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戦国異伝

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第二百十五話 母子の和その二

「武家諸法度には従う様にな」
「承知しました」
「そういうことでな、あとじゃ」
「はい、何でしょうか」
「確か御主の妹はじゃ」
 ここで信長が言うのはこのことだった。
「伊達政宗の母じゃったな」
「左様です」
「そうであったな、そしてその妹君じゃが」
「今はです」
 どうかというのだ、今は。
「母と子はです」
「離れておるな」
「それがしのところにおります」
「ここはじゃ」
 ここでまた言う信長だった。
「その母子をな」
「再会をですか」
「そして仲直りが出来ればよいな」
 信長は義光に考える顔で述べた。
「折角じゃからな」
「そのことをご存知でしたか」
「聞いておる」
 政宗とその母の確執、それをというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「ここはじゃ」
 また言う信長だった。
「母と子をこの安土に呼ぼう」
「ではそれがしも」
「うむ、手伝ってもらう」
 こう義光に言うのだった。
「わかったな」
「さすれば」
 義光も頷くしかなかった、そしてだった。
 信長は義光を帰らせてからだ、家臣達に言った。
「あの話は聞いておった」
「前からですな」
「梵天丸殿とお母上のことは」
「あの対立のことは」
「そうじゃ、ああした話はじゃ」
どうもと言う信長だった。
「好きになれぬ」
「それは、ですか」
 ここで言って来たのは信行だった。
「それがしとの」
「うむ、母上にも言われたわ」
「兄弟は、ですな」
「確かに戦国の世じゃ」
 信長はこうも言った。
「血を分けた兄弟といえど争うこともある」
「しかしそれでもですな」
「出来るなら争うことはない」
「そういうことですな、ですから」
「伊達家は兄弟でな」
「はい、かつての当家の様に」
 また言った信行だった。
「兄と弟で危ういものがあります」
「そうじゃな、だからな」
「兄上としては」
「何としてもじゃ」
 絶対にと言う信長だった。
「そうしたことは止めてじゃ」
「そのうえで」
「梵天丸とご母堂もじゃ」
「その仲をですか」
「戻したいと思っておる」
 これが信長の考えだった。 
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