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戦国異伝

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第二百十八話 太宰府入りその一

                       第二百十八話  太宰府入り
 信長が率いる三十万の大軍は意気揚々と九州に向かっていた、安土を発ち都から山陽の道を通り九州に向かっている。
 その留守は安土は平手、大坂は信行が守っていた。その安土においてだ。
 平手は安土城において留守を守っている二万の兵達にだ、こう言っていた。
「よいか、何かあればじゃ」
「はい、その時は」
「すぐにですな」
「我等は動き」
「乱を抑えるのですな」
「そうじゃ、その時はわしが兵を率いる」
 平手自身がというのだ。
「よいな」
「やはりまだ、ですか」
「乱を起こそうという者がいますか」
「この天下に」
「左様ですか」
「うむ、やはりな」 
 平手もだ、この名を出したのだった。
「松永じゃ」
「松永弾正ですか」
「あ奴ですか」
「松永家自体が信用出来ぬ」 
 これが平手の考えだった。
「信貴山にいる者達もな」
「謀反を起こすやも知れぬ」
「何時でも」
「左様ですか」
「そうじゃ、確かに天下は定まろうとしている」
 織田家による天下布武がだ、成ろうとしているというのだ。しかし平手はそうした中でもだというのである。
「しかしじゃ」
「悪弾正は、ですな」
「何をするかわからぬ」
「それ故に」
「何かすればですな」
「即座に」
「兵を大和まで進める」
 信貴山城のあるその国までというのだ。
「勘十郎様にお話してな」
「そして、ですな」
「すぐに」
「あ奴を討つ」
「そうしますな」
「わしもあの男は信じておらぬ」
 全く、という言葉だった。
「あ奴は悪じゃ、何をするかよくわかる」
「謀反ですな」
「常にその隙を伺っている」
「それが為に」
「我等も」
「何かしようとすればすぐに兵を動かしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「天下の憂いを絶つぞ」
「そしてそれが、ですな」
「天下泰平の礎ともなる」
「あの蠍を潰すことも」
「それもまた」
「奸賊は天下を脅かす」
 こうも言った平手だった。
「これはよく言われておるな」
「昔からですな」
「どの国でも」
「明を見よ」
 平手はこの国のことも言った。
「あの国は宦官がおるが」
「あの男の部分を切り取ったという」
「そうした者達ですな」
「本朝にはいませぬが」
「あの者達がですか」
「宦官の中には昔から佞臣がおりじゃ」
 そして、というのだ。
「世を乱しておる」
「皇帝の傍にいて」
「そして、ですな」
「己の利だけを貪り」
「そして世を乱す」
「そうしているのですな」
「そうした者と同じじゃ」
 平手は強く言った。 
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