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どうやら俺は主人公を殺したらしい

作者:パワタス
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五話、色々あって忘れた。

 
前書き
今回謎回でした。 

 
 





 心地よい……とは言い難い、もさもさ、チクチクのベッドで目を覚ます。
 森の中からちぎりにちぎった草木から使ったそのベッドからは、長い時間何かに押しつぶされていたせいなのか、独特の臭みと変な汁が滲み出している。
 その何かとは、僕のことであり、そこで寝ていたのは当然のごとく僕であり。

「……っつ………腰……痛い………」

 寝ていた上半身を起こすと、腰に異様な痛みが走る。
 さすりさすりと、腰を抑えながら、今度はしっかりと腰を起こす。

「……ッつ……」

 だけど、その腰痛から次に、体全体に、なんとも言えない苦痛に襲われる。要するに、めちゃくそ痛いんだけどさ。

 ………いや、あたりまえのことだけど、別に高年齢特有のものじゃないよ? 僕全然若いし。

 まあ、聞いておくれよ。僕の昨日起こった災難を。

 僕は、とある教会へと向かっていたはずだった。
 だけど、僕迷ったんです。
 いや、すぐそこだったんですけどね。本当に真っ直ぐ行けば、到着予定だったんだけどね。
 なんか変な輩が来たんですよ。
 えっと確か「なんちゃらの団」だった気がする。
 あとは、ヴァーリと名乗白い奴が居たね。
 僕、そんな奴知らないけどね。兵藤一誠のライバル(笑)になった奴なんか僕は知らない。
 ………まあ、冗談はさておき。
 僕は、「ヴァーリ」という人外を知っている。
 確か、羽の生えた白い神器みたいなやつだったかな。もう名前忘れたけど、『触れたものの力を半減させ、その半減させた力を自身の糧とする』、だった気がする。てか、ヴァーリって奴、自分から能力教えたからね。阿保だわ。

 そのあと戦闘をした。まあ、いきなりなんすけど。
 当然、強制的に、だ。なんか「俺は強い奴と戦いたい」って言った瞬間、僕へ飛び込んできたからね。本当意味わかんねーよ。
 そうして、異次元という世界の中で。この人間世界ではない、よく分からん世界に連れ込まれた僕は、負けた。
 あっさりというが、そのまんまなのだからしょうがない。言っておくけど、負けた……けど、相手であるヴァーリが勝ったとも言えないのかもしれない。………負け惜しみじゃないからね。

 そのどちらも勝ったも負けたと言いにくい、その戦闘の最中に、双方ともに、目を疑う光景出来事が起こったのだ。
 何故なら、聖剣が僕の方へと降臨したのだ。いや、降臨って、なんか大袈裟だけど、もうそんな感じ。あ、聖剣アスカロンじゃないぜ?そん時僕の手元にあったし。

 回りくどいの嫌いだから、もう言うけど、その聖剣の正体は、「天閃の聖剣」だった。まあ、その時は、なんで教会に保管されていたはずの聖剣がここにあるのか、なんて疑問を抱いていたのだけれど。
 なんか見た瞬間、「あ、これ、僕の特典じゃん」って思ったし。なんか、ずっと求めてきたモノホンの神様の特典だったから、心中では結構興奮したけど。結構死闘してたから、抑制させていた。ただ僕自身も其れに反して、必死にそれを欲求した。

 対して、その天閃の聖剣も生きているかのように、僕を欲していた……気がする。まあ、最終的に、その聖剣を使わずに、僕は逃げた。
 何故かというと、なんか嫌だったから。恐らく、その天閃の聖剣を使えば、あのヴァーリ・ルシファーに圧倒できたのかもしれない。禁手《バランス・ブレイク》をした彼を圧倒できたかしれない。
 でも、それは使いたくなかった。
 だってさぁ……こいつも喋るんだぜ⁉︎ なんか、聖剣が降臨みたく登場したと思ったら、僕のことを―――

『ククッ、勇者よ、やはり私と共に戦う運命だということか………面白い……ッ』

 とかさ―――

『ん? ……っきっ、きききき貴様はアスカロンではないか! 何故貴様が勇者と繋がっているのだ⁉︎…くっ…勇者よ、この私を差し置いて浮気とはなにごとだ‼︎ 万死に値するゾ‼︎』

 いや、マジ、なんなのその想像力。いつから僕勇者になったのさ。
 てか、おめぇも喋るんすか。てかお前も女の声とか……。
 もしかして、聖剣と喋れる特典がおまけとして追加されてたとかじゃないよね。

 兎にも角にも、カオスになりかけたその状況化で、新たな喋る、厨二っぽい聖剣を使うわけにもいかないし。

 そんなこんなで、何故かだんまりであった聖剣アスカロンだけで、逃走劇を切り出した僕だったが、当然相手であるヴァーリも追いかけはした………けれど、彼も満身創痍。動けないのだ。
 僕はその隙を逃さず、無理矢理、自身が用いる力だけで、異次元に穴をこじ開け、現実へ繋がる道を作った。その開けた穴を抜け、直ぐに閉じ始める穴を他所に、僕はヴァーリ・ルシファーを振り切ることに成功した。

 そうして、逃走に成功した。あたり周辺は緑がわんさかと茂る森。
 そこは、自分の知らない森の中だったのだ。僕が元いた森とは繋がってはいたけど、進行方向を完全に見失ったのだからどうしようもない。コンパスとか、地図とかないし。

 ……とまあ、長々といったのはいいのだけれど。要約すると、そのヴァーリ・ルシファーとの戦いで、僕はボロッボロというわけであって。
 気付けば、1日経っしまい、今に至ってしまったというわけでさ。
 結局、目的の教会にも行き着かずに、この有り様である。
 うん、その時、武器として使っていた聖剣アスカロンもアレから何も喋っていない。……主に雑に使いすぎたせいだろう。まあ、いいや。そんなこと気にせず、早く目的地である教会へ行かなければ。うん、 ついでに、もう一つの聖剣である、天閃の聖剣は、黙らすまでが大変だったね。どうやったかなんて言わないけど、凄くうるさかっただけでいいです。

 僕は、手作りベッドに別れを告げ、二つの聖剣を腰に掛け、そして自分の持ち物が入ったバッグを背負って……ん? ……ない。……バッグがない。どこに行ったのだろうか。一応、自分の命より重い価値がある、聖剣二つは、肌身は出さず、今も持ってあるのだが。
 着替え、小道具、その他色々と入ってあるバッグがない。………どこだろ。
 僕は、周りを見渡す。
 だが、それは唐突に現れた。

「貴様、ここで何してる?」
「………は?」

 少女がいた。
 言葉遣いは刺々しいけれど、その声のトーンだけでも分かる。しかも、顔は見えなくとも、その強調される胸もと。モデル顔負けのそのスタイルを見れば、女としか言いようがない。

 いや、そんなことどうでもいいんだ。
 それよりも、僕は、その彼女に聞かなければならない。何よりも、どんなことよりも最優先事項なことである。

「いや、君こそ何やってんだよ」

 僕は、僕の下着を頭から被った少女に問うた。 ………大事なことだからもう一度言うよ。
 僕は、僕の下着を頭から被った少女に問うた。

 ………うーん、なんかシュールだね。
 僕、この世界で生きていた中で一番シュールな空間にいるかもしれない。
 パンツを被った少女と対話する僕……。
 うん、なんじゃこりゃ。あ、ちなみに僕の下着青です。誰得情報だけど。

「質問に質問で答えるな。この教会の近くでくんかくんか、そのボロボロの服装……。くんかくんか見た所、貴様、何か争いごと、激しい戦闘でもしていたのか?………くんかくんか」
「ねぇ、やめて⁉︎ 何声出して匂い嗅いでんの⁉︎」
「何か懐かしい………あいつと似た匂いがすると思って来てみれば、こんな怪しい輩がいるとはな。我々、教会のものとしては、見逃すわけにはいかない」
「聞けよ‼︎ てか、あんた教会って言わなかった? もしかして―――グへッ⁉︎」

 少女に、首ごと服を捕まえられる。
 クソッ、抵抗したいけど、全身に苦痛だけが走るこの状況下で僕はただただ顔をしかめるだけ。

 たいして、女子は、無抵抗な僕の顔を唐突に覗き込む。

「……ふむ、貴様とはどこかで会ったような気がするが気のせいか」
「いや、パンツで顔見えないから分かるわけないよね。てか、今更だけどさ、なんで僕のパンツ被ってんのさ。阿保なの? 大丈夫すか?あと、俺のバッグ返せや」
「まあ、いい。私の部屋でじっくり聞こうか――――――デクタ」
「いや、話聞け…………え?」

 なんで僕の名前を知っているんだ?

「ふふふ、何年ぶりだろうな、デクタ」

 何故この少女は、僕の名前を知っているのか。
 僕は、恐る恐る、少女の姿をマジマジと見る。
 恐らく、僕よりは背は高い。そして、印象的なのは、髪だ。
 その髪は、被った下着で、見え隠れているけど、青い髪がチラリと。

 うん、どっかで見たことのある髪の色だね。
 てか、青い髪といったらあいつを思い浮かべてしまう。
 そいつは、僕の幼馴染みで、原作では兵藤一誠のハーレム一員で。
 そして僕が彼女と幼馴染みだった頃に、生涯忘れることのなかろう『トラウマ』を植え付けた張本人で。
 ………いやいや………まさか……ね? こいつがそうなの?

 僕は疑心と恐怖心に満ちた視線を少女に投げかけるも、少女は、ニタリと笑うのみ。
 不気味だった。

「……いや………いやいや……まさかね、ハハハハハ‼︎」
「幼馴染みの私が、お前を見間違える筈がない。この私がお前のことを忘れるわけないだろ? この匂いを嗅いだ瞬間、一発で分かったさ。デクタ……お前だとな」

 そう言うと、少女は、被っていた僕の下着を振り解く。

 そこから出てきたのは、サラサラとしたの青いウェーブ。ついでに、おまけのようについてある前髪にかけてある緑のウィッグっぽいもの。
 その青い髪は、吹き抜ける風に乗せられ、青い青い波のように錯覚してしまいそうなその髪に、僕は不意に魅入られてしまった。

「さあ、行くぞデクタ。動けないのだろう? 私が連れて行こう………私の部屋に」

 怖い。
 一瞬だけそんな感情を抱いてしまった。
 でもしょうがないじゃないか。あんな瞳孔の開ききった目を見れば、誰だってそうなる。

「…………」
「何故そんな怯えた目をしているんだ? 何故怖がっている、感動の再会ではないか。……ふむ、私は嬉しいのだがな」


 何も写さない瞳が、僕を見ていた。本当に何も写さない。初めて見たような、でも小さい頃に見たようなそんな目。

「う…………く……そ……」

 やばい、色々突っ込みたいところあるけど、どうやら僕、限界みたいだ。
 てか……眠いや……やっぱり昨日無理しすぎだのかな……。

「寝てしまったか………ふむ」

 既に動くこともままら無くなっていた僕を、ゼノヴィアにポフッとおぶられ、その女性特有の背中の柔らかい感触、そしてその彼女の服に何気なく付属していた柑橘系の香りと共に、僕の意識は―――堕ちた。

 だけど、僕はそのあと、確かに聞いたのだ。

『―――勇者………少し身体を借りるぞ』
「―――………―――」

 どっかで聞いたことのある2つの声と意識からなる声。そして、鉄と鉄がぶつかり合う劈くような衝撃音。
 意識が堕ちた暗闇で、聞こえたのはそれだけ。



 僕はその時起きた出来事を、きっと思い出すことはない。
 こうして語っている昔の僕は、別として、現在の僕は思い出すことはないと思う。

 まあ、教会に行き着く記憶があるのに、その前の記憶がないなんて、おかしい話だけれど。現在の僕はすっぽりその記憶が抜け落ち、そしてそれに気付いていない。

 ただ第三者の誰かが、現在の僕に教えてくれるのなら、また別だけど、
 ―――――――――
 ――――――
 ―――
 ――
 ― 
 

 
後書き
一応、聖剣が喋る件に付きましては、おまけ程度です。今回で、回想は終わりです。
次は、漸く原作介入まで一歩ぐらい近づく感じです。
あとは、戦闘場面になると、時々文体が、三人称になる時がある可能性もあるのでその時は、よろしくお願いします。
最後の最後になりますが、もしご意見があれば、なんなりとメッセージ、感想欄などでお飛ばしください。 
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