戦国異伝
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第二百十八話 太宰府入りその二
「あ奴はな」
「そうした邪な佞臣ですな」
「それが松永弾正という者」
「だからですな」
「油断せずに」
「何時かは」
「消す」
まさにというのだ。
「隙を見て。どんな理由をつけてもじゃ」
「では信貴山にも」
「すぐにですな」
「攻めて、そうして」
「滅ぼすのですな」
「そうするとしよう、やがてはな」
こうした話をしてだ、そしてだった。
平手は安土においても松永を警戒していた、織田家筆頭家老の彼もまた松永を消そうと考えていたのだ。
その中でだ、織田家の軍勢はというと。
遂に三十万の軍勢の先陣が玄界灘のところに来た、信玄はその海を見て周りにいる二十四将達に対して言った。
「海じゃな」
「九州に渡る」
「その海ですな」
「いよいよですな」
「その海がですな」
「見えてきました」
「甲斐には海がない」
信玄はここでこのことも言った。
「信濃にもな、駿河や遠江にはあったが」
「はい、しかし」
「それでもですな」
「今はこうしてですな」
「海も見られますな」
「織田家に入ったなら」
「うむ、面白いことじゃ」
その海を見つつだ、信玄は楽しげに笑った。
そしてだ、彼は自分の右隣にいる謙信を見た。二人を境に右に上杉、左に武田の者達がいて黒と赤に分かれている。
二十五将と二十四将もだ、それぞれ右と左に分かれている。そうした中でだ、信玄は今度は謙信に言ったのである。
「貴殿とも轡を並べておるしのう」
「確かに」
謙信もまた笑顔で応える。
「わたくしもまた」
「そう思っておるか」
「はい、越後には海がありますが」
「それでもじゃな」
「貴殿とこうして轡を並べることは」
それがというのだ、謙信もまた。
「わたくしも嬉しく思っています」
「左様じゃな」
「はい、この世の縁は面白いものです」
「全くじゃ」
「そして共に戦う」
「天下の為にな」
「わたくしは前より思っていました」
謙信は信玄の顔を見つつ穏やかな笑顔で言った。
「貴方は天下の為に働けばその時は」
「どうなっているかというのじゃな」
「能臣になるとです」
「ははは、わしが能臣か」
「はい」
それにというのだ。
「そして実際にです」
「左様か」
「乱世の奸臣」
「わしは奸臣じゃったのか」
「甲斐の守護でありながら幕府の命に従っていませんでした」
甲斐だけで留まらず信濃や駿河等を攻めたことによる言葉だ。
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