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戦国異伝

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第二百二十八話 二つの策その五

「思いきってな」
「思いきりはいいですが」
「しかしか」
「それが過ぎまするな」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「わしも身の周りと後のこともじゃ」
「しかとされていますか」
「そういうことじゃ。虎穴に入るにはな」
「それなりの備えをしてですな」
「さもないと食われるだけじゃ」
 その虎にというのだ。
「虎の子を得る前にな」
「だからですな」
「まずは備えをする」
 毛利と服部を傍に置き幸村と兼続、そして十勇士まで置いてというのだ。
「奇妙の方もな」
「そこまで徹底されて」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「虎の穴に入るのじゃ」
「わかりました、ただ」
「ただ。どうかしたか」
「はい、今のお話で思ったのですが」
 信長とのそれでというのだ。
「確かに上様か奇妙様のどちらかがおられれば織田家は無事ですが」
「どちらも一度におらぬ様になるとな」
「危うくなりますな」
「そうじゃな、確かに」
 信長も平手のその言葉に頷く。
「それで織田家は一歩間違えればな」
「しまいになります」
「全く以てその通りじゃ」
「ではどうされますか」
「後継を置くだけでなくしようか」
「と、いいますと」
「奇妙だけではない、直系が絶える」
 織田家のそれがだ。
「その時にすぐに主を出せる様にしておくか」
「ではそのお考えは」
「三つ程な、いざという時に主を出せる家を置いておく」
 織田家のそれをというのだ。
「そうしようか」
「そうされますか」
「そういえば室町幕府でもそうしたことがあったな」
 直系が絶えた時がというのだ。
「義教公が立った時にな」
「あの大悪将軍ですな」
「あの方が何故将軍になられたか」
「直系が絶えたからでしたな」
「源氏は全く絶えた」
 源実朝が暗殺されてだ。
「そして宮将軍を迎えることにもなったが」
「そうしたことも避ける為に」
「事前に置いておくか」
「主を出せる家を」
「織田家の名でじゃ、茶筅等の家じゃ」
 まずは信雄の名前を出したのだった。
「そうしておこうぞ」
「そうされますか」
「後でな、ただこの度はな」
「まだ、ですな」
「置くと敵に読まれたと思わせてしまう」
 自分達の存在をというのだ。
「まだわしはそれを明らかにせぬ」
「そして敵を動かさせるのですな」
「そのつもりじゃ、だからな」
「あえてですな」
「虎の穴にも入ってみせる」
 即ち死地にというのだ。
「そうする」
「そして都に入られて」
「さて、よい宿は何処かのう」
「では本能寺は如何でしょうか」
 ここでだ、平手は信長に勧めた。
「あの寺は」
「わしが都に入った時にいつも入っておるじゃな」
「あの寺は如何でしょうか」
「そうじゃな、あそこにするか」
「守りやすいですし」
 そのいざという時にだ、平手は話した。 
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