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K's-戦姫に添う3人の戦士-

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1~2期/啓編
  K13 胸の想いを伝えるために


「ちょこまかしたのが、一丁前に挑発か!」

 乗ってやるぜといわんばかりに付いて来る白い子。陽動成功だ。

 走って。跳んで。どんどん林の奥へ。このまま海岸線まで行けば、もう人っ子一人いないだろう。
 誰の邪魔も入らねえとこまで。こいつが響ちゃんをふり返ることもできないくらい遠くまで。

「 『届け 熱い想い 降り積む白雪さえ融かして』『溢れる 切ない想い 音の絶えたセカイに響いて』―― 」

 足を止めた。
 木々の向こうにはキラキラ光る海面が見える。ここまで来たならもう大丈夫、だよな。

 白い子はおれの正面に着地した。

「今回はあの馬鹿だけじゃなくお前も連れて来いってことでなあ。悪ぃがやらせてもらうぜ」

 今度のターゲットはおれもなのか。よかった。響ちゃんから離れといて。一緒の場所にいたら、一緒に攫われる可能性大だった。

「やるんなら、やり返すまでだ」
「てめえは姉貴のほうより話が通じやすそうだな」

 白い子はネフシュタンの鎧付属の宝石の鞭を持ち、おれに放った。
 腕をクロスさせてディフェンス。自分の身長分のバリアシールドを前面展開。

 白い子はニヤニヤしながらネフシュタンの楔でおれの盾を何度も鞭打つ。バリアシールド自体は傷一つついてないけど、バリアを支えてるおれには振動が伝わってる。

 どうする? 確かにプリトウェンは絶対防御のシンフォギアだ。でも、前に一度殴ったのが白い子に通用しなかったのは覚えてる。どう局面を変えればいいか……


「―― 『その場しのぎの笑顔で 傍観してるより 本当の気持ちで』 」


 この歌声。そんな。まさか。


「 『向かい合う自分でいたいよ』 ――!」


 せっかく未来ちゃんの前で顔バレ防いだのに。

「響ちゃん! 何でッ!」

 なんか、どうしてか、泣きたい気持ちになった。


 響ちゃんのパンチを、白い子は受けずに避けた。

 パンチは何かのエネルギーでもぶつけたのか、たまたまぶつかった木の1本から後ろの木々を凄まじい勢いで全部ぶち折った。

「どんくさいのが救援のつもりか?」
「どんくさいなんて名前じゃない!! わたしは立花響、15歳。誕生日は9月の13日で血液型はO型。身長は、この間の測定では157センチ。体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげる! 趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはん! あと、彼氏いない歴は年齢と同じ!!」

 ……響ちゃんのその履歴にピリオドを打つのがおれの人生最大の目標だったりする。

「な、何をトチ狂ってやがるんだお前……」
「わたしたちはノイズと違って言葉が通じ合うんだから、ちゃんと話し合いたい!」

 ――話し合うだけで理解し合えたら、そんなもんはもう「人間」じゃねえ。
 言葉なんかじゃ、自分を分かってもらうことも、相手を分かってやることもできねえ。
 できるとしたらそいつはもう「怪物」だ。「人間」の規格外品だ。

 2年前のツヴァイウィングのライブ生存者になった響ちゃん。弟のおれにもバッシングの余波はあった。今もある。だからおれは友達も作らないし、家族と未来ちゃん以外の誰にも心を開かないって決めてた。
 決めてた、のに。

 響ちゃんは白い子だけじゃなく、(本人はきっと意図してないけど)おれの心まで揺さぶりにかかった。

 あんなに全力全開で主張されたら、信じたくなる。
 目の前のこの女の子とも理解し合えるんじゃないかって。

「話し合おうよ! わたしたちは戦っちゃいけないんだ! だって言葉が通じていれば人間は」
「うるせえッ!」

 その響ちゃんを上回る、悲痛な、声で。白い子が響ちゃんの主張を全否定した。

「分かり合えるものかよ、人間が。そんな風にできているものか。気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえッ! 分かっちゃいねえことをぺらぺらと知った風に口にするお前がァッ!!」

 この拒絶反応からするに、おれら、この子の地雷踏み抜いたみたいだ。

 白い子は高くジャンプした。投げてきたのは、風鳴サンを瀕死に追い込んだビリビリ鉄球。
 でも慌てない。おれが持つのは、絶対防御のシンフォギアだ!

「持ってけダブルだ!!」

 バリアシールド展開。弾き返す。
 ダブルだろうがトリプルだろうが、後ろに響ちゃんがいる限り突破させるおれだと思うな。

「はあああぁぁ――」

 ! 響ちゃん、それまさか、前に風鳴サンが言ってた、ガングニールのアームドギア!?

「エネルギーはあるんだ。アームドギアに形成されないなら、その分のエネルギーをぶつければいいだけ――!」

 それもろにレベルを上げて物理で殴る的発想じゃねえかよ!! 右脳系すぎねえ姉上サマ!?

「させるかよォ!」

 白い子からダブルで飛んでくる宝石の楔。バリアサークル形成、さっきより大きめに! ――よし、防げた!

「雷を――」

 響ちゃんがおれを追い抜いて走っていく。

「握り潰すようにぃぃッ!!」

 腰のバーニアを噴いたことで、響ちゃんの推力は段違いに上がった。どんどん白い子に迫ってく。

 おっと。今度は後退させねえぞ。バリアドーム形成。ドームの中に白い子を閉じ込める!

「最速で、最短で、まっすぐに、一直線に! 胸の響きを、この想いをッ! 伝えるためにぃぃッ!!」

 響ちゃんが射程内に入った瞬間にバリアドームを消した。

 アームドギア分のエネルギーを込めた右アッパーが、白い子の腹をぶち抜いた! よっしゃあ! 
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