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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第6章 嵐の前の静けさ ~アルレスハイム星域会戦前夜~

 宇宙歴792年1月9日 アレン・キャンベル少将指揮下のアルレスハイム星域早期警戒艦隊の第91即応展開群がアルレスハイム第7星系宙域で連絡を絶った。
第91即応展開群指揮官のクラーク・マッケルティ大佐の
「前方宙域に無数のエネルギー源出現・・・」
で通信は途絶えている。
もはや、カイザーリング帝国軍中将のアルレスハイム駐留艦隊が同盟領に侵入したのは疑いのないことであった。
それから、8日後のアルレスハイム星域早期警戒艦隊は帝国軍艦隊と接触したもののカイザーリング中将は戦力差があったためか、3日後には撤退した。
しかし、宙域の同盟領の一部は帝国軍の哨戒網内にあり帝国軍の侵攻の恐れありとして、アレン少将は同盟軍統合作戦本部に救援を要請した。
これに対し、統合作戦本部長 シドニー・シトレ元帥は第2,7そして第4艦隊の派遣を命じた。
しかしながら、今回は艦隊戦になるためわれわれ陸戦隊に出撃命令はくだらないであろうと思われたが・・・・
 ある日、連隊のバーにカスパー・リンツ大尉が入ってきて
「今から名前を呼ぶ中隊長は直ちに指揮下の1個小隊を選抜し、
明日の1700時選抜した1個小隊とともにハイネセン中央軍港に出頭せよ。
アーロン・グデーリアン大尉、デアデッケン大尉、ルーカス・フォン・クライスラー大尉、マースト・カルナック大尉、ライナー・ブルームハルト中尉、エーリッヒ・フォン・シュナイダー中尉 以上だ。」
一緒にポーカーをやっていたわれわれはお互いに顔を見合わせて、肩をすくめた。
とにかく、中隊幹部を集めなくては
と思って、端末を取り出そうとすると
「中尉、ご用でしょうか?」
と言ってにこやかに敬礼する、5人の士官たちがいた
副中隊長 ジョアン・マッケンジー少尉、第1小隊長 ユースフ・シュタイン准尉、第2小隊長モレッティ・ハボック准尉、第3小隊長マックス・リューカス准尉、機関銃小隊長クレメンツ・マッケルティ准尉である。
以心伝心とはまさにこのことだ。

そして、彼らと協議した結果
第3小隊を連れて行くことになった。
どの小隊も白兵戦は抜群の戦績を誇るが、第1小隊は特級射手集団で第2小隊は小隊長がつい1週間前までマッケンジー少尉だったので小隊間の連携がまだ他小隊と比べると薄いとのことで辞退し、白兵戦では最高の戦績と小隊員の9割以上が上級白兵戦資格を持つ第3小隊になるのは自然という結果であった。
全員が准尉か准尉から昇進した少尉であるが20代の若者集団である。
最年長のクレメンツ准尉ですら27歳である。
自分の官舎に帰って荷物を詰めながら、強襲揚陸戦法の確認を頭の中でしながら自小隊の役割をシュミレートする。
われわれの小隊はF小隊と命名され、この小隊は敵艦の艦橋への進攻の先鋒を務める。
とても重要な小隊だ。
連隊作戦会議室で作戦内容は発表された。
作戦内容は、
結論から言うとアルレスハイム駐留艦隊第2分艦隊旗艦戦艦「オーデッツ」に搭乗している第2分艦隊司令官帝国軍少将キリング・フォン・コーゼルをとらえることであった。
詳細を書くと
コーゼル少将は宇宙歴790年9月まで銀河帝国軍情報部の長であるコルベット・フォン・クライスラー中将の高級副官を務めたいわゆる凄腕の「情報屋」であり、士官学校卒業から「情報科」一筋の士官であった。
そんな彼はいきなり宇宙歴790年11月からアルレスハイム駐留艦隊の第2分艦隊司令官になったのだ。
これは同盟軍情報部がフェザーンと潜入スパイから仕入れた情報なので正確性は高いとされているものだった。
同盟軍情報部はのどから手が出るほどコーゼル少将の持っている情報がほしいに決まっていた。
また、彼のいきなりの前線配属から予測されるにいわゆる「左遷」であろうことは明確であった。
このことから、彼が捕虜になった場合情報を吐く可能性が高いと判断した同盟軍統合作戦本部は第2・4・7艦隊に対してこの捕獲作戦の実行を命じた。
これに対して、第2艦隊は迎撃作戦上敵の中央部を攻撃することになっていたのでこの命令を自艦隊では作戦不可能と判断し、第4・7艦隊にこれをゆだねた。
第4艦隊は自艦隊自慢の「ローゼンリッター連隊」を堂々とだし、第7艦隊もは強襲揚陸作戦の武功で名高い「第78強襲揚陸白兵戦連隊」を出した。
これにより、それぞれの連隊から3個小隊出しあうことで作戦を行うことになり
それぞれの連隊長や特別陸戦隊司令官との作戦会議の中であの事件は起こった。
そこに出席していたシェーンコップ中佐が
「ローゼンリッターは排他的な集団でね、共同作戦という演劇を嫌うんですよ。」
と言ってしまい、この一言でブチ切れた第78強襲揚陸白兵戦連隊長のバケット・ドレステン大佐が1時間近くその場でローゼンリッターの侮辱文句を言いまくった挙句に自連隊は参加しない。と言ってしまったので共同作戦はなくなった。
しかし、これは我々にとって幸運をもたらした。
確かに、第78強襲揚陸白兵戦連隊は武勲名高き優秀な連隊であるがついこの間の強襲揚陸演習ではわが連隊にかなりの遅れをとるなどの決して互いに信用できた関係ではなかった。
さすがはシェーンコップ中佐であった。
このようなことから今回の作戦の長はもちろんシェーンコップ中佐。
副長はリンツ大尉
彼らに以下6個小隊が従う。
搭乗する強襲揚陸艦は「コバックⅦ号」である。
これを護衛するのは連隊直轄の艦艇部隊である、第78宙陸両用打撃隊の巡航艦3隻と駆逐艦4隻である。
彼らが、われわれを途中まで護衛しながら目標艦の一歩手前でわれわれが離脱し、強襲揚陸する。
この7隻の護衛隊を率いるのは第78宙陸両用打撃隊指揮官で帝国亡命2世のモルトン・バークレー中佐である。
彼は同盟軍で第17位の駆逐艦エースであった。
私は連隊作戦室で話された内容を見ながら小隊規模での作戦を考えた。
リンツ大尉によるとわれわれの小隊はF小隊と命名され、今回の作戦では敵艦の艦橋を直接攻撃することになっていた。
しかもわが小隊はその先鋒である。
いろいろと考えた結果を中隊作戦室で出撃するメンバーを前に話すことにした。
私が中隊作戦室に入ると、そこにはもう第3小隊のメンバーが整然と座っていたのだ。
私は苦笑と感心で口元がゆがんだが、そのまま小隊規模での作戦を話した。
「今回、われわれは艦橋攻撃の先鋒を担う。
そこで、私と第3分隊は小隊としての先鋒を務め、第1分隊には小隊の中間点の防御と先鋒が敵と膠着状態に陥った時、敵に迂回側面攻撃を仕掛けてもらう。そして、マッケンジー少尉と第2小隊は最後尾を守ってもらいたい。」
その後小隊員からはさまざまな作戦についての質問が飛び交ったり、変更点の打診を行ったりした。
なんだかんだで1時間半作戦会議をやって、結論がまとまったので解散になった。
時計を見ると1800時。約束まであと1時間半ってとこだった。
自分の宿舎に帰って、シャワーを浴びてもう一度新しい軍服にそでを通す。
ここからハイネセン中心街まで30分といったところだろう。
その時だった、自分の携帯端末から着信音が入る。
いやな予感がする。
出ると、中隊の後方主任下士官であったリプトン・クライスト軍曹からであった
「中尉。シャトルに出撃要員の装甲服・武器一式を積み終わりました。」
思わず、ぶっ倒れそうだった。
「あ、うん。ご苦労様です。ありがとうございます。では、今日はこれで終了でいいですよ。」
リプトン軍曹は「了解しました。」と一言言って端末を切った。
思わずホっとしてしまった。
さて、早くいかなくては。
と思い、鏡の前で身だしなみを確認する。
これから会う人は身だしなみにうるさくない人ではあったがやっぱり、それなりにピッとしていたいとおもってていたのであった。
第4艦隊駐留基地の前で無人タクシーを拾って、行先である第1艦隊駐留基地の住所を入力した。
第1艦隊駐留基地はハイネセン中心街を通り抜けた郊外にある。まあ、時間を見込んで30分という予測はあながち間違えではないと思っていた。
現在時刻1835時。
たぶん1905時には到着するはずだ。

そして、30分後1905時きっかりに第1艦隊駐留基地に到着した。
第1艦隊駐留基地には艦隊司令部や艦隊施設以外にも首都常駐艦隊であるためか、軍の学校施設が多くあった。例として、私になじみ深いのは私が5年前に2等兵だった時に卒業した「第12同盟軍基礎訓練所」や空挺降下資格を取った「第12空挺降下学校」やその他には「第1砲術士養成所」、「第1幹部候補生養成所」などが存在する。また、その中でも特殊なのが士官学校の一種であるのに艦隊駐留基地の中にある「ハイネセン第2衛生軍医士官学校」である。
私は、その施設の前である人物を待っていた。
そして、1915時きっかりに
「エーリッヒ! お久しぶり。」
と言って出てきたのは、ニコール・コリンズ曹長である。
「やあ。」
と一言声をかける。
少し、薄化粧をしているようだ。化粧をしなくてもきれいなのにな。
なんて思いながら並行して歩く。
今日1月27日は実は彼女の誕生日なのだ。
もうちょっと自分の階級が高くて給料があったら彼女をどこかいいところに連れていけたらいいのになと思いながら目的地である「バー・シュトックハウゼン」に向かう。
あたりは雪が一面に広がっていた。
私は軍服の上に軍用トレンチコートを羽織って、彼女からついこの間もらったマフラーをまいていた。
彼女も軍服の上に軍用トレンチコートであったが、私が少尉としての初給料が出たときに買ってあげたマフラーを巻いていた。
歩きながら彼女の軍医士官学校での話や私のローゼンリッターでの話をお互いにしながら歩いていた。
目的地である「バー・シュトックハウゼン」はローゼンリッター連隊第10代連隊長である、カール・フォン・シュトックハウゼン退役少将が経営するレストランバー兼ダンスバーだ。
リンツ大尉が教えてくれて何回か来たことがあった。
店に入るとやはり第1艦隊駐留基地周辺にあるので軍人が多いが、一般人もいる。
バーは少し小高い丘にあり周囲は静かな高級住宅街である。
したがって、夜景は最高である。
シュトックハウゼン退役中将が直接席を案内してくれた。
にこにこしながら、耳元で
「シェーンコップ中佐から、いろいろと聞いているからゆっくりしていきな。」
と帝国語でささやいて個室のドアを閉めた。
夜景がガラス張りのところから見える最高にきれいなところであった。
ダウンライトの中でお互いに席に着く。
ニコールが私の手の上に手を置き
「ありがとうね。
私のためにここまでしてくれて。
けっこう高かったでしょ?ここ。」
事実高かった。
やはり高級住宅街にあることから、一中尉ごときの給料ではけっこう堪えるものがあったが
ここを勧めてくれて、全体金額の20%を割り引いてくれるようにシュトックハウゼン退役少将に行ってくれたのはシェーンコップ中佐であった。
最初は断ったが、中佐は
「女性をいいところに連れて行くのに大胆に行動しないのはそれはふられるとかじゃなくて、
失礼だ。」
と言われて、受けることにした。
「もちろん、浮いた分の金で何か買ってやれよ。」
と言われてしまった。
でも、なんで中佐が知っていたのかは不明だ。
どこから、情報を仕入れたんだろうかなんて聞けなかったのでそのままであったが
リンツ大尉から書類を渡された時のメモで
「がんばれよ。」と書かれたものがあった。どうやらリンツ大尉に知られているということは
彼とは5年以上の付き合いであるマッキンゼー少尉から伝わったようだった・・・
まったくと思いながら
「う、うんん。そこまででもなかったよ。」
ニコールはにやにやしながら
「まったく隠すのが下手なんだから。
こういうところも好きよ。」
と言ってきた。
なんと返すべきなのかわからなかったので、沈黙していたら
彼女から話題を振ってきた。
内容は夏期休暇があった時行きたい旅行地などで軍務の話は一個もなかった。
そうこうしているうちに料理が運ばれてきて、食事を済ませた。
食後のワインを飲みながら私は彼女にダンスをしないか?と誘ってみた。
彼女は少し酔っていたようだが、あっさりとOKしてくれて二人とも席を立った時だった。
彼女がいきなり私に倒れるように寄りかかってきたのだ。
正直驚いた。
「大丈夫?やめておこう・・・・」
「か」を言った瞬間に彼女が私の唇をふさいだ。
そして、唇を開放するなり
「いやよ。踊りましょ。」
といって私の手を握ってダンスホールへ降りて行った。
私は士官学校卒業時のダンスパーティで否が応でもダンスの基礎は教えられる。
階段を下りる彼女の足取りは危なかったので私がエスコートした。
ダンスホールには私たちのほかには誰もいなかったが曲が流れていた。
チークダンスをしながら、耳もとで彼女がささやく。
「ヘンシェルの時、覚えてる?
あなたと私が初めて会った時のこと。」
私は
「忘れるものか。
近接格闘技訓練中に後方支援担当士官ということを知らないで思いっきり投げ飛ばしたら、
そいつが腕を折っちゃったんだもん。
しかも、そいつを担いでいったとき君はまだ看護助手だったはずだ。」
彼女は微笑んで
「そうそう。配属されて3日目にまさかのド派手に腕を骨折した人を見たんだもの
彼かなり痛そうだったわ。」
「その時だよね、きみと会ったのは。」
すると、彼女がいきなり
「一目ぼれしたわ。」
いきなりのことだったのでステップを踏み間違える。
一瞬動きが止まる。
「本気?」
と笑いながら聞いたが
彼女は真顔で
「本気よ。
あなたのあわて具合がかわいらしくてね。」
こけそうになりながら、ダンスを再開した。
私は
「あの士官の直属の上官がまさかのキャゼルヌ大佐と聞いてねびっくりしたよ。
当時は中佐で、統合作戦本部の後方支援参事官をやっててあの士官をヘンシェルに直接派遣したのはキャゼルヌ大佐ってことがわかってビビったよ。」
というのもキャゼルヌ大佐は後方支援士官として最優秀の部類に入る士官で、訓練課程中に後方支援の重要性を講義しに来た時に私が無粋な質問をしてしまってから興味を持たれ、いろいろとお世話になった人である。
彼女は私の胸に顔をうずめながら
「でもこうして、私はあなたと出会ってあの地獄を生き残ってるわ。
私ね、ヘンシェルの時死ぬかもしれなかった。
だけどね、あなたが私に言った言葉が私の中でよみがえったの
生き残れってね」
そこから、ダンスをしながら彼女は彼女のヘンシェルの地獄を話してくれた。
彼女の配属されていた衛生分遣隊はほとんど壊滅し、帝国軍の装甲擲弾兵部隊が彼女たちの立てこもる野戦病院壕に踏み込んでくるのは時間の問題だった。
当然のことではあるが侵攻してくる擲弾装甲兵部隊と銃撃戦になった。
しかし、防戦むなしくやはり戦闘部隊ではない衛生分遣隊は急激に残存兵力を減らしていった。
彼女はもはやこれまでと思いピストルを頭に向けた瞬間に私の声がよみがえり、思いとどまったそうだ。
そして、救援無線信号をあげて拠点防御用機関銃で弾薬の尽きるまで撃ち続けたそうである。
隣接していた見方の白兵戦部隊が救援に駆け付けたそうである。
ダンスをしながら彼女は泣き始めた。
たぶんその時の恐怖が思いっきりこみあげてきたのだろう。
私は彼女をやさしく抱いた。
「大丈夫。僕はここにいる。どこにも行かないよ。」
と彼女を包みながら言った。
そして、
「そんなに泣いたら、せっかくの美人が台無しだよ。
ほら、泣かないで。」
と言って、彼女の涙をふき取る。
彼女は
「まったくそういうやさしいところも好きになっちゃうわ。」
と言って、唇をふさいできた。
時計を見ると2100時そろそろ閉店だ。
「そろそろ、ここから出ないと。
閉店だよ。」
「そうね。そろそろいかないとね。」
そうして、私たちは店を離れた。
店を出ると、夜風が当たる。
涼しい。
第1艦隊駐留基地へ足を向けようとしたら、
彼女が手を引っ張って
「実は、今日から学校が1週間休みなの。
出兵があるらしくて、うちの教官のほとんどが今回出るみたい。
だから、寮に帰ってもいいけどみんな帰っちゃったわ
一人はやっぱり怖いわ」
なんて嘘を言っているのは明白であったが・・・
「じゃあ、どうしたい?」
「そうね…あなたが私の家に来るのは?」
「でも、そっちは家族がいるだろ。」
そう、彼女の両親は軍人で、姉も予備役の軍人であったはずだ。
「構わないわ。当初からそのつもりだったんだもん。」
えー・・・・
なんだかんだで、彼女の家に行くことになった。
彼女の父はマッド・コリンズ少佐で第9艦隊第24空母打撃群の第224飛行団第7対艦攻撃飛行隊指揮官である。
彼女の母 マリン・コリンズ大尉は女性では珍しいミサイル艇乗りで第1艦隊第88ミサイル艇隊旗艦ミサイル艇「M-932」の艇長を務める。
姉のキャサリン・コリンズは、ハイネセン国立大学理工科を卒業した秀才で、予備役将校訓練課程修了後は第4艦隊や第1艦隊で情報士官を務めて予備役中尉で一時退役し、現在は国土交通局の宇宙船舶管制センターに勤めている。と彼女は私に話してくれた。
なのに、ニコールは一般志願兵でキャリアをスタートさせているが、彼女曰く最前線の衛生兵勤務をしておかないと軍医としては使い物にならないからこうしたそうである。
彼女の家に到着し、彼女がインターホンを押すと初老の男性と40歳前後の女性が立っていた。
彼女の父と母であった。
私は
「夜遅くにすみません。」
と頭を下げたが
どちらの両親とも
「いいんですよ中尉。
娘がね、あなたの話をよくするもんで一度お会いしてみたいと思ってたのですよ。」
「さあ、どうぞおあがりなさい。」
と2200時になっていたが、彼女の家に上がった。
マッド少佐とマリン大尉とはさまざまな軍務の話に花が咲きかなりの時間までしゃべってしまっていた。父親という感じはかろうじて知っていても、母親という感じをほとんど知らない私にとってこの両人はとても私にやさしく接してくれた。
そして、2400時を回ったあたりでゲストルームに通され、着替えや寝間着をマリン大尉に渡されそのまま寝ることにした。
家族とはあのような感覚なのか。ということを初めて実感したのであった。
そのまま翌日の0600時まで寝ていた私は自動的に目が覚めた。
そして、コリンズ宅で朝食をとって1600時にハイネセン中央軍港でニコールと落ちうことを約束してコリンズ宅を出た。

自分の官舎に帰った私はシャワーを浴びて、私服に着替えて軍務に向けてスイッチを切り替えた。
作戦の確認、突入する戦艦の種類の確認、艦橋への侵入経路などである。
そうこうしているうちに、出撃メンバー全体会議の時間になりそれに出席する。
そこでは、バークレー中佐からの敵艦隊への侵入経路、注意事項そして、リンツ大尉からの強襲揚陸時の作戦行動についてであった。
それも終わり、私は全体より少し早くハイネセン中央軍港へ向かった。
出発まであと1時間半
リプトン軍曹との装備品打ち合わせを済ませ、ロビーでニコールを待つ。
出撃まで1時間。
その戦いはあまりに知名度は低いものの、私にとってこの上なく特殊かつ複雑な作戦が始まろうとしていた。
宇宙歴792年 1月28日のことである。 
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