ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
SAO:アインクラッド
第16話 激怒
一時の静寂。
だが、それはすぐに破られた。
「…く……くく…あはははははは!!見たかよあの顔!傑作だったよ!」
「さっすがヴァンさん!最高だぜ!」
「エヴァンスはいつもいい物を見せてくれるよ!」
「もっと大勢を絶望に落とそうぜ!」
先にエヴァンスが静寂を破り、それに続いてラフコフのメンバーが歓喜の叫びを上げる。
だが、サキはセレッソのいた場所を見つめていた。
怒り叫ぶのではなく、悲しみ泣くのでもなく、ただひたすらセレッソのいた場所を見つめる。
まるで現実を否定するかのように。
現実を受け入れたくないかのようにただひたすら見つめる。
動くこともなく、声を上げることもなく、涙を流すこともなく、ただひたすら見つめる。
だが、その目は光が消えていた。
そんなサキを気にする様子もなくエヴァンス達は歓喜の声を上げ続ける。
それとは逆にカゲヤも黙っていた。
それに気付いたエヴァンスがカゲヤに話しかける。
「あれれー?どうしたんですかー?カゲヤ君。黙り込んじゃって」
不思議そうにエヴァンスは言う。
カゲヤは何も答えず黙る。
「おかしいなー。取り乱して叫んだりすると思ったのになー。…あ、そうだ!サキちゃんも殺せばいいのか♪」
そう言うとエヴァンスはサキの所へ行く。
サキはエヴァンスが近づいて来ても逃げようとせず動かない。
エヴァンスはそんなサキを気にせずサキの髪を引っ張り持ち上げ、目を覗き込むように見つめる。
「あ〜あ、完全に目から光が失われちゃってるよ。もう完全に闇だな」
エヴァンスはつまらなさそうに言う。
「何かまずいことでもあるんですかー?」
ラフコフの1人がエヴァンスに聞く。
「こうなったら面白くないんだよー。魂が抜けた抜け殻にみたいになって、何も感じなくなるから」
エヴァンスはため息を吐くと剣を振り上げる。
「つまらない物に興味はないから。消え…!?」
エヴァンスが剣を振り下ろそうとした瞬間、空気が振動した。
殺気によって空気が振動する。
本来SAOなどの仮想空間に殺気といったものはない。
なぜならデータの中だから。
だが、キリトなど超直感などを持っている者は殺気などを感じ取ることが出来るが持っていないプレイヤーは殺気などはわからない。
わからない筈なのにその場にいる全員が殺気を感じ取った。
感じ取らざるを得なかった。
それ程までに巨大な殺気なのだ。
空気が震えるほどの殺気の中で声を出したり動ける者はいなかった。
殺気を出している人物を除いては。
「その手を離せ」
「え?」
殺気を出している人物、カゲヤは静かに言うがいきなりの事に反応出来ずエヴァンスは聞き返す。
「聞こえなかったのか?その手を離せと、言ったんだ」
再度カゲヤから殺気が放たれる。
その殺気に気圧されエヴァンスは反射的にサキを離した。
空気の振動は止み、拡散していた殺気は無くなった。
だが、それでもラフコフ達は動けなかった。
カゲヤの纏う殺気に全員が気圧されていた。
カゲヤの周りに漂う濃厚な殺気に。
「貴様らみたいなクズに生きる資格はない」
次の瞬間にはカゲヤの姿が消えラフコフ達の後ろに現れる。
その直後、パリイィィイン、という音と共にラフコフの1人がポリゴンの欠片となって散っていった。
「死の恐怖に怯えるながら消えろ」
そしてまたカゲヤの姿が消える。
悲鳴と共に次々とポリゴンの破裂音が広場に響き渡る。
1人、2人とエヴァンスの周りにいたラフコフ達が消えていく。
エヴァンスは訳が分からず周りを見渡しながらオロオロとすることしか出来なかった。
そして数秒後には周りのラフコフ達は消えエヴァンス1人が残った。
中央に残ったエヴァンスにカゲヤはゆっくりと近付いて行く。
「ちょっと、待ちなよカゲヤ君。落ち着きなって」
エヴァンスは後退しながら説得するように言う。
しかしカゲヤはスピードを緩めることなく徐々に近づく。
「話せばわかるって。脅されてたんだよ。しょうがないだろ?」
エヴァンスは有りもしないこと次々と言うがカゲヤは耳を貸さずエヴァンスを追う。
とうとう壁まで追い詰められるとエヴァンスは必死に許しを請うように叫んだ。
「私が悪かった!許してくれ!まだ死にたくないんだ!なぁ頼むよ!カゲヤ君!」
「絶望を味わいながら死ね」
風を斬る音と共にエヴァンスがポリゴンの欠片となって爆散した。
「そうすることで、少しはサキの痛みがわかる筈だ」
カゲヤは呟きながら踵を返し通路の方へ向かう。
通路の方から2つの足音が近づいてきているのにカゲヤは気付いていた。
「大丈夫か?カゲヤ」
通路から来たのはキリトとアスナだった。
キリトはカゲヤのいる広場に向かっている途中に幾つものポリゴンの破裂音を聞いて心配になったのだ。
アスナはカゲヤの近くにいたサキに気付き駆け寄って肩を貸す。
だが、カゲヤが答える前に背後の壁から声が響いた。
「wow……予想以上に速いんだな、《神速の剣士》は」
その声と共に壁から2つの影が出てきた。
「PoHか」
カゲヤは振り返りながら言う。
「だけじゃ、ないぞ」
PoHの横にいる赤目のザザが付け加える。
「ラフコフの幹……!?」
不意にキリトの声が止まり倒れ、カゲヤ以外の3人が倒れた。
直後別の方向から声が聞こえた。
「スリー、ダウーン!」
その場に似合わない明るい声が響く。
「ちょろいなー、黒の剣……え?」
だが、ジョニー・ブラックは最後まで言い終わることは出来なかった。
その前にカゲヤが一瞬でジョニーに近づき蹴り飛ばしたからだ。
ジョニーは壁まで飛ばされ壁に強打し崩れ落ちるように倒れる。
カゲヤの中で押さえ込まれていた殺気がまた溢れ出してくる。
「消え失せろ……」
カゲヤはジョニーの目の前まで行くと剣を後ろに引き絞り高速の突きを放った。
しかし、カゲヤの剣がジョニーを貫くことはなかった。
剣がジョニーを貫く前にPoHがカゲヤとジョニーの間に入り込み包丁のような剣でカゲヤの突きを止めたのだ。
カゲヤの後方では麻痺から回復したキリトがザザと対峙していた。
「Hey、少し落ち着いたらどうだ?boy」
剣を受け止めながらPoHはカゲヤに言う。
「しゃべんな。耳障りだ」
カゲヤは剣を引くとすぐにPoHに剣撃のラッシュを放ち横に斬り飛ばす。
だがPoHは空中で体勢を立て直し綺麗に着地する。
「ha、こんなもんかよ神速の剣士の実力は。大したことねぇな」
PoHはカゲヤを煽るように言う。
「こんなもんならさっきのgirlみたいにサクサクっと殺れるなぁ」
PoHは笑いながら言う。
馬鹿にするように嗤う。
しかし、今のカゲヤには挑発を受け流すほどの余裕や冷静さはなく逆に抑えていた怒りが爆発した。
「消え失せろおぉ!!ゴミクズがぁぁあ!!」
カゲヤは叫びながらもの凄い勢いでPoHに近づき剣撃を繰り出す。
しかしPoHは少し後退しながらカゲヤの剣を弾いたり、受け流したりと躱していく。
本来なら神速スキルの2倍速を使えばすぐに終わるが今のカゲヤには冷静さ皆無で神速スキルのことすら忘れていた。
それでもカゲヤのスピードは速くPoHのHPを徐々に減らしていく。
「こんなもんか……な!?」
PoHが言いかけた途端、目の前からカゲヤの姿が消えPoHの背後に現れる。
PoHの体には無数の傷が刻まれ、HPが3割減りPoHのHPが残り半分になった。
「What!?どういうことだ…」
PoHが動くよりも速くカゲヤが動き、回し蹴りでPoHの背中を足の裏で思い切り蹴り飛ばす。
PoHはほんの少し山なりに真っ直ぐ飛んでいく。
カゲヤはPoHが地面に落ちる前に正面に回り込み、体術スキル《弦月》でPoHの顔面を蹴り上げ空中で停止させる。
そして剣を引き左下から右上に振り上げ、剣の柄の先で腹を殴り上へ飛ばす。
その直後にカゲヤは全力でダッシュし壁を駆け上る。
PoHが落下しようとする直前にカゲヤは壁を蹴りPoHの方へ跳ぶ。
PoHに接近するとカゲヤは右下からの切り上げ、左からの水平斬り、そして右上からの斬り下ろしと次々とPoHを斬りつけていく。
そして最後にカゲヤは回転斬りをし、3回転目でPoHを斬り落とし地面に叩きつけた。
「shit!……なんて速さだ。お前とは2度とやりたくねぇな」
そう言うとPoH転移結晶を取り出し、カゲヤが動くのよりも早く転移しその場から離脱した。
「クソがっ!」
カゲヤは急いで止めようとしたが間に合わず、PoHのいた場所を睨みながら毒づく。
その後、カゲヤは周りを見ると丁度ザザが転移結晶でこの広場から離脱するところだった。
そしていつの間にかジョニーもいなくなっていた。
「大丈夫か?カゲヤ」
キリトの言葉にカゲヤはやっと我に帰り冷静さを取り戻した。
「あぁ、問題ない。それよりも広場の方が心配だ。急いで戻ろう」
「わかった」
キリトはアスナ達に声をかけ、カゲヤと一緒に広場へ戻って行った。
後書き
作者「怒った時のカゲヤ君は口が悪いね〜」
カゲヤ「……」
作者「まだ怒ってるのー?」
カゲヤ「……」
作者「ノーコメントですか。…まぁいいか。それでは次回もよろしくね」
ページ上へ戻る