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戦国異伝

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第二百十七話 九州騒乱その十三

「安心していいかと」
「幾らあ奴でもです」
「そうそう容易にはです」
「手出しを出来ませぬ」
「それは何より、しかし」
「しかしですな」
「相手が相手だけに」
 川尻と前野も松永を見つつ話す。
「油断は出来ませぬな」
「絶対に」
「私も兵を率いていますので」
 明智もまた、というのだ。
「何かあれば動きます」
「ですな、では」
「奇妙様は我等でお守りしましょう」
「今も謀反はしていませんが」
「それでも」
「はい、何時かです」
 それこそだ、何時かはというのだ。
「謀反を起こします」
「それがあ奴の常ですから」
「ですから」
「今にも」
「まさかここまで」
 明智は松永が九州攻めまでには謀反を起こすと思っていた、しかしそれが九州攻めまでなくそれでというのだ。
「何もしないとは思いませんでしたが」
「ですな、しかし」
 蒲生がその明智に言って来た。
「それはです」
「はい、あくまで今はということで」
「あ奴は間違いなくです」
「何かしますな」
「それは確実です」
 こう言うのだった、明智に。
「ですから」
「用心を重ね」
「隙を見付け討ちましょうぞ」
「ですな」
 とかくだ、織田家の主な家臣達は松永を警戒していた。今も尚その命を狙っていた。
 その松永にだ、彼の家臣達が囁いていた。
「やはりです」
「今もです」
「殿はお命を狙われていますぞ」
「隙あらばと」
「そうじゃな、まあこうなればな」 
 松永はその彼等に言うのだった。
「長老からも言われている、そろそろな」
「では」
「いよいよですか」
「ことを起こされますか」
「遂に」
「うむ、上様の軍勢が全て九州に入りな」
 そして、というのだ。
「島津との戦になれば」
「その時は」
「いよいよですな」
「我等は謀反を起こしますか」
「遂に」
「まあのう」 
 松永は逸る家臣達に応える、だが。
 その目は何処を見ているやらだった、その目で家臣達を見ないままだ。そのうえで彼等にこう言ったのである。
「動くぞ、信貴山でな」
「ですか」
「では石川殿や盾岡殿にもですな」
「他の十二家の方々にも」
「そして遂に」
「我等が」
「それはわしがしておこう」
 他の家に声をかけることはというのだ。
「御主達はすぐにな」
「はい、信貴山に戻り」
「そしてことを起こす用意をですな」
「しておくべきですな」
「九州から信貴山まで戻る道もある」
 それも用意されているというのだ。
「ではじゃ」
「はい、殿が下知を下されば」
「我等は」
 松永の家臣達は目を輝かせて主の言葉に応えた、彼等は目を輝かせているがだ。
 やはり松永は何処か遠くを見ていた、まるで何もかもが面白くない様に。そうして彼の家臣達に応えていた。


第二百十七話   完


                         2015・2・15 
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