入することは確実。
まあ、俺は偵察だからね。
ちなみに、本来の原作での俺の立ち位置だった神父(偵察)は、死んだらしい。アーメン。別世界があるかわからないけど、ど、一応お祈りしとこう。アーメン。
うん、まあ、今は、俺が入ることによって、その本来なら死ぬはずだった神父のポジションは、俺が請け負った形なんだけどね。その入れ替わりで、その名もなき神父は助かるのだ。そこんところ興味はないけどさ。
「そろそろ着くな」
「そうっすね」
会話終了。黙々と足を動かす。
今思えば、ゼノヴィアさんとは、なんだかんだで、幼馴染みの関係であったと思う。
最初は、原作知識のせいか、ゼノヴィアというキャラクターは、兵藤一誠のハーレム(笑)員。という原作知識だけの、事実が影響で、とてもじゃないが、好感は持てなかったのが本音である。
まあ、小さい頃にトラウマも植え付けられたのもあるけど。……ん? あれ、トラウマってどんなだっけ。いつものことだけど、そのトラウマを思い出しそうで、思い出せない。
まあ、兎にも角にも、仲良くはなったんではないだろうか。
せめて知人以上友人以下ぐらいにはさ。同じく。紫藤イリナも同じくそんな感じ。
「着いだぞデクタ」
どうやらいつの間にか着いたようで、ゼノヴィアさんに声をかけられる。
その声は、お互い小走りという、軽く走ったたためか、周りの温度差に応じて、白い吐息が漏れていた。
「うす………案外早かったですね、着くの」
「そうだな。とはいえ、ここから先は、私はついてはいけないだろう」
「それは前もって聞いてるんですけど、案内人は何処すか? 全然見当たらないですけど」
目的地点である街灯近くに来たのだが、誰もいない。
「時間が経てば、恐らく来るだろう。……ふむ、それまで私も待とうか?」
「いいですよ、遠慮します。一人で待ちます」
「………そうか、なら私は行く」
「うす、じゃ、また〜」
「いや、待て。イリナから伝言だ。『頑張りなさいよ』、とな。………じゃあな」
「……………そうですか………あざっす」
それだけ言い残し、彼女は過ぎ去ってしまった。
うん、まあ、正直嬉しかったっす。
として、原作介入の準備が整った訳だが、俺は1つの油断をしていた。
それは、原作の崩壊だ。
俺がいる時点で、原作がそのまま動くわけがない。未来が変わらないわけがない。
俺というちっぽけな人間が一人加わだだけで変わるのだ。
「やあ、聖剣使い君、あれは君のガールフレンドなのか?」
だから奴が現れた。
白い髪に、甘いマスク。それとは相対した黒いシャツ。
そして、テロリストととして、危険視されているある1つの集団の筆頭人物。
既に、この集団の正体は、割れていて。今もなお、活発に、活動しているテロリスト集団。
その集団の名は、「禍の団《カオス・ブリゲード》」
そして、俺の眼の前で、嫌な笑みを浮かべている人物は―――ヴァーリ・ルシファーだった。
「久しぶりだな、俺のライバル」
後書き
次は戦闘です。
あと、オリ主のヒロインの対象は流れに任せます。
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