| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

K's-戦姫に添う3人の戦士-

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

1~2期/啓編
  K14 言葉を尽くす

 響ちゃんの全力右アッパーを腹に食らった白い子が、地面を抉る勢いで後ろにぶっ飛んだ。よっしゃあ! 初白星!

 って、何だそれ! 白い子のネフシュタンの鎧、せっかく砕けたのに再生してってる。これじゃイタチごっこじゃねえか。
 さっきの大技の直後で響ちゃんにもっかい頼むとも言えねえし……

 ……てか響ちゃん? 歌い続けてんのは分かるとして、そもそも何で追撃しねえの?

「響ちゃん、あの白いのヤルなら今がチャンスだぞ!?」
「誰が『白いの』だ! あたしには雪音クリスって名前がちゃんとあんだよ!」

 おう。思いがけず名前が知れた。

「そっか。クリスちゃんっていうんだ。――ねえクリスちゃん、こんな戦いもう止めようよ」

 響ちゃんはあくまで説得路線ってことか。さっき言ったのと似たようなことをまた訴えてる。

 響ちゃんが攻撃に出ないのはもういいとして。えーと……ああ、もう、おれも「クリスちゃん」でいいや。クリスちゃんが仕掛けてこねえのは何でだ? 前は(思い出したくもねえけど)響ちゃんの絶唱で、鎧が壊れたのを見てすぐ撤退したのに。今は鎧のダメージを気にしてない?

「……お前クセぇんだよ」

 クリス、ちゃん?

「嘘クセぇッ! 青クセぇッ!!」

 クリスちゃんが立ち上がって走ってくる。やっぱだめだったか。

 響ちゃんの前に出てバリアドーム形成。クリスちゃんのパンチやらキックやらを全部弾き返した。

「安全圏で守られて叫ぶだけの綺麗事が、あたしに届くと思うんじゃねえぞ!」
「! そんな、わたしはそんなつもりじゃ…!」
「うっせえ! ――ぶっ飛べよ、アーマー・パージだ!!」

 うっそだろう!? ネフシュタンの鎧が砕けた上に、破片の一つ一つが鋭い針みたいになって飛んで来た。そんな使い方できるのかよ!
 くそ、バリアドーム、硬度プラス! とにかく響ちゃんにだけは傷一つつけねえように……


            「 ――Killter Ichi-bal tron―― 」


 この詠い方……こんなことってあんのかよ……

「――見せてやる。イチイバルの力だ」

 クリスちゃんを覆ってたエネルギードームが爆ぜて、中からさっきとは全然違うアーマーのクリスちゃんが現れた。

 ――例えるなら、赤いアゲハ蝶。響ちゃんや風鳴サンと比べたら、いくらか「女の子」って感じが強い装甲。
 それに、素顔。ずっとバイザーしてたけど、今のクリスちゃんは顔を隠してない。こんなに綺麗な女の子だったのか。

「歌わせたな……あたしに歌を歌わせたなッ!」

 クリスちゃんのアーム装甲がボウガンに変形した。

「教えてやる。あたしは歌が大っ嫌いだ!」
「歌が、嫌い……?」

 あっちの歌が始まった。シンフォギア装者にとって、歌はバトルスタートの合図だ。


            傷ごと抉れば忘れられるってことだろ?
           いい子ちゃんな正義なんて壊してやろうか


 もっかいバリアドーム展開だ! イチイバルの赤い矢を全部受け止め、て。
 なっ、バリアが――砕けた? プリトウェンって絶対防御じゃなかったのかよ!

 ――違う。原因はおれ自身だ。最初に歌った分のフォニックゲインが切れたんだ。あの後は響ちゃん、今はクリスちゃんで、おれが歌う隙がなかった。純粋なガス欠。こんな時に!

「啓! 走って!」

 響ちゃんがおれの手を掴んで林の中を走り出した。

 これなら木が邪魔になってクリスちゃんも狙いを定めにくくなるはず……

 って、どぇえ!? ボウガンがガトリングに化けたぁ!? しかもミサイル付き!? これじゃどこ走ったって攪乱にもならねえじゃねえか!

 頼むよ、プリトウェン。もっかいだけ。今一度だけ響ちゃんを守る盾を、おれに――!
 ふり返った直後。なんかでけえ板みたいなのが突き刺さって、弾丸もミサイルも全部防いじまった。

「盾…啓?」
「ち、違うおれじゃない!」
「じゃあ」
「――剣だ!」
「翼さんっ!?」
「風鳴サン!?」

 そうだよ。この巨人サイズのブレード。あの人以外にありえねえ。
 見上げれば、ブレードの頂点に風鳴サンが立ってる。

「遅れてすまない。あの場に残っていた民間人の保護に手間取ってしまった」
「未来の……」

 目に浮かぶわ。多分、未来ちゃん、風鳴サンに質問攻めだったんだろうな。どうして響ちゃんが、って。で、風鳴サンはそれからなかなか逃げ出せなかった、と。

「そこにいなさい。姉のほうは特に、まだ絶唱の負荷もデュランダル覚醒の負荷もいつぶり返してもおかしくない。ここは私に任せなさい」
「は、はい」

 やっぱオイシイとこ掻っ攫っていくのはこの人だよなあ。まあ正直、有難い来援だから文句言えねえけど。


                      去りなさい
                夢想に猛る炎 神楽の風に滅し散華せよ
                 嗚呼 絆に全てを賭した閃光の剣よ


 動き速い。避けるの巧い。武器の使い方すごい。この人、こんなに強かったんかよ。
 常識的に考えたら、銃と剣で戦ったら銃のが勝つのに。風鳴サン、クリスちゃんの弾丸をまるで恐れちゃいない。

「く…っ」

 クリスちゃんが両手のガトリングを風鳴サンに向けて構えた。


 バキン! バキン!


 は?
 ここでノイズ!? しかも今落ちてきたネジ型、明らかに、絶対、クリスちゃんのガトリング狙いだった。
 武器をなくした。なら次の狙いは――本人。

「クリスちゃん!!」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧