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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第八十話

 さて、リーベのお勧めだという銃を購入した俺を、次に待ちかまえていたのは防具やサブウェポンの選択だった……が、それは特に困ることはなかった。動きやすい軽装のアーマーを装備するのみで、それ以外を特に買う気はしなかったからだ……リーベから言わせると、「奢りなんだからもっと買っちゃいなよ、ゆー!」とのことだったが、俺が買ったのはやはり銃と軽いアーマー、そして念のためのナイフのみ。

 取り回しはいい方であるとはいえ、リーベオススメの銃は少し重い。その分とにかく他の部分を軽くせんと、必要最低限の軽いアーマーのみを装備していた……だが、金を使わせてもらうのを遠慮した訳ではなく、俺は装備よりもあることに金を使わせてもらっていた。

 武器や防具のカスタマイズ。プレイヤーの手で装備に手を加えることの出来るシステムだが、一般のプレイヤーにはせいぜい武器の色を変える程度しか出来ない。しかし、俺にはALOで鍛え上げた《鍛冶》スキルがあるため、武器や防具の姿を変えることすら容易だった。……何が役に立つか分からないものだ。

 ただ銃に疎い自分には、必要以上に手を加えることは出来ないため、せいぜいが手に馴染ませたり少しの軽量化程度。対照的に、防具は可動域を重視したカスタマイズを施すとともに、弾薬入れを様々な場所に装備する。あとはALOと同じくガントレットを装備し、軽く持ち運べる迷彩用のマントとその他諸アイテムを購入すると、俺のこの世界での準備は完了した。

 最後に長く揺れる長髪をゴムでひとまとめにすると、歌舞伎の女形のようなアバターも、ようやくこの銃と硝煙の世界に馴染むことに成功した……気がする。

「ん? なにかななにかな?」

 ――そんな錯覚を隣にいる踊り子にぶち壊されながら、俺とリーベはお世話になった武器屋を後にしつつ、ゲーム開始地点である中央塔へと戻ってきていた。バレット・オブ・バレッツ――『BoB』への出場申し込みはここでしか出来ないらしく、二人並んで端末に情報を打ち込んでいく。

 ただ、あくまで今回は《死銃》のことがメインだ。優勝商品を郵送するための住所などの記載も求められたが、そこは空欄のまま提出することにする。優勝出来るとは思っていないし、あまりこんな場所に個人情報を送りたくはない。

「でーきた! ショウキくんは?」

「こっちも大丈夫だ」

 参加のための全ての情報を入力すると、代わりに端末の画面には『E』と表示される。このBoBは本戦と予選に別れているらしく、まずは幾つかのブロックに別れた予選を展開し、その優勝者が後日の本戦に出場出来るとのことだ。

「どれどれ? あ、ショウキくんウチと同じブロック! 頑張ろうね!」

 リーベがひょっこりと顔を出して俺の端末をのぞき込むと、器用にも自分の身体で『E』の体勢を作る。さらに反応に困る俺の腕を掴んだかと思うと、何故か悲しそうに目を細めて泣き真似を始めだした。

「うう……予選は準優勝者でも本戦に出場出来るから、ショウキくんは気を落とさないでね……?」

「なんで負ける前提なんだよ」

 よよよ、と泣き真似を止めないリーベの頭に軽くチョップを加えると、ニッカリと笑って俺から手を離す。しかしリーベと同じブロックということは、彼女と戦う可能性もある、というのは確かだ。そもそも初心者である自分が言えたことではないが、この踊り子がそこまでの強者にはまるで見えないのだが――

「だって……ショウキくん。ウチがいるから準優勝だし?」

「……大した自信だな」

 ――それでも、こうして彼女が時折見せる殺気は鋭い。いつもその気配は一瞬でなくなってしまうが、先の《SAO失敗者》の件も含めて、彼女にはまだ秘密が多い。……恐らくは、この予選で相対することになるだろう。

 ……と、そこで気配を感じて振り向いた。先程から何度か背後から気配を感じるも、そこには誰も何者もいない。もちろん通行人がいることはあるが、そういった気配ではなく、何かこちらを見ているかのような。

「…………」

 何が楽しいのか、口笛を伴奏に踊り始めたリーベを後目に、俺は何者もいないはずの空間に一歩踏みだした。そして、そのままそこにある何かを掴むように、ガントレットを装備し手を伸ば――

 ――すよりも先に、俺の目の前に三輪のバイクが急停車する。危うく弾かれかけて飛び退くと、三輪のバイクに乗っていた二人の少女と目があった。

「あっ、すいません急いで……」

「あ、シノンちゃんだ! おーい!」

 運転手をしていた黒髪の少女がこちらに謝ってくるのと同時に、後ろにいたリーベが俺を押しのけて少女たちに近づいていく。とても嬉しげに近寄っていったリーベだったが、《シノン》と呼ばれた水色の髪の少女からは、明確な敵意が噴出されていた。

「それ以上近づかないで」

 シノンと呼ばれた水色の少女は、運転手をしていた黒髪の少女を守るようにリーベの前に立ち、最大限の警戒を示していた。……友人か何かかと思っていたが、どうやらそんな良好な関係ではないらしい。ただ、リーベの方はシノンと呼ばれた少女のそんな対応を前にしても、まったく笑顔を崩さずにいつも通りだったが。

「もー、いつになったらシノンちゃんはデレてくれるのかな? ま、いっけどさ」

「え、えっと……シノンさん……?」

「あなたは黙ってて」

 腰に手を当ててムスッとした表情をしてみせるが、シノンと呼ばれた少女からの警戒は変わらない。守られている黒髪の少女も、俺と同様この状況に目を白黒させていた。一瞬だけ、その膠着状態が続くと……リーベはクルリと回って、BoBの会場である《総督府》へと入ろうとする。

「今日もフられちゃった! じゃ、シノンちゃんにショウキくん、そこの黒髪の子もまた、大会でね!」

 「にゃ~!」などと何やら叫び声をあげながら、リーベは自分たちを置いて《総督府》へと入っていく。……結局、彼女は何者なのかは分からない。今回の死銃事件と何か関係があるのか、この予選で何かを掴めればいいのだが……と、踊り子の後ろ姿を見送りつつ思索に耽っていると、背後から安心したような吐息と、気を引き締めるような気配を感じた。

「……安心するのはまだ早いわね。あんたもあの踊り子のツレなわけ?」

 ……確認してみれば。先程まではリーベに向けられていた、突き刺さるような眼光が、今度は俺に向けられていた。それも当然だ。理由はともかく、彼女が危険視していたリーベと俺は共にいたのだから。

「ま、待った待った! この人、知り合いなんだ!」

「……あんたの?」

 どう答えるか迷っていると、ずっとシノンと呼ばれた少女に守られるようにしていた黒髪が、間に入って俺と彼女の仲裁に入る。シノンと呼ばれた少女も驚いたようにしていたが、その驚きようは俺の遥かに下回っていただろう。

 何故なら、俺のこの世界で知り合いであろう人物は、たった1人しかいないのだから。

「ああ、一緒にコンバートしてきた友達で――」

 キリトがシノンと呼ばれた少女に説明しながら、背後の俺にあるカードを見せてきた。そのカードをよく見てみれば、どうやらプレイヤーの情報が書いてあるカードらしく。プレイヤーネームは、馴染み深い《キリト》という名前のまま。性別はもちろんMale……男。

 ――どうやら本当に、目の前の少女は俺がよく知るキリトらしく。……お互いに、アバターに恵まれない結果となっていたらしい。

「ふーん……それより、早く申し込みしちゃわないと!」

「あっ……!」

 まだ多少こちらを疑っているような視線を感じるものの、キリトの説明のおかげで何とか、今すぐ撃ち殺されるような状態ではなくなったらしい。急いでここに来たということは、もちろんキリトもシノンと呼ばれた少女も、目的はBoBへの参加。参加募集時間ギリギリだったようで、手早く――キリトの手は一瞬止まったが――受付を済ませていく。

「Fブロック……」

「あなたも? 一緒に登録したからかしら、私もFブロックよ」

 ……どうやら、キリトと同じブロックにはならないで済んだらしく、そこだけは幸運だったか。同じ目的の者同士にもかかわらず、予選でどちらか落ちる、などという事態は笑えない。

「で、この子の友達らしいけど。名前は……ショウキって言ってたかしら?」

「ああ。そっちはシノン、だったか」

 そうして安心していると、まだ警戒心をありありと見せたシノンが、身長の関係からこちらを見上げてくる。その姿は何やら、懐かない猫、といった印象を抱かせた。

「もう一度聞くけど、あの踊り子との関係は?」

「さっき知り合っただけだ。……むしろ、こんなに質問責めされる理由を聞き返したい」

 あの踊り子とは、聞き返す間もなくリーベだろう。彼女の秘密に少しでも迫れるかと聞き返したが、今までこちらを問い詰めていたシノンの反応は淡白だった。たった一言だけ、冷ややかな表情で言ってのけたのみ。

「ならいいわ。忠告しておくけど、長生きしたいなら、あいつと関わるのは止めときなさい」

 ……と。シノンが余計な手間を食った、とばかりに時計を確認している間に、黒髪の少女――のような格好をしたキリトが近づいてくると、シノンに聞こえないように話しかけてきた。

「シノンの様子もおかしいし、お前も気になってるみたいだし……何者なんだ、さっきの」

「俺が聞きたい。……ただ、勘だが……事件に関わってる、かもしれない」

 《SAO失敗者》と語る少女。朗らかに笑顔で踊る陽気さから、時折一瞬だけ見せる殺気に近いモノ。何の根拠もない、まさしく勘というべきものだったけれども、何か彼女には引っかかっていた。もしかすると、今回の死銃事件にも関係しているのではないかと。

「なっ――」

「どうしたの?」

 驚愕したキリトがさらに言葉を続けるより早く、俺たちがひそひそ話をしていることを疑問に思ったシノンが、きょとんとした表情でこちらを見つめてきた。シノンの前でこれ以上話すわけにもいかず、キリトは瞬時に顔を愛想笑いに切り替える。……まさかまた、話しかけていたプレイヤーは妹でした、などという展開ではあるまい。

「せ、世間話だよ。ただの」

「……ま、何でもいいけど。そろそろ開始時刻だから、装備を整えなきゃね」

 そう言うと、シノンは《総督府》の中に迷いなく入っていき、俺とキリトはすごすごとその後ろを追う。中は近未来的な外装に違わない場所で、所狭しとプレイヤーたちがひしめいていた。酒を持った見物客や、賭けのような券を売っている者たちが多数を占めていたが、彼らは確実にそこにいた。

 思い思いの銃を持った、ある種の特別な雰囲気を持った者たち。……このBoBに参加するプレイヤーたちだろう。鋭い眼光で会場を見渡している者もいれば、賭けに混じって自らを喧伝するもの、愛銃のメンテナンスを行う者など様々だ。……あの目立つ踊り子の姿は見当たらない。

 この中に《死銃》――ないし、それらに狙われている者がいるとすれば。

「ここね」

 そしてシノンの案内により、昔作られたものをそのまま利用しているような更衣室に到着する。……なるほど、ここで戦闘の準備をするのだろう。シノンと別れて男子更衣室に入ると、自然と張り詰めていた空気が消え、一度深く息を吐く。

「やっぱり、プロがいるとかいうゲームは違うな……キリトはどう……ん?」

 このGGOの特徴とも言える、《ゲーム内通貨還元システム》を利用している者たちは、仕事のようだと揶揄して『プロ』などと呼ばれているそうだが。景品がある大会とあらば、そういう輩も参戦しているのだろう。自分よりも遥かにネットゲームに造詣の深い、ゲーマーのキリトにも意見を聞こうとしたものの……はて、キリトの姿が更衣室のどこにもない。

「キリト?」

 もう一度呼びかけて反応がなかった時点で、まさか――という危惧が頭の中で警鐘を鳴らす。着替える前に男子更衣室の扉を開けると、鋭い音とともに女子更衣室から弾き出された、頬が日焼けのように赤く染まったキリトの姿が視界に飛び込んできていた。


「……ふう」

 ――さて、その後あからさまに機嫌が悪くなったシノンに謝り倒し、なんとか試合と試合開始前の事だけ教えてもらった。辺り一面、全てが暗闇の場所で俺は息を整え、現実の試合開始前のように集中する。

 ……その後、アイテムストレージを操作していくと、俺の手の中にずっしりと重い感触が伝わってきた。リーベに選ばれた、俺のこの世界における相棒たる銃……散弾銃と呼ばれる銃身。

 《オート・アサルト12》――通称、AA-12と言われている散弾銃。軽量化カスタマイズを施されたソレは、この漆黒の空間でもなお、黒く光って存在感を示している。……使えるのかは分からないが、やるしかないのだ。

 そうしていると、目の前に対戦相手の名前と対戦場所が英語で表記され――恐らくは《ザビー》という読み方の相手と、朽ち果てたショッピングモールが舞台となったらしい。忘れていたナイフを装備し直していると、他の場所に転移する感覚が身体中を支配していき、一瞬の閃光とともに俺の身体が別の場所にて再構築される。……この感覚も慣れたものだ。

「……よし」

 目を開くと、そこは既に先程の待機場所ではなく、見慣れた大型のショッピングモール。ただし営業しているどころか、人の気配すら感じられないが。ガラスも割れたまま修復されておらず、そう言えばこのゲームの部隊は世紀末だったか――と思いだす。

 さて、俺のいる場所は駐車場だ。廃墟となってはいるが車が多数置いてあり、遮蔽物が多く見晴らしが悪い。すぐそこにはショッピングモールへの入口があり、内部へと侵入することも出来そうだ。

「――――ッ!?」

 どうするか、と考えるより先に、突如として俺の視界の端に人型の物体が映った……かと思えば、その物体がこちらへと急接近してきていた。あちらはもうこちらを捉えていたらしく、偶然にも視界に映っていなければ、そのまま撃ち殺されていたに違いない。

「くっ……」

 油断していた――と自戒すると、『蜂』という名前には似つかわない、むしろアリを思わせるパワードスーツに身を包んだザビーが足音もなくこちらに走ってくる。もちろんただ走ってくる訳ではなく、ザビーが両手で構えていた《M1カービン》と呼ばれるライフルが、こちらに狙いをつけて火を噴いた。その狙いは寸分違わず、俺の身体へと《予測線》を表示させた。

 《弾道予測線》。このGGOのゲームの特徴の一つであり、視界に捉えている相手からの銃撃に限り、その弾道を予測した線を表示させる機能。銃を撃つ側のサポートである《着弾予測円》と対をなす、このゲームをゲームたらしめているもの。

 ……だが、このゲームに来るまでに《予測線》というものに縁はある。かのデスゲームにPoHに殺された時にたどり着いた、集中力を研ぎ澄まし相手の攻撃の気配を読む術、《恐怖の予測線》というある種の境地が。……予測線のことならば俺にとて、あのデスゲームを生き延びた一日の長がある。

「……っ!」

 胴体に向けて放たれていた銃弾を飛び退けて避けながらも、背後にあった車を盾にするように立ち回る。幸いなことに、ザビーの使うライフルは車のボディを貫通するほどの威力はないらしく、車に銃弾が当たる金属音が鳴り響くのみ。もちろん何かの映画のように、ガソリンが引火して車が燃え上がるようなこともなく――何しろガソリンが入っていない――俺は車の影から少し身を乗り出すと、見よう見まねでAA-12を構える。

 ……が、その時にはもうザビーはその場にいなかった。やはりその足音を感じさせなかったが、そのアリのようなスーツだけは視界に捉えられ、目と鼻の先にあるショッピングモールに飛び込んでいた。こちらに背中を見せてはいたが、まずここからでは当たるまい。

「……なるほど」

 だが、そうショッピングモールに逃げるザビーを見て、俺はそう小さく呟く。ザビーの基本戦術は、あの足音を消すスーツの効果をフルに使った、奇襲からの不意打ち。軽量化したライフルを持って全速で近づき、敵に奇襲をして外したら逃げてもう一度、と繰り返していく腹積もりだろう。一度視界に捉えることが出来なくては、このゲームの肝である弾道予測線は表示されない。

 ならばここにいることは、少なくとも下策。ショッピングモールに逃げたザビーを追いたいところだが……相手もそれは承知だろう、どこかに待ち伏せられていれば、足音もなく奇襲されてそこで終わる。

 ――が、俺はショッピングモールの中に入ることを選択した。ザビーが蹴破った自動ドアを通りながら、確か相手は二階に行ったと思い返し、正面玄関の目の前にある階段を油断なく上っていく。両手にAA-12を構えながら階段を駆け上がると、俺の視界には巨大なスーパーマーケットが映る……二階は生鮮食品を売っていたらしい。

 もちろん生鮮食品などもうどこにもないが、確実にザビーはここに隠れている。こちらを見ている気配、極限まで消している息づかい、場の殺気にもにた雰囲気――姿は欠片も見えないものの、それらから俺は、ザビーがここにいるのだと確信する。爆弾でもあれば投げつけてやるのだが……いや、爆風に紛れて逃げられるのがオチか。なんにせよ、ないものねだりをしても仕方がない。

 ……俺が今持っているのは、この両手に持った散弾銃のみだ。

「……当たれ!」

 呼吸を一つ。それから俺は両手にAA-12を構えると、ためらいなくその引き金を引く。散弾銃、という名前に反して銃弾が広範囲に拡散するようなことはない。あくまで、複数の弾丸が同時に発射される――かのようになる、というだけだ。

 このAA-12が擁するのは9発の弾丸。元は冷蔵庫だったであろうものを容易くぶち抜き、かろうじて保っていた原形は既に見る影もなくなっていた。……『当たれ』などと叫んではみたものの、場所が解らないので当然当たるわけでもない――が。

 このAA-12の真価はここからだ。

「…………っ!」

 俺は一度撃ってからも引き金を引き続けている。それに同調してAA-12の動きも止まらず、その九発の弾丸を同時に発射する散弾が、銃の側頭部から空薬莢を排出しながら永遠に発射され続ける。その度に、一発一発が一撃必殺の威力を持った弾丸がフロア中に撒き散らされ、銃身を逸らすだけで破壊は異なる場所にも広がっていく。

 フルオート散弾銃。ショットガンとマシンガンを組み合わせたようなソレは、残弾がある限り破壊をばらまいていく。それはまさしく鉄で出来た暴風雨のようで、触れようともすれば一瞬でガラクタへと成り下がる。長いようで短い全弾発射が終わった時には、もはやフロアはフロアとしての原形を留めてはおらず、純然たる廃墟の様相を呈していた。……あとは落ちている空薬莢のみ。

 弾薬を撃ちきったドラム式のマガジンを廃棄し、新たなマガジンをAA-12に装着し直しつつ、俺はこの銃を買った時のことを思い返す。借りた拳銃がダミーターゲットに当たらず、ヘタクソと罵った後にリーベがこの銃を俺に勧めた時の言葉。

『いっぱい撃てば当たるんじゃない?』

 下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる――とは言うものの。それが正しいかは、その時の俺には解らなかったが……どうやら、あながち間違いでもないらしい。廃墟の片隅に転がっている、黒色の物体がそれを証明していたのだから。
 
 

 
後書き
ガンアクション(棒立ち) 精進していきます 
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