どうやら俺は主人公を殺したらしい
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
四話、僕のもう一つの聖剣。
前書き
この頃のオリ主は14だし、主語の形は「僕」にしました。
ここはヨーロッパの北に位置する英国。すなわちイギリスである。
僕がイギリスといえば何を浮かべるかというと、「二階建てバス」、「紅茶を優雅に飲む人々」、「ビッグ・ベン」とかだけど。
いや、まあ、見た感じそのまんまだね。
てか、感動を通り越して驚愕したね。
いやくどいけど、もう、なんかすごかった。
この頃天界とか、森とかにひきこもっていたせいか人を見ること自体がもう新鮮であるのだ。
これもあれも、天使のババァと仙人のおっさんのせいですけど。
主に、とある力のせいで、天界には眼をつけられたりと。とんでもない仙人のおっさんから修行を受けたりと。
そんなこんなで、ずっと引きこもることが多々あった僕は、こうして外に出ているわけだけどさ。
「あの、お急ぎください」
「はっはあ」
おとなしそうな声音だった。
その声音の主は、僕をとある教会までの道程を案内してくれるクリスチャンである。
とどのつまり、プロテスタント所属の教会のものである。
僕はその注意に促され、不器用な返事だけをし、止まっていた足を再び動かす。
(……それにしても不安だなぁ)
僕は、クリスチャンの彼女の背中を小走りで追いかけながら、少々不安気味に内心で呟く。
最初に言っておくが、僕はこの時点で、まだ、神様から与えられた特典である『聖剣』をもらっていない。
いや、違う聖剣は持っているんだけどさ。まあ、それは置いといて。
その聖剣の名は『天閃の聖剣』。主に持ち主の身体強化を底上げすることにより、想像絶するスピードを可能とする武器である。
そして、その聖剣が、僕が選んだ……というより、それしか選べずに、仕方なく選んだ特典の一つである。
実の所、原作介入というものも強いられている僕は、死亡フラグビンビンである故に、そういった武器も必要不可欠なのである。
まあ、自分が知る限り、この世界の未来を描かれた原作知識であるラノベ三巻までは9割が噛ませ、他は後に噛ませになる予定のキャラクター、それか一誠ハーレムといった感じなので、大丈夫っしょ。
それに僕は、一応、そのラノベというものを三巻以降も、飛ばし飛ばしだけど、読んではいた。ただし、五巻までくらい? ……もう覚えてないけど。
まあ、どのみち、飛ばし飛ばし目を滑らしながらなので、そこまで印象には残っていない。
うん、それらを考慮して、今後のことを考えると、9割がた主人公補正(御都合主義)、そして残り一割を主人公の努力(?)こと、そのラノベと共通主人公であろう兵藤一誠の敵のほとんどは、悪魔である。
そう考えると、シンプルに聖剣がいいんじゃね、と思うし、この世界の聖剣というものは、悪魔が触れただけでもダメージを食らうという素晴らしい武器である。
そう思った僕はなんだかんだ言って死ぬことはないのかなぁ、なんて思っていた。、
……なのに、僕の手にはそれがないのだ。この世界に生まれてから14年も経つというのに、だ。
ちなみに僕を転生させた神からの音沙汰はたった一言だけ。
―――転生特典? あー自分で盗ってこい。
これである。
いやはや、こんなメッセージが来た当時8歳の頃は、発狂したね。一応、8歳の僕は精神レベルも相当低かったらしく、周りの視線など気にせず、泣き叫んだらしい。
僕の親である父や母、妹にも沢山迷惑かけました。本当にごめんなさい。
まあ、話は逸れたけど、僕はまだ14という歳になった今でもその聖剣を持っていない訳で。
ただし……ただしだ。
何故か二つ目の特典である『天閃の聖剣を5000%扱える体質』だけは元から得ていた。それも天性的にである。
まず、その5000%特典に気付いたのは唐突なものだった。というより、成長の過程でなんとなく分かったというべきか、実に曖昧な表現だけどそんな感じである。
その気付いた歳は、あの元幼馴染みであったゼノヴィア・クァルタと別れた8歳の時。ちなみにゼノヴィアさんは僕より年上なので当時9歳であるはず。
気付いた時はあら大変、体の穴から穴という穴から光が漏れ出てもうヤバスでしたわー。皮膚も光ってし。
まあ、調べたところ、その正体は、聖剣を扱うに必要不可欠な『因子』であった。
しかも、あの天使のババァ曰く、天然の因子かつ、歴代の聖剣使いの中で突出しすぎた量の因子らしい。
それが理由で色んな種族から目をつけられたんすけど。
その因子が判明した8歳から今に至る14歳に至るまでに色々あったね。それはいつか語るとして。
結局は、その因子そのものがあの『5000特典』だと思う。聖剣を扱えるにはまず『因子』がないと話にならないし、量もそれなりにないと話にならなさそうだし。まあ、5000%だし。
と、そんな感じで安直な考えとは言え、その『因子』=第2の特典ということだと、結論を出したのだけれど。
僕はとあることに気づいたのだ。
その『天閃の聖剣を5000%扱える』という特典は、『天閃の聖剣』にしか限定されているのか、否か。ということである。
勿論、試してはみた。さっき言った別の聖剣での試みだったが、結果はこうだ。
まずは膨大な因子のおかげなのか、威力は半端ない、としか言いようがない。因子はいわば聖剣のガソリンのようなものだからなのか。
だが、残念ながら威力があるだけで、そのすべてのパワーを戦闘に組み込めるか?、なんて聞かれれば無理だ。
パワーがあったとしても、技術というものがなければ意味をなさない。一つの対象を正確に、効率よく、壊すのにいったいどれだけの技術、センスが問われるかは、そのパワーがあるごとにハードルが上がってしまうのだ。それは僕がこの世界に生きていく中で嫌という程学んできたことである。
ただ例外がある奴はいる。
そいつは勿論、兵藤一誠である。書物でしか見たことない、まだ見ぬ架空の人物であるが、彼は本当の意味で戦闘に関しては素人、そしてスペック自体もセイクリッド・ギアというものを抜けば、下級悪魔クラスの平均よりもおそらく底辺に位置する。
………にも関わらずに、だ。
普通に戦ってるじゃんか。しかも名前とか顔なんか忘れたけど、どっかのライバルさんが互角とか言われてたし。そのライバルとか、ほかの奴らは、何百年も生きているはずなのに。いや、悪魔の寿命なら千歳はくだらないかも。
まあ、主人公の周りは、『兵藤一誠』という対象をなぜか持ち上げようとするから、実際はどうなのかは知らないけど。
あと、兵藤一誠本人は努力とか言ってはいたが、たかが、一週間そこらで努力とか言われたら、何年間も血反吐を吐きつつ、体を弄られながらも、僕が決死に頑張っていた、あの努力は一体なんなのか。僕だけじゃない。僕の周りにはきっと僕以上に努力している奴だっている。悪魔らの場合は、血筋など純潔でスペックがあっても、その大半が貴族であるがために、修行とかあんましてないし。あいつら性格悪いから。あとは、政治絡みとか忙しい影響で、強いものであるほど、そっちに回されるから。
―――などと、回りくどい言い方だけど、何が言いたいかといえば、『兵藤一誠』というキャクターは悪い意味で例外である。
今更ながら笑っちゃう。
まあ、そこらへんが、主人公補正である御都合主義というものゆえなのか知らないけどさ。まあ、あれだよ―――
『あっああっ……デクタ様は今日もアスカロンを調教するおつも―――』
しまう。
反射的に深い思考から、現実に呼び覚まされる。それも最悪の形で。
閉まっていたはずの聖剣アスカロンを鞘にカスン、と再び閉まう。なんか閉まった後に『っん』なんて聞こえたけど気にしない、気にしたら負けだ。
僕はいつもの幻聴から意識を逸らすために、クリスチャンの背後から何気なく、声をかける。
「そろそろ着きそうですね」
「ええ、そうですね。……森に入ります」
クリスチャンの彼女は淡々と言いつつ、人々で賑わっていた町並みから、森へ入った途端、人目がなくなったせいか走るペースを、ぐんと上げる。僕もあとに続くわけだが、
「―――ちょっと待ってください」
走るペースを上げてから10分弱だった頃だろうか。僕の前を走っていた彼女がいきなり立ち止まり、振り返ったのちに僕に言った。
「私はこの辺で………」
僕はなんとなく察した。
彼女の案内としての役目はここまでだということを。
「この森を一直線へ進めば、おそらく貴方が転属する教会に辿り着くはずです。それと―――」
「はぐれ悪魔には気をつけろ、ですか? 安心してくださいよ。あともう直ぐなんでしょ。こんな森の中でばったり糞悪魔に会うなんてありませんよ。僕、持ってますから」
僕が余裕満々の顔でそう言うと、
「……そうですか……そうですね」
案内役だったクリスチャンの彼女は、納得したようにそう言い残す。そして、僕が、プロテスタント教会への転属と、目的の聖剣を所持することを認める証明書を手渡し、僕の見送りを背中に受けながら、森の外へと去っていた。
まあ、しょうがない。彼女も僕も含めて、カトリック、プロテスタントなど、関係なく、エクソシスト自体が人員不足であるがために、本来暇なんてありゃしない。
そんな中でこうして僕を案内役としていたのは、天使様からの御通達があったからで。
僕は心の中だけで、ありがとうございました、とだけ言い残し、駆け出した。
異形の姿をした黒い塊を瞳に写して。
「ぼうやぁ、私と遊ばなぁい? 優しくしてあげるから、ネェ………あはっ………アハエハハハハハハハ……‼︎」
糞悪魔が言った。
おそらくはぐれ悪魔。元は女の悪魔。そして、駒の特性は戦車……すか。
クリスチャンさん……どうやら持ってなかったようです。
俺はそう愚痴り、聖剣アスカロンを鞘からゆっくりと抜く。
しゃらん、と音を立て、その聖剣アスカロンの剣先は、木々の隙間から漏れ出る太陽光を乱射させる。
幸いなことに、聖剣アスカロンが僕の脳内に話しかけるという、幻聴は、この時ばかりはなか―――
『こ、これからご調教なさるのですね。アスカロンがんばります』
………うわーテンションだだ下がりだわー。なんでこのタイミングで、喋んのかな?
『あっんっ、……因子が流れ込んでくる』
死にたい………うん、もう良いや、ヤケですよ。てか、まだ因子流し込んでねーよ。
「くっ」
僕は文字通り、ヤケになり、一気に自身の因子をアスカロンへ流し込む。
そして、幻聴は止む。
何故かは知らないけど、因子流すと黙るんだよね。なんでかは知りたくもないけど。
前方を見やれば、あのはぐれの悪魔は、既に異形そのものになりつつある。先ほどまでは頭だけは人間に酷似した造形こそはしていたものの。
今はもう、魔物と言うべきか、悪魔とは遠くかけ離れたものであった。
「じゃーね、おばさん」
僕は言葉すらままらなくなったはぐれに、慈悲の篭った一言を放ち、同時に聖剣アスカロンを天へと持ち上げる。
瞬間、剣に光の粒子が収束する。
渦のように雄叫びを上げたそれは、今にも暴走しそうだった。
暴走直前にまで、流し込んだ因子は、聖なる光へと生まれ変わる。
ギリギリまでアスカロンに溜めた因子を、すぐに途切らせ、そして僕は―――振り下ろした。
結局は、あっさりと死んだあのはぐれだけど。
僕がアスカロンを振り下ろした周りは、傷一つあらず、木々へにも何一つ影響を及ぼしていない。
それはそうだ。
僕はただ聖剣の力を当てただけで、衝撃こそは当ててないのだから。
まあ、僕はまだ14だし、悪魔払いに慣れていたとしても、ショッキングなものは避けたいのだ。
それに森は森だ。生き物だっているし。
あのラノベの中で、兵藤一誠が大きな山に……ど、ドラゴンショット?……だっけ。それを山にぶつけた時は普通に軽蔑したし、させたリアス・グレモリーも同じく。あれ絶対なんか死んでるだろ。やるなら冥界でやれよって話である。まあ、人間の価値観と悪魔だけではなく、人外共たちとは価値観が違い過ぎる。
ただ、その山をグレモリー家が買収していたなら何も言わないけど。どーせ、魔力とか洗脳だろう。
―――なんて。
僕はそんな愚痴だけを残し、聖剣アスカロンを鞘に納めるのであった。
後書き
アスカロンさんのあの設定大丈夫かなぁと思うこの頃。
ページ上へ戻る