K's-戦姫に添う3人の戦士-
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1~2期/啓編
K15 隠し事なんてなかったのに
「クリスちゃん!!」
ちょ、響ちゃん!? 危な…!
響ちゃんの体当たりで、クリスちゃんを狙ってたネジ型ノイズは炭化した。
「立花!」
「お前何やってんだよ!」
倒れた響ちゃんをクリスちゃんが受け止めてくれた。
急いで駆け寄って、響ちゃんの前にしゃがんだ。
外傷はないように見えるけど、骨とか筋肉がイッちまってたらおれにも手が出せねえ。
「ごめん、クリスちゃんに当たりそうだったから、つい……」
クリスちゃんの顔がカッと赤くなった。
「馬鹿にして! 余計なお節介だッ!」
おい! 響ちゃんはあんたを体張って助けたのに、その言い方はないだろ!
「――命じたこともできないなんて、あなたはどこまでワタシを失望させるのかしら」
この場の誰のでもない声。つい声の主を探す。
海に突き出た桟橋に、喪服を着た女が一人、立ってた。ソロモンの杖を持って。
「っフィーネ…!」
? クリスちゃん、怯えて……?
「フィーネ?」
「音楽の…楽譜の終止記号…だったと思う」
響ちゃんがぼんやり状態なのに解説してくれた。
「こんな奴がいなくたって、戦争の火種くらいあたし一人で消してやるッ! そうすればあんたの言うように、人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」
ちょ、そこで響ちゃん投げてんじゃねえよ!
何とかキャッチ。危なかった。
風鳴サンがおれたちを庇うみたいに前に立ってブレードを構えてくれた。こういう時に頼もしいってズルイよ、先輩。
「もうアナタに用は無いわ」
「!! 何だよそれ……」
フィーネとかいうらしい女が手を広げると、何かの粒子っぽいものが手の平に集まって、消えた。
またノイズが出てきた。今度は竹トンボ型。しかも多い。けど、全部、風鳴サンが斬り伏せてくれた。
その間にフィーネもクリスちゃんも行っちまったけど。
風鳴サンはブレードを片しておれらのほうへ歩いて来て、片膝を突いた。
「ケガはないか?」
「おれは特には。でも、でも響ちゃんがっ」
「わたしはへいき…へっちゃらだよ…」
風鳴サンが立ち上がった。
「とにかく。一度、二課本部へ帰投しよう。話は全てそれからだ」
響ちゃんのメディカルチェック中、おれは緒川サンに頼んで未来ちゃんのとこに連れてってもらった。
案内された一室に、自動ドアにぶつかるスレスレな勢いで飛び込んだ。
「未来ちゃん!」
うわ、過去最高に不機嫌な顔。あくまで響ちゃんを通した付き合いしかないおれだけど、未来ちゃんが今、メッチャ怒ってるのは分かるぞ。
「あ…えっと…」
「大体のことならここの人たちに聞いたわ。今さら聞くことなんてないと思うけど」
「響ちゃんのこと…も?」
さらに眉間のシワを深くした未来ちゃん。……うわ。地雷踏んだ。
でも、これだけは言わないと。
「~~っ未来ちゃん! おれのことはキライでも信じなくてもいいから。だからせめて響ちゃんの話だけは聞いてあげて。響ちゃん、ずっと悩んで」
「聞きたくない」
「未来ちゃん!」
「どうせまた嘘つくんでしょっ。もうヤダ。姉弟揃ってサイテーだよ…わたしが毎日どんな気持ちで待ってたと思ってるの…」
「――そうかよ」
「どうせまた嘘」ね。だったらこっちも手加減しねえぞ。
「奪うからな」
「え?」
未来ちゃんが座るソファーの前のテーブルに手を突いて、至近距離で未来ちゃんと顔を向き合わせた。
「未来ちゃんから響ちゃん、奪ってやるからな。おれと響ちゃんが血が繋がってないの、未来ちゃんは知ってるだろ」
未来ちゃんは目を瞠っておれをまじまじと見上げてきた。
「どうした? 『どうせまた嘘』なんだろ? おれらの言葉は。気にすることなんかねえじゃんか」
「啓くん…あなた…!」
胸、痛い。おれだって好きでやってんじゃねえよ。未来ちゃん、嫌いじゃねえもん。脅したくなんかねえ。けどこんくらい釘刺しとかないと、未来ちゃんが響ちゃんに何言うか分かったもんじゃねえんだから。
「んじゃこれでサイテー姉弟の片割れはもう行くわ。オヤスミ。よい夜を」
できるだけ不敵に見えるように笑いを作ってから、未来ちゃんに背を向けて部屋を出た。
リディアン音楽院のある高台を降りて公園地帯を歩き始めたとこで、やっと気が重くなってきた。
……未来ちゃんがあれで響ちゃんと仲直りできるか、おれの言葉なんざ無視するか。
はあ。何が悲しゅうて一番好きな女の子の親友を脅さなきゃなんねえんだか。そもそも脅す必要あったのか?
だめだ。考え始めたら思考がドロドロしてきた。
もう夜だし、遅くなるって母さんに電話かメールしなきゃいけないのに、なんか億劫でやりたくねえ。
なんか、疲れた、いろいろ。
公園で休んでくか。ネカフェ行けるほどこの辺の土地勘ねえし。
ちょうどすぐ前にある自然公園に入ってベンチを探してると……んあ? 何でクリスちゃんが子供と一緒にいるんだ?
ここで意識がバトル用に切り替わらないくらいには、脳みそがフローズンしてた。
「あーもーめんどくせえ! 一緒に探してやるから大人しくしやがれ!」
「こんばんは~。何やってんの?」
「あ? ――な、て、てめえ!!」
そんなのけぞるみたいに拒否られるとおれも悲しいんですが。
「そこの子供ら何? 誘拐?」
「ただの迷子だ! あたしは何もしてねえ!」
「さっき一緒に探してやるとか言ってなかった?」
「聞いてたのかよ。性格悪ぃな、お前」
自覚はしてマス。
てかこういう禅問答やりたくて声かけたわけじゃなくて。
「おれも行っていい?」
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