ジャパニーズ=ラップ
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第三章
「どうしてもな」
「そう言うんだな」
「実際にそう思うからな」
「歌わないし聴くのもか」
「俺は嫌だからな」
あくまでこう言う、そうして俊介はダンスだけに専念していた。これだけで好評だからいいだろうとも言ってだ。
しかしだ、ある日だった。その彼に。
岳は驚いた顔でだ、こう言って来た。
「おい、凄い奴がいるぜ」
「凄い奴?」
「ああ、ラップでな」
「ダンスだけ観るな」
俊介はこの時もこのことは譲らなかった。
「そうするな」
「いや、それがな」
「それが?」
「他のも観ろ、いや聴けよ」
「歌もか」
「そうだよ、曲もな」
俊介が嫌いなそうしたものもというのだ。
「しっかりとな」
「だから嫌だって言ってるだろ」
「今回はそう言うな」
岳は強い声でだ、俊介に言った。その目は有無を言わなさいものにさえなっていた。
「いいな」
「また言うんだな」
「聴いて損はないからな」
「仕方ないな」
岳があまりにも強い調子なのでだ、俊介も嫌々ながらもだった。
彼の言葉に従うことにした、そしてだった。
岳の案内を受けて駅前に行った、そこに行くと。
一人の、俊介達と同じ位の年齢の少年が踊っていた、そのダンスはラップダンスで。
歌もラップだった、ダンスのレベルは二人と同じレベルだったが。
歌はだ、これは。
「おい、これはな」
「凄いだろ」
「ああ」
唸る様な返事だった。
「冗談抜きでな」
「そうだろ」
「曲もいいしな」
それにだった。
「歌だってな」
「かなりだろ」
「これまでのラップとはな」
日本語のそれである。
「また違うな」
「レベルが違うっていうかな」
「そんな感じだな」
「別に社会問題の告発じゃないな」
「色々歌ってるだろ」
「そうだな」
岳のその言葉にも頷く。
「それだけじゃないんだな」
「というか社会問題だけ歌ってもな」
「暗くなるか」
「失恋の歌が得意な歌手でもな」
岳はここでこうも言った。
「失恋の歌だけ歌わないだろ」
「それもそうだな」
「ハッピーエンドの歌も歌うぜ」
「だからラップでもな」
「別に御前が思っている様にな」
「社会問題だけじゃなくてか」
「恋愛でも何でもな」
それこそというのだ。
「歌っていいんだよ」
「そういうものか」
「そうだよ」
「そうか」
俊介は岳の言葉に頷いた、そしてだった。
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