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ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~

作者: ツン
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SAO:アインクラッド
  第8話 ビーター

戦闘は順調に進み終盤に突入しようとしているところだった。
3体目のセンチネルを倒し終え周囲に目を配る。
ボスのコボルドロードはHPが3本目の半分まで減っていた。

「このまま行けば楽に倒せそうだな」

剣を鞘に戻しながらキリトが言う。

「何事もなければいいがな」

そう話しているとついにコボルドロードのHPが最後のゲージに突入した。
コボルドロードは一際高く雄叫びをあげると持っていた斧とバックラーを投げ捨てた。

「下がれ!俺が出る‼︎」

直後ディアベルが叫び前に出た。

「ちょっと待て、ここはパーティー全員でやるべきじゃないのか…」

隣にいたキリトも同じことを思っていたのか首を傾げていたが一瞬で表情が険しくなった。

「違う。タルワールじゃない。あれは刀だ!」

それに気づくとキリトは思いっきり叫んだ。

「だめだ‼︎下がれ‼︎全力で後ろに跳べぇ‼︎」

だがすでにディアベルはコボルドロードに向かって走っていた。
キリトが叫んだ直後コボルドロードが飛んだ。
その巨体ではあり得ないほど飛び上がり天井まで行くと宙返りして天井に脚をつけ、天井を蹴って落下する。
コボルドロードの持っている刀は深紅の輝きを放っていた。
もちろんソードスキルだ。
そしてコボルドロードはソードスキルを解き放った。
ディアベルと近くにいた隊が攻撃を受けHPが一気に減る。
あのソードスキルは刀スキル重範囲技《旋車》だ。
範囲技なのにHPが約半分持っていく威力も凄まじいが、技の効果はそれだけには留まらなかった。
倒れこんだプレイヤーの頭には回転するおぼろな黄色い光が取り巻いていた。
すなわち一時的行動不能状態(スタン)しているのだ。
普通ならスイッチを待たずに飛び込みタゲを取らなければならないところだが動ける者はいなかった。
俺はすぐに我に返り走り出そうとしたがそれよりも速くコボルドロードが先に動いた。
コボルドロードは吠えるとソードスキル、刀スキル単発技《浮舟》を放った。
狙われたのは正面に倒れたディアベルだった。
ディアベルは動けるはずもなくソードスキルを受け体が高く宙に浮く。
だが、コボルドロードの動きは止まらなかった。
刀の刀身を再度赤いライトエフェクトが包む。

「まずい。防御姿勢を取れ‼︎」

俺は叫んだがそれよりも速くソードスキルがディアベルを襲った。
上、下の連撃、そこから一拍溜めての突き。
あれは確かソードスキル、刀スキル3連撃技《緋扇》。
全てクリティカルヒットしディアベルはレイドメンバーの頭上を越え、後方でセンチネルの相手をしていた俺たちの近くまで飛ばされた。
ディアベルのHPはすでに真っ赤に染まり、右端から急速に減り始めていた。

「キリト‼︎ディアベルは任せた‼︎センチネルは俺が相手する‼︎」

「わかった!」

言い終わるやいなやキリトはディアベルに向かって走って行く。
俺はこっちに走ってくるセンチネルに向かって走る。
センチネルが振り下ろしてきたポールアックスをソードスキル《スラント》で弾く。

「スイッチ!」

剣を戻し攻撃する直前、後ろからアスナが叫ぶ。
俺は慌てて剣を戻し、横に軽く跳んでその場をどく。

「そいつは任せた!」

「わかった!」

そう言うと俺は身を翻してもう1体の方へ向かう。
もう1体の方はサキが前に出て、セレッソが後ろで剣を構えていた。
俺は剣を握りなおすと思いっきり地面を蹴り叫んだ。

「スイッチ‼︎」

サキはビクッと肩を震わせると慌てて横に軽く跳ぶ。
センチネルが振り下ろしてきたポールアックスを右下からの斜め切り上げで弾き、センチネルの首に水平斬りを放つ。

「スイッチ!」

「はい!」

剣を戻してその場をどくと、すかさずセレッソが飛び込みソードスキル《リニアー》でセンチネルの首に打ち込む。
センチネルはHPが0になりポリゴンの欠片になって舞い散った。
だが同時に離れたところでモンスターのとは違う何かが爆散する音が聞こえた。
おそらくディアベルが死んでしまったのだろう。
だが今はディアベルの事よりボスの方が最優先だ。
俺はボスの方へ向かいながらキリトに言う。

「キリト!そいつの事は後だ!今はボスを倒すぞ‼︎」

「わかった‼︎」

キリトは剣を抜きながらボスへ向かう。
コボルドロードの振り下ろしてきた刀を軽々と避け脚を数回斬りつけ距離を置く。
すかさず反対側からキリトが突っ込み、ソードスキルを放つ。
コボルドロードがキリトの方を向くと同時に飛び込み、無防備の背中にソードスキル《バーチカル》を打ち込む。
着地と同時に地面を蹴り後ろへ下がる。
そしてコボルドロードが俺にタゲをつけるとふんでキリトがコボルドロードに向かってダッシュする。
だがコボルドロードはキリトに向けて刀を振り上げた。
上段とふんだキリトは《バーチカル》を発動させる。
だが上段だったはずの刀がくるりと半円を描いて動き真下に回った。
キリトが避ける前に真下から刀が跳ね上がり正面から受けたキリトはHPを3割削られ吹き飛ばされた。
一瞬、キリトの方に気を取られ、コボルドロードはその隙を見逃さなかった。
グルンと回転してこっちを向くと刀を弾きながら突っ込んでくる。
予想以上の速さに反応できず、コボルドロードの繰り出してきた突きを正面から喰らいキリト同様に吹き飛ばされた。

くそ、油断した。しかもスタンになるなんて。

コボルドロードはひときわ大きく叫ぶと刀を引きこっちに向かって走ってくる。

「ぬ……おおおッ‼︎」

コボルドロードが刀を振り下ろすと同時に太い雄叫びが轟き巨大な武器が、緑色の光芒を引きながら刀と激突した。
ボス部屋が震えるほどのインパクトが生まれコボルドロードは大きく後方にノックバックした。
割って入ったのはエギルだった。

「あんたらがPOT飲み終えるまで俺たちが支える。ダメージディーラーにいつまでもタンクやられちゃ立場ないからな」

「はは、確かにそうだな。すまない、助かる」

そう言うと俺は回復ポーションを取り出し飲み込む。
前進してきたのはエギルだけではなかった。
彼の仲間たるB隊をメインに数名、回復を終えて復帰していた。
その中にはアスナたちもいた。
その奥ではキリトが戦っている戦士達に向かって指揮を取っていた。




ついにボスの最後のゲージが赤く染まった時、一瞬気が緩んだのか壁役の1人が足をもつれさせ、よろめき、コボルドロードの真後ろで立ち止まってしまった。
その瞬間コボルドロードが《取り囲まれ状態》を感知し、ひときわ獰猛に吼えると全身をバネに使って垂直ジャンプした。

「キリト‼︎」

「わかってる‼︎」

俺とキリトはほぼ同時に飛び出すとソードスキル、片手剣スキル突進技《ソニックリープ》を発動させ思いっきり地面を蹴り斜め上空へ飛び出す。

「「届……けぇぇぇ‼︎」」

キリトの剣がコボルドロードの左腰に当たり、俺の剣がコボルドロードの刀に当たる。
コボルドロードは空中でぐらりと傾き、刀は根元から折れた。
コボルドロードは地面に叩き付けられると「ぐるうっ!」と喚き、立ち上がろうと手足をばたつかせる。
人型モンスター特有のバットステータス《転倒(タンブル)

無事に着地し、コボルドロードに向き直るとキリトが叫ぶ。

「全員フルアタック‼︎囲んでいい‼︎」

「お…オオオオオ‼︎」

エギルを含む6人は叫ぶと倒れたコボルドロードをぐるりと取り囲み、ソードスキルを同時に発動させる。
爆発めいた光と音が炸裂し、コボルドロードのHPをがりがりと削っていく。
技後硬直から回復すると次のソードスキルの予備動作に入る。
同時にコボルドロードがもがくのをやめ、立ち上がるため上体を起こした。

「みんな!最後のソードスキル、一緒に頼む‼︎」

「「「「了解‼︎」」」」

エギルたちのソードスキルが終わり、技後硬直になると同時に先にアスナとセレッソがエギル達の隙間を抜け、アスナがコボルドロードの左脇腹を、セレッソが右脇腹に渾身の《リニアー》を打ち込む。
アスナたちが退くのと同時にサキがソードスキル、槍スキル単発技《スラスト》をコボルドロードの正面に打ち込む。
その間に俺はコボルドロードの背面に回り込む。
そしてサキが退く前に飛び出す。
正面からはキリトがコボルドロードに向かって走る。
そしてサキが退くのと同時に俺たちはソードスキルを発動させる。
キリトはコボルドロードの右肩から腹までを斬り裂き、俺は左肩から腹までを斬り裂く。
そして同時に剣が跳ね上がりそれぞれ逆の方から剣が抜ける。
先の斬撃と合わせてV字の軌道を描くソードスキル、片手剣スキル2連撃技《バーチカル・アーク》。
直後コボルドロードは後方へよろめくとその体をポリゴンの欠片へと変えて盛大に四散させた。
そして『Congratulations』と文字が高々と浮かび上がった。
数秒したあとようやく理解したのか歓声が上がった。
だがその歓声はすぐに打ち消された。

「なんでや‼︎」

叫び声がボス部屋に響く。

「何でディアベルはんを見殺しにしたんや‼︎」

叫んだのはキバオウだった。
その周りにはディアベルと一緒に戦っていた仲間たちもいた。

「見殺し?」

キリトがそう聞くとキバオウは一層声を荒げた。

「そうやろうが!自分らはボスの使う技知っとったやないか!最初からあの情報を伝えとったらディアベルはんは死なずに済んだんや!」

その叫びにレイドメンバーたちはざわめく。
その中の1人が俺とキリトに向かって叫んだ。

「そうだ!お前!元βテスターだろ!それにそっちの奴だって情報を知ってて隠していたんだ!だから攻撃パターンとか知ってて倒せたんだろ!」

その瞬間プレイヤーたちの目が疑いの目に変わった。
だがその中にも疑問を投げかけるプレイヤーもいた。

「でもさ、昨日配布された攻略本にボスの攻撃パターンはβ時代の情報だ、って書いてあったろ?彼が本当に元テスターならむしろ知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」

「そ、それは……」

押し黙ったプレイヤーの代わりにディアベルの当初の仲間だったシミター使いが言った。

「あの攻略本がウソだったんだ。アルゴって情報屋がウソを売りつけたんだ。あいつだって元βテスターなんだから、タダで本当のことなんか教えるわけなかったんだ」

さすがにこの流れはまずい。

隣にいるキリトもひそかに息を詰める。

どうする。まずは謝罪か?…いや、ダメだ。収めるどころか逆に逆上しかねない。
どうする。

刹那俺の脳裏に1つのアイデアが浮かぶ。

これなら……いや、ダメだ。キリトも巻き込んでしまう可能性がある。

不意にキリトが小声で話しかけてきた。

「いけるか?カゲヤ…」

俺は驚いてキリトの方を向く。
キリトはシミター使いの方を見ていたがその顔には決意が読み取れた。
今まで悩んでいた自分が馬鹿らしくなり軽く笑うとキリトに言い返した。

「あぁ、問題ない」

決心した俺たちの背後で今まで我慢していたエギルとアスナが同時に口を開いた。

「おい、お前……」
「あなたね……」

だが途中で2人を止める。
そのあとキリトが前に出てシミター使いの顔を冷ややかに眺めながら言った。

「元βテスターだって?俺たちをあんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

俺も前に出ながらキリトのあとにつづく。

「いいか、よく思い出せ。SAOのCBT(クローズドベータテスト)の倍率はかなりのものだ。受かった1000人のうちほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者だった。今のお前らのほうがまだましだ」

そこまで言うとキリトに代わる。

「でも、俺たちはあんな奴らとは違う。俺たちはβテスト中に他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスの刀スキルを知っていたのはずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ、アルゴなんか問題にならないくらいな」

「…なんだよ、それ…」

最初に俺たちを元テスターと指弾した男が掠れ声で言った。


「な、なんだよっ!それ!もう元βテスターどころじゃねえじゃねえか!」

「そうだ!もうチートだ!チーターだ!」

「βテスターのチーター、だからビーターだ!」

最後のビーターという言葉を聞くとキリトはニヤリと笑う。

「《ビーター》、いい呼び名だなそれ」

キリトはそう言うとプレイヤー達を見渡し口を開く。

「そうだ、俺はビーターだ。これからは元テスター如きと一緒にしないでくれ」

言い終わるとキリトはウインドウを開き黒いロングコートを装備する。
俺もウインドウを開きボスからドロップしたユニーク品《コート・オブ・ヴァイス》を装備する。
俺の体を小さな光が包み、キリトとは正反対の白いロングコートが現れる。

「2層の転移門は俺たちがアクティベートしておく。ついてくるなら初見のモンスターに殺される覚悟をしておけ」

俺はロングコートをばさりと翻しボス部屋の奥にある小さい扉へ向かう。
扉を開けると狭い螺旋階段が伸びていた。
上がろうとするとアスナがやってきてキリトを呼び止める。
俺はキリトを待たずに階段を上る。
数分上がったところで後ろから足音が聞こえくる。
振り返るとキリトが上がってきているところだった。

「話はすんだのか?」

「あぁ、大丈夫だ」

そのまま数分階段を上がっていくと扉が現れた。
キリトは扉をそっと開けると第2層へ足を踏み入れた。
俺もキリトに続き第2層へ足を踏み入れた。

 
 

 
後書き
作者「やっと第1層が終わりました〜‼︎」
カゲヤ「長かったな。それで、次はどうするんだ?」
作者「10層ぐらい飛ばそうかなと考えてる」
カゲヤ「一気に74層とかに行かないんだな」
作者「いろいろと書きたいことがあるからね」
カゲヤ「そうか。では次回の物語も死ぬまで付き合えよ!」」 
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