英雄伝説~西風の絶剣~
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第6話 小さき騎士との出会い
side:リィン
「むにゃ……」
帝国方面にあるアジトの一室で僕は久しぶりにベットで寝ていた、ここ最近は依頼も多く外で寝たりしていたからこうやってベットで寝れるのは嬉しい。今日は仕事も無いしもう少し寝てよっと……
僕は軽く寝返りをしながら二度寝しようとするが……?
ムニュッ……
……何これ、枕じゃないよね。柔らかくて暖かいけど何なんだ?
「んん……」
えっ、今の声ってまさか……僕は毛布を剥がす、するとそこには……
「すう、すう……」
可愛らしく体を丸めて寝息を立てている銀髪の女の子……フィーだった。
歓迎会をしてからフィーは素直になった。少し感情が出てきたというかまあ皆と打ち解けれてきたかな、ちょっと我侭を言うようになったり遊んで欲しいと言ってきたり年相応な反応を見せてくれるようになったのは嬉しい。
でも最近はこんな風にベットに潜り込んでくるんだ、嫌じゃないけどやっぱり慣れないな。
「フィー、起きて、朝だよ」
眠気も無くなった僕はフィーを起こすことにした。
「……おはよう、リィン」
「おはよう、フィー」
眠そうに目を擦るフィー、彼女は普段お手伝いや食事をしてない時以外は寝ていることが多い。単純に寝るのが好きらしくよく僕の所や姉さんの所でお昼寝をしている。
「ほら、シャキッとして、着替えて」
「リィンが着替えさせて」
そういって両腕をこっちに伸ばすフィー。
「もう、フィーだって女の子なんだから自分で着替えないと駄目だろう?」
「リィンなら見られてもいいよ」
兄として信頼されてるのかな?でも妹とはいえ流石に不味いよね、姉さんに頼んで一人で着替えが出来るようにしてもらおうかな。
そんな事を考えながら今だ腕を伸ばしているフィーを着替えさせた。
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ーーーーーー
ーーー
「おはよう、団長、皆」
「……おはよう」
「おう、リィン、フィー、おはようさん」
アジトのちょっと広い部屋に行くとそこには団長とゼノ達がいた、皆何だか疲れたように暗い表情をしていた。
「皆大丈夫?顔が辛そうだけど」
「大丈夫やあらへんよ、連日仕事仕事と流石にえらいわ……」
ゼノがダルそうに言う、レオや姉さんも流石に疲れを隠せないのか元気がない、いくら最強クラスの猟兵団でも人間である以上疲れはあるよね。
「ルトガー、団員達も疲れが出てるわ、このままじゃ士気に影響が出てしまうかも知れないわね」
「ここ最近は休みもなかったからな、無理もねえ。ここいらで休暇をとるか」
ガタッ!!
「「「本当に!?」」」
僕と姉さん、そしてゼノがそろえて言う、休みなんて何ヶ月ぶりだろうか……!
「お、おお。最近忙しかったし休みも必要だろ?」
「だが何処に行くのだ?我々はあまり目立つ所には行けないぞ」
今まで黙っていたレオがそう言う、自分達は世間でも嫌われている猟兵団……ましては「西風の旅団」という名は遊撃士や軍の関係者なら知っていて当然なのだ、だから大きな街に滞在すると必ず警戒される。
「お前ら、街以外で行きたい所あるか?」
「俺は酒飲める所なら何処でもええわ」
「……俺もそれでいい」
団長の質問にゼノとレオは即答した、この二人花より団子だよね。
「今は夏だし涼しい所がいいわね」
「わたし、水遊びがしたい」
「涼しい……水遊びか、う~ん……」
姉さんとフィーは水辺がいいらしい、今は夏真っ盛りだし僕もそれに賛成だね。
「海……はちょっと遠いか。川も泳げそうな所はねえな」
このアジトは『公都バリアハート』の郊外にあるので海はちょっと遠いかな。あ、そうだ!
「団長、僕に考えがあるんですが……」
「ん?」
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ーーー
「うわぁ……!」
うっすらと霧の中から現れた広大な湖…今僕たちは『エベル湖』に来ていた。
『エベル湖』とはクロイツェン州にあるアルゼイド子爵が納める領地にある広大な湖で、そのほとりにあるのが『湖畔の町レグラム』。南部にあるサザーランド州に向けての水上定期船が出ておりバカンスに来る利用者も多いらしい。
猟兵である僕たちは町には入れない、レグラムには遊撃士のギルドもあるからね。だから今僕達がいるのは町の反対側にある場所だ。
男性の団員達はほとんど水着姿になっている、やっぱり皆凄い身体だよね。レオや団長は当然として意外とゼノも逞しい身体をしている、着痩せするタイプなのかな?うう、僕も鍛えてるけどやっぱり皆と比べたら貧相だよね……
「でもボン、ようこないな場所知っとったな」
水着姿になっているゼノがそう聞いてきた。
「うん、レグラムには『光の剣匠』がいるからね、興味があって調べてたら知ったんだ」
「ああなるほどなぁ、ボンも剣使うてるしそりゃ興味がでるわな」
『光の剣匠』とは帝国を代表する剣士であり剣を志す者なら聞いたことのある二つ名だ。アルゼイド流と呼ばれる帝国二大剣術の一つ、ヴァンダール流と双璧をなす流派を受け継いでおりその実力は大陸最強クラス……まさに達人というべき人物だ。
「ふふッ、おまたせ」
あ、姉さんや他の女性団員の皆が来た…ふわぁ…!
「ヒュ~ッ……似合っとるで姐さん」
ゼノが口笛を吹きながらそう言うが確かに口笛も吹きたくなるよ、姉さんの金髪と黒い水着がマッチしてすごく似合っていた…それにしてもあいかわらず凄いスタイルだ。
「ねえルトガー、どうかしら、似合ってる?」
「ああ、滅茶苦茶似合ってるぜ、やっぱお前いい女だ」
「あらっ、素直に褒めてくれるなんて珍しいわね♪」
「俺は素直に思ったことをいっただけだ」
「ふふッ、ありがとう」
うわぁ、姉さんの顔まるでにがトマトみたいに真っ赤だ。団長は多くの女性を虜にしてるってゼノも言ってたしあれが恋愛って奴なんだね。大人っぽいな~。
「リィン」
「あ、フィー、遅かっ……」
フィーを見た瞬間身体に電流が流れたかのような衝撃に襲われた。だ、だって……!?
「……」
フィーはフリル付きのワンピースタイプの水着を着ていたのだ。か、可愛い……
「マリアナに選んでもらったんだ、似合うかな……?」
照れながら上目使いで僕をジッと見るフィー。な、何か言わないと……!
「うん、フィーによく似合ってるよ、可愛いね」
「えへへ、ありがとう」
フィーは本当に嬉しそうに笑った、うん、可愛い。
でももう少し上手い褒め方があったかもしれないな、この辺はやっぱり自分が子供だからかな?僕もいつか団長みたいなかっこいい大人になりたいな。
「なんやろな、独り身にはきつい空気やわ……」
「そうだな……」
何やら寂しげな目をしていたゼノとレオだったがかまってる余裕は今の僕には無かった。
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「……よいしょ、んしょ」
「そうそう、体の力を抜いて、そうすれば水に浮くよ」
今僕たちはエベル湖のちょっと深いところで泳ぎの練習をしていた、どうやらフィーは今まで泳いだことがなかったらしく僕がフィーに泳ぎ方を教えている。えっ、皆はいないのかって?……お酒飲んでます。
「じゃばじゃば、気持ちいい……♪」
一時間ぐらいでフィーは一人で泳げるようになった。本当に運動神経がいいよね、鍛えたら僕よりも俊敏な動きが出来そうだな。などと猟兵っぽいことを考えてるとフィーが側にやってきた。
「フィー、どうしたの?」
「ん、ちょっと疲れた。リィン休ませて」
そういうとフィーは……うわ!僕に抱きついてきた!?
「な、何やってるの!?」
「……?リィンに掴まって休んでるの」
いやそれは分かるけどもう少し女の子らしく恥じらいをだね……
「……♪」
まあフィーが楽しそうだしいいかな。
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一時間ぐらいが経過してもうお昼くらいになった、そろそろ一旦戻ろうとして二人で帰ってきたけど……
「おお、りぃん、ふぃー。お前ら飲んでるか?」
団長、いくら何でもハメ外しすぎだよ。しかもゼノや他の団員も酔ってるし……
「あらあら、久しぶりの休みだからって……もう」
「まったくだな」
あ、姉さんとレオは大丈夫か、よかった。
「皆どんどん飲むからお酒の在庫が無くなりそう。リィン、悪いけどレグラムまで行って買ってきてくれないかしら、貴方は私達みたいに顔までバレてる訳じゃないから大丈夫だと思うわ。でもギルドには気を付けてね」
「うん、分かったよ」
しかし結構な量のお酒もってきたのにもう無くなりそうになるなんて……まあ猟兵なんて命がけの生き方してるんだからハメ外せる時に外しといたほうがいいよね。
「リィン、わたしも一緒に行く」
「あ、フィーも行くの?じゃあ一緒に行こうか」
「二人とも、お願いね」
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「フィー、ちゃんと手をつないでいてね。逸れたら分からなくなるから」
「ん、分かった」
僕とフィーはエベル街道を歩きレグラムに向かっていた。しかし凄い霧だな、この辺りは霧が発生しており視界が悪い。一応街道灯があるから迷ったりはしないけど逸れたりしたら見つけるのは困難だろう、フィーの手を離さないようにしっかり手を繋ぐ。
因みにいつも着ている西風の旅団のジャケットは着ずに動きやすい旅人の服装にしてある、あのジャケットは色々と目立つからね。
「あ……」
「ごめん、痛かった?」
「ううん、少し驚いただけ……ちょっとドキッてしたかも」ボソッ
何か言ったみたいだけど声が小さかったから後半が聞き取れなかったな。
暫く歩いているとフィーが街道の外れをじっと見ながら立ち止まった。
「フィー?そっちには何も無いと思うよ?」
「リィン、あっちから複数の気配がする……」
「えっ?」
僕は耳に集中して音を探る…微かにだが何か硬いものがぶつかる音がする、この金属音は剣かな?つまり誰かが戦ってるのか!?
「これは一人で戦ってるのかも知れない、急ごうフィー!」
「うん!」
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side:ラウラ
「ぐッ、はあはあ……」
迂闊だった、魔獣の接近に気がつけなかったとは。まだまだ修行不足ということか……!飛び掛ってくる魔獣「サメゲーター」をかわし隙が出来たわき腹に剣を叩き込む。
「ギャアッ!」
硬い!私の一撃では致命傷には至らなかったか、父上なら一刀両断に出来た筈だ。するとサメゲーターは硬直して動けない私に尻尾を勢いよく叩きつけてくる。
ガギンッ!
剣を盾にして防ぐが余りの衝撃に腕が痺れる。サメゲーター達は私の周りを円のように囲んでいく、逃げ場を封じられたか。
「万事急須か……!」
サメゲーター達が一斉に飛び掛ってくる、父上……!!
「目を閉じて!」
何処からともなく声が聞こえ私は咄嗟に目を瞑る、すると強い光が辺りを照らした、これは一体?
そんなことを考えてたら右手をグイっと引っ張られた、だ、誰だ!?うっすらと目を明けると黒髪の少年が私の手を引っ張っていた。
「そなたは……?」
「話は後、早く逃げるよ!」
少年はそういって私を誘導するように引っ張りながら高い木の上に逃げた。数秒後サメゲーター達は視界を取り戻したのか辺りをキョロキョロしていたが私達がいないと思ったのかその場を後にした。
「ふー、流石にサメゲーター五体はきついから行ってくれてよかった」
私は助けてくれた少年をじっと見る、帝国ではあまり見かけない黒髪、どこかあどけない顔つきだが何だか頼りになる……そんな印象が浮かんだ。
「それで君は大丈夫?どこか怪我はしていない?」
む、そうだ、助けてもらったのに相手の顔をジッと見るなど失礼だ。ちゃんとお礼を言わないと。
「先ほどは助けてもらい真に感謝する、私はラウラ・S・アルゼイド。よければそなたの名を教えて頂きたいのだが」
「僕はリィン。リィン・クラウゼルだよ」
……私はこの時思いもしなかった、この者達との出会いが私の運命を大きく変えることになるなどと。
後書き
今回出たのは閃の軌跡きっての美少女キラーことラウラさんです、いやー彼女ゲームでは最初はちょっと苦手だったんだけど進めていく内に可愛さに気づいて……特にお弁当のイベントでやられました(笑)
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