FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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妖精の輝き
その頃、ナツたちは洞窟で雨宿りをしていた。
「じゃーん!!」
「かわいい!!」
「星霊界のお召し物、よくお似合いです。姫」
「ありがとうバルゴ!」
ルーシィは自分の服がボロボロになってしまったため、バルゴに頼んで星霊界の服を持ってきてもらい、それに着替えていた。
「恐れ入ります、姫。さらに」
バルゴはそう言うと、ウェンディの前に服を一着用意する。
「私のもあるんですか?」
「どうぞお召し変えを。風邪を引いてしまいます」
「あ、どうも」
「よろしければ、お手伝いなさいましょうか?」
「いいですいいです。自分でやりまーす」
ウェンディはナツたちに見えないように岩の影に隠れて着替えを始める。
ルーシィはバルゴに近づく。
「ありがとうね、バルゴ」
「いえ、姫のお役に立てて光栄です。ウェンディさんも、大分気持ちの整理がついたようで」
先程までのウェンディはひどく落ち込んでいたが、今はすっかり元通りになっていた。多少の無理はしているだろうが・・・
ルーシィは洞窟の外をずっと見ているナツたちの方へと向かう。
「雨、やまないわね」
「シャルルとセシリーとリリー、大丈夫かな?」
ウェンディも岩の影から顔を見つめる覗かせ、洞窟の外の様子を見ている。
「あ!」
「お!」
外を見ていたハッピーとナツが何かに気付く。そこには、葉っぱを頭に被り、雨対策をしていたシャルルとセシリーの姿だった。
「シャルル!セシリー!リリーはどうした?」
「途中で私たちのキャンプがあったの。ガジルやミラが重体よ」
「リリーはそこで降りるって~」
「みんな大丈夫かな?」
シャルルとセシリーは地上に降りて翼をしまう。
「で、悪魔の心臓の船は、そのさらに東の岸にあるわ」
「俺たちのキャンプか・・・」
「ねぇ・・・一旦そこまで行かない?カナもそこにいるかもしれないし」
「そうですね。みんなと合流した方がいいと思います。それに・・・」
ルーシィとウェンディが一度、簡易ベースに戻ることを提案する。ウェンディは何かを言おうとしたが、言葉を飲み込む。
ルーシィとナツはシリルのことを伝えようと言おうとしたのだと察し、ここは静かにうなずく。
「よし。いこう。じっちゃんは俺が」
ナツがそう言い、負傷したマカロフを背負う。
「俺は・・・」
「評議院を止めてくれ」
洞窟で一緒に雨宿りしているドランバルトにナツが言う。ドランバルトはそんなナツから視線を反らす。
「悪魔の心臓もゼレフも、必ずあたしたちがどうにかする!」
「島への攻撃を、なんとか止めてください!!」
ルーシィとウェンディもドランバルトにお願いする。
「できるわけない」
「じゃ、時間を稼ぐだけでいいや。頼むぞ」
ナツはそれだけ言うと、洞窟から出ていこうとする。
「違う!!そっちじゃない!!」
ドランバルトは立ち上がり、自分に背を向け歩いているナツたちに向かって叫ぶ。
「今お前たちが置かれている状況を、どうやったら打破できると言うんだ!!」
「全力でやる。それだけだ!!」
ナツたちは振り返らずそう答える。
ドランバルトは、そんなナツたちの背中を見送ることしかできなかった。
その頃、悪魔の心臓の戦艦では・・・
「まさか、メルディまでやられるとは・・・」
ワインを一杯飲みほし、グラスを置いたハデスが言う。
「七眷属が半数を切ることは、予想しておらんかったな。ブルーノート」
ハデスはブルーノートに視線を向けたが、そこにはすでに誰もいなかった。ハデスは大きくため息をつく。
「やれやれ、手遅れか・・・悪いなマカロフ、奴だけは使うまいと思っていたのだがな。終わりだ」
ハデスは一人残っている戦艦で、そう言った。
「ったく、一体なんだってんだ!!」
天狼島に船から降りた男がそう言う。
「なぜこの島に敵が・・・」
「今は状況を把握しねぇと。簡易ベースに戻ろうぜ!」
ロン毛の男と仮面のようなものを被っている男がそう言う。
3人が走り出そうとした時、
「なっ!?」
「おい・・・」
「ウソだろ?」
3人は近くの砂浜である物を見つけ、それの元へと急いだ。
その頃、ナツたちは簡易ベースを目指して走っていた。
「ドランバルトさん、大丈夫かな?」
「ほっとけばいいのよ、あーいうのは」
「評議院を止めてくれるといいけどね~」
ウェンディにシャルルとセシリーがそう言う。
「あたしはカナも心配。どこではぐれたんだろう?」
「キャンプにいるといいね」
ルーシィははぐれたカナを心配し、ハッピーがそう返す。
ナツたちが走っていると、目の前に人を発見する。
「お?誰かいるぞ」
その言葉に全員が足を止める。しかし、その人の周りが何かおかしかった。雨がすごい勢いでその人物に降りかかっていたのだ。
「何?この魔力・・・」
その男はウェンディたちに少しずつ近づいてくる。
「なんであいつの近くだけ、雨が激しいの!?」
「肌がピリピリする・・・」
「何なのこの人・・・」
シャルルとハッピー、セシリーがその男を見て驚いている。
「誰だ?てめーは」
ナツの問いに、男は答えない。
「飛べるかなぁ?」
男はナツたちの前で足を止める。
「いや・・・まだ飛べねぇな・・・」
男は両手をナツたちに向ける。
すると、男の周りの雨が一瞬やんだ。
「!!」
「落ちろ」
ブルーノートがそう言うと、突然ナツたちが何かに押し潰されるように倒れる。それと同時に、ナツたちの周りの地面がへこむ。
「ぐはぁ!!」
「きゃあああ!!」
「ああああ!!」
「う・・・動けない・・・」
「お・・・重い~・・・」
「重力?」
ナツたちはブルーノートの攻撃を受け、地面にへばりつく。その間にも、地面は少しずつ、少しずつと沈んでいく。
「俺はよう、妖精の尻尾にも、ゼレフにも、あまり興味ねぇのよ」
ブルーノートは一度魔法からナツたちを解放し、解放されたナツたちはなんとか顔をあげブルーノートを見上げる。
「だけど一つだけ、ほしいもんがここにあるんだ」
ブルーノートは冷酷な目でナツたちを見下し、
「妖精の尻尾初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンの墓はどこだ?」
そう問いかけた。
「し・・・知らないわよ!!あたしたちだって!!」
「初代マスターのお墓・・・二次試験と何か関係があるっていうの?」
ルーシィとウェンディがブルーノートにそう返す。
「そっか!オイラわかっちゃった!」
「な・・・何が~?」
「どうせろくでもないこと考えたんでしょうけど、聞いてあげるわよ」
何かに気づいたハッピーにセシリーとシャルルがそう言う。
「お前もS級魔導士になりたいんだな!!でも妖精の尻尾には入れてあげないぞ!!」
「はぁ・・・」
「聞くんじゃなかった・・・」
ハッピーの勘違いにセシリーとシャルルはあきれる。すると、そのハッピーの上に魔方陣が現れ、
「プギャア!!」
「ハッピー!!」
「大丈夫~!?」
ハッピーは地面へと押し潰されそうになる。
「ネコがなれなれしくしゃべってんじゃねぇよ。俺がてめぇに聞いたか?試験だかS級だか知らねぇがふざけてんじゃねぇよ」
「ふざけてるのはそっちでしょ!!」
「ルーシィさん・・・?」
ブルーノートにルーシィが怒鳴る。
「お墓は私たちにとって神聖な場所!!例え知ってても、あんたなんかに教えな・・・」
ルーシィの体が突然宙に浮き、地面へと落とされる。
「きゃあああ!!」
「ルーシィ!!この・・・」
ナツがブルーノートを睨むが、ブルーノートは全く気にした様子もなく話を続ける。
「妖精の輝き、妖精の法律に並ぶとも言われてる、てめぇらのギルド、三大魔法の一つだろ?」
「なんだよそれ・・・知らねぇっつうの。ぎゃあ!!」
「「「「「ナツ(さん、くん)」」」」」
ブルーノートに知らないと答えたナツは魔方陣を展開されて押し潰される。
「つ・・・潰れる・・・」
「その輝きは敵の存在を許さない、無慈悲なる光」
「そんなの知らな・・・ぷぎゃ!!」
「ハッピー!!」
「しっかりしなさい!!」
ハッピーもブルーノートに再び潰れそうになる。
ブルーノートは自分の欲しい解答が得られないと、その者を攻撃していくようだ。
「俺はその魔法が欲しい」
「俺はイグニールの子だ・・・簡単に地面に落とされる訳には・・・」
ナツがブルーノートの重力下の中で、必死に力を入れて立ち上がる。
「いかねぇんだよ!!」
立ち上がったナツは猛然とブルーノートに突っ込んでいく。
「走った!!」
「この重力下で!?さすが!!」
ウェンディとルーシィはナツを見て感嘆の声を上げる。
「メイビスの墓に封じられてるらしいな。その場所を教えてくれんかね?」
ナツはブルーノートに答えず、炎を足に纏い、ジャンプする。
「とんだ!?」
「どんだけ負けず嫌いなの!?」
ウェンディとルーシィはナツのあまりの行動に驚くことしかできない。
「火竜の・・・」
ナツがブルーノートに攻撃しようとした時、
「波動波」
「ぐはぁっ!!」
ナツが目に見えない何かにより弾き飛ばされる。ナツはブルーノートの魔法によってできたクレーターの壁の部分に激突した。
「ナツさん!!」
「ちょ・・・」
ウェンディとルーシィがブルーノートの後ろを見る。そこには、見覚えのある男が立っていた。
「カミューニか・・・」
「いよぉ、ブルーノート。お前もとうとう出てきたんだな」
ブルーノートは振り返らずに名前を呼び、カミューニは楽しそうに片手を上げる。
「ああ・・・」
ウェンディはカミューニを見たとたん、体が震え始めた。
「ウェンディ?」
「どうし・・・あ!」
心配そうにウェンディを見るルーシィと何かわかったような反応をするナツ。
「おめぇがシリルを殺りやがったのか!!」
「ああ。そうだぜ」
カミューニは冷静な表情で答える。
「カミューニ。邪魔すんじゃねぇよ」
「まぁいいだろ?お前の欲しいものは、マスターマカロフに聞けば万事解決じゃねぇの?」
カミューニが指を指したところには、意識のないマカロフが倒れていた。
「ほう・・・確かに、あいつに聞けばよかったのか」
「そうそう。だから俺にあいつらは譲ってくれねぇ?」
ブルーノートにカミューニはそう提案する。
「じっちゃんに手を出してみろ!!ただじゃおか・・・」
「ふん」
「ぐっ!!」
体を起こしたナツはブルーノートの魔法により地面へと落とされる。
「「「きゃあああ!!」」」
「「うわあああ!!」」
その後ろにいたルーシィたちも同様に重力をかけられる。
「きゃんきゃんわめくんじゃねぇよガキども。それとも一気に押し潰してやろうか?」
「ちっ・・・おめぇは本当・・・めんどくせぇ奴だな・・・」
ナツたちを睨むブルーノートとイライラと髪をかくカミューニ。
(こいつ・・・強すぎる!!)
(どうしよう・・・あの赤髪の人も信じられないくらい強いのに・・・)
(ど・・・どうすればいいの~・・・)
(誰か・・・誰か・・・)
全員がブルーノートの強さ、そして、突然現れたカミューニの強さを知る者たちは恐怖するしかなかった。
「俺が先客だ。おめぇは少し待ってろ」
「はいはい。わかったよ」
ブルーノートがマカロフの元へと歩き出す。カミューニはその場に座り、その状況を見物することにした。
「お前かぁ!!」
「ん?」
「はぁ?」
突然、後ろから声が聞こえ、ブルーノートは足を止める。
「カナ・・・」
「カナ!!」
「カナさん!!」
「無事だったのね!!」
「よかった~!!」
「あい!!」
その声の主は、ルーシィと途中ではぐれてしまったカナだった。
「これ以上仲間をキズつけんじゃないよ!!」
カナはブルーノートにカードを投げる。しかし、それは全てブルーノートに弾かれてしまう。
「妖精の・・・」
カナはブルーノートを上空から攻撃しようとする。カードでの攻撃はあくまで囮だったようだ。
そんなカナの腕に光が次第に集まってくる。
「光!?」
「なんだあの魔法!?」
「すごい輝き!!」
シャルル、ハッピー、セシリーがその光を見てそう言う。
「まさか・・・」
「ほう・・・」
ブルーノートとカミューニはその魔法の正体に気づいた。ブルーノートは魔方陣を展開し、カナを地面に叩きつける。
「うあっ!!くっ・・・」
カナは顔を上げ、ブルーノートを見る。
「てめぇの持ってるその魔法は・・・」
「まさか・・・妖精の輝き!?」
「「「ええっ!?」」」
シャルルの言葉にウェンディとハッピー、セシリーが驚く。
「ルーシィ・・・置いてっちゃってごめんね・・・弁解の余地もないよ・・・」
カナは立ち上がり、申し訳なさそうにルーシィに謝罪する。
「本当にごめん・・・だけど今は私を信じて。こいつにこの魔法が当たりさえすれば、確実に倒せる!!」
カナはブルーノートを見据えてそう言う。
「すごい!!お墓で手にいれたの!?」
「なぬ!?墓に行ったってことはお前・・・まさか試験は・・・」
ナツがカナが二次試験を合格したのだと思い、しょぼくれている。
「今はその話置いとかない?こいつを倒すために協力して、ナツ」
「ムゥ」
「私が魔力をためる間、あいつをひきつけて」
「むぅ~~」
カナの提案にどうしても納得のいかないナツ。
「フン!!」
ナツがカナの作戦に納得できないでいるうちに、ブルーノートが両腕を広げ、ナツたちを吹き飛ばす。
「「「うわああああ!!」」」
「「「きゃあああ!!」」」
「くっ!!」
「おお、すげぇ威力」
カミューニは完全に傍観者になっており、吹き飛ばされたナツたちを見てそう言う。
カナはなんとか体勢をすぐに直し、立ち上がる。
「俺の重力下で動ける者などいねぇのさ」
ブルーノートが腕を下に振ると、カナも重力によって倒れる。
「まさか探してた魔法が、向こうからノコノコやって来るとはなぁ。妖精の輝き、その魔法は俺が頂く」
ブルーノートはカナに向き直る。
「この魔法はギルドの者しか使えない・・・お前らには使えないんだ!!」
カナの言う通り、この妖精の輝きを含めた三大魔法は妖精の尻尾のギルドマークを刻む者たちにしか使えない。
「魔の根源をたどれば、それはたった一つの魔法から始まったとされる。いかなる魔法もたった一つの魔法だった」
(たった一つの魔法・・・?この話・・・昔どこかで聞いたことあるような)
ルーシィはブルーノートの話を聞き、何かを思い出そうとしていた。
「魔道の深淵に近づく者は、いかなる魔法も使いこなすことができる」
ブルーノートはカナを魔法で持ち上げると、押し潰そうとする。
「ぐああああ!!」
「カナ!!」
ルーシィは叫ぶが、ブルーノートの重力のせいで起き上がることができない。
「う・・・ご・・・け・・・」
ナツがカナを助けようと力をいれる。
「逆に聞くが小娘。てめぇの方こそ妖精の輝きを使えるのかね?」
「あた・・・りま・・・えだ・・・」
カナはどんどん潰されようとしている中、声を振り絞る。
「太陽と月と星の光を集め濃縮する超高難度魔法。てめぇごときが使える訳ねぇだろうが」
ブルーノートはカナに向けている手を握り、さらに力を込めていく。
「うああああああ!!」
カナはあまりの痛みに悶える。
「安心しろ。その魔法は俺がもらってやる」
「オオオオオ!!」
ブルーノートがカナに気をとられている隙にナツが状態を反らせ、
ズボッ
地面に頭を押し込んだ。
「ナツさん!?」
「さすがの馬鹿力も、この重力下じゃ・・・」
「違うよシャルル~!!」
「あれは・・・」
ウェンディたちはナツのほうへと視線を向ける。
「火竜の・・・咆哮!!」
ナツは地面の中でブレスをし、ブルーノートを攻撃しようとしたのだ。ナツの炎は地面を裂きながらブルーノートを襲う。
「やった!?」
ルーシィがブルーノートを見るが、炎が晴れるとその中からは全然ダメージを受けた様子のないブルーノートが姿を現す。
「邪魔だクズがぁ!!」
「うあああ!!」
「きゃああ!!」
「あうう!!」
ブルーノートは怒りに身を任せ、ナツたちを吹き飛ばす。
「バカかブルーノート!!あいつらは囮だ!!」
「!!」
「ナイス!ナツ!!」
カミューニがカナが魔力をためる体勢に入ったことに気づき、ブルーノートに怒鳴るがもう遅い。
「行けーーっ!!」
ナツはカナにブルーノートを倒すための時間を作ったのだった。
(私にはこの魔法が使える!!)
カナは妖精の輝きの刻まれた右腕を空へとかざす。
「集え!!妖精に導かれし光の川よ!!」
カナの右腕が徐々に光を纏い始める。
(妖精の尻尾の魔導士だから!!)
光はカナの腕のみならず、カナを中心に光の柱が空へと伸びる。
「バカな・・・あれは・・・」
「空が輝いてる・・・」
「違う・・・その向こう、星々の光!!」
ブルーノート、ウェンディ、ルーシィが空を見上げてそう言う。
「照らせ!!邪悪なる牙を滅するために!!妖精の輝き!!」
カナの腕から光の巨大な輪が放たれ、ブルーノートを襲う。
「ぐおあああああ!!」
「オオオオオオ!!」
「すごい光!!」
「これがギルドの三大魔法の一つ!!」
あまりの輝きに、ルーシィとウェンディは驚愕する。
「消えろおおおおおおお!!」
「おおおおおおおおおお!!」
次第に光がブルーノートを囲み、ブルーノートは悲鳴にも似た声を出す。だが、
「弱い・・・」
カミューニはそれを見てそう呟く。そして、
「落ちろおお!!」
ブルーノートは自分の魔法を使い、妖精の輝きを叩き落としてしまった。
「うおおああ!!」
「「あああああ!!」」
ナツたちはその勢いに圧され、飛ばされる。魔法を放ったカナも同様に地面へと崩れる。その腕は、妖精の輝きの力に負け、ボロボロになっていた。
「プッ!ふはははははは!!これがお前の探していた魔法か!?弱すぎんだろ!?あはははははは!!」
「黙れカミューニ!!」
この様子を見ていたカミューニは腹を抱えて大笑いする。ブルーノートはそれを見て苛立つ。
「この程度で妖精の輝きなわけねぇだろ!!」
「あ?そうなの?」
カミューニは笑いすぎて出た涙を拭いながらそう言う。
「いくら強力な魔法でも、術者がゴミだとこんなものみてぇだな」
「そうかよ。じゃあ、おめぇはあとはそいつから魔法を取りだしゃいいだろ?あいつらは俺にくれ」
「ああ。いいだろ」
カミューニは立ち上がり、ある人物の前に足を進める。その人物は・・・
「やっと会えたな。天空の巫女」
「へ?」
ウェンディだった。カミューニはウェンディを持ち上げる。
「てめぇ!!ウェンディに何するつもりだ!!」
「あ?こいつの魔法を取り出すんだよ。水竜の死んだ今、これしか方法はねぇからな」
カミューニは腕に力を入れ、ウェンディの首を絞めていく。
「知ってるかね?死んだあとでも魔法は取り出せるって」
(そんな・・・私の力不足で・・・)
ブルーノートもカナから魔法を取り出すため、カナの前に立つ。
「せめてもの慈悲だ。お前の大好きだった水竜の元に送ってやる」
「ううっ・・・(シリル・・・)」
カミューニは少し悲しげな表情を見せたが、すぐに表情を戻し、ウェンディを締め上げていく。
「カナ・・・ウェンディ・・・」
「やめ・・・て・・・」
「お願いよ・・・」
「二人を・・・」
「殺さないで・・・」
ナツ、ルーシィ、シャルル、セシリー、ハッピーが目に涙を浮かばせる。
「俺は今日も飛べなかった」
「すまなかったな天竜」
(シリル・・・)
カナは目を閉じ、自分の力不足を恨む。ウェンディは自分の最愛の人のことを思い浮かべる。
「お前は地獄に落ちろ」
「早く水竜の元にいってやれ」
(いや・・・)
ウェンディはシリルがそんなことを望まないとわかっている。だから、生きたいと願う。
「シリル!!」
ピカッ
「!!」
「なっ!!」
「「「「「「!?」」」」」」
ウェンディがシリルの名前を叫んだとき、突然ウェンディの左手がピンク色に光輝き出す。カミューニとブルーノートはそれに気を取られ、動きを止めてしまう。
その時、
ドドーーーン
「「「「「「「!!」」」」」」」
ブルーノートとカミューニの体が宙を舞い、後方へと弾き飛ばされる。
ブルーノートとカミューニは着地し、自分を弾き飛ばした者を見る。
カナとウェンディは、自分の前に現れた人物を見て涙を流す。
「ギルダーツ!!」
「ギルダーツだーーー!!」
(お父さん・・・)
カナの前に現れたのは、妖精の尻尾最強の魔導士、ギルダーツ・クライヴ。
その男は顔中に血管を浮かべ、怒っていた。
一方、ウェンディの前に現れた者を見て、皆目を疑う。
「ウソ・・・」
「どうして・・・」
「なんで・・・」
「そんなこと・・・」
「こんなことが・・・」
ウェンディはその人物を見て、泣きじゃくる。だが、それは嬉しさによるものだった。
ウェンディの前には一人の竜がいた。自分と大して背丈の変わらない、顔立ちも幼く、少女と間違われてしまうかのような少年。
だが、そんな少年の髪はいつものような肩甲骨まである綺麗な髪ではなく、長さは不揃い、まるで何も考えずにただ切っただけのような髪形に、頭には血が滲んだ包帯を巻いている。
「バカな・・・なぜおめぇが・・・いや・・・」
カミューニはその少年を見て驚くが、それはすぐに違う驚きによって忘れられてしまう。
「覚醒したのか?」
少年の名はシリル・アデナウアー。その顔にはドラゴンのような鱗が浮かんでおり、髪はウェンディのような藍色に変化していた。
そう、竜の力を身につけたシリルがウェンディの前に帰ってきたのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルが帰ってきました。ドラゴンフォースを手にいれて。
次の話で回想と説明をする予定ですので「なんで帰ってきたらいきなりドラゴンフォースなんだよ!!」という突っ込みは勘弁してください・・・
ちなみに、ウェンディがドラゴンフォースした時髪の色が変わったのでシリルの髪の色も変えてみました。
次回もよろしくお願いします。
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