手の平の中
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第三章
「すりをしろとか嫌な人をどうにかしろとか」
「そんなこと駄目に決まってるでしょ」
「最低の行いでしょ、人間の」
「何があってもね」
「そんなことしたらアウトでしょ」
「人間として」
「だからそんなことは二人に言ってないし」
それにとだ、真礼は自分の友人達に言うのだった。
「いいことだけ言ってるつもりよ。それにね」
「それに?」
「それにっていうと?」
「私涼真ちゃん大事に思ってるわよ、太洸君もね」
当の二人のどちらもというのだ。
「二人共しっかりとした優しい人になる様にアドバイスしてるから」
「そうなの?」
「かどわかしたりせずに」
「誘惑とかしないで」
「悪い道に誘ったりしないで」
「そんなことしないから、お母さんに言われたの」
真礼だけでなくだ、涼真の母でもある彼女にというのだ。
「女の子、女の人は世の中の土台でありお家であり家具だから」
「ってそれ全部じゃない」
「世の中の殆どじゃない」
「もう何もかもがじゃない」
「女の人じゃない」
「そう言われたから。だからね」
それで、というのだ。
「いつも男の人を立ててアドバイスをして助ける」
「悪い道に誘わずに」
「そうあるべきっていうのね」
「いいことだけをアドバイスする」
「そうしないとなの」
「駄目っていうの」
「そうなの、そう言われてるから」
自分達の母にというのだ。そのことを話してだった。
そしてだ、友人達に答えた。
「アドバイスしてるだけで。しかも無理強いはしていないわよ」
「あっ、確かに」
「あんた無理強いはしないわね」
「そうしたことはね」
「絶対にしないわね」
「そう、私力もないし」
このことも言うが本当のことだ、真礼は文芸部所属で根っからの文化系だ。スポーツは苦手で腕力も握力もない。涼真や太洸の方がずっと強い。
「無理強いとか大嫌いだから」
「あの二人にもなの」
「アドバイスしてるだけなの」
『無理強いはせずに」
「それだけなの」
「そうした方がいいって言ってるだけよ、操ってもいないから」
このことをだ、強調するのだった。
「絶対にね、ご褒美はあげたりしてるけれど」
「妖しいご褒美なんじゃ」
「太洸君とはキスもまだらしいけれど」
「流石に自分の弟さんと、とかはないと思うけれど」
「そうしたのでもないでしょ」
「だから。私そういうこともしないから」
このこともだ、真礼は友人達に断った。
「浮気もしないし爛れたことも嫌いだから」
「だからそうしたご褒美もしないのね」
「別に妖しいことじゃ」
「貢がせても」
「そうなのね」
「貢ぐって言われてもね」
このことについてもだ、真礼は答えた。
「高いものは言わないわよ」
「そこもよ」
「二人の財力見た様にお願いしてるじゃない」
「そこはしっかりと見極めてるわよね」
「そのことは事実よね」
「うん、だって二人が赤字になったらよくないから」
見極めている理由はこれだった、真礼は二人の懐具合も見極めていたのだ。
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