ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~
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SAO:アインクラッド
第17話 剣士の誓い
カゲヤ達は広場に向かって走っていく。
しかし、アスナがサキを背負って走っているためスピードは遅いがカゲヤ達はアスナのスピードに合わせ走る。
走っている間にキリトはカゲヤに疑念を抱いていた。
カゲヤが速いのは既にわかってる……だが、今回の速さは何か違うような気がする。
前にいるカゲヤを見つめながらキリトは考える。
神速スキルを使っていたなら話はつくが、さっきの戦闘では使っていなかった。
それにさっきの動き、いつもと何か違っていた……
キリトはいろいろと思考を巡らせるが答えが出ることはなかった。
広場が近づいてきたところでキリトは雑念を振り払い集中する。
広場の状況は圧倒的に討伐隊が優勢だった。
ラフコフ1人に対し討伐隊は3人〜4人で相手をし、ラフコフが制圧されるのも時間の問題だった。
「キリトはアスナとサキを頼む」
「大丈夫なのか?」
「問題ない」
「わかった」
そう言うとキリトはアスナ達と共に壁際に行く。
カゲヤはそれを確認してから戦闘が行われている方へ向かう。
すると、ラフコフの1人がカゲヤが1人でいるのを見てカゲヤに突っ込んでくる。
カゲヤは動じず神速スキル《2倍速》を発動しラフコフの放つ突きを軽々と避け、左脚を斬り落とす。
ラフコフは左脚が無くなったことによってバランスを崩し倒れる。
頑張って立とうとするがその前に討伐隊に押さえ込まれて拘束された。
だが、次々とラフコフはカゲヤに向かっていきカゲヤは4人のラフコフに囲まれた。
しかし、カゲヤは冷静に対応する。
まずカゲヤは目の前にいるプレイヤーの1人の目の前まで一瞬で間合いを詰め、相手の両腕の肘から下を斬り落とし討伐隊の方へ向けて斬り飛ばす。
「くたばれぇぇぇ!!」
背後から叫びながら振り下ろしてくるプレイヤーの剣を弾き飛ばし横から来ているプレイヤーに向けて蹴り飛ばす。
飛んできた仲間に反応出来ず盛大にぶつかり2人のプレイヤーは地面に倒れた。
最後に残ったプレイヤーが横から槍で突きを放つがカゲヤは避け槍を真っ二つに斬り武器を破壊しそのあとプレイヤーの右腕と両脚を切断する。
脚が無くなったことによってプレイヤーは地面に倒れる。
戦闘が終わると同時に討伐隊が駆け付けラフコフを拘束した。
それから数分後にラフコフは討伐隊によって全員拘束された。
数名のラフコフは逃亡しようとしたが途中でカゲヤに捕らえられた。
その後、回廊結晶でラフコフは監獄へと送られ討伐隊はその場を後にした。
討伐隊は再び討伐会議のあった血盟騎士団の本部に集まった。
今回の報告はアスナではなく血盟騎士団の副リーダーがしていた。
「報告いたします。今回の討伐で死者が22名。内、DDAから2名。kobから4名。ソロから1名。ラフコフから15名出ました。
そして、今回の戦闘で精神が不安定になり暫くの間攻略に参加出来なくなった者が1名出ました。
他にも悲報が幾つかあります。1つは幹部のメンバーが捕まっていないことです。今のところは大丈夫だと思いますがその内またメンバーを集めて再興する可能性が高いので引き続き警戒と捜索を続けましょう。
次に信じがたいことですが討伐隊から裏切り者がいたことです」
裏切り者という言葉にその場がざわつく。
無理もない。信じていた仲間の中から裏切り者が出れば誰でも動揺は隠せない。
「ラフコフの1人から情報を聞き出した結果、内通者は2人いることがわかり1人は拘束することが出来ましたがもう1人は死亡していました。
最悪の結果になりましたが何にせよラフコフを討伐できたのは喜ばしいことです。この事に関してはみんなで健闘を称えあいましょう」
拍手が鳴り響く。
「弔いと祝福を兼ねて食事会でもしましょう。そこで死んでいった仲間のことを思う存分に語り合い全員で痛みを分かち合いましょう」
彼方此方から賛同の意見が上がり討伐隊は今から食事会を開くことになった。
血盟騎士団の本部から討伐隊が次々と出て行きレストランへ向かって行く。
キリトは食事会が決まった時点で抜け出していた。
カゲヤは本部から出ると討伐隊のメンバーとは逆の方向へ歩いて行く。
「あれ?カゲヤさん、食事会行かないんですか?」
メンバーの1人がカゲヤに気付き叫ぶ。
カゲヤは振り返りそのプレイヤーに言った。
「すまない。今日は寄らなければならない所があるんだ」
そのプレイヤーは残念そうな顔をして言った。
「そうですか……では、また何処かで会いましょう!」
「あぁ」
カゲヤは手を振ると目的地へ向かった。
カゲヤside
本部を出てから約10分かけて街の一角にある宿屋に来た。
宿屋というよりはホテルに近いが、そこは気にしないでおこう。
俺はホテルの中に入り左にある階段を上る。
2階に上がり奥へと進み、奥の部屋の前で止まる。
部屋があってるかどうか確認してからドアをノックする。
「ちょっと待って」
中から声が聞こえ、少し待つとドアが開いた。
中からアスナが出てきた。
「サキの様子はどうだ?」
「………」
アスナは何も言わず俯く。
表情や行動から察するに状態は変わらないのか……
「アスナは外で待っていてくれ。何かあったらすぐに呼ぶから」
「わかったわ」
俺はアスナをドアの横で待っていてもらい部屋の中へ入る。
短い廊下を進んだ先の部屋のベッドにサキはいた。
左奥の壁際にベッドがあり、目の前には机が壁際に寄せられて置いてあるシンプルな部屋だった。
サキは俺が来ても全く動かず、何も言わずただ一点を見つめる。
「現実から目を逸らしても何も変わらないぞ。あるのは停滞だけだ」
「……停滞で……構わない…」
「セレッソのことはどうするんだ?」
「…お姉ちゃんは………」
そこで言葉が止まった。
言えば現実を受け入れるのと同じだから。
だが、現実を受け入れなければ何も進まない
俺は少し息を吐いて言った。
「セレッソは死んだ。この事実は変わらない」
言った途端サキは一瞬ビクッと震え弱々しい声で言う。
「…やめて」
しかし俺はその言葉を無視して続ける。
「サキがどんなに現実を否定しようとこの事実だけは絶対に変わらない。何をしても、何を言っても変わらないんだ」
「やめて…」
「それに、現実と向き合わなければずっと引きずることになる。逆に忘れようと思うほど忘れられなくなる。だから…「止めてって言ってるでしょ!!」……」
とうとう耐えきれなくなったのかサキが叫んだ。
「なんで…なんでそこまでして現実を受け入れさせようとするの……」
「セレッソが生きていたという証をみんなに示すためだ」
「…え?」
サキは驚いてこっちを向く。
「今は殆どのプレイヤーがセレッソのことを覚えている。死んだという事実も含めてな。だからまだセレッソは完全には死んでいないんだ。でもいつかは全員忘れるだろう。人とはそういうものだ。時間がたてばいずれ忘れてしまう」
「みんな忘れたらどうなるの?」
こっちを見ながらサキは聞く。
「完全に死ぬんだ。同時にセレッソの存在していたという事実も消滅する。誰も覚えていなければそれはもういないのと同じなのだから。だから現実を受け入れなければならないんだ。セレッソが生きていたと、ここにいたという証をみんなに示すために」
「…でも……でも…」
「俺もいずれは忘れてしまうだろう。そして多分アスナやキリトも……このまま目を背け続ければセレッソの存在が完全に消滅する。それでもいいのか?」
「いいわけないじゃない!!私の……私の大切な人を……消すなんて……」
「じゃあなぜ……」
「何度も受け入れようとした、でもその度にあの光景が浮かび上がってきて思うの。次は私が殺されるんじゃないかって、裏切られるんじゃないかって。そう思うと怖くて……」
サキは顔を埋めながら言う。
その声は震えていた。
「なら、俺がサキを守ってやる」
「……守る?」
サキは顔を埋めながら震える声で聞く。
「あぁ、サキを傷つけようとする者から、悲しませようとする者から俺が守ってやる。この先ずっと、どんなことがあっても」
「本当に?」
サキは顔を上げ俺を見ながら問う。
その顔は今にも泣きそうで何かと葛藤しているように見えた。
俺はサキの目の前まで行くと片膝をつき、サキを見上げる。
「約束する。何があろうとも君を守ってみせる」
「信じて……いいの?」
「ああ。俺は絶対にサキを裏切らない。裏切られる痛みは嫌というほど知っている。だがら裏切らない、絶望させない」
「本当に……裏切らない?……信じても……信じても…大丈夫なの?」
サキの目から涙が零れる。
「勿論だ。もし俺が裏切るようなことがあるならそれは俺が死ぬ時だ。もう疑心暗鬼になる必要はない。俺が守るから。だから、もうそんな顔をしないでくれ。サキの悲しむ顔は見たくないんだ。そんな顔は……見たくないんだ」
「カゲヤ君……私…私信じる。信じてみる。だから泣かないで。私もカゲヤ君の泣く顔は見たくないの」
そこで初めて俺は自分が泣いていることに気付いた。
俺は涙を止めようとしたがその意思とは裏腹に涙は零れ続け、涙を止めることは出来なかった。
「すまない」
「ううん、こっちこそごめん。そしてありがとう……ありがとう……う、うう、うわあぁぁぁぁあん!」
サキはベットから飛び出して俺に飛びついてきた。
俺はサキを受け止めるとサキは俺の胸に顔を埋めて泣いた。
泣き叫んだ。
ずっとサキは泣き続けた。
俺はサキが泣き止むまでずっと体を支え優しく頭を撫でた。
どのくらい時間が経っただろう。
いつの間にか部屋は静かになりサキは泣き疲れて寝てしまった。
俺はサキをベッドに寝かせてからそっと部屋を出た。
「お疲れ様。サキちゃんはどう?」
ドアを開けるとアスナが労いの言葉をかけてきた。
「今は泣き疲れて寝ている」
「そう。じゃあ、ちゃんと良くなったのね」
「ああ。それじゃあアスナ後は頼んだ」
「わかったわ」
俺は部屋から出るとアスナが部屋へと入りドアを閉めた。
そして俺はホテルを出て宿屋に帰った。
次の日、何故かサキにとっても怒られた。
俺はベッドの前で正座させられずっと怒られた。
アスナはその様子をやれやれといった感じで見ていたが何故かアスナも途中から正座させられ一緒に怒られた。
本人曰く、一緒にいて欲しかったらしい。そして帰るのを止めなかったアスナも悪い、とのことらしい。
どうにか機嫌をなおすことは出来たがその日は1回も口をきいてくれなかった。
次の日からはちゃんと口をきいてくれるようになりいろんな話をした。
いろんな話といっても主にセレッソの話だが。
最初の頃はセレッソの話をすると必ずサキは泣いた。
泣く時いつも飛びついてきたが俺は何も言わず泣き疲れて眠るまでずっと体を支えた。
俺は毎日サキに会いにいった。
アスナは攻略やギルドのことがあるから毎日は来れなかったがそれでも頻繁にサキを見に来ていた。
キリトも何度か来たが最初の内は断られて少ししょんぼりしていた。
しかし時間が経つにつれ徐々に回復していき、キリトとも話せるようになったし今となっては外に出れるようにまで回復した。
それでもまだ完全には治っていないから固まることがある。
「それでも順調に回復しているからいいか。それに何かあってもアスナやキリトもいるからな大丈夫か。……さて、鍛冶屋を探しに行くか」
俺はサキのホームを後にし街へ鍛冶屋を探しに向かった。
後書き
今回のカゲヤ君は特にかっこよかったですね〜
「俺が守ってやる」なんてそうそう言える言葉じゃないですからね
そんなカゲヤ君の活躍に今後ご期待下さい!
それでは次回もよろしくね。
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