魔法少女なゼロ!
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本編
第零話
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは貴族であった。ハルケギニアと呼ばれる世界のトリステインという国の公爵家の三女であった。
厳格であるが精一杯の愛情を注いでくれる両親、いつも厳しい言葉でルイズをたしなめるが根は優しくルイズのことをいつも心配に思ってる長女、病弱ではあるが優しく強い意志を持っている次女、そんな親と姉の姿に尊敬の念を抱いていたルイズは、自らも皆のような立派な貴族になりたいと考えていた。
まだ生まれてから八年程の時しか過ごしていなかったルイズは一生懸命に貴族たらんとしていた、まだ幼いその容姿では子供が背伸びをしているようで実に微笑ましいものだったが、ルイズの中には確かに貴族の誇りとも呼べるような何かが宿りつつあった。
同じ年代の子供と比べても聡明で、将来は必ず立派な貴族に成長するだろうと周囲から期待されていた。長女は有能だが少し性格にトゲがある、次女は病弱で不謹慎ではあるが恐らく早死にしてしまう、でもルイズお嬢様がいらっしゃるならヴァリエール公爵家も安泰だ、と使用人たちの間でも話題になっていた。
しかし、ルイズには貴族として非常に重大なものが欠けていると発覚した。
それは魔法の才能であった。
魔法とは始祖と呼ばれるものが与えた奇跡の術であり、六千年もの間、脈々と受け継がれた力であった。そして始祖の血を受け継ぎ、魔法の才によって国を治めるものが貴族であり、多くの貴族にとっては自らを貴族たらしめる象徴であった。
その魔法がろくに使えないと分かった時の皆の落胆は凄まじかった。中には平民の拾い子ではないか、などと彼女が親から受け継いだ美しいピンクブロンドの髪も目に入らないような無礼なことを噂し始める使用人も一部いた。
しかし、ルイズは諦めなかった。両親と姉も彼女を励ましており、ルイズの心が折れるようなことはなかった。
そこでルイズは、まず家中の本の中から魔法についての記述があるものを集めた。教本だけでなく魔法使いの書いた日誌のようなもの、とにかく魔法の魔の字が少しでも載っているものを集めた。
「錬金」
ルイズは教本を見ながら近くに落ちていた石ころに向かい杖を振る。『錬金』とは簡単に言ってしまえばある物質を異なる性質を持った別の物質に変えてしまう物理法則に正面からケンカを売ってるような魔法である。
しかし、その結果は爆風とともに返ってきた、本来であれば目の前には錬金によって生み出された物質が存在せず石ころは爆弾となった。勿論ルイズは石ころを爆薬に錬金しようとしたわけではない。ただなんらかの原因で失敗してこうなっていた。しかしルイズは教本から過去のメイジが記した日記のようなものに持ち替え、その中のある記述からこれはただの失敗ではないと判断した。
その記述とは運悪く火竜に遭遇してしまったメイジが慌てて火竜に向けて杖を振ったが、集中出来ず魔法が失敗してしまい絶対絶命の危機に陥ってしまったとういものだ。
この記述と自らの失敗魔法を見比べた結果ルイズはある違和感を覚えた。才能がないと揶揄される自分の失敗魔法の爆発はかなりの威力がある、おそらく人間の一人や二人ならば吹き飛ばせる威力があるのだ。そして深くは考えたくないが、この失敗魔法を石ころに当てた時の余波ではなく、直接人体に向かって放てば凄まじいことになってしまうのではないか。ここで先ほどの記述に戻ると、どうしても拭いきれない疑問が生まれる。
即ち、『火竜に向けて』『失敗魔法』を放ったならば、火竜の体に爆発が発生するので少なくないダメージを与えられるだろう。ならばどうして『絶体絶命の危機』に陥るのか?
その疑問の答えはルイズの頭脳を持ってすれば容易く求められた。この本の作者は魔法を失敗しても爆発しないということだ。勿論この本のメイジが特別で爆発しないのかもしれないので、複数の書物を確認し特別なのは自分であると結論付けた。
そこで更に疑問が生まれた、自分が特別なのだとしたらこの爆発はいったいどうして起こるのか?
何度も爆発を起こして見てもよくわからなかったので、今度は呪文を変えて様々な種類の魔法で試して見た。その結果、『錬金』などの明確な対象がある魔法はその対象への命中精度が高く、『ファイヤボール』などのどこから炎を出しているか明確でないものは明後日の方向に向かってばかり爆発が起きることが分かった。
そして、火風土水の四種類に分類される魔法の中で風の魔法と水の魔法を使った時のほうが火と土に比べて爆発の威力が高いことが分かった。
この時、ルイズはまだ知らなかったが火風土水の四系統と言われる魔法には実はもう一つ『虚無』と呼ばれる系統が存在していた。そして虚無を加えた五系統の魔法を相関図にしてみると、ペンタゴン、つまり正五角形の形になっており、一番上の頂点に『虚無』その左の頂点が風、右の頂点が水、そして風の下に土、水の下に火がある。
もしルイズがこの関係を知っていたならば、自身の特異性と虚無に近い二種類の魔法の失敗の威力が高いことから、自分の属性が虚無である可能性に思い至ったかもしれないが、『虚無』の魔法は魔法の開祖であり信仰の対象ともなっている『始祖ブリミル』が使ったとされる伝説の属性であり、ほぼお伽話のような扱いを受けていたそれを真面目に研究するものなど皆無であり、誰もルイズにそれを教えてくれる者はいなかった。
そして自らが虚無だと気づかない哀れな少女ルイズは魔法の種類と爆発には何か関係があることを確信し、更に他の魔法も試してみようと、その魔法を唱え始めた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
自身が両親の祝福と共に与えられたら名前、そして公爵家という大貴族としての誇りとして家名を誰に恥じるともなく高らかに唱える。
「5つの力を司るペンタゴン」
そう、この呪文は5つの力によるものなのだ、火でも水でも風でも土でもなく、虚無でもない。全てを内包したペンタゴンなのだ。故にまだ見えぬルイズの虚無を持ってして正しく発動する数少ない魔法なのだ。
「我の運命に従いし、使い魔を召還せよ!」
その声は魔法が使えなくとも決して折れることのない『不屈』の心を体現するかのように、ハルケギニアから遠く遠く次元の壁すらも挟んだ遥か遠くの世界の先までも果てしなく届く。
そして扉は開いた。鏡のような光沢を持ちながら何故か自身の姿は映らない不思議な平面がルイズの前には現れていた。
ルイズは目の前に現れた鏡のようなものに一瞬呆気にとられたあと、自分が魔法を成功させた事実に気づき飛び上がって喜びそうになった。しかし、自分が唱えた魔法が使い魔となる生物を召還する『サモンサーヴァント』であったことに思い至り、一度冷静になる。
サモンサーヴァントによって呼び出される生物はある程度はメイジ自身の属性により左右されるが基本的には完全にランダムだ。なのでドラゴンなどの危険な生物が現れる可能性もあるので、出てきた生物に契約の証として『コントラクトサーヴァント』をするまでは油断してはならないのだ。
ルイズはどんな生物が出てこようと絶対にコントラクトサーヴァントを成功させてやるつもりだった。そしてその使い魔を見せて両親を安心させてやり、自分の属性を詳しく調べ、それからそれから、と次々に未来の輝かしい光景を想像していたが、しばらく待っても何も出てこないのでその結論に至ってしまった。もしルイズが一人でこっそりと魔法の練習などせずに誰かの監視の元で行っていたならそのようなことにはならなかっただろう。
「これは、きっとこっちから迎えにいくのね!」
そういって本来であれば向こうから何かが出てくる筈だったその鏡のようなものに飛び込んでしまった。もしルイズに正しい知識があり、誰かの監督の元での行いであればその行為を必ず止めただろう。しかしこっそりと魔法を成功させて両親を驚かしてやろうと無邪気な考えを持っていたルイズはその中途半端な聡明さと、幼さが仇となった。
そしてその日、ヴァリエール公爵家から、トリステインから、ハルケギニアから、ルイズは消えてしまった。
そして本来、その扉を潜る筈だった幼い少年は遊び疲れてお昼寝の真っ最中であり、目の前の鏡のようなものの存在に気がつかないまま鏡は消えてしまった。
そして、逆流してしまったその扉はエラーを起こし、大幅に座標が狂ってしまった。その座標とはある組織からこう呼ばれている場所であった。
第97管理外世界『地球』と。
後書き
ルイズとリリなののクロスが書きたかった
ルイズ魔改造が書きたかった
ただそれだけだ
次回は大幅に時間がとんでルイズ帰還するの巻から
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