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戦国異伝

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第二百二十一話 肥後の戦その十二

「明のことをな」
「あの国の、ですか」
「あの国のことを」
「あの国は昔から左道も多いのう」
「そもそも巫蠱もです」
 一人が言った。
「麿の力ですが」
「それもじゃな」
「あの国からです」
 明から生まれたというのだ。
「古来、漢の頃から」
「あの時jはその巫蠱で乱も起こっておる」
「そしてその他にもありますな」
「猫鬼を使うこともあるしな」
「あれは隋の頃でしたな」
「そうじゃ」
 この時のことも話された。
「皇后の弟が使っておった」
「そうでしたな」
「あの国は左道も多くてじゃ」
 そしてというのだ。
「しかもよからぬ者もおる」
「左道を使わずともですな」
「その性根が闇にある者達もいる」
「その者達もですか」
「ここに呼びますか」
「色は様々じゃが闇の根は一つじゃ」
 老人の声は笑っていた、今は。
「それ故にじゃ。国は違えどな」
「南蛮でも明でも」
「この国でもですな」
「闇は同じ」
「同じだからこそですな」
「あの者達にも来てもらう」
 明からもというのだ。
「無論天竺や西域からもじゃ」
「そういえば西にもですな」
「面白い教えがありましたな」
「回回教とかいう」
「独特の教えが」
「どういった教えかは詳しく知りませぬが」
「その教えがある国にも闇があるからじゃ」
 それ故にというのである。
「その闇にも来てもらうとしよう」
「では」
「是非にですな」
「そうしたこともですな」
「備えて」
「そしてじゃ」 
 そのうえでというのだ、闇の者達を揃えて。
「この国を闇の国にしようぞ」
「長い間果たせませんでしたが」
「ここで、ですな」
「日輪を沈め」
「そのうえで」
「そうじゃ、織田信長自体をじゃ」
 その彼をというのだ。
「倒してな」
「では我等も」
「是非です」
「及ばずながらも」
「長老と共に」
「この国を闇の国とします」
「永遠に」
「まつろわぬ力がじゃ」
 それがというのだ。
「ここで世を覆うのじゃ」
「ですな」
「遂に」
「日輪を消し」
「それから」
 闇の中でだ、彼等も話した。
「ようやくです」
「大和朝廷、いえ神武の頃からです」
「我等は何かと追いやられていましたが」
「そのまつろわぬものをです」
「ここでようやくですな」
「出せます」
「闇を」
 彼等は蠢いていた、その蠢きは誰にも見せなかった。しかしそれは確かにだ、何かを手に入れようとしていた。


第二百二十一話   完


                         2015・3・21 
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