戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百十九話 九州に入りその十一
その目を鋭くさせてだ、こうも言った。
「わしも若し治兵衛がおらねば」
「それでじゃな」
「困ったことになると思います」
「羽柴家はな」
「はい、わしと小竹はいますが」
羽柴は秀長も見つつ話した。
「しかし」
「それでもじゃな」
「はい、それ以外の者が」
「おらぬな」
「まさに治兵衛だけです」
その秀次のみというのだ。
「そうした状況ならば」
「羽柴家を栄えさせたいであろう」
「では」
「大事にせよ」
その秀次をというのだ。
「わしもあ奴を取り立てるからな」
「その才に応じて」
「ではな」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
信長は島津との戦を進めていった、そこで。
島津もだ、義弘が島津の本陣に戻ってすぐにだった。四兄弟が集まってそうして話をするのだった。
義弘はすぐにだ、兄弟達に言った。
「織田家はやはり」
「そうか」
義久が応えた。
「信長公は認められなかったか」
「薩摩と大隅、日向だけだと」
「つまり旧領に戻れというのじゃな」
「はい」
「薩摩、大隅だけだと思っておったがな」
「日向もとのことです」
もう一国というのだ。
「与えると、しかし」
「九州全てはか」
「渡せぬと」
「そうであるか」
「では兄者、ここは」
すぐにだ、歳久が言って来た。
「やはり」
「うむ、そのつもりじゃ」
義久は歳久のその問いにすぐに答えた。
「戦うぞ」
「では」
「既に戦の用意はしておる」
岩屋城からは確かに退いた、だがだ。
島津はそれでも戦いの備えを解いていなかった。それで義久も言うのだ。
「だからじゃ」
「では」
「認めてもらわねば認めてもらうまで」
「戦いそしてですな」
「勝ってな」
そしてというのだ。
「認めてもらおう」
「実際に勝つとなりますと」
義弘が言った言葉だ。
「それは」
「難しいな」
「はい、我等は五万、対する織田家は」
「三十万じゃな」
「しかも織田家は天下の名将智将が揃い」
そしてだった。
「武具もよいです」
「鉄砲の数も桁が違うな」
「織田の鉄砲は確か」
家久も言う。
「十万ですな」
「しかも大筒まである」
このこともだ、義弘は言った。
「だからな」
「勝つことはですな」
「難しい、いや」
「勝てぬと」
「うむ」
義弘はあえて言った。
ページ上へ戻る