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戦国異伝

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第二百十六話 慶次と闇その六

「一体」
「天下が定まろうとしているが」
 それでもだというのだ。
「何かのう」
「闇が?」
 今度は大蛇が問うた。
「どうかしたの?」
「うむ、天下に忍び込んで来る様なな」
「そんな感じがするんだ」
「妙な感じじゃ」
 慶次は煙管で煙草を楽しみつつ首を傾げさせた。
「気のせいかも知れぬが」
「いや、あんたがそう言うのならな」
 ここでこう言ったのは煉獄だった。
「そうなんだろうな」
「わしが言うとか」
「ああ、あんたの直感は獣みたいだからな」
 そこまで鋭いからだというのだ。
「まずな」
「間違いないか」
「ああ、ただ闇って何だよ」
 煉獄もそのことが気になって問うた。
「具体的にな」
「いや、それはな」
 慶次にしてもというのだ。
「わからん」
「そうなのかよ」
「そうじゃ、どうにもな」
「じゃあ何もわからないな」
「そうなるのう」
「しかしだ、闇となると」
 拳が言うには。
「いいものではないな」
「確かに。悪魔なのか」
 ヨハネスも言う。
「それでは」
「こちらでは鬼かな」
 獣はヨハネスの話を聞いてこう言った。
「鬼とかがいるのかな」
「鬼にしても。闇となりますと」
 命が言うには。
「かなり異形の鬼ですね」
「まつろわぬ」
 ぽつりとだ、あや取りはこの言葉を出した。
「そんな鬼」
「そうした話はお師匠さんが知ってるか?」
 ここでこう言ったのはからくりだった。
「わし等のな」
「果心居士殿じゃな」
 慶次はからくりのその話にこう問い返した。
「御主達の師殿となると」
「そうだ、あの方なら何でも知ってるからな」
 それで、というのだ。
「慶次さんの気付いたことにも答えてくれるかもな」
「じゃあお師匠さんに会うか」
 風は軽く笑って言った。
「これから」
「ではその御仁は何処におられる」
 慶次はその風に問うた。
「果心居士殿は」
「いや、それがね」
 実際の居場所になるとだ、風も口ごもって慶次に答えるしかなかった。
「あの人はね」
「何時何処にいるかっていいやすと」
 煙も言う。
「わし等にもさっぱり」
「神出鬼没の方なので」
 鏡も困った顔で語る。
「どうしても」
「左様か」
「ああ、悪いがな」
 煉獄もこう言う。 
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