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祈りは通じる

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第三章

「そう仰っていました」
「やはりそうですか」
「あの国は地上の楽園や理想の国家と言われていましたが」
「その実は」
「とてつもない言論弾圧、人権抑圧を行う国家で」
「日本人を攫ってですね」
「工作員の教育等に使っているとのことです」
 都市伝説として語られていることをだ、ご主人は話した。
「そうだと」
「やはりそうですか」
「はい、ただあの国は中に入ることは難しいです」
「真意を確かめることはですね」
「それもです」
 何しろ中に入ることが非常に難しい国だ、その国が指定したつまり色がかかった人間しか入国出来ない。そんな状況では真意を確かめることなぞ不可能だ。
「出来ない状況です」
「あの国に入られる人はどう言っていますか」
「いえ、それがです」
「それが、ですか」
「はい、そうした人は誰もがです」
 まさにだ、知識人なり労働組合の幹部なり野党の議員なり市民活動家なり弁護士なりだ。そうした面々はというのだ。
「拉致はない、噂に過ぎないとです」
「言うばかりですか」
「誰もがです、しかし」
「真相はですか」
「私の見たところかなり疑わしい」
「灰色ですね」
「そう思っています」
 限りなく黒に近い灰色だというのだ。
「怪しいというものではないかと」
「そうですか」
「何とか。あの国からです」
「娘さんを取り返したいのですね」
「そう思っています、娘は私達の宝です」
 まさにだ、そう言うべき存在だというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「私達夫婦は。他のそうした事情で家族がいなくなっている人達とも協力して助けてくれる人達と共に」
「働いておられますか」
「そうした団体も作ってもらっています、ですから」
 それでだというのだ。
「何とかです」
「娘さんを取り返そうとされていますか」
「そうしています」
「わかりました、では」
 ここでだ、二人でだった。正蔵はまた侑枝を顔を見合わせた。そして。
 近高さんご夫婦にだ、こう言った。
「では私達も及ばずながら」
「娘を見付け出して救い出すことに」
「協力させて頂いて宜しいでしょうか」
「そうして頂けますか」
「はい、お願いします」
 是非にとだ、正蔵も言うのだった。
「私でよければ」
「それでは」
 こうしたことを話してだ、そのうえで。
 正蔵は近高さんご夫婦の娘さんだけでなくその国に攫われたと思われる人達を救う会に入り活動をはじめた、その中で。
 その国についても調べた、その結果彼は結論を出した。
「間違いないぞ」
「あの国がなのね」
「攫っているぞ」
 自宅でだ、侑枝にこう話した。
「どう考えてもな」
「やっぱりそうなのね」
「あの国はとんでもない国だ」
 巷で言われている通りにというのだ。
「学校の先生とかが言う様な国じゃないぞ」
「独裁国家ね」
「あの首領様がとんでもない独裁をやっていてな」
 しかもというのだ。 
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