魔法少女なゼロ!
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外伝
外伝・闇の中で
前書き
地球にいた間のルイズちゃん
「ん……あれ? 私…何してたんだっけ?」
何か大切な事を忘れているような気がする。
記憶の中心が空洞になってしまったような感覚がする。
忘れてはいけないことなのに、思い出せない。
何かを叫んでいたはず、何を?
何かに手を伸ばそうとしたはず、何に?
何か、いや違う誰かだ。
誰を? 私は誰を呼んでいたの?
思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない思い出せない
「ル…ズ、ルイ…、ルイズ!」
私を呼ぶ声にハッとして顔を上げる。そこには懐かしい母の顔があった。
懐かしい? どうして懐かしいのかしら? 毎日会っているはずなのに…
――幸せな夢の中――
「どうしたのですルイズ、食事中に上の空で」
「あ、いえなんでもないです母様」
周りを見渡すと食卓には、父と二人の姉も怪訝な表情で私を見ていた。そう、今日もいつものように家族で食事をしてる。何も可笑しくはない、いつも通りの光景だ。少し心配そうに私を見る母に可笑しく思われないように手元のスープを口に運ぶ。けれどなんだか美味しいと思えない、味が悪い訳ではない、ただ旅行先で異国の食べ物を食べた時のような違和感がある。ミソシルが食べたい。
ミソシル? それってなんだったかかしら? 誰かが作ってくれたハズなのに思い出せない。
――眠れ眠れ――
「ルイズ、調子が悪いようなら無理に食べる必要はないのよ?」
「いえ、大丈夫です。ちょっとぼおっとしていただけですちい姉さま」
「それならきちんと食事を取りなさい、あなたはただでさえオチビなんですから」
「はい、ごめんなさいエレオノール姉さま」
いつも優しくてニコニコしているちい姉さま、眉間に皺を寄せて厳しい顔をしているけれど本当は私のことを心配してくれてるエレオノール姉さま、二人にも心配そうな顔でそう言われてしまったので、不安にさせないように積極的に食器を動かす。
でもやっぱり何か違う。 何かって何だったかしら?
――理想の夢の中で――
食事も終わり、母が私の魔法の手ほどきをしてくれるというので中庭に移動する。
「ではルイズ、まずは錬金からやって見なさい」
「はい。……錬金」
目の前に落ちている石ころに向かい杖を振り、呪文を唱える。眩い光が放たれた後、石ころは光輝く金属に生まれ変わる。それを母がひょいと拾い様々な角度から観察する。
「ふむ、確かに金になっていますね、よくできましたルイズ」
「はい、ありがとうございます」
無事に魔法を成功させた私を母が褒めてくれた、なんだか初めて魔法を褒められたような感触がしてこそばゆかった。
初めて? 母はいつも魔法を成功させた私を見て褒めてれてたはず…
――眠れ眠れ――
魔法の成功の証である金を手に取りまじまじと眺めて見る、成功してとても嬉しいはずなのに何かが違う気がする。そもそもなんで成功したなんて思ったのかしら? 杖を振って呪文を唱えていつも通りにすれば魔法が出るのは当たり前のはずなのに。
当たり前なのにどうして成功したなんて? まるで失敗したことがあるみたい…
--永遠に永遠に――
「確かによくできてます。しかしそれでは駄目です」
「え?」
魔法は確かに成功している、錬金で金を作れるだけで十分にすごいことのはずだ。なのに何故に母は駄目出しをするのだろうか?
「見事な魔法です、しかしルイズ、それは貴方の魔法ではないでしょう?」
私の魔法? それは何?
「Please, call my name」
突然、私の胸元から声が聞こえた。胸元に視線をやるとクリスタルのようなアクセサリーがぶら下がっていた。
「あなたが喋ったの?」
「Please, call my name」
名前を呼んで? でも私は貴方の名前なんて分からないわ。 本当に分からない? 忘れているだけ?
「ルイズ、選びなさい。 偽りの魔法を持って幸福な夢の中で生きるか、貴方の本当の魔法で大切な未来を勝ち取るか」
偽りの魔法でも幸せなままで過ごせるならそれはとっても楽しい気がする。でもそれで本当にいいの?
「Please, call my name」
私はどうしたいの? ここで一人、空想の幸せに浸りたいの?
「Please, call my name」
違う、そうじゃない。それは私じゃない。
「ルイズ、私は貴方にどちらかの選択を強要はしません、どちらを選んでも私は、私たち家族は貴方を守りましょう。ただ一つだけ、あなたは誇り高きヴァりエール家の娘、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。ならばどうすればよいか、答えは決まっているはずです」
そうだ、私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。
アクセサリをぎゅっと握りしめる。何を迷うことがあっただろうか、答えはとうに出ている。
「ありがとうございます母様、父様、姉さま。」
いつのまにか目の前には私の自慢の家族が揃っていた。いつも険しい顔をしているエレオノール姉さまも含めてみんなが私を笑顔で見ている。
――眠れ眠れ――
うるさい。
――永遠に永遠に――
邪魔だ。
「Please, call my name」
「ごめんね、待たせたわね。いくわよテゥース!」
「Yes master, stand by ready, set up!」
名前を呼ぶ、私の大切な相棒、私の足りないところを補ってくれる仲間。一度光に包まれ形が変わる、小さなアクセサリーからレイピアのような細見の棒状になる。レイピアのような外見だが剣ではない、タクトだ、剣でいう柄にあたる部分に澄んだクリスタルの輝きが光る。
――眠れ眠れ――
――永遠に永遠に――
「さっきから五月蠅いのよ!いい加減消えなさい!」
テゥースを振るうとともに、円形の魔法陣が私を囲むように幾つも現れる。
「エクスプロージョン!」
その呪文とともに魔法陣から外側に向けて爆発が起こる。そう、これが私だ、私の魔法だ!
頭の中で囁いてくる声を吹き飛ばすと、いままで幸せで輝いて見えていた世界が紙で出来た薄い絵のようであったことに気が付く。私の魔法でところどころ穴だらけになった世界、その穴から闇が迫ってきた。波のように闇が迫り、再び私を取り込もうとする。しかし何も恐れることはない。
「誰の娘に手を出しているのですか?」
横から刃を伴った強風が闇を吹き飛ばす。
「いきなさいルイズ、ここは私たちが引き受けます」
母が杖を振るう度に闇が押しのけられる、その隣ではエレオノール姉さまがゲシゲシと闇を足蹴にしている。
「みんな、ルイズを案内してあげてね」
ちい姉さまの言葉と共に、沢山の動物たちが彼女の回りを囲う。みんなちい姉さまを好いている子達だ。
「ありがとうございます、ちい姉さま」
動物達に導かれ、闇の中で唯一の光が見える方へと進む。しかし、闇はなおも私に追い縋ろうする。しかし恐れることない。父の魔法がその闇を吹き飛ばす。
後ろは私の大好きな家族がいる、ならば私は後ろを向かず前に進むだけだ。
やがて、追い縋る闇も消え去り、家族の声も聞こえなくなる。
いつのまにか数が減り最後の一匹になっていた子猫の頭を撫でると、子猫はうれしそうに鳴いて、光になって消えていった。もう案内はいらない、行くべき場所は分かっている。
「まったく、寝坊助なんだから。待っていなさい、いま起こしに行ってあげるわよ、はやて!」
後書き
ルイズちゃんイン闇の書
テンプラ、間違ったテンプレだな
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