ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第43話 Happy Birthday
『オレが、この世界に来て 約1年程、か……。 ……いや、アカーシャ達と共に戦った期間を入れるともっとだな』
陽海学園のバスに乗って、ジャックは朱染城に向かっていた。このバスはトンネルと言う異次元を辿って、世界の中でも屈指の秘境。……最強種であるバンパイアの巣窟へと。
目的は…ただ1つだけだ。
『決着をつける』
「(……モカがもうすぐ10歳…か… 変わっていないのであれば……アルカードが復活する時期、なんだよな)」
確かに、そう記憶している。だけど、必ずしも絶対ではないのだ。
事実、燦との出会い…それも予期はしていなかった。ここは……、ジャックの知っていた世界に《よく似ている》世界なんだと、自身の中で納得をしていた。
「(そもそも、今出会ってるみんなは… オレにとっては現実なんだから… それも当たり前だと思うな)」
僅かながら苦笑する。そう、かつては、ただ、大好きな漫画の世界だけだったのかもしれない。その中で大好きなキャラに出会えて、舞い上がっていただけかもしれない。
だけど、そう考えていたのは、もうずいぶん昔のことだ。
今は、この世界に自分は生きている。……自分の現実。
「(ひょっとしたら、アルカードの復活も起こらないのかもしれない。………だが、先が読めない以上…迂闊なことはできないか……。だが…仮に奴が復活したとして……前回は奴の力量を見余っていた。……そして倒しきれなかった…。それは事実。……もし、復活したとしたら、やはり変えられないのか? ……肝心なところは…)」
不安感で押しつぶされそうになった。変えられない…と言うのなら、親愛の女性、アカーシャを失うことになる。
「(そんな未来は見たくない)」
だからこそ、ジャックは拳に力を入れた。
『……元々はあのアルカードはオレのせいなんだよな。ここに来た事で……、あれが、異常な力を持ってしまった…。ならば、オレが止めるのが当然の筋、だよな』
ジャックは、アルカードの力は十分に知っている。十分すぎるほど知っている。そして、怖くないわけではない。この世界で無敵だと勘違いしていたのは、もう200年以上も昔の話だ。……ジャックも怖さはあるんだ。
だが、それ以上に…失うことが怖かった。……だから、あの化け物とやり合う覚悟は元々できている。そして……後は、信じる以外他無かった。無事でいられる事を、助けられる事を。
~朱染城~
場所は少し変わり、ここは朱染城である。……そして、丁度翌日の夜の事だった。
“ドン! ドドン! ドドドン!! ドーーーーン!”
花火が盛大に打ちあがっていた。その1発1発と打ち上げられる花火は、モカに対する誕生日プレゼントだったらしい。
「「「「Happy Birthday Dear MOKA Happy Birthday to you♪」」」」
「「「モカちゃん10歳の誕生日おめでとう〜〜〜〜〜〜♪」」」
花火の音を背景に、一気に会場が盛り上がった。この館にいる全員が祝福してくれているのだ。そして、モカは バースディ ケーキの蝋燭消しも終了した。
その後は、沢山だされた豪華な料理も、勿論そのケーキも堪能した。
そして次は、待ちに待ったプレゼントタイムに入る。勿論待ったのはモカだけじゃない。姉妹達も待っていたのだ。
「ジャーーン!これ私からのプレゼントよ。モカちゃん、がんばって作ってみたの〜〜」
そう言って一番手は刈愛。両手に抱えたプレゼントは自分自身の身長よりも大きい。そのプレゼントをモカに渡した。
モカは少し引き攣りながらも、笑顔で開けてみると。
中から出てきたのは、《???のぬいぐるみ》だった。
モカは何のぬいぐるみかハッキリせずとりあえず。
「わぁ〜〜い 手作りくまさん!」
っと、必死に考えて言ってみたが。
「あはは……一応うさぎさんなんだけど……」
ばっちり間違えたらしい。でも間違えても仕方ないだろう。何故なら、どう見ても《うさぎさん》には見えないから。
「あ……うさぎさん! 嬉しいなぁ!! うさぎさん!」
それでも、モカはぎこちない笑顔で喜んだ。実際に答えを教えてもらって見てみても、うさぎとは思えないけれど、プレゼントだから。
ちょっと複雑だった刈愛だったがモカが喜んでくれた為、さほど気にしていなかったが。
「カルア姉さんて意外と不器用よね〜〜」
「!!」
心愛の痛烈な一言で一気に落ち込んでしまった。擬音をつけるとすれば「ガーン!」がふさわしいだろう。そして二番手は、その心愛。
心愛は、刈愛に比べたら、小ぶりなサイズプレゼントだった。
だが……それを鉄製のテーブルに置いたときの音がエグかった。その鉄製のテーブルを揺らすほどの重量感のあるプレゼントを出した。
「わたしのはもっと可愛いわよ〜」
心愛は、自信満々と言った様子だった。モカは、少し頬を赤く染めていた。
「はは 何かな? しかし、いつもケンカしてるココアがプレゼントをくれるなんて、何か照れる……」
言葉の通りだ。いつもケンカして…尚且つボコボコにしている心愛が、プレゼントをくれることに、内心凄く喜んでいる。モカは、顔を赤面させながらプレゼントを開けると。
そこに入っていたのは、と紹介する前に、プレゼント自ら出てきたのだ。
「きゅ~~~~♪」
と、鳴きながら、バケバケコウモリがでてきた。
「あたしが捕らえたバケバケコウモリのこーちゃんよ! 特技は武器に変身すること! モカお姉さまの式神にどうぞ!」
更に自信満々にモカに渡した。とりあえず、プレゼントはプレゼントだ。笑顔で受け取ろうとするモカ。そして、モカに手渡す直前に、心愛は。
「欠点は体重が100kgもあることだけど 後めっちゃごはん食べるヨ」
その言葉を聞く前に変身したコウモリを持った為。
「重ーーーッ」
重量感たっぷりで一気に両腕と腰が、だらりと下がってしまった。それでも、離さないのは 流石モカだろう。
「アハハハハ… え…遠慮するよ」
モカがコウモリを返し心愛の頭の上に乗せてあげた。
「ええええ! なんで!?」
心愛は、自信満々だったのにまさかの返品に驚き声を上げて聞いた。
「こいつは私より怪力のお前向きだし、何よりもうすっかりお前に懐いているじゃないか」
心愛の頭の上に乗せたコウモリはよほどその場所が気に入ったのか動こうとしなかった。
そして撃沈者は2名になった。
「ん〜 じゃあ私のは気に入ってくれるかな??」
そして三番手の亜愛は、モカにドレスをプレゼントした。
「………! 真紅のドレス…!」
それはモカの可愛らしさにピッタリの真っ赤なドレスだった。サイズも完全にピッタリだった。
「私達バンパイアは、10歳ごろからぐんぐん妖力が伸びて大人の仲間入りをしていくの。それにあわせて服も色っぽいの着なきゃね!」
亜愛は顔を赤面させながら「あいや〜」っと想像以上の可愛らしいモカに見とれていた。そして心愛は 鼻血を出した。物凄いシスコンなのだろう。
「可愛♪ とってもよく似合うよ! モカ」
亞愛は、満面の笑みでモカに微笑みかけた。モカは感慨きわまったのか…目に涙を浮べ。
「亞愛姉さん……、みんな…… ありがとう… とっても嬉しいよ 本当に…ありがとう」
それと同時に、会場からは祝福の拍手が沸き起こった。
おそらくモカは今まさに最高の幸福で満ちているだろう。
しかし。
それは、その幸福は……、この後、音をたてて崩れていくのだった。
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