戦国異伝
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第二百二十八話 二つの策その六
「堀も壁もよいです」
「道もあるしな」
「ですから」
「わしはそこに入り」
「奇妙様は」
「あ奴は二条城じゃな」
この城と言うのだった、信長から。
「あそこにしようぞ」
「そしてそこから」
「いざという時はな」
まさにというのだ。
「逃げるのじゃ」
「ですか、それでは」
「あらゆる手を打ってから都に入る」
「その様に。しかし」
「しかし。何じゃ」
「それがし今かなり上様に申し上げていますが」
ここでだ、平手は信長にこんなことも言った。
「若しそれがしが上様が思われている」
「そうした者の一味ならか」
「大変なことになりますが」
「ははは、そうじゃな」
信長もその通りだとだ、平手に笑って応えた。
「全ての手の内を話しておるからな」
「そうなりますが」
「しかし爺は大丈夫じゃ」
「それがしはですか」
「爺はその者達とは関わりがない」
こう断言するのだった。
「二心なぞなく何者かに惑わされることもなし」
「それがしがそうした者だと」
「他の者はわからぬ」
しかしというのだ。
「だが爺にはない」
「そう言って頂けますか」
「大体そうした者は雰囲気でわかる」
それでというのだ。
「あの津々木や本願寺の者、あの時の久政殿とな」
「雰囲気で、ですか」
「わかる、そういえば松永めは」
信長はこの者の名前も出した。
「不思議な者じゃったな」
「それがしも長い間怪しい奴と思い除こうとしていましたが」
「それでもじゃな」
「はい、それでもです」
それが、というのだ。
「今に思いますと」
「それがじゃな」
「あの者はあの者なりに殿も織田家も慕っていたのですね」
「そうじゃな」
「はい。しかも」
さらに言う平手だった。
「天下泰平もです」
「望んでおったな」
「本心では、しかし」
それでもだというのだ。
「何かしがらみがあったのかと」
「そのしがらみがじゃ」
まさにというのだ。
「わしが思うところじゃが」
「その者達とですか」
「関わっておったのではないかと思う」
これも 信長の読みだった。
「それでじゃ」
「だからですか」
「そのしがらみから抜け出たかったのではないか」
「しがらみとは」
「そこまではわしもわからん」
信長の勘でも突き止められないというのだ。
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