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第二章

「絶対にな」
「やれやれだな」
「まあ御前が幸せならいいさ」
「それで充実してるんならな」
「それでな」
 周囲はこう言うしかなかった。少なくとも涼真は幸せだった。そして。
 それは太洸も同じでだ、彼も言うのだった。
「あいつの言うことに間違いはないんだ」
「で、か」
「今日もか」
「帰り道は一緒に歩いてボディーガードか」
「違う、デートだ」
 それだとだ、太洸は自分の友人達に言い切った。
「デートをするんだ、今日もな」
「そう言うけれど御前まだ真礼ちゃんとまだ進展ないだろ」
「まだ何もな」
「その帰り道だってただ一緒にいて話をするだけだろ」
「真礼ちゃんの欲しいもの買ってあげたりして」
「それだけだろ」
「欲しいものがあれば買わせてもらう」
 極めて冷静にだ、太洸は言った、見れば。
 黒く細い質で量の多い癖のある髪を耳とうなじを隠す形で伸ばしている。細く痩せた顔で眉は濃く一文字だ、鼻の形もそうで奥二重の目は真面目な感じだ、口元もきりっとしている。身体は痩せて引き締まっていて背は一七一位だ。
 その彼がだ、こう言い切ったのだ。
「それだけだ」
「真礼ちゃんが欲しいならな」
「それならか」
「何でも買わせてもらう」
「そう言うんだな」
「そうだ、そして変な奴があいつに近寄れば」
 その時はというと。
「倒す」
「御前の空手でか」
「容赦なくか」
「そうするんだな」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「その時はそうする」
「ボディーガード兼貢ぐ君か」
「弟さんと一緒で」
「何ていうかな」
「二人共な」
 涼真と共にと言うのだった、太洸の友人達も。
「これはな」
「真礼ちゃんの奴隷っていうかな」
「もう完全にな」
「言いなりじゃないか」
「言いなりじゃない」
 しかし太洸もこう言うのだった。
「俺も涼真君もな」
「まあな、御前がそう思ってるのならな」
「いいけれどな」
 涼真の友人達と同じ言葉だった。
「御前が幸せならな」
「俺達も言わないさ」
「けれどな」
「どうもな」
 太洸がだ、真礼の言うがままになっているのではないかというのだ、涼真と同じく。しかし二人の考えも行動も変わらない。
 真礼の言うままに動いていた、それで。
 ボディーガードにデート、プレゼント、雑用にとだった。真礼の言うこと頼むことなら何でも聞いて動いていた。
 それでだ、真礼本人にまただった。
 彼女の友人達がだ、どうかという顔で問うた。
「あの、ちょっと」
「どうかって思うけれど」
「涼真君も太洸君も」
「何ていうかね」
「あまりよくないんじゃ」
「二人共あんたの言う通りじゃない」
「言うがまま動いてるから」
 そうしたことがというのだ。
「操ってるみたいで」
「よくないわよ」
「そういうこと止めたら?」
「操り人形みたいにすることは」
「悪いこと言っていないわよ」
 それはというのだ、真礼は。 
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