蒼き夢の果てに
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第6章 流されて異界
第125話 名門の名門足る所以
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第125話を更新します。
次回更新は、
10月7日。『蒼き夢の果てに』第126話。
タイトルは、『犬神』です。
十二月十八日。
長い弓月桜の話が終わり、文芸部兼涼宮ハルヒが率いる意味不明の団体の部室内に一瞬の静寂が訪れる。
……俺の意志は決まっている。SOS団としてこの申し出を受けるのは当然不可。不確定要素が大き過ぎて、彼女の話した内容を完全な与太話。――それは彼女の親戚の思い込みだ、これ以上気にしなくても大丈夫だよ、と安心させてやる事が出来る内容ではない。
故に――
「もし俺たちが、この申し出を断ったとしたら、弓月さんはどうする心算なんですか?」
ちょっと、あんた、何を勝手に答えているのよ! ……などと騒ぎながら、自ら専用のキャスター付き事務椅子を滑らせ俺たちの傍まで寄って来た団長様の事は無視。
コイツの答えなど聞かなくても分かっている。分からないのは弓月さんの覚悟。
俺の問いを聞き、彼女の雰囲気や普段の仕草に相応しい、控え目な花が咲いたような笑みを魅せる。優しい……けど、少し哀しげな笑みを。
そして、
「その時は私。弓月家次期当主の私一人で高坂の地に向かう事と成ります」
それが祖狐葛葉より始まりし弓月の家に生まれた者の務めですから。
覚悟を決めた者の言葉を続ける弓月さん。その時に彼女が発した雰囲気は普段の彼女が発して居る弱気な物などではなく、強い気。タバサや有希が発して居る気配に似た物であった。
そうして……。
小さく首肯く俺。この表情と答えを聞かされて、断ると言う選択肢が少なくとも俺の中では消えた事は間違いない。
ただ、……成るほどね。弓月桜の口にした内容、祖弧葛葉と言う名前が本当ならば、彼女の家もかなりの大物をその祖とする一族と言う事となる。
相馬さつきが平将門なら、弓月桜は安倍晴明と言う事か。
まぁ、この両家からすると、大抵の家は新興の家と言う事と成りますか。
そして十二月二十日。
路肩には昨日降った雪と泥が混じり合った茶色の塊が未だ存在していた。こんな些細なトコロからも、ここが俺の生まれ育った南国と呼ばれる四国地方や、有希が暮らしていた西宮と違う東北地方だと言う事が感じられる。
ただ……何と言うか、街全体の雰囲気がよそよそしく、まるでこの高坂と言う街自体が俺の事を拒んでいるかのような、そんな気さえして来る。そのような街でもあった。
もっとも、ここは東北と言っても太平洋岸に存在する地方。故に降雪量自体が多くなく、西日本在住の人間が考える真冬の東北地方と言う方向から考えると、かなり寂しい景色だと言わざるを得ないのですが。
確かに刈り入れの終わった田んぼや畑にはうっすらと積もった雪が多少、北国らしさを演出しているように感じますが、この程度の降雪ならば西日本でも見られないモノではない。俺が見たかったのは、こう道の両側に迫るように積もった雪と――
旅館……と言っても、現在では営業していない弓月さんの親戚が営んでいる旅館から出して貰った送迎用のマイクロバス。その車窓から流れて行く景色を見つめながら、ぼんやりとそう考える俺。
尚、弓月桜からの申し出を受ける事と成った最大の理由は、当然のように水晶宮が彼女の申し出の中に危険な兆候を発見したから。まぁ、水晶宮からの許しが得られなくとも、この申し出に関しては友誼の元に受けても構わないとは思って居たのですが。
平日だからと言う事なのか、それとも冬の日だと言う理由か。街は人影もまばらで妙に閑散とした印象。もしかすると、地方都市の例に漏れず、この街も過疎化が進みつつある街なのかも知れない。
短い冬の落日の方向へと進む事三十分ほど。住宅地から離れるに従って当然の如く人家の数が減って行き、その代わりに増えて行く広葉樹。
「やれやれ、人里離れた温泉旅館に、地元に伝わる忌まわしい伝説。そして、続く事故とも事件とも判断が付かない人死に――」
ここまで状況が整って居ると、どう考えても事件が発生しなければ締まらないな。
ため息を小さくひとつ。この世界に流れ着いてから一カ月程度。前回の球技大会から続いて二度目の危険な事件の発生。これでは、ハルケギニアに居た時と状況は変わらない。
球技大会に関しては、表向きは這い寄る混沌や名付けざられし者の気まぐれによって発生した事件として処理されたし、この温泉街に起きつつある事件がもし霊的なであったとしても、先の球技大会の事件との繋がりを考える人間はいないでしょう。
しかし……。
俺は少し首を回らし、右斜め後方で不機嫌そのものの表情で外を見つめる少女に視線を向ける。
球技大会の内容。例えば、野球やバレーなどが競技に選ばれたのは毎年恒例の物。ここに魔法が介在した雰囲気はない。しかし、そのメンバーを集めたのはハルヒ。数合わせの男子生徒二人と俺以外はすべて彼女が作った怪しげな同好会のメンバー。
いや、そう言えばあの球技大会の最中に、名付けざられし者が妙な事を言って居たような気もしますが……。
曰く、お前が呼び出したあいつは化け物だぜ。
俺を呼び出したのは有希のはず。但し、それは今の俺。その今の俺を有希が最果ての絶対領域から召喚出来た理由は、今年――二〇〇二年二月十四日に始まる羅睺星事件の際に、俺……異世界同位体の俺と有希が絆を結んだから。
ならば、その時。事件が発生する直前に俺が次元を移動した理由は?
そして今度の事件の始まりは、ハルヒが、温泉旅行がどうのこうの、などと言い出した直後から始まった。
もし、球技大会のあの決勝戦の熱戦が、このまま楽勝で優勝するのは面白くない、と彼女が考え、その考えを這い寄る混沌たちが叶えたとしたのなら?
もし、今回の温泉旅行も、同じような普通の観光旅行とは違う旅行を味わってみたいと考えた結果、過去を改変して事件が起きつつある状況を何者かが作り出したとしたのなら?
確かにこれは考え過ぎの可能性はある。しかし、球技大会の時に俺が打たれたたった一本のヒットは、本来は三振で終わるはずの歴史をあっさりと改竄して満塁ホームランとした物。こんなに簡単に歴史を改竄出来る連中が関わっているだけに……。
平たく切り取られた窓の外は夜……何時の間にか赤が支配する時間は過ぎ去り、氷空は完全に合一した蒼と紅の女神が支配する時間と成って居た。
成るほど、ハルケギニア風に言えば、今宵はスヴェルの夜と言う訳か。
憂いの有る瞳……と言うには少し強すぎる視線で頬杖を付いた状態で外を眺めていたハルヒ。最近は愛嬌よりも気の強さのみが先に目に付くようになって来てはいるが、それでもまぁ、かなりレベルの高い美少女には違いないだろう。
そう考えた、俺の視線に気が付いたのか――
「何、何か用なの?」
表情に反してさして不機嫌そうな雰囲気でもなく、そう聞き返して来るハルヒ。こいつ、不機嫌だった理由は暇だったからなのか、と考えさせられるに相応しい対応。
う~む、これから先の旅行が危険なモノに成る可能性がある、などと言う真っ当な考えの元、憂いに沈んでいるなどと考えた俺がバカだったと言う訳なのか。
「いや、これで怪しげな逗留客とか、曰く有り気な祠とかが出て来たら、本当に魔的な事件だと言う事になるのかな、……なんて考えていただけ、なんやけどな」
その怪しげな逗留客以外の何者にも見えない自分たちの事を棚に上げて、そう答える俺。
実際、ここまでやって来た物の事件が起きる確率は未だ五分五分。当然、危険な事件が起きないに越した事はないのだが、それでもこれまでの経験則……ハルケギニアに召喚されて以降の事態の推移から考えると、どう考えても無事に終わるとは思えない。
少し不謹慎な考え。どうにもハルケギニア世界に召喚されてから事件に巻き込まれ続けて居て、思考自体が危険な方向に進むクセが付いて居るのかも知れない。それでも常に最悪の想定をして置けば、咄嗟の際にも慌てずに行動出来る……ようになるはず。
自己正当化の権化のような考え。ただ、表面的にはオプチミストの振りをしているが、実はペシミストで常に最悪の事態を想定せずには居られない、これが俺の本質。
「本当にそんな不思議な事件が進行中なら楽しみなんだけどね」
予想通り……と言うか、こりゃダメだ、と言うか。俺的には何ともトホホな台詞を口にするハルヒ。まぁ、彼女に取っては不思議な事件で終わる話なのでしょうが、もし本当に事件が起きつつあるのなら、その事件を解決する探偵役は俺、と言う事に成るので……。
それも安楽椅子系の探偵などではなく、タフでハードボイルドなタイプの探偵役。
ある程度の頭と、それ以上に必要な頑丈な身体が要求される役回りって、一度ぐらいなら良いけど、毎度毎度そのような役ばかりだと心の方が折れて仕舞いますよ、本当に。
幸せの妖精さんが俺の周りから逃げ出し続けるのは、厄介なタイプの事件が起こり続けるからなのでしょう。
肩をすくめ、ため息を吐くしかない状況にバスの天井を見上げた俺。その瞬間に、地方都市にありがちな妙に整備された道路を進み続けたバスがゆっくりと止まった。
民家が見えなくなってから約五分。それほど人里から離れたと言う感覚はないが、それでも浴衣を引っかけて街をぶらつく、……と言う訳には行かない距離にある旅館と言う事か。
……等とぼんやり考えて居ると、ゆっくりと開かれるバスのドア。このプシューと言う音の後にバスのドアが開いた時が、バスによる旅の終わりを感じる瞬間と言っても良いと思う。
「一日掛かりの移動、御苦労さまでした」
一行の中で最初に立ち上がった弓月さんが、振り返ってそう言った。
確かに朝の六時に西宮の駅に集まってから列車を乗り継ぎ、最後はマイクロバスに揺られること約一時間。移動用の術式を組む方が俺に取っては楽なので……。
「実際、お疲れさまやな」
少し高い目の昇降口から大地に降り立ち、軽く伸び。固まって居た関節部分が若者にはあり得ない音を発した。そしてその瞬間、暖かかった車内から、北国独特の冷えた大気を身体に循環させる事により気合いを入れ直す。
ここから先は戦場の可能性がある。確かに東北最大の駅仙台に辿り着いた瞬間から、それまで感じていた気配とは違う気配を感じた。そして、それはこの高坂の地に近付くに従って大きく成って行ったのも事実。
この地は元々蝦夷の地。多賀城などはその最前線。現在進行形でまつろわぬ者扱いの龍種たる俺には何か感じるものが有るのかも知れない。
「お待ちして居りました、皆さま」
氷空には満天の星と、完全に合一した二人の月の女神。背後に黒々と繁る広葉樹林。
夜の帳が降りて間がない時間帯とは言え、周囲に人工の明かりが存在して居ない故に、はっきりとした事は言えない。が、しかし、其処に立って居たのは純日本風の二階建てと思しき建物。かなり幅が広いように感じる。
その玄関先に立つ数人の女性。玄関からの明かりと氷空に輝く月の明かりだけの世界では圧倒的に光量が不足し過ぎて居て、その女性たちの容姿に関しても定かではないが……。
おそらく、真ん中の和服の女性。背は高くないが、低く落ち着いた声音。着物の種類は分かりませんが、一人だけ色の違う……周りの女性は藍色。この人たちはおそらく仲居さん。そして、真ん中に居る黄色の系統の着物を着こなした老女が――
「初めまして。私がこの宿の大女将高坂静と申します」
☆★☆★☆
昨夜の雪が嘘のように晴れ渡った氷空。完全に合一したふたりの女神が放つ蒼き光輝が支配する世界。
そう。すべての葉を落とし次なる季節の為へと準備を進める広葉樹の林には、今宵の宿と成った純日本風家屋から漏れ出る光すら届かず――
その世界の中心に……。
高く、低く。
清らに流れる水の如く……。
早く、鈍く。
柔らかくそよぐ風のように……。
時に軽く、時に重く。
己がすべてを音に乗せ、まるで語りかけるように奏でられる旋律。
時に瞑想的に、そしてまた、叙情的に。
たゆたうように流れ行く穏やかな音色。
俺の能力を余さず籠められて発せられる音の羅列。それは一音が儚く消えると同時に次の音へと繋がり、途切れる事なく続いて行く。
ゆっくり、ゆっくりと――
そして、それはやがて大きな螺旋を描き……。
しかし――
「あんた、楽器も出来たんだ」
俺の演奏――術式が終わるのを待って居た少女が声を掛けて来た。しかし、それは普段の傍若無人な彼女にしてはかなり控えめな言動。但し、手にした懐中電灯の光で直接俺の事を照らし出しているので……。
コイツ、月の光だけに慣れた瞳に、旅館備え付けの懐中電灯の明かりがどれだけ眩しいか考えた事はないのか?
尚、一応、ハルヒの瞳にも俺の周りに集まっている精霊の姿は淡い燐光の如き物……世間一般に言われているオーブ現象に似た状態に見えているはず。
その事について問わない、……と言う事は、別の用件があるのでしょう。
「怪奇、人気のない夜の森に響く笛の音。その音源を辿ると其処には! ……って言う噂話の元を作る事には成功したかな」
結局、目的を果たす事は出来ず、単にふたりの少女の前で笛の腕前を披露しただけ。これでは皮肉のひとつも出て来ると言う物。
しかし――
「あの、武神さん」
しかし、この場に居るもう一人の少女にはこのしょうもない皮肉は通じなかったらしい。かなり不安げに話し掛けて来る弓月さん。もしかすると、ここに居る彼女の存在自体が俺の術を失敗させた理由だと思っているのかも知れませんが……。
これでも土地神を召喚する術に関しては完全に自分の物にしている。それでも尚、今回術を行使して土地神を召喚出来なかったと言う事は――
「あぁ、問題ないで。弓月さんが一緒に居る程度で集中が途切れる事はない。今回の術は失敗した訳ではなく――」
旅館、更に言うと綺麗に舗装された道路からも離れた巨木の元。ここで土地神……弓月さんの親戚の御先祖様の霊や、最悪、自然の精。山の神のような存在さえ呼び出せないと言う事は――
何故かこの旅館に辿り着いて以来、巫女服を纏った弓月さんから、未だ俺を懐中電灯の光で照らし続けているハルヒに視線を移す俺。
「何よ。あたしが邪魔したから失敗した、とでも言うの?」
少し問題の有った食事の後、自らの泊まる宿を護る結界などを施していた俺たちと違い、一般人のハルヒは温泉で旅の疲れを癒して居たのは間違いない雰囲気。
俺も早く準備を終わらせてから、少しの休息を取りたいのですが……。
「ハルヒが接近して来ていたのは、大分前から気付いているわ」
その程度の事で俺の集中が途切れる訳がないでしょうが。お前さんは、俺の感覚からすると眩し過ぎる存在やから。
最後の方は冗談のような物言いになって仕舞ったが、そう事実を口にする俺。まして、傍に黒髪清楚な巫女さんが居ても平気でしたし、普段も俺的にはかなりの美少女だと思って居る有希や万結が居ても問題なく術を行使出来るのです。背後から急に抱き着かれる、などと言う意表を突く行動に出られない限りは問題なし。
もっとも、そんな事をし兼ねない女性は俺の周囲には居ないのですが。
何にしても、弓月さんには俺が行使した術の説明はしてある。そして、術に失敗した訳ではないのに、この場に土地神や山の神などの高位の精霊が現われる事がなかった理由については想像が付くでしょう。
後は……。
「それでハルヒ。オマエさん、一体、何の用が有ってこんな場所までやって来たんや?」
ここは土地神などの加護を失った地。ただ、今この場には俺や弓月さんが居るので簡単に悪霊の類が接近して来る事はないでしょうが、それでも危険な場所である事に違いはない。いくら俺が渡した護符があると言っても、過信する訳にも行きませんから。
どうやって俺が居る場所を特定したのか不思議なのですが、それでもこの場にやって来た理由を思い出したハルヒ。それまで俺の顔に向けて居た懐中電灯を足元へと向けた後、
「この旅館に着いてからの全てについて説明して欲しいんだけど」
例えば、なんであんたの隣に巫女服姿の桜が居るのか、とかね。
……と問い掛けて来た。
そう、あのバスを降りた俺たちの機先を制するような形で自己紹介をして来た老女。この温泉旅館の大女将高坂静。
そして、俺たち……正確にはハルヒが代表して挨拶を行う間中ずっと俺を見つめた後、
何故か小さく首肯いた。
……いや、首肯いた理由も大体想像は付く心算。更に言うと、大女将の視線に僅かばかりの呪力が籠められている事にも気付いて居ました。
そして、そのまま俺たちは部屋……食事の用意がされていた宴会用の大広間へと通される事となった。
弓月さんを除いて。
まぁ、正直に言うとこの段階で、何らかの事件が起きつつある可能性は否定出来ないけど、おそらくそれほど深刻な状況ではない、もしくは弓月家、それに高坂家ともに大きな危機感は持って居ないのではないか、と考えたのですが……。
但し、こうやって土地神の召喚に失敗した以上、高坂家に関わる事件かどうかは定かではないが、それでも何らかの土地神を封印出来る存在が絡んでいる事件が進行中なのは間違いなさそうな雰囲気。
それで、次に弓月さんが登場した時には、現在の衣装。巫女さんのコスプレ……と言うには妙に似合い過ぎている姿形で登場した、と言う事なのですが……。
一応、俺に問われた問い、なのですが、この場には俺よりも答えるのに相応しい弓月さんが居る。そう考え、一度、彼女に視線を送る俺。それに俺の持って居る答えが正解とは限らない。もしかすると、その俺が持って居る一般的な答え以外に、何か裏の意味が存在するかも知れませんから。
もっとも、そんな裏の事情などを簡単に明かしてくれるとも思えないのですが。
しかし、俺の視線に対して僅かに首を横に振る弓月さん。これは否定。彼女の口から真実を語る事は許されていないのか……。
ただ、大女将が首肯いた時から彼女が浮かべている、少し困ったような笑みが、彼女が追い詰められている状況を現しているような気もするのですが。
もしかすると今、俺が、自分自身の置かれている立場を理解しているのか、……と言う事を試されている可能性も否定出来ないのですが、ただ、ここで真面目に答えて置かないと、その後にハルヒに対して、夜の間は部屋に籠ってじっとして居ろ、と言う命令を真面に聞いて貰えない可能性があるので……。
自分の立場とハルヒの身の安全。こんな分かり切った二択を一瞬の内に判断する。
そして、
「昼の間に話をした、古来より魔法に関わって来た名門の話は覚えて居るか?」
……と逆に問い掛ける俺。
「日本の術者が一部の名門によって支配されている、と言う程度の事ならね」
訝しげな表情。おそらく、其処に何の関係があるのか分からないながらも、一応、問われた事に関して素直に答えを返してくれるハルヒ。
「ならもうひとつ。何故、名門に術者の才能を持った子供たちが産まれ続けるんや?」
百人に一人程度の才能なら何とかなるかも知れない。しかし名門の一族が求めているのは千人、万人に一人の才能。これを千年単位で排出し続けて来たのが今の日本の魔的な側面を支配している連中と言う事。
「それは遺伝的な物か、血統による物なんじゃないの?」
至極真っ当な答えを返して来るハルヒ。まぁ、俺もこの答えを予想して質問したので、問題はない。……と言うか、
「その程度の理由なら、俺たちのような一般人の家系から能力者が誕生する確率と大きく変わる事はないな」
そもそも血統などに左右されるのなら、大抵の人間には能力の発現する可能性は存在する。一親等遡れば自分の血縁者は二人に増える。二親等なら親にその親の両親。三親等なら祖父母の両親に両親の兄弟姉妹。兄弟姉妹の数にも因るが、最低でもその人数は倍々ゲームで増えて行く。
前にも言ったが、日本人ならば十代も遡れば有名な人物に突き当たる可能性がある。それは当然、今現在、日本の魔的な側面を担う家のひとつぐらいには突き当たる可能性もあると言う事。
「それなら、初めから能力を持って居る人間を養子として迎え入れる。これなら確実よね」
簡単に次の答えを導き出すハルヒ。その答えに因り、彼女が基本的に善良で、更に頭が良い人間である事が分かる。
その答えを聞いた俺が口の端にのみ浮かべるタイプの笑みを弓月さんに見せた。
そして、
「弓月さんの両親は霊的な能力には恵まれなかった。確か、そう言う話やったな」
水晶宮の報告に有った内容を確認する俺。当然、弓月さんは静かに首肯いて答えてくれる。
「つまり、何。あんたが弓月の家へ養子に迎え入れられる人間かどうかの見極めの為にこんな所にまで呼び出された、と言う訳なの?」
本当に呆れた。そう言った後にハルヒが続けた。
確かに俺も最初はそう思った。故に、旅館に辿り着いて大女将に会った瞬間に回れ右して西宮に帰ろうかと思ったのも事実。
「それで?」
かなり不機嫌な様子で問い掛けて来るハルヒ。まぁ普段なら、主語がない問い掛けなど分かるかボケ、と素直に答えてハルヒを怒らせるのだが……。
今回に関してはそんな必要もないか。
「明日の事さえ分からないのに、将来の事など分かる訳がないやろう?」
そもそも俺は異世界人。この世界に何時まで居られるか分からないのに、弓月の養子として入る事が出来る訳はない。
もっとも、出自のはっきりしない術者と言うのは珍しいから、弓月さんの家が目を付けるのは不思議な事ではない、とは思いますが。
術者と言うのはかなり特殊な例を除いて、その術を教えた師匠と言う存在がいるはず。そして大抵の場合、その師匠と言うのは血縁者である可能性の方が高いですから。
まして……。
それまでハルヒに向けて居た意識を弓月さんへと移す俺。
まして、弓月さんが言った彼女が弓月家次期当主と言う言葉。そして、その家の始まりが本当に祖狐葛葉から始まっているのなら、彼女の家は女系。おそらく、父親の方はずっと養子を取って来た可能性が高い。
其処に出自がはっきりしない……と言っても、俺の周囲に居る人間から推測すると水晶宮の関係者だと言う事は分かるので、闇に魅入られた術者の可能性は低い人間が現われた。
ならばダメ元で動いたとしても不思議ではないでしょう。
水晶宮と天の中津宮との関係は御世辞にも良いとは言い難い関係なのですが、それは地祇系の家に繋がる家とはあまり関係のない話ですから。
「それで――」
月下に立ち、ただ静かに俺を見つめる巫女服姿の少女を瞳に映しながらも、非常に現実的な思考に支配され続ける俺。その俺に対して、何かを問い掛けて来るハルヒ。
イカン、これではまるで弓月さんの容姿に瞳を奪われていたように思われても仕方がないか。
「何がそれで、なのかなハルヒ?」
少し心ここに非ず、と言う雰囲気を気付かれたくない為に、出来るだけ普段と同じ調子で答えようとして……返って妙にワザとらしい雰囲気を発して仕舞う俺。
その俺の様子に気付いたのでしょう。ふふん、と鼻を鳴らした後に、
「さっき、魔術的な名家に能力者の子供が誕生し易い理由をあたしが答えた時に、あんた、あからさまにほっとしたでしょう?」
あんた、隠し事をするには向いていないわよ。
こう言う雰囲気を鼻高々と言うのでしょう。そう言う得意満面な表情で種明かしを行うハルヒ。但し、こいつ、俺が悪意を持って隠し事をした、と思って居るのでしょうが……。
さて、どうやって誤魔化してやろうか。そう考えを始める俺。
しかし――
「教えて上げた方が良いですよ、武神さん」
涼宮さんは自分の意志で知りたいと思って居るのです。私の事なら気にしなくても良いですよ。
悪意――は感じない。どちらかと言うと、やや自嘲にも似た言葉の響きを持ってそう続ける弓月さん。
月明かりに照らされた弓月さんと、そして、未だつけっぱなしの懐中電灯の明かりを発し続けるハルヒ。陰と陽。ふたつの美貌を僅かな時間差を持って瞳に映す俺。
「――あまり聞いて楽しい話ではないぞ?」
俺の洞の戒律に触れる可能性はある。これは本来、一般人が触れるべき情報ではない。確かに俺が仙術を学んだ洞統は智を貴ぶ洞統。しかし、その教えでは、一般人に対して見せるべきでない情報や知識を教える事は戒められている。
ただ、ハルヒの場合は……。
「そりゃ、あんたがどうしても話したくない、と言うのなら無理に聞き出そうとは思わないわよ」
俺の逡巡をどう言う意味に取ったのかは分からない。ただ、知的好奇心を満たすため、だけではない雰囲気でそう言葉を続けるハルヒ。
その時、冬の夜に相応しい風がすっかり葉を落として仕舞った広葉樹の枝を揺らした。
これが……問い掛けて来た相手が有希ならば何の逡巡もなく答えて居た。しかし、ハルヒの場合は……。
コイツは自分と言う存在の危うさに未だ気付いていない。いや、自らが今年の七月七日の夜まで世界に取ってどう言う存在だったのか覚えてさえもいないでしょう。
ただ、まったく知らないよりは、少しでも知って置いた方が……。
「異種婚――と言う方法がある」
例えば西洋の伝承にあるメリジェーヌ伝説。東洋でならば鬼の血を引くと言われている坂上田村麻呂や、葛葉を母に持つと言われている安倍晴明など。
意を決し、最初に無難な方法を口にする俺。そして、これは俺の家系や弓月さんの家系に直接関わりのある方法。
俺の家には龍の血が混じって居た事は確実。そして、弓月さんの家は安倍晴明と同じ神狐葛葉の血が入って居るらしい。
「これは相手が知性の高い種族。例えば人化の術を行使出来る、人間よりも霊格の高い存在。龍族や神狐、それに鬼神などに分類される連中ならば問題は少ない」
こう言う交渉が可能で知性の高い連中ならば、だ。こう言う連中ならば術や契約で縛り、無理矢理に行為に及ぶ、などと言う事も難しいので、後に禍根を残すような事もあまりない。
例えば、前出のメリジェーヌや海幸山幸の中に出て来る豊玉毘売命などが有名なトコロか。
「但し、そんな連中がそう易々と人間と行為に及んで子供を為す事はない」
それは余程、その人間の側に魅力がない限りは。
こう言う連中と人間の間に子供が出来るのは、はっきり言うと人間同士の自由恋愛の果てに誕生する時とそう変わりはない。
しかし、それでは魔術的な名門の意図するトコロから考えると手間も掛かるし、例え子供を為したとしても、確実に術者としての素質の高い子供を得られる訳ではないので――
「この異種婚と言う方法で一番行われた可能性が高いのは、程度の低い邪神や凶獣、魔の類。こいつらの方がずっと召喚し易いし、捧げ物も受取り易い」
もうここまで語れば十分。はっきり言うと女性に対して話したくない内容。最早それは異種婚などと言うレベルの事態ではなく異種姦とも言うべき内容と成る物だから。
この例で有名なのは天使との間に生まれた巨人族。そして、クトゥルフ系の落とし児たち。もしかすると夢魔の類との間に産まれた子供や、悪魔……山羊頭の悪魔バフォメットに対する信仰などもこの例に当て嵌まる可能性も有るのかも知れない。
そしてハルヒもおそらくここに分類される。もっとも、こいつの場合は捧げられた贄の方。更に言うと、彼女が産み落とすのは術者ではなく世界。そして、その世界に生きて行く邪まなるモノ達。
ただ、どちらも何かの力を得る為に捧げられた生命である事に違いはない。
「ここまでが割と一般的に知られている方法かな」
少し肩を竦めて見せながら、そう続ける俺。もっとも、ここまでの説明だけでもどう考えても人為らざる者の行い。正義感の強い人間ならば看過できる内容とは言えないだろう。
但し、それでもこれは人の行い。現代でも簡単に異能の力を得る為にクトゥルフの邪神などに頼る連中は居る。
俺がハルケギニアで相対した連中は大抵がそう言う連中だったから……。
ハルヒは何も答えない。但し、止めろとも言わない。ならば――
「弓月さん。貴女が能力に目覚めた理由を教えてくれるかな」
それまでの話の内容とは違う、意味不明の問い掛けを行う俺。但し、日本の裏の世界を支配し続けて来た名門が何を行って、自らの権勢を維持し続けて来たのかを彼女は知っている可能性が高いので……。
「私は幼い頃から多少の能力は示して居ました。でも今の能力に完全に目覚めたと言えるのは……」
高校に入学する直前。ちょうど貴方や長門さんが化け物と戦って居る夢を見た後です。
俺の予想通りの答えを返してくれる弓月さん。矢張り、あのガシャ髑髏との遭遇の際に受けた魂魄への傷が、彼女の能力の発現を促したと言う訳か。
もっとも、それが良い事なのか、それとも悪い事なのかは分かりませんが。
「俺が能力に目覚めたのは三年前――」
家族が殺され、俺自身も瀕死の重傷を負って以後、能力に目覚めた。
弓月さんの答えに対して軽く首肯きながら、俺の場合の説明も行う。
しかし、
「で、それが何だって言うのよ?」
しかし、矢張り要領を得ない雰囲気のハルヒ。胸の前で腕を組み、挑むような視線で俺を睨み付ける姿も既に見慣れたもの。
そして、
「あんたの場合は何となく分かるわよ。もしかして夢の中でピンチに陥ったから桜に能力が現われたって言うの?」
その程度の事で魔法が使えるようになるのなら、世界中で夢を見る人間全員が魔法を使えるようになるでしょうが。
非常に筋の通った疑問を口にするハルヒ。ただ、普通の場合は不思議な事に対しては常に肯定的な意見や態度で臨むのに、何故か俺が相手の時は常に否定する側に立って居るような気がするのですが……。
まぁ、俺の言う事は素直に全部否定されているので、超常現象に限ってだけ肯定するのもアレだから、程度の理由でしょうが。
少し不満に感じながらも、ハルヒの精神が安定した一般人の部分で留まって居る事に安堵する俺。この状態ならば、妙な異界化現象のコアに成る事もなければ、世界を無理矢理に……自分の都合の良いように改変して仕舞う事もないと思いますから。
「夢の世界での出来事を否定するのか、他ならぬハルヒ、お前自身が」
何にしても、この程度の一般人が出して来られる程度の常識など即座にひっくり返す事が出来る。
「やれやれ。こんな事なら五月……。ゴールデンウィーク明けのあの夜に助けに行くんやなかったかな」
もし俺が行かなかったら、お前に次の日の朝は来なかったって言うのに。
肩を竦め、軽く上空を仰ぎ見る俺。もっとも、現実にハルヒを夢の世界に助けに行ったのは俺ではなく――
そう考え掛けて――
いや、深く考える時間はない。俺がハルケギニアの六月に経験した事件は、今のトコロ無視した方が良いでしょう。
「ぐぅ」
どうやらぐうの音ぐらいは出せたようですが、それでもそれ以上の反論は出せなかったハルヒ。もっとも、これは当然と言えば当然の帰結。彼女は夢の中で示唆された場所……彼女と出会った図書館の受付で、彼女宛てのプレゼントを受け取ると言う不思議体験をしたのです。この経験をした人間が、夢の中での経験を所詮は夢の中での出来事。現実とはまったく関係がない、とは言い切れないはず。
しかし――
「それで?」
何故か非常に不機嫌な様子でそう聞き返して来るハルヒ。そうして、
「あんたや桜が魔法を扱える理由は分かったわ。それで、さっきまでの話との間にどう言う繋がりがあるって言うのよ?」
さっきまでの話は魔術の名門に才能の溢れた子供たちが何故産まれて来るのか、と言う話だったじゃないの。
……と続けた。
尚、この反応も当然のように予測した上での展開。むしろ、俺が話を脱線させたと思う方が自然な流れ。
そう考えながらも、ワザと肩を竦め、更に今度は首を大きく左右に振って見せる俺。如何にも察しの悪い相手で、もう話すのもうんざりだ、と言う雰囲気を醸し出す。
「人が魔法などの才能を得る方法で確実なのは、修行に因り目覚める……と言う方法ではない」
一番確実な方法は臨死体験。故に、生と死のギリギリの狭間を垣間見る為に、苛酷な修行。断食などの苦行などが行われる場合もある。
俺は実際に身体に著しい傷を負う事によって。弓月さんの場合も同じ。実際に身体に傷を負った訳ではないが、魂魄に傷を負ったのは確実。
未だ話の意図が読めないハルヒが胡散臭い話を続ける似非宗教家を見つめる眼で、俺を睨み付ける。ただ、普段ならば形の良い胸の前で腕を組む事により返って胸の大きさが強調される形と成るのだが、残念ながらダウンのジャケット。更に、その下もおそらくゆったりとしたセーターを着込んで居ると思われるので……。
「ただ、この臨死体験で能力に目覚める方法なんだが、ひとつ不都合な点があってな……」
少し思考が彼女の組んだ腕の下に行きかかり、慌てて視線毎ハルヒの顔に戻す俺。もっとも、あまり顔に固定するのも少し問題があるのですが。
「あまり年齢が進み過ぎると効果がない事の方が多い」
これは、自らの置かれている状況から何としてでも逃れたい、絶対に生き返りたいと言う感情が子供の方が強いから、だと推測されているが、その理由は定かではない。
――実際に経験した俺の感覚では、実はその理由もおぼろげながら分かっている心算では有る。但し、ここでハルヒにその理由を説明しても通じる訳はない理由なのですが。
「さて。ようやく話の意図が見える場所までやって来たな」
人ならざる行為の果てに受胎した女性。当然、その女性の胎の中には魔的な資質の高い子供がいる可能性が高い。
そして、子供の内に臨死体験を行えば、その死から逃れる為に新たな、不思議な能力に目覚める場合が多い。
「魔術の名門がここまでの事が分かって居て、その状況を現実に再現しない可能性がどの程度あると思う?」
昔は医療技術も低かったが故に産褥死などの可能性も高かった。その中で生まれて来た子供たちの中に特殊な能力を備えた子供が多い事など、経験則から簡単に得る事が出来る。
次に、自分たちが準備した母胎もそうやって産まれて来た子供。
子種の方は正に異界から呼び寄せた異形。
「子供が産まれて来る直前に母親を殺す。最悪、殺さなくとも、瀕死の状態に置き、産まれて来るはずだった子供に産まれる前に死を体験させる」
別にそのまま母子ともに死亡したとしても構わない。代わりは幾らでも居る。更に、術の中には死を振り払う術も当然のように多く存在する。
産まれて来る子供に能力があればこの程度の状況など覆せるはず、……とも考えていたらしい。
「ここまでの事を為して、日本と言う国の裏側を支配し続けて来た連中や。流石に胆の据わり方が、俺たちのような一般人とは違う」
まぁ、全部が全部、そうだったとは言いません。ただ、何処の家にも表に出来ない怪しげな部分と言うのが有って当然でしょう。
まして、一度栄華を極めた家が、その権勢を失うのは……。
俺が水晶宮に関わるように成る以前に起きた事件。偽りの聖母事件では処女受胎から始まる救世主誕生を完全にトレースする事によって、自分たちの手駒となる救世主を誕生させようとした事件すら起きたのですが……。
その事件を起こしたのは一度栄華を極め、そして落ちぶれた者たち。嘗ての権勢を取り戻す為に起こした事件でした。
まして、新たに産まれて来る子供たちも、おそらくまったく関係のない新しい能力に目覚める訳ではない。俺が死と生の狭間で得た能力は嘗て俺だった存在が、その時に会得していた技術を思い出したに過ぎない。故に、その頃に時間的に近い子供の時に臨死体験をした方が、不可思議な能力――超能力やESP、霊能力などの正に魔法と呼んで良いような能力を得易いのだ、と……。
さてと……。
有希や万結に任せている結界作りもそろそろ完了している頃でしょう。まして、あまり夜遅くに出歩くのも問題がある。
左腕に巻いた腕時計はそろそろ午後の十時を指し示す。流石に一度部屋に戻りたい。
今日は動き詰めで入浴すら未だ。今宵、明日は睡眠すら十分に取れない可能性の方が高いので、精神を一度リフレッシュする事は俺に取って必要。
弓月さんを一度見つめ、彼女が首肯いて答えてくれる事を確認。良し、彼女の方は問題ない。
そうすると、もう一人の方は……。
「ハルヒ、すまんけど頼みがあるのやけどな――」
後書き
それでは次回タイトルは『犬神』です。
伝奇アクションだね、このタイトル。少なくとも西洋風剣と魔法の世界や、学園コズミックホラーモドキなど何処にもないわ。
尚、流石にハルケの貴族(私の世界の。原作は分からない)はこんな方法で魔法の資質の高い子供は作っていないと思います。
これは輪廻転生と言う思想がなければ難しい。家系……血の中に優秀な因子が存在していて、これが代々優秀な術者を産み出す、……と言う思想では無理でしょう。
まぁ、一代で為した偉業を受け継ぐには、その偉業を為した人間と引けを取らない才能を持つ人間が、それに劣らない時間を費やした時にのみ完全に受け継げる、と私は考えて居るので、初めから優れた血統や家系からのみ優秀な術者が現われる、と言う設定はかなり厳しいだろうな、と考えるしかないのですが。
だって、一代で為した偉業を受け継ぐのに一代を費やすのなら、其処から一歩も踏み出す事が出来ないでしょう? 良くて現状維持。大抵が代を重ねる毎に劣化して行くしかないですから。
おっとイカン。別に他の作品の設定を貶している訳ではないですよ。でも、始祖が血の滲むような苦労をして手に入れた術や能力を、子孫だと言う理由だけで……それも十数年しか生きていないような子供が行使出来るなんてお手軽過ぎるじゃないですか。
こんなの暴走トラックから神様土下座に繋がる御話と一緒だよ、と私が考えるだけですから。
但し、私がこの設定を世界観の一番下に入れた時には、暴走トラックから神様土下座などと言う物語は世界の何処を探してもなかったはずですけどね。
少なくとも私は読んだ事がなかった。
ちなみに、不慮の事故死から神様(だったかどうかは不明)が登場しての転生と言う流れで、私が知っている一番古い作品は『銀河の聖戦士』だったかな。急に言われて思い出すのはソレです。
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