FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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X791年 日常編
X791年 妖精の尻尾
×791年、ハルジオン港にて・・・第三者side
一人の少年が、じっと海を眺めている。黒髪のその少年は、ただ静かに、海を見つめていた。
「いつまで海を見てるんだい?」
「仕事も終わったし、ギルドに戻ろう」
その少年の後ろから、二人の男女が声をかける。しかし、少年は海を見つめたまま、動こうとしない。
「ふぅ・・・」
「やれやれ」
二人はそこ少年の態度に思わずため息を漏らす。
「早く帰らないと、父さんが心配するよ」
そう言ったのは妖精の尻尾の魔導士、アルザック・コネル
「マカオからあんたのこと頼まれてるのよ。ロメオ」
そう言ったのはアルザックの妻にして妖精の尻尾の魔導士、ビスカ・コネル。旧姓、ビスカ・ムーラン。
「うん・・・」
そしてうなずいたのは、ロメオ・コンボルト。妖精の尻尾、マカオの息子である。
「ロメオ、気持ちはわかるけどさ・・・」
「ピスカ」
ビスカはロメオに何かを言おうとしたが、アルザックは首を横に振りそれをやめさせる。
(ナツ兄・・・)
ロメオは自分の憧れであり、7年前に消息不明になった男のことを思っていた・・・
マグノリアの中心部から外れた丘の中腹に、ひっそりと佇んでいるギルドがあった。
「ロメオはまだ帰って来ねぇのか!!」
そのギルドの中で、マカオは一人苛立っていた。
「アルとピスカの奴、ロメオをほったらかして、イチャイチャしてんじゃあるめぇなぁ!!」
「うるせぇな。いい歳なんだから少しは落ち着けよ。マカオ」
そういってマカオをなだめるのはワカバ。現在、妖精の尻尾はマスターをマカオ、そして、その補佐をワカバが勤めているのである。
「それにしても・・・また人減ったかな・・・」
マックスの言う通り、ギルドの中は人が散漫としている。
「仕方ねぇよ、マックス。こんな弱小ギルドじゃいい仕事回してもらえねぇし」
「ウォーレン、見ろよ。この依頼書の数」
「7年も仕事行かねぇお前には関係ねぇだろ?ナブ」
ウォーレンとナブの言う通り、リクエストボードにはパッと見で数えられるほどの依頼書しか貼り出されていなかった。
かつてフィオーレ最強と言われていた妖精の尻尾は、今は全く逆になってしまっていたのだ。
「キナナちゃん!おかわり持ってきて!!」
「は~い」
ドロイにおかわりを求められ、キナナは返事をする。そのキナナも7年前とはうって代わり、大人な女性へと変貌していた。
「ねぇドロイ、また『大地への圧力が増えた』?」
「太ったっていいてぇのかこのやろう!!」
「自覚ねぇのかよ」
ドロイにそう言ったのはラキ。ドロイは以前までの細身の姿から一転し、かつての面影がないほど太っていた。
「リーダスを見やがれ!!あんなにスリムになって」
「ウィ。俺・・・元々こっちが本当の体だよ」
「俺は鍛えてんだよ!!わからねぇのか!?この筋肉」
ギルドのみんな、7年前とはすっかり変わってしまっていた。
「ったく、レビィが今のお前見たら、なんて言うかね」
「レビィは帰って来ね・・・あ」
ドロイの一言で、ギルドは皆静かになる。そこに、数人の客人が現れる。
「おやおや・・・相変わらず昼間っからしんみりしてるねぇ。これだから弱小ギルドはよぉ」
「覇気がねぇよ覇気が」
「ティーボ、ここにはもう来んなって言ったろうが!!」
マカオは5人組の男たちにそう言う。
「おい、俺たちにそんな口聞いていいのか?マグノリアを代表する魔導士ギルド、黄昏の鬼によ」
「っ!!」
マカオたちはそう言われ押し黙る。
「かつてはフィオーレ最強だったかどうだか知らねぇが、おめぇらの時代は終わったんだよ。建ってるのもやっとのこのボロ酒場と新しい時代の魔導士ギルド、黄昏の鬼じゃ、どちらがよりマグノリアの発展と向上に役立ってるか一目瞭然だがな」
ティーボの言い分に妖精の尻尾のメンバーは怒りを露にする。
「でけぇだけのギルドが偉そうに!!」
「そうだ!!俺たちには魂があるんだよ!!」
「魂じゃ、飯は食えねぇんだよ」
「何しに来たんだ、ティーボ」
マカオはここで話を本題へと戻す。
「今月分の金だよ」
「まだ払ってなかったのか、マカオ!!」
「マスターって呼べっつってんだろ!!」
実は妖精の尻尾は黄昏の鬼から借金をしているのだった。毎月少しずつ返済しているのだが、その取り立てに来たらしい。
「借金の返済が遅れてるぜあんたら」
「今月はいい仕事回って来なかったんだよ!!来月まとめて払うから、待ってやがれってんだ!!」
マカオは半ばキレ気味にそう言う。それに対して黄昏の鬼の面々は、
「おやおや?潰れる寸前だったこのボロ酒場を救ってやったのは誰だっけかな?」
「俺たちがてめぇらの借金肩代わりしてやったんだろうが!!」
恩着せがましくそう言う。
「あんな馬鹿げた利子だって知ってたら、お前らなんかに頼らなかったのに・・・」
ジェットの言葉にラキがうなずく。
「なんか言ったかこのやろう!!」
「よせジェット!!」
「けどよ・・・」
マカオに止められジェットは渋々引き下がる。
「来月まで待ってくれや。ちゃんと払うからよぉ」
マカオがそう頼むと、ティーボはマカオを蹴り飛ばす。
「マカオ!!」
「マスター!!」
マカオはそのままカウンターへとぶつかる。
「吹っ飛び方は一流だよな」
黄昏の鬼はそれを見て大笑いする。しかし、それを妖精の尻尾のメンバーが黙って見てるはずがない。
「てめぇら!!」
「よくも!!」
妖精の尻尾と黄昏の鬼は今にも戦いを始めようとしている。
「手ぇ出すな!!」
「「「「「!!」」」」」
しかしそれをマカオが制止する。
「聞こえたろ、堪えろ」
ワカバもジェットたちを止める。ジェットたちは悔しさに顔を歪ませながら、黄昏の鬼が暴れている姿を見つめているしかない。
一通り暴れると満足したのか、ティーボたちは扉に向かって歩き出す。
「忘れんなよ。来月だ」
ティーボはそれだけ言い残し、自分たちのギルドへと帰っていった。
「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」
ギルドの中は静まり返っていた・・・誰も何も言わない沈黙の時が流れる。
しばらくすると、リーダスのスケッチブックが床に落ち、その中から懐かしい絵が見えている。
三代目ギルドマスター、マカロフの肖像画。
仲良さそうに話しているナツ、グレイ、ルーシィ、エルザの妖精の尻尾最強チームとそれを影から見つめているジュビア。
シャルルを抱え優しい笑みを浮かべるウェンディとセシリーを頭に乗っけピースをしているシリル、そしてリリーを肩に乗せ腕組みをしながら鋭い視線を送るガジルのスリーショット。
三人で笑顔を見せるレビィ、ジェット、ドロイのシャドー・ギア。
ミラ、エルフマン、リサーナと酒をぐびぐび飲んでいるカナ。
雷神衆が全員揃っての集合画。
そして、まだ賑やかだった時のギルド。
みんな、その絵を見て昔を思い出し、涙を流す。
「あれから7年か」
「そんなに経つのか・・・」
「懐かしいな」
「あれ以来、何もかも変わっちまった」
「天狼島が消滅したって話を聞いて、必死にみんなを探したよな」
「だけど、誰一人見つからないなんて・・・」
「評議院の話が本当なら、アクノロギアってのに、島ごと消されたんだ」
「実際色々な機関が捜索に協力してくれたけど、何も手がかりは見つからなかった・・・」
全員その場に項垂れるように話している。
「そりゃそうだよ。あの日・・・天狼島周辺のエーテルナノ濃度は異常値を記録してる。
あれは、生物が形を留めておけないレベルの・・・」
「なんて威力なんだ!アクノロギアの咆哮ってのは!!」
ジェットの言葉を聞き、ナブは叫ぶように言う。
「だって、大昔にたった一頭で国を滅ぼしたって竜なんだろ!?人間が・・・そんなの相手に生きていられる訳が・・・」
ウォーレンは手元の本を見せながらそう言う。
「なんで俺たちの仲間を・・・」
ドロイは自分たちの仲間を狙われたことに納得できない。
「あいつらがいなくなってから、俺たちのギルドは弱体化する一方・・・マグノリアには新しいギルドが建っちまうし」
「たたむ時が来たのかもな」
「そんな話やめて!!」
ラキはワカバに怒鳴る。ワカバはそんな中、ずっと何も言わずに座っているマカオを見る。
「どうした?マカオ」
「・・・俺は、もう心が折れそうだ・・・」
マカオは振り絞るような声でそう言った。
「おめぇはよくやってるよ、マスター」
ワカバはマカオを慰めようとする。だが、マカオは握った手を震わせながら言葉を紡ぐ。
「あれ以来・・・ロメオは一度も笑わねぇんだ・・・」
マカオは涙をこらえられず、崩れ落ちそうになる。みんなもその言葉で、だんまりとする。すると、突然ギルドが揺れ始める。
「これは!?」
「何の音?」
「またオウガが嫌がらせに来たのか?」
ギルドのメンバーたちは何が起きたのか確認するために外へと向かう。
「あ・・・あれは!!」
「オオ!?」
マックスとウォーレンが見上げた先には、見覚えのある巨大な魔導爆撃艇が見える。
「青い天馬の・・・クリスティーナ改!?」
それは7年前、シリルたちが連合軍を組み六魔将軍を討伐する際に活躍したクリスティーナを改良した物だった。
クリスティーナ改はギルドの真上で停止する。
「くんくん・・・くんくんくんくん」
「あれは・・・」
「なっ!!」
「まさか・・・」
ビジター、ウォーレン、マックスはクリスティーナ改の先端部に乗っている男を見て驚く。
「辛気くさい香りはよくないな」
クリスティーナ改に乗っている男はそう言う。それを見たラキは、
「妖怪!?」
「違ぇよ!!」
とんでもないことを言ってしまったので、ワカバが否定する。
「なぜここに・・・」
マカオもギルドの外に出てその男を見上げる。その男はクリスティーナ改から頭から飛び降りる。
「とう!」
「飛んだ!!」
男はキラキラとしながら地上へと接近し、
「メェーン!!」
「「「「落ちんのかよっ!!」」」」
頭から地面に墜落した。
「お待たせいたしました。あなたのための一夜でぇす」
一夜は妖精の尻尾の突っ込みなど気にすることなくそう言う。
その姿は7年前よりも髪が伸び、先程の墜落で頭にはたんこぶができていた。
「オマエ・・・」
「一夜様、少し落ち着いたら?」
「俺・・・空気の魔法使えるし」
「みんな久しぶり」
一夜に続き、クリスティーナ改から3人の男がゆっくりと降りてくる。
「やぁ」
「ヒビキ・・・」
「フン」
「レン!」
「マカオさん、また老けた?」
「イヴ」
その3人とは、一夜同様に連合軍でシリルたちと共に戦ったヒビキ、レン、イヴの通称トライメンズであった。
「青い天馬だ。かっけー・・・」
「何なんだ?一体・・・」
ドロイはヒビキたちを見て惚れ惚れとし、ジェットは何事かと考えている。
「ラキさん、相変わらず美しい」
「お・・・お前、眼鏡似合いすぎだろ?」
「“お姉ちゃん”って呼んでいい?」
トライメンズは降りて早々にラキの周りに集まっていた。
「あの・・・」
「ナンパなら他でやれ!!」
あたふたするラキと怒るマックス。しかし、3人がこれだけで終わるはずがない。
「キナナさん、今夜時間ある?」
「お・・・お前その服似合いすぎだろ?」
「決めた、僕は君の弟になるよ」
「えっと・・・」
「何しに来たんだおめぇら!!」
3人は今度はキナナを囲んでナンパしていた。それを見ていた一夜はスーツに付いた土をはたきながら注意する。
「これ!!お前たち、遊びに来たんじゃないぞ!」
「「「失礼しやした!!」」」
「「え!?」」
トライメンズは即座に二人に頭を下げる。あまりの機敏さに二人は驚く他なかった。
「おい一夜!」
「一体何が・・・」
マカオとワカバが一夜に何しに来たのか聞こうとしたが、一夜は皆まで言わずともわかっていると言わんばかりにポーズを決める。
「メェーン」
一夜がそういうと、トライメンズは一夜の後ろへと集まる。
「共に競い、共に戦った香りを、私は忘れない」
「古文書の情報解析と、クリスティーナの機動力をもって、フィオーレ中のエーテルナノ数値を調べたかいがあったよ」
「なっ!!」
ワカバとマカオはその言葉に驚き、ワカバは葉巻を落としそうになる。
「天狼島は、まだ残っている!」
「「「「「!!」」」」」
それは、仲間たちの生存の可能性を教えてくれる物だった。
「う~ん・・・」
ビスカは双眼鏡を覗きながら辺りを見回している。
「はぁ・・・本当にこの辺なの?」
「何も見えて来ないじゃないか」
今ピスカたちがいるところは、青い天馬から情報を得て、天狼島があるとされている海域のすぐ近くに来ている。
「天馬の奴らの話じゃ、この海域でエーテルナノがなんとかって・・・」
ウォーレンは念話を使い、辺りに呼び掛けているがこれといった反応はない。
「そもそもエーテルナノってなんだよ」
「知るかよ。魔力の微粒子的ななんかだろ?」
マックスは地図を広げながら質問し、ウォーレンもそれになんとなくだが答える。
「ねぇ、本当にロメオを連れてこなくてよかった?」
「無理矢理にでも連れてくるべきだったかな」
ビスカとアルザックはロメオのことを考えていた。ロメオはナツに憧れていたため、そのナツに会えるかもしれないというのであれば、この場に連れてきた方がよかったのかもしれないと二人は考えている。
「まだみんな生きてるって決まった訳じゃねぇんだ」
「だよなぁ。ぬか喜びさせるわけには・・・」
「「レ・ビ・イ!!レビィに会える!!」」
ウォーレンの台詞をジェットとドロイが大騒ぎして台無しにする。それを見て他の4名はため息をつく。
「ぬか喜びの代表格・・・」
「まぁ、気持ちはわかるけど・・・」
「やっかましい!!」
「「ひゃあっ!!」」
ウォーレンは二人に向かって怒鳴り、怒られた二人は静かになる。
「7年も連絡がねぇんだぞ、最悪の場合も考えろよ」
「お・・・おう・・・」
「すまねぇ・・・」
ウォーレンの言う最悪の場合とは、その場にいる全員、どういうことかはわかっていた。
そのことを考えると、船の上に再び沈黙が訪れる。
「あれ?」
そんな中、ビスカが何やら異変に気づく。
「どうした?」
「風が止んだ・・・」
「そういえば、妙に静かになったな」
ビスカたちは上空を見つめてそう言う。
「鳥がいねぇ」
「どうなってんだ?」
次々に何やらおかしなことが続いていく中、マックスが何もないはずの海の上に、一つ、小さな何かがあるのを見つける。
「なんだあれ?人?」
「まさか!海の上だぞ?」
ウォーレンはそう言うが、よくよく見てみると、そこには海の上に立っている裸足の少女が見える。
「誰なんだ?」
海の上に立っている少女が両手を広げると、後ろから何かが水面へと上がってくる。
それは丸い球体に包まれた島・・・マックスたちはその島を見て、すぐに何の島なのかわかる。
「天狼島!!」
「天狼島だぁ!!」
そう、それは妖精の尻尾の聖地にして7年前に消滅したと思われていた天狼島だった。
次第に天狼島を覆っていた球体が消えていくと、少女は島へと向かって歩いていく。
「あの女!!天狼島に行ったぞ!!」
「追え!!急ぐんだ!!」
ウォーレンたちはすぐさま船を島へと近づかせ、その少女のあとをついていくように島へと降り立つ。
「おーーい!!」
「待てってー!!」
急いでその少女を追いかけ走っているマックスたち。しかし、その少女はどんどん先へと進んでいく。
「何なの!!あの女!!」
「でも、あの子が天狼島の場所を教えて?くれたんだ。もしかして、みんなのところまで」
「そ・・・そうか!!」
アルザックの言う通り、少女は7年前から行方不明になっているみんなの元に向かっているとみんなは考えた。
「見失うな!!」
「ジェット!!」
「おおよ!!」
ジェットは神速を使い、少女のあとを追いかける。
しかし、その俊足を持ってしても少女に追い付くことができない、それどころか、少女の姿を見つけることすらできていない。
「おかしいな、あの女どこに・・・!!」
走っていたジェットはある物を見つけ、思わず立ち止まった。
「ジェット!!」
「どうした!?」
「あの女は!?」
「何?ボーッとして」
後から来たアルザックたちは立ち止まっているジェットの元へと駆け寄る。そして、そこにいる人物を見て息を飲んだ。
「ナツ・・・」
「シリル・・・」
そこにいたのは土を被り、うつ伏せに倒れているナツとその脇で仰向けに倒れているシリルの姿だった。
一方、妖精の尻尾では・・・
「ロメオ、ついてかなくてよかったのか?」
「もし天狼島が見つかってもみんな・・・生きてるかわからねぇんだろ?」
ロメオは本を読みながら、冷静にマカオに答える。
「そんなことねーって!!信じなきゃよ!!そこは!!」
マカオはロメオに少しでも元気になってもらいたくそう言うが、ロメオは完全に冷めきっていた。
「7年も連絡ねーんだぞ」
マカオたちはため息をつく。すると、ギルドの扉が開く音が聞こえてくる。
「おいおーい、今日は一段と人が少ねぇなぁ。ギルドってよりこれ何よ?同好会?」
そう言ったのは黄昏の鬼のティーボだった。
「ティーボ!!支払いは来月のはずだろ!?」
「うちのマスターがさぁ、そうはいかねぇって。期日通り払ってくれねぇと困るって、マスターに言われちゃしょうがねぇんだわ」
黄昏の鬼の面々は気色の悪い笑いをする。
「ふざけんな」
「よせロメオ!!」
そんなティーボたちをロメオは睨み付ける。マカオが止めようとするが、ロメオはお構いなしに歩み寄る。
「お前らに払う金なんかねぇよ」
「んだクソガキその態度」
「こんな奴らにいいようにされて、父ちゃんもみんなも腰抜けだ!!」
ロメオは右手から紫色の炎を出す。
「俺は戦うぞ!!このままじゃ妖精の尻尾の名折れだ!!」
「よせロメオ!!」
「あのバカ!!」
「フッ」
ティーボがロメオの炎に息を吹き掛けると、それはすぐに消えてしまう。
「名前なんかとっくに折れてんだろ?」
ティーボは背中の金棒に手をかける。
「やめろー!!」
「てめぇらは一生、俺たちの上には行けねぇんだ!!」
ティーボがロメオに金棒を振り下ろそうとした時、突然後ろから現れた男に蹴り飛ばされて宙を舞い、壁へとぶつかった。
「「「「んだてめぇら!!」」」」
他の黄昏の鬼が怒って後ろを向くと、一人は氷で凍らされ、一人は剣で斬られ、一人は水で蹴られ、一人は巨大な手に押し潰される。
「へへっ」
煙が晴れると、そこにはロメオたちがずっと待っていた人物たちがいた。
「ただいま!!」
「みんなー!!」
「ただいま帰りました」
「お待たせで~す」
「フン」
「今戻った」
「酒だ酒ー!!」
「なんじゃ!この小さいギルドは」
「わぁ!素敵じゃない!!」
「よ!」
そこには7年前に消息を絶ったナツたち全員の姿があった。
「お・・・お前ら・・・」
「マジか!!」
「若い!!」
「7年前と変わってねぇじゃねぇか!!」
「どうなってんだ!?」
消息を絶った時と変わっていないナツたちを見て、マカオたちは歓喜の涙を流す。
実は、これには大きな理由があった。それは・・・
少し遡って天狼島にて・・・
「ナツ!!起きろこのやろう!!」
「シリル!!目を覚ませ!!」
マックスたちはナツたちの上に乗っていた土をどけ、二人をひたすらに揺すっている。すると、
「だぁーー!!うっせぇ!!」
「うぅ~ん・・・もう朝ですか・・・」
ナツは勢いよく起き上がり文句を言い、シリルは目を擦りながらなんとか上体を起こす。
「「「ナツー!!」」」
「「シリル!!」」
「んがー!!」
「??」
目を覚ましたナツにウォーレン、マックス、ジェットは抱きつき、ドロイが最後にのし掛かる。シリルはビスカとアルザックが優しく抱き締める。
「どうなってんだ一体・・・」
「なんで皆さんが天狼島に?」
ナツとシリルは6人を見て驚いている。しかし、その驚きはあることによって書き換えられる。
「つーか少し老けてねぇか?」
「お前は変わらねぇな」
「アルザックさんいきなり髪の毛短くなりましたね」
「シリルも髪型変わったんだね」
「「てかドロイ(さん)太(っ、りすぎ)!!」
二人は自分たちの前にいる仲間の変貌に頭がついていかない。
「ちょっと待てよ!!俺たちさっきアクノロギアの攻撃を食らって・・・」
「それでえーと・・・はっ!!ウェンディたちは!?」
シリルは他のメンバーの心配をし、ジェットたちに質問する。
「こちらです」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
シリルたちは声のした方を見る。そこにはさっき海に立っていた少女がいた。
「「誰(どちら様)?」
ナツとシリルはその場にいる全員を代表して問いかける。
「私の名はメイビス。妖精の尻尾初代マスター、メイビス・ヴァーミリオン」
「「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」」
衝撃の事実にシリルたちは声を上げる。
メイビスはすぐに歩き出し、みんなの元へとシリルたちを案内する。
そこにはアクノロギアの咆哮を受けたはずのみんなが誰一人欠けることなく生存していた。
マックスやウォーレンたちはそれを見て歓喜し、喜びあっていた。
「あの時、私は皆の絆と信じ合う心、その全てを魔力へと変換させました。皆の想いが、妖精三大魔法の一つ、妖精の球を発動させたのです。この魔法は、あらゆる悪からギルドを守る、絶対防御魔法。
しかし、皆を凍結封印させたまま、解除するのに7年の歳月がかかってしまいました」
メイビスは事情を全員に説明する。
「なんと、初代が我らを守ってくれたのか」
マカロフは初代に感謝し、嬉し泣きする。
「いいえ、私は幽体。皆の力を魔法に変換させるので精一杯でした。揺るぎない信念と強い絆は奇跡さえも味方につける。
良いギルドになりましたね、三代目」
メイビスは純粋無垢な笑顔でそう言ったのであった。
シリルside
「と・・・まぁ・・・」
マスターからそんな説明があり、ギルドの皆さんは聞き入っていた。すると、ナツさんがロメオくんの視線に気づく。
「大きくなったなぁ、ロメオ」
ナツさんがそういうと、ロメオくんは嬉しかったのか、涙を流しながら笑顔になる。
「おかえり、ナツ兄、みんな・・・」
ロメオくんだけじゃなく、他の皆さんも大泣きしていた。
本当に帰って来れてよかった。だけど・・・だけど・・・
「なんでロメオくんの方が身長高いんだー!!」
「「「「「そこかよ!!」」」」」
俺は信じたくない事実に頭を抱えていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
実は最初はシリルを14歳という設定にしようとしていたのですが、身長がウェンディより少しだけ大きいということで、ロメオよりも少し小さい設定にしているため、さすがに年下に身長負けてたら可哀想かなと思い、同い年にするためシリルを13歳でスタートしました。
次回もよろしくお願いします。
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