FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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手をつなごう
「ただいま帰りました~」
「どうも~」
俺たちは皆さんの待っている簡易ベースへと帰ってきた。
「おかえりなさい。あら?」
ミラさんは俺たちを見て何かに気づく。それは、手をつないでいるということ。
「どうしたの?手なんか繋いで」
「「えへへへへへ」」
俺たちは誤魔化すように笑ってみせる。だが、ミラさんはそれを見て何があったかわかってしまったようだ。
「よかったわね。二人とも」
「はい!!」
「本当によかったです」
俺たちはそのままレビィさんやリサーナさんたちが座っているテーブルに同じように腰を掛ける。もちろん、隣同士で。
「どうしたの?二人とも」
「何かいいことでもあったの?」
レビィさんとリサーナさんが俺たちにそんなことを聞いてくる。そんなに俺たち顔に出てるかな?それとも皆さんの勘が鋭いのか・・・なんてことを思っていると、遠くから何かの音が聞こえてくる。
ォォォォォンッ
「?」
「何?」
「何の音だ?」
俺たちは突然の音に辺りを見渡すが、特にこれといった変化は見られない。
「どうせ、ルーシィの腹の虫かなんかだろ?」
「え!?こっちのルーシィって、こんなすごい音するの!?」
「ちょっとガジル?デリカシーにかけた発言しないでよね」
「ギヒッ」
ボケるガジルさんとそれを真に受けて驚くリサーナさん。ガジルさんの発言にレビィさんは少し怒っているようだが、ガジルさんはどこ吹く風のようだ。
「あらあら、それじゃあお食事多めに用意しておかないとね」
「おい!!冗談だっつうの!!」
ミラさんは笑顔でそんなボケを言い、ガジルさんも驚きながら突っ込んだ。さすがはミラさん、天然にも程がある。
「まぁ、それはそうとしても、妙な地鳴りだったな」
グレイさんは真面目な顔をしてそう言うが、ビッグスローさんとフリードさんはその下を指さして青ざめている。どうしたんだろう?
「ハァ・・・ハァ・・・」
「なんだ?今度は荒い息づかいみたいのが聞こえるぜ!」
その荒い息づかいもなぜかグレイさんの下からする。さすがに気になったのでちょっと下を覗いてみたら、そこには驚くべき光景があった。
「何!?」
「どうした?シリル」
「おいお前・・・何に座ってるんだ?」
フリードさんも意を決してグレイさんに質問する。俺にはとてもじゃないが聞くことができねぇ・・・
「何って、椅子に決まって・・・うおっ!!」
グレイさんは自分の座っているものを見て驚愕した。それは椅子なんかではなく、お尻を突きだしているジュビアさんだったのだ。
「いつの間に!!」
「ゼレフを逃がしたジュビアは、グレイ様の椅子がお似合いですわ!!」
「だから、そんな趣味はねぇつってんだろ!!」
幸せそうな顔で言うジュビアさんから逃げるように立ち上がるグレイさん。なんかグレイさんが素直になれない理由がすごく分かってきた気がする・・・
「はい、シリル、ウェンディ、お待たせ」
「ありがとうございます」
ミラさんが俺とウェンディに飲み物を持ってきてくれたので、俺はそれにお礼を言う。
「ミラさんもケガしてるのにすみません」
「いいのよ。私が好きでやってるんだから」
申し訳なさそうに言うウェンディに笑顔で答えるミラさん。
「さすが姉ちゃん!!漢だぜ!!」
「違うでしょ!!」
「それおかしいよ~!!」
ミラさんを褒めるエルフマンさんだが、いつも通り漢を強調するからシャルルとセシリーに突っ込まれる。すると、エルフマンさんの頭を誰かが木の棒で叩いた。
「何すんだこのやろう・・・」
「漢漢って・・・アンタといると無性にイライラしてくんのよ!!」
「なんだそりゃ!!」
エルフマンさんは次々に頭を連打されている。
「ふふ」
その二人の様子を見て微笑んでいるウェンディ。
俺はミラさんからもらった飲み物を飲もうとしたのだが、ある異変が起きていた。
「あれ?」
「どうしたの?シリル・・・!!」
ウェンディも自分の飲み物を見てその異変に気づいた。なぜか飲み物が揺れていたのだった。
その飲み物の揺れが止まったかと思ったら、
オオオオオオオオオオオッ!!
遠くから凄まじい咆哮が聞こえてきた。
「きゃっ!!」
「なんなの!?」
「ぐうっ!!」
あまりの音に皆さん耳を塞ぐ。この声、もしかして・・・
「ドラゴンの鳴き声・・・」
「うん、間違いないな」
ウェンディと俺はその声がドラゴンの物だと確信する。
「え!?」
「ドラゴン!?」
「雷ではないのか?」
レビィさんとリサーナさん、リリーは俺たちの言葉を聞いて驚いている。リリーは雷だと勘違いしてるみたいだけど・・・
オオオオオオオオオオオッ!!
まただ!!さっきよりも近づいている!!
「みんな!!大丈夫!!」
「すごい声だ!!」
「お前ら・・・」
釣りに行っていたナツさんとギルダーツさんとハッピー、それに、ルーシィさんとカナさんがこちらに駆けてくる。
こちらに向かってきていると、ギルダーツさんは突然左腕に手を当てる。
「ちょ!!大丈夫!?」
「古傷が、疼いてきやがった・・・間違いねぇ、奴だ。奴が来るぞ」
ギルダーツさんはそう言う。奴って?
「おい!!上を見ろ!!何か来るぞ!!」
空を指さすリリー。俺たちは全員、上空を見上げる。
雲に隠れて姿までは確認できないが、そこには何か大きな影があった。
「なんだアレ!?」
「でけぇぞ!!」
俺たちがしばらくそれを見上げていると、雲からその姿を次第に現してくる。
オオオオオオオオオオオッ
「!!あれは・・・」
雲から見えたその姿は、黒くて巨大なドラゴンだった。
「ドラゴン!?」
「何なの?一体・・・」
そのドラゴンがこちらに近づいてくると、その旋回によって強烈な風が吹き寄せる。
「マジかよ・・・」
「あれを間違うはずがない・・・」
「本物のドラゴン・・・」
「やっぱり・・・ドラゴンはまだ、生きていたんだ・・・」
俺たちは滅竜魔導士たちもそのドラゴンの登場に驚いている。
「黙示録にある黒き竜、アクノロギアだと言うのか!?」
マスターはそのドラゴンを見上げて驚いている。
「ああ、奴だ」
「いたんだ、本物のドラゴン」
ギルダーツさんとルーシィさんがそう言う。すると、ナツさんが前に出る。
「お前!!イグニールが今どこにいるか知ってるか!?あとグランディーネとヴァッサボーネとメタリカーナも!!」
「よせ!!ナツ!!」
俺たちの親のことについて聞こうとするナツさんをギルダーツさんは急いで止める。
「奴を挑発するな!!お前には話したはずだ!!なぜこの俺がこの腕・・・いや、体になったのか!!」
ナツさんはギルダーツさんの言葉を聞き、何も言えなくなる。
「降りてくるぞ!!」
フリードさんの言う通り、黒いドラゴンはこちらに向かって降下してくる。
「あれは、ナツたちの大好きな竜じゃない。もっと邪悪な・・・」
ドラゴンが着地すると、ものすごい衝撃と振動が俺たちを襲う。
「ああ。その通りだ、こいつは人類の敵だ!!」
「じゃあ、こいつと戦うのか!?」
ギルダーツさんこ言う通りなら、俺たちが戦わなければならない相手ってことなんだな!!
「いや違う。そうじゃねぇんだよ、ナツ」
しかし、ギルダーツさんはナツさんの言葉を否定する。
「勝つか負けるかじゃねぇ。こいつからどうやって逃げるか・・・いや、俺たちの内・・・誰が生き残れるかって話なんだよ!」
誰が生き残れるかだって?それってつまり・・・
「こんな奴に、俺たちの誰かが殺られるっていうのかよ!!」
ナツさんの言う通り、こいつに俺たちが殺されるっていうのか!!そんなわけ・・・
オオオオオオオオオオオッ
「まずい!!みんなー!!逃げろー!!」
アクノロギアが叫んだのと同時に、ギルダーツさんも逃げろと叫ぶ。
オオオオオオオオオオオッ
俺たちはあまりにも突然すぎてその場に立ちすくんでいると、アクノロギアは再び叫び、その衝撃で吹き飛ばされる。
「お・・・おい・・・なんだこりゃ・・・森が消し飛んでやがんじゃねぇか・・・」
俺たちは上体を起こし前を見ると、さっきまで青々と生い茂っていた木々が全て消し飛び、そこは荒れ地へと変わり果てていた。
「ウソだろ・・・」
「なんて破壊力なの?」
「なんなのよこれ・・・吠えただけでこんな・・・なんなのよこいつ!!」
俺たちはアクノロギアの叫び声の破壊力に驚くことしかできない・・・
「奴は・・・」
ギルダーツさんはアクノロギアを見るが、すでにその姿は上空へと飛び上がっており、俺たちのことをまるで見下しているかのようだった。
「ちっ!高みの見物かよ!!」
俺たちはその場に立ち上がり、体勢を整える。すると、ギルダーツさんから信じられない言葉が発せられた。
「さしづめ、今のは挨拶代わりってところか?」
「え!?」
今のが挨拶代わりって・・・じゃあ本気になったらどんだけ強いんだよ・・・
「みんな!!まだ生きてるな!!ビビってる暇はねぇぞ!!すぐにこの島から離れるんだ!!」
オオオオオオオオオオオッ
アクノロギアはまたもや大声を出す。
「来るぞー!!船まで急げー!!」
「走れー!!みんなで帰るんだ!!妖精の尻尾へ!!」
俺たちはギルダーツさんとエルザさんの指示に従い全速力で船へと走る。
「シリル!!ウェンディ!!あんたたち竜と話せるんじゃなかった!?なんとかならないの!?」
シャルルは走りながら俺たちにそう言う。だけど、それは少し違うんだ。
「私たちが話せるんじゃないよ!!竜はみんな高い知性を持って――――!!」
ウェンディが説明していると、俺たちの頭上をアクノロギアは通りすぎ、先頭を走っているフリードさんとビッグスローさんを襲う。
「「ぐわっ!!」」
「なんてことだ!!」
「ビッグスロー!!フリード!!」
「先回りだと!?」
俺たちはすぐにその場に立ち止まるしか選択肢がなくなってしまう。
「どうして・・・どうしてこんなことを・・・」
ウェンディはアクノロギアに問いかけるが、アクノロギアはそれに答えようともしない。
「答えて!!」
「無駄だ、ウェンディ」
俺はウェンディを制止する。あまりあいつを挑発すると、マジでどうしようもなくなってしまう気がする・・・
「あいつは俺たちを虫けらとしか思ってないんだ。だから俺たちの話に耳を傾けることをしないんだ」
アクノロギアは俺たちに次々と攻撃を仕掛けてくる。しかしどれも本気を出しているようには思えない・・・なんて強さだよ・・・
「やだ・・・やだよ、こんなの・・・」
レビィさんは涙混じりでそう言う。どうすればいいんだよ・・・こんなの・・・
「うおおおおっ!!」
ナツさんはアクノロギアに立ち向かおうと走り出すが、
ガンッ
「うおあっ!!」
すぐに殴り飛ばされる。
「お前!!」
ナツさんはアクノロギアに対して怒鳴るが、その前にマスターがアロハシャツを脱ぎ捨て立ちふさがる。
「マスター!!」
「じっちゃん!!」
「船まで走れー!!」
マスターは巨大化し、アクノロギアに立ち向かう。
「無茶だ・・・敵うわけねぇ!!」
「マスター!!やめてください!!あなたに何かあったら、ギルドは・・・」
「走れー!!」
グレイさんとエルザさんはアクノロギアを必死で食い止めるマスターを止めようとする。だが、マスターは絶対にアクノロギアを離そうとはしない。
「かくなる上は俺たちも・・・」
「妖精の尻尾をなめんじゃねぇぞ!!」
「当たって砕けてやるわ!!」
「おおよ!!」
「そうですよ!!」
「みんなで力を合わせれば!!」
俺たちもアクノロギアに立ち向かおうと構える。しかし、
「最後くらいマスターの言うことが聞けんのか!!クソガキがぁー!!」
マスターのその言葉で、俺たちの中に動揺が生まれる。
「最後って・・・」
まさかマスター、死ぬつもりなんですか!?
「俺は滅竜魔導士だ!!そいつが敵って言うなら、俺が――――」
ナツさんがマスターに加勢しようとしたが、それをラクサスさんが止めるように引っ張り始める。
「走るぞ!!ナツ!!」
「ラクサス!!お前・・・!!」
ナツさんはラクサスさんに文句を言おうとしたが、それをやめる。ラクサスさんは涙をこぼしていたからだ。マスターの覚悟を誰よりも感じ、自分たちが何をすべきかをわかったからだった。
「マスター・・・どうかご無事で」
エルザさんもそのあとに続いて走り出す。俺たちもマスターに背を向け走り出す。みんな、涙を流し走り続けた。俺たちには、どうすることもできないのか・・・
第三者side
(それでよい。いずれわかるときが来る。涙など酷。人が死ぬから悲しいのか、悲しみが人を殺すのか。答えは各々の胸の奥に。誇り高きクソガキどもよ!!生きよ!!未来へ!!)
マカロフは自分の仲間を、子を守るため、歯を食い縛り、痛みに耐え、アクノロギアを食い止める。
「何の目的か知らんがなぁ・・・これ以上先には進ませんぞ!!この後ろにはワシのガキどもがいるんじゃあ!!」
マカロフは叫ぶ。しかし、アクノロギアはそんなことなどお構いなしにマカロフを押す。
「ぐわああああああああ!!」
マカロフは次第に押され始め、ついにアクノロギアによって地面へと倒される。
アクノロギアは倒れたマカロフの左胸を押し潰そうと力を入れる。
「ごわああああああああ!!」
痛みと目の前のアクノロギアに絶叫するマカロフ。
「ああああああ・・・はっはっはっはっ」
「?」
絶叫していたマカロフが突然笑い始め、アクノロギアはそれに困惑する。
(初めて親らしいことが・・・できたわい)
マカロフは自分の子供たちを守れたことに満足し、笑みを浮かべていたのだった。
(もう思い残すことはない・・・)
マカロフは目を閉じ、自らの死を受け入れようとしていた。しかし、その脇を一人の男が駆け抜ける。
アクノロギアはその男を潰そうと尻尾を振るうが、男はそれを避けてアクノロギアの体を登り始める。
「じっちゃんを、返せ!!」
「ナツ!!」
その男は、先程マカロフが命を賭けて救おうとした内の一人、ナツだった。
アクノロギアはまとわりつくナツを振り払おうと体を大きく動かす。
それにより、マカロフは近くの岩壁へとぶつけられ、元の大きさに戻ってしまう。
「ごほっ・・・ごほっ・・・」
思わず咳き込むマカロフの前に、鎧を身に纏った女騎士が立つ。
「エルザ・・・お前まで・・・」
「俺は反対したんだぜ」
エルザと反対側に、ラクサスの姿がある。
「けど・・・老いぼれ残して逃げられるような奴等かよ、あんたのギルドは」
ラクサスはマカロフに向かってそう言った。
「かかれー!!」
「「「「「「「「「「オオオッ!!」」」」」」」」」」
エルザの掛け声と共に妖精の尻尾の総攻撃を開始する。
「バカたれが・・・」
マカロフは震えながらそう言ったが、その顔は嬉しさを感じているようにも見えた。
シリルside
俺たちにはやっぱりマスターを置いていくことなんてできねぇ!!意地でもこいつを倒して、全員でギルドに帰るんだ!!
「「「「「うおおおおおっ!!」」」」」
「「「「「やあああああっ!!」」」」」
「「「「「食らえぇぇぇぇ!!」」」」」
俺たちは次から次へとアクノロギアに攻撃を加える。しかし、全然聞いてるようには見えないぞ!!
ズバァ
「うあっ!!」
「きゃっ!!」
アクノロギアが尻尾で俺たちを一掃する。
「みんな、無事か!?」
「くそっ!!」
「攻撃が全く効いてねぇ!!」
俺たちはアクノロギアのあまりのガードの固さに驚いている。すると、アクノロギアは空へと飛び上がる。
「飛んだ!!」
「帰ってくれるのかな?」
「油断しちゃダメよ」
「何かしてくるはずだよ~!!」
飛び上がったアクノロギアは口に空気を蓄え始める。
「咆哮だーーっ!!」
「島ごと消すつもりじゃないでしょうね!!」
「マジ・・・」
「そんな・・・」
あいつが本気で島を消そうとしたら、間違いなく俺たちは消えるぞ!!
「防御魔法を使える者は全力展開!!」
「「はい!!」」
俺とウェンディはうなずき、魔方陣を展開する。
「「アーマー!!」」
防御力強化の魔法、どれくらい効くかはわからないけど、やらないよりは確実にいいはず!!
「術式を書く時間はない!!」
「文字の魔法には、他にも防御魔法がたくさんあるよ!!」
「さすがレビィだぜ!!」
「みんな!!フリードたちに魔力を集めて!!」
「手を繋ごう!!」
「わかりました!!」
俺たちは全員で手を握る。
「俺たちはこんなところで終われねぇ!!」
「うん!!絶対諦めない!!」
「みんなの力を一つにするんだ!!ギルドの絆を見せてやろうじゃねーか!!」
「俺たち全員の力があれば、できないことなんて何もないです!!」
俺たちは一つの大きな和になる。
「みんなで帰ろう・・・」
「「「「「「「「「「妖精の尻尾へ!!」」」」」」」」」」
アクノロギアの咆哮が、天狼島へと放たれた。そして・・・
天狼島は巨大な爆発音と共に、
消滅した。
×784年12月16日天狼島・・・アクノロギアにより消滅
アクノロギアは再び姿を消した。
その後、半年にわたり近海の調査を行ったが、生存者は確認できず・・・
そして、7年の月日が流れた。
後書き
いかがだったでしょうか。
最後のアクノロギアへの攻撃はアニメ版だと私の聞く力では何言ってるのか自信がなかったため、基本原作よりにしました。
次からは791年の世界に入ります。
次回もよろしくお願いします。
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