FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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愛と活力の涙
「きゃあああ!!」
「ジュビア!!」
その頃、ジュビアとエルザは七眷属の一人、メルディと戦っていた。
「14位」
「離れてろ、こいつは私がやる」
エルザは倒れているジュビアにそう言い、、天輪の鎧へと換装する。
「エルザ・スカーレット、あなたは5位」
「何の順位だ?」
エルザはメルディに突進する。
「私が決めた、お前たちを殺す優先順位」
メルディはそういってマギルティ=ソドムを展開し、エルザを襲う。だが、エルザはそれを簡単に跳ね返す。
「下らんな」
「大事なことよ」
二人がそう言うと、メルディのマギルティ=ソドムがジュビアに強襲する。
「きゃあああああ!!」
「なぜジュビアを狙う!?」
「14位なんてゴミだから、早めに片付けておくの!!」
メルディの攻撃が次々とジュビアを襲う。
「しっかりしろ!!ジュビア!!」
エルザがジュビアを横目で見ると、メルディはエルザにも攻撃を入れる。エルザはそれをなんとか防ぐ。
「4位はギルダーツ。でもここにはもういないようね」
メルディはエルザと交戦しながら順位を述べていく。
「3位はマカロフ。でも、ハデス様にやられていると思う」
「マスターが3位だと!?お前は、マスターよりも優先順位が高い者がいると言うのか!!」
メルディはエルザの攻撃を交わしながら答える。
「2位はシリル。でも、お兄ちゃんにもうやられていると思う」
「お兄ちゃん?」
エルザはメルディの発した単語に反応する。
「そして、1位はグレイ。グレイ・フルバスター」
「何?」
メルディは怒りに満ちた表情でそう言う。その時、ジュビアがピクッと動いたが、メルディとエルザは気づいていない。
「なぜシリルとグレイが?」
「シリルはわからない。ただ、お兄ちゃんが探してたから。でも・・・」
メルディの全身から魔力があふれでる。
「グレイは・・・ウル・・・ティアの母を殺した男」
メルディが顔をあげると、その目は狂気を感じさせるほどだった。
「ウルティアを、悲しませた男。私の・・・私のウルティアをキズつけた男!!絶対に許さない!!八つ裂きにしてやる!!」
メルディのマギルティ=ソドムはエルザを全方位から囲んでいる。
「しまった!!」
エルザに攻撃が迫ろうとした時、辺りの水がその剣を全て弾いていく。
「「!!」」
二人が驚いていると、辺りが暗くなり、雨が降り注いでくる。
「ユルサナイ?」
二人はエルザの後ろから聞こえた声に反応し、振り返る。
「それはこっちのセリフです。誰の命を狙ってるってぇ?」
そう言うジュビアの目は、先程のメルディよりも遥かに怒りに満ちていた。メルディはジュビアに一瞬恐怖を感じたが、すぐに正気に戻る。
「な・・・なんだこいつ、14位のくせに」
「お・・・落ち着けジュビア」
エルザはジュビアにそう言うが、ジュビアは落ち着くどころかますます恐ろしいオーラを放ち始める。
「落ち着け?この女がグレイ様を狙っている・・・理不尽な理由で」
「あ・・・いや・・・その・・・」
ジュビアはフラフラと歩き出し、メルディへと近づいていく。
「これが落ちついてラレマスカ?ジュビアはこの女を許さない!!」
ジュビアは大量の水をメルディに放つと、メルディは避けることができずに岩壁に飛ばされてしまう。
ジュビアはそれを見ると、水中を先程までとは比べ物にならない速度で走り、
「水流昇霞!!」
「ぐふっ」
メルディを真下から上に押し飛ばす。
(ジュビア・・・試験で私と戦った時とまるで別人・・・)
エルザは一次試験で自分とぶつかったジュビアと今のジュビアの力を見て、それが全くの別物だということを感じ取る。
(想い人への強い気持ちが力となる)
メルディに次々と攻撃を入れていくジュビア。
(これが、本来のジュビアの力!)
「エルザさん!ここはジュビアに任せてください。早くウェンディさんを見つけて。そして、シリルくんとグレイ様も」
ジュビアにそう言われたエルザは、天輪の鎧から水着へと換装する。
「了解した。ここは任せたぞ!」
「5位は逃がさない!!」
その場から走り去っていくエルザにメルディがマギルティ=ソドムを放つため、魔力の剣を展開しようとしたが、
ザバァッ
水がメルディを飲み込み、メルディはその場から逃れるために魔法の展開をやめざるを得なくなる。
「マギルティ=レーゼ!!」
「水流斬波!!」
二人の攻撃が共にぶつかり、相殺する。
二人は地面に着地すると、両者を睨み合う。
「不思議。同じグレイという人間に対して、一方は憎み、一方は愛する。同じ人物なのに、感情によって見え方が違う」
「それが自然。個たる象徴。人間ということ」
「私は運がいい」
「?」
メルディの意味深な言葉に、ジュビアは驚く。
「グレイを殺すことを目的として来た。そのグレイに対して、強い感情を抱く人に会えた」
「どういう意味!?」
ジュビアは大きな声を出すが、メルディは表情一つ変えずに返す。
「お前のグレイへの想いが、グレイを殺す!」
メルディはそう言うと、右手を体の前に持ってくる。
「ジュビア、お前にわずかな天国と、大いなる絶望を見せてやろう。さぁ、思い浮かべろ!愛しき者の姿を」
メルディにそう言われたジュビアは、次第に顔が赤くなり、心拍数が高まってくる。その頭の中には、イトシイ者の顔が浮かんでいた。
(グレイ様?)
「それだ!!感覚リンク!!」
メルディがジュビアに手を向けると、ジュビアをピンク色の光が襲う。
「うわああああああ!!」
叫ぶジュビア。その体から、何かがどこかへと飛んでいく。
「ぐわああ!!」
すると、ゼレフを持って悪魔の心臓の戦艦に向かうウルティアを追っていたグレイが、何をした訳でもなしに痛みを感じる。
「なんだ?この痛みは」
グレイの腕には。いつもまにか謎の紋章が刻まれていた。
「?」
グレイと同じ紋章がジュビアの腕にも同様に刻まれていた。
「失われた魔法、マギルティ=センス」
「な・・・何をしたの?」
ジュビアはその場で上体を起こし、メルディを見据える。
「ジュビアとグレイの感覚を一つにした。これは対象への強い思いがなければ繋げない」
それを聞いたジュビアはゆでダコみたいに顔を真っ赤にする。
「ジュ・・・ジュビアとグレイ様がひ・・・一つにー!!?」
「感覚がね」
ジュビアはあまりに興奮しすぎてどんどん顔を赤くする。その時、グレイも同様に顔を真っ赤にしていた。
「いい気分でしょ?二人の感覚は完全に共有するの」
「て・・・天国のよう・・・もだえ死にそう」
鼻で笑いながら言うメルディに、ジュビアは嬉々として答える。
「だけど・・・この魔法は痛みすら共有する!!」
「ぐっ!!」
メルディはジュビアの腕に攻撃をする。この時、グレイも同様の痛みを感じていた。
「お前が受けた痛みは、全てグレイも感じている」
「そんな・・・」
ジュビアは悲しそうな声を出したかと思ったが、それはすぐに怒りへと変わる。
「グレイ様を・・・キズつける気?」
ジュビアはメルディに突っ込む。
「シェラー!!」
「がはっ!!(バカな・・・まだ魔力が上がるの!?)」
メルディはジュビアの魔力がさらに上昇したことに驚いている。
「こんなに強かったなんて・・・想いが力になってる。(だったら、私も見せてあげる!想いの力を!!)」
メルディは自分の右手首に人差し指と中指を擦り付ける。
「3スプレッド感覚リンク!!」
メルディの腕から、ジュビアの腕に何かが繋げられる。
ジュビアはそんなことになど気づかず、メルディを殴る。メルディは後方へと飛ばされていく。
「うああああああ!!」
すると、
「きゃあああ!!」
攻撃したはずのジュビアにまで痛みを感じていた。
「な・・・なんでジュビアまで・・・」
ジュビアは水の中に倒れ、メルディは体を起こしてジュビアの前に立つ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「ううう・・・」
息を乱すメルディとお腹を押さえるジュビア。
「私はウルティアのためなら・・・この命などいらない。お前を中継することで、私と標的が繋がった・・・」
ジュビアはメルディの言葉の意味が分かってしまい、目を見開く。
「私とジュビアたグレイの3人の感覚が今、繋がっている。これで私たちのどちらかが死んでもグレイは死ぬ。これが絶望の袋小路。グレイの命の行き止まり」
ジュビアは苦しんでいるグレイを想像し、心が痛んだ。
「なんてことを・・・そんなことをしたら、あなたまで」
ジュビアは立ち上がりメルディに向き直る。
「そうよ。これが私の信念。もう終わり、私たち3人は死ぬしかない」
ジュビアは呆然と立ち尽くす。すると、その背中に自分とメルディ以外の感覚が流れ込んできた。
(“背中に圧迫感”グレイ様の感覚かしら?)
「何かに背中を押し付けている」
メルディもジュビアと同様の感覚を感じ取ったようだ。
「私とグレイが繋がった今、もはや誰とも戦う必要はない」
メルディはそう言い、魔力の剣を2本だし、自分の首に当てる、
「自分を殺せばいい」
「やめて!!」
ジュビアはメルディに猛然と走る。
「私は死など怖れない!!」
ジュビアが懸命に走るが、それよりも先にメルディの首が落とされてしまうのは容易に想像できた。
「グレイ様!!ごめんなさい!!んあああああ!!」
ジュビアは自らの足を殴った。その衝撃で、足が折れてしまう。
「がはっ!!」
メルディもその感覚を共有していたため、その場にしゃがみこむ。
その頭の上で、2本の剣は空を切る。
「自らの足を・・・!!」
メルディとジュビアは足を押さえてうずくまる。
「マギルティ=センスは“痛覚”を共有してもそのキズまでは共有できない。私を止めるには殺す他ない。
ただし、この魔法の特例として“死”だけは共有する。リンクしている者同士の命は共有している。
それでもまだ抗うつもりか!!私たち3人はもう、死ぬしか道がない」
メルディの言葉には、悲しみのような感情が込められているようにも聞こえた。
「他にもある。3人で生きる道!」
「!!」
メルディはジュビアの言葉に動じる。
「敵を倒すとしても、妖精の尻尾の魔導士は、敵の命までは奪わない!!」
「甘えたことを!!私はウルティアのためにグレイを殺すんだ!!」
メルディは足を痛めながらも立ち、自らの首に剣を当てる。
「させるものか!!その前にお前を戦闘不能にしてやる!!」
ジュビアも折れた足を引きづりながらメルディへと迫る。
(私は・・・私は・・・)
「うあーーーん!!」
今から数年前、メルディは壊れ果てた町の中で泣き叫んでいた。
「メルディ!!」
そこに一人の少年が駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん・・・」
その少年はメルディの近所に住み、幼い頃からよく自分と遊んでくれた人物だった。
少年はメルディの頭を撫でると、しゃがんで目線の高さを合わせる。
「おばさんとおじさんは?」
メルディはただ泣き叫びながら頭を横に振る。少年はそれを見て、表情を歪ませる。
「わかった。ここにいろよ!!すぐに戻って来るから!!」
少年はそう言うと、どこかへと走って行ってしまう。
「お兄ちゃーーん!!」
メルディの呼び掛けに少年は振り返らない。メルディは少年の帰りを待つことにしたが、いつまで経っても帰ってこなかった。
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・」
メルディが泣いていると、その前に一人の女が歩いてくる。
「もう大丈夫よ。泣き止んでちょうだい」
女はメルディの頭を撫でながらあやす。人が来たことで安心したのか、メルディの泣き声が少しずつ収まってきた。
「いてて・・・あのガキ・・・」
「すごい強かったっす・・・ウーウェ・・・」
女がメルディを見つめていると、後ろから二人のキズだらけの男たちが歩いてくる。
「ザンクロウ、ヒカル。あの少年はどうしたの?」
「じじ・・・自分たちじゃ無理だからと、ハデス様がやっつけてしまったっす」
「あぁ。俺だけでも十分だったのによぉ」
ザンクロウと華院=ヒカルは女が慰めている少女を見る。
「ウルティアさん。なんだよそのガキは」
「生き残りよ」
「だ・・・だだ・・・だったら潰しちまうっす」
それを聞いたメルディは、再び大声で泣き叫ぶ。
それを見たウルティアは、寂しそうな顔をしながらメルディを優しく見つめる。
「私が面倒を見るわ」
「なーにいってんだってよ!!“ゼレフの鍵”が眠る地の民は殲滅するっていう命令だってよ?」
「あの少年もどうせ生きてるんでしょ?それに、この子を見てると、昔の自分を見てるようなの。
大丈夫・・・この子は魔道の深淵に近づけるわ」
ウルティアにそう言われたザンクロウと華院=ヒカルは渋々納得してしまう。
それからしばらくたち、メルディも今ぐらい大きくなってきた頃。
「ウルはなんでいつも寂しそうなの?」
戦艦のデッキでメルディはウルティアに質問する。
「私をウルと呼ぶなと言ってるでしょ。ウルは私の母。死んだ母の名よ」
「死んだ?」
「いつか話してあげる」
メルディはウルティアの腕に抱きつく。
「私のお母さんはウルティアよ。それで、いつかお兄ちゃんと一緒に、3人で暮らすの」
「こんな大きな娘はいらないわね」
冗談混じりのウルティアに、メルディは笑顔で返した。
(私は・・・私は・・・)
メルディのマギルティ=ソドムが自分を殺そうとした時、水がその剣を壊し、ジュビアがメルディを抱き締める。
(え?)
ジュビアはメルディを抱きしめ、涙を流している。
(何・・・これ・・・なんで!?なんで泣いてるの!?)
メルディはジュビアがなぜ泣いているかわからず、唖然とする。ジュビアはメルディから一歩離れ、顔を見つめる。
「あなたにも笑顔がある!!あなたにも大切な人がいる!!」
大切な人・・・メルディは二人の人物の顔を思い浮かべる。
(まさか感覚を超えて、感情まで共有してしまった!?)
「生きて・・・」
(そんなことって・・・)
メルディは何が起きたのか理解できない。
「ジュビアも生きる。愛する人のために生きてるの。あなたも同じ!!愛があるなら生きなきゃダメ!!」
(愛・・・)
ジュビアは静かにうなずく。
(ダメ・・・)
(生きる・・・)
(これ以上この女と感情を共有したら・・・)
メルディの涙腺が次第に緩み、目からたくさんの涙が流れ出す、
(愛と活力の涙・・・この感情が・・・)
二人は抱き合うようにその場に膝をつく。
それと同時に、グレイを含めた3人に刻まれた紋章が消えていく。
「お前とは戦えない・・・」
「グレイ様は逃げも隠れもしないわ」
二人は力尽き、水の中へと倒れた。
(ウルティア・・・お兄ちゃん・・・)
メルディは心の中で、最愛の者たちの名前を呼んだ・・・
「メルディ?」
その時、次なる標的を探していたこの男は、メルディの心の声が聞こえ、振り返った。
「気のせいか」
男は呟くと、踵を返して歩き出す。
「待ってろよ。俺はお前が必ず・・・」
男は雨に濡れながら、目的地を目指した。
後書き
いかがだったでしょうか。
次回もよろしくお願いします。
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