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戦国異伝

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第二百二十二話 耳川の戦いその一

                  第二百二十二話  耳川の戦い
 信忠は織田の軍勢を南に順調に進めさせていた、その間兵達に乱暴狼藉は一切許してはいなかった。
「よいか、一銭でも奪えばな」
「打ち首ですな」
「そうじゃ」
 こう前野にも答えた、毅然として。
「その場合は許すな」
「わかり申した」
「その場で斬れ」
 まさに問答無用でというのだ。
「その様な奴はいらぬ」
「織田の兵ではありませんな」
「民を害してはならん」
 信忠は強く言うのだった。
「そして神社仏閣もな」
「一切、ですな」
「我等に歯向かわぬならな」 
 それならというのだ。
「一切じゃ」
「壊さぬのですな」
「そうじゃ、休む時は中で拝んだり賽銭を入れてもよい」
 信忠は前野にこうも話した。
「そうしてもな」
「ですか」
「うむ、神社仏閣にも乱暴狼藉はならん」
 このこともだ、信忠は戒めるのだった。
 信忠の言葉は織田軍全軍に伝わった、それは兵達の強く守ることだった。
 織田軍は進む間民も何も害さなかった、それを見て日向の民達もこぞって彼等を迎えた。そうして国人達もだった。
 織田軍に次々と入る、信長はその織田軍を見て満足して言った。
「そうじゃ、兵は乱暴狼藉はしてはならん」
「上様が決められた通りに」
「それは、ですな」
 今も信長を守る池田と森が応えた、やはり信長の周りにこの二人はいる。そして毛利と服部も後ろにいる。
「守らなくてはならぬ」
「そういうことですな」
「奇妙もわかっておる、足軽も侍じゃ」
「侍ならば、ですな」
「民に乱暴狼藉はなりませんな」
「そうじゃ」
 信長は強く言った。
「そんなことは武士がするものではないわ」
「武士は民を守るもの」
「だからですな」
「義経公を見るのじゃ」
 ここで信長はこの者の名前を出した。
「あの方は都で民を大事にされたな」
「はい、都を落られる時も」
「その時も」
 池田と森は信長に答えた。
「何も奪わず荒れず」
「静かに」
「あれが武士じゃ」
 そのあるべき姿だというのだ。
「だからじゃ、我等もな」
「民を害さず、ですな」
「兵を進めますな」
「戦を見たいのなら見るがいい」
 民達がというのだ。
「存分に見せてやるわ」
「ははは、それは常ですな」
「民達にとっては」
 兵達の戦見物はだ、二人はこのことにも答えた。
「戦を見て楽しむことは」
「弁当を食いつつ」
「いつもそうですな」
「それを楽しんでいますな」
「それを見せて楽しむのも一興じゃ」 
 信長も笑って話す、このことについて。
「奇妙も見せればいいのじゃ」
「ですな、次の戦も」
「そうされればいいですな」
「民には広くじゃ」
 その心をというのだ。 
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