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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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StrikerS編
  96話:件の少女は意外とアクティブ

 
前書き
 
今回は大分短め。これだけ間があってこれしか書けないってのは、正直ヤバいかも…
  

 
 





「すいません、シグナムさん。付いてきてもらっちゃって」
「何、向こうにはシスター・シャッハがいらっしゃるんだ。私が仲介した方がいいだろう。それに、仕事も今は終わらせてるから、問題はない。だろう、門寺副部隊長?」
「へいへい、そうですねシグナム副隊長さん」


 後部座席から言うシグナムに、俺は口を尖らせながら言った。
 俺達は現在、聖王教会が運営する病院―――聖王医療院へと向かっている。先程そちらから連絡があり、先日保護した少女の検査が済んだので一度来てくれと頼まれたのだ。

 ん? 移動手段は何なのか?
 それは一応自動車だ。因みに運転は俺、助手席になのは、後部座席にシグナムが座っている。車はフェイトから借りた。

 一応バイクの免許(ライセンス)と一緒に車もとっておいたのだが、こんなところで役に立つとは…思ってもみなかった。
 心の中で過去の自分に賞賛を与えつつハンドルを握っていると、隣にいるなのはが何故か俺の顔を覗き見るようにして質問してきた。


「士君、なんでそんな不機嫌そうなの?」


 そう、俺は今不機嫌なのだ。何故なのかって?
 この際だからはっきり言ってやろう……


「俺はこの状況に大いに不満がある…!」










 今この場面に至るまでの経緯を説明しよう。

 俺はいつも通り、六課の副部隊長室で既に恒例となっている書類仕事に精を出していた。
 この日は何故だか知らないが、いつもより割と量が多い日だった。まぁあの子狸が何も言ってこない辺り、あいつの仕業ではないようだから、ただの偶然だろう。

 取りあえずそれはいい、今日も今日でいつも通り作業としてこなしていく。
 ただし、今日はそれだけではなかった。先日の戦闘でライダーに変身した事と、バロンとディエンドとの戦闘など諸々の報告書を昨日の夜に出したのだが……これがやり直しにされた。

 何故なのか、とはやてに問うと……


『こんな日記みたいな報告書ある訳ないやろ!』


 と「今日はバロンとディエンドと戦いました。負けました。」と書かれた報告書を叩きつけられ、どやされてしまった。
 だってその戦闘でめちゃくちゃ疲れたんだもん。半分悪ふざけ入ってるけど。

 そんでまぁ流石にふざけるのも大概にしようと思い、真面目に報告書を作ろうとしている時だった。
 副部隊長室のドアを開けて、なのはがやってきたのは。

 なんでも先日保護した少女の様子を見に行くとの事。それなら俺はいらないんじゃ? と疑問に思ったが、その少女を聖王教会かこちらのどちらかが預かることになりそうだから、できれば上の立ち場にいる人物が一緒の方がいいらしい。
 いきなり現れていきなり一緒に来いと言われたのには不満を覚えたが、理由が理由だ。これは諦めよう。

 しかし提案された移動手段に、俺は更に不満を抱いた。なんと車で行くのだそうだ。
 何故かって? いや、これは単純に好みの問題なんだがな。バイクの方が疾走感を味わえて俺は好きなんだ。車だとそう言う訳にはいかなくなるしな。だからあまり好きではない。

 更に言えば、行先の聖王医療院にいるという聖王教会のシスター―――『シャッハ・ヌエラ』という人物がいるという事も、不機嫌の理由だ。
 聖王教会とは仕事の関係上、色々お世話になったことがあるのだが……このシャッハというシスター、なんか初めて会った時から変な視線を向けていた。

 何か気になる視線だった為、その人に聞いてみたのだが……


『模擬戦、お願いします!』


 この一言だった。

 これを聞いた瞬間は、もう目が点になったものだ。
 取りあえずしょうがないから一本模擬戦をやったのだが…なんか余計に彼女の何かを刺激してしまったらしく、会う度に模擬戦の申し込みをされるようになったのだ。―――こいつはシグナムと同じく、戦闘狂(バトルジャンキー)のようだ。

 ということで、俺は彼女のことが苦手だ。嫌いではないがな。
 しかも彼女がいるとのことで、仲介役としてシグナムも来ることとなり、バイクでの移動はほぼ不可能。結局車でしかいけなくなった。

 そしてその車だが、なのはもシグナムも俺も持っておらず、フェイトの車を借りることとなった。
 男としては、女に車なんて借りるなど、ちょっとプライドが……なんていうか、抵抗感があって……


「ぶーすか言ってないで、しっかり前を見て運転しろ門寺。事故でも起こしたら大変だ」
「へいへい、分かってますよ~」
「士君、真面目にやって」
「この状況で真面目にやれとか、よく言えるな。運転手が不機嫌だっていうのに」


 とまぁその後も俺はローなテンションでハンドルを握りつつ、二人と共に聖王医療院へと向かった。
























 しかしその途中、先程話した女性―――シスター・シャッハが緊急連絡をしてきた。内容は件の少女が検査の合間に抜け出したとのこと。なんともまぁ、アクティブな女子(おなご)なこって。
 そして聖王医療院に到着するとすぐに、建物からシャッハが出てきて、状況を俺達に説明してくれた。


「特別病棟とその周辺の封鎖と非難は済んでいます。今のところ飛行や転移、侵入者の反応は見つかっておりません」
「となると、外には出てないと……っていうか、非難するまでもないんじゃないんですか?」
「あの子にどんな潜在的な力があるのかわからないんですよ!? 他にも病人はたくさんいますし、被害を大きくする訳には…!」
「あ~はいはい、分かった分かった、了解しました。取りあえず中を手分けして探すしかないな。俺とシグナムとシスター・シャッハで中を、なのはは中庭の方を見てくれるか?」
「了解」


 俺の指示に敬礼を返すなのは。同じようにシグナムも敬礼をして、シャッハと共に医療院の中へ。その後に続くように俺となのはが医療院へと足を向けた。










「さてさて…何処にいらっしゃいますかね~」


 件の少女は目が覚めてからの時間が浅い。外に出れないこの状況で、隠れる場所は数少ない筈だ。
 普通に探せば見つかる―――と思っていたのだが、意外にかくれんぼが得意らしい。半分近くを探したが、見つからなかった。

 反対側の捜索をしていたシグナム達も、見つからなかったらしい。取りあえず一回下に降りてなのはと一緒に探すとするか。
 そう決めた俺は早速中庭の方へ降りて行くと、丁度なのはが件の少女を見つけたようだ。タイルでできた中庭の通路に二人が向かい合っていた。

 近寄って行くなのはを見て、任せた方がいいだろうと判断した瞬間―――


「ッ…!(殺気!?)」


 それを感じた方へ視線を向けると、そこにはデバイスらしき物を前に掲げるシスター・シャッハの姿がいた。
 おいおい、ガキ相手にムキになり過ぎだろ! と思いながら、すぐに〝歩く〟から〝走る〟へと動きを変える。しかしその瞬間にはオレンジ色の光が窓から飛び出し、宙を舞った。彼女お得意の〝跳躍系魔法〟だ。

 速度と直線の角度から言って、着地点はおそらくなのはの前。ギリギリだが…何とか届く!
 足を中心に肉体強化の魔法を施し、シスター・シャッハの着地点である場所へと向かって一気に飛び出した。

 結果、予想通りなのはと件の少女との間に着地したシスター・シャッハ。しかし着地直後に俺が彼女をタックルするように飛び出していた為、彼女に覆いかぶさるように抱き着きにかかる。
 だがここで不運なことが。いつも通りやろうとした俺だったが、トリスを巻いていなかった所為か出力の下限を間違えてしまった。

 つまりは…勢いを付け過ぎてしまって、


「うおおぉぉおぉおおぉぉ!?」
「キャアアアァァァァァァ!?」


 そのままゴロゴロと転がって行き、通路わきにある草むらへと突っ込んでしまったのだ。
 勿論、俺は咄嗟に彼女を庇うように抱き直し、彼女に怪我がないようにした。

 しかしだからと言って勢いが止まる訳でもなく。草むらに突っ込んで、2・3回程回ってようやく勢いが止まった。
 俺はすぐに抱きかかえる腕を解いて、上半身を起こす。シスター・シャッハもすぐさま立ち上がり、俺を見下ろすような格好になって口を開いた。


「門寺三佐、何をなさるんですか!?」
「それはこっちのセリフだシスター・シャッハ! なんでテメェはあんな怖い形相で登場するかね!?」


 シャッハは当然、いきなり自分の行動が邪魔された所為でお怒りだ。しかし俺だってただのちょっかいで出てきた訳じゃない。


「あの子にどんな力が分からない以上、防衛の構えは…!」
「だからってお前デバイスに、しかも騎士甲冑まで纏って、鬼の形相で目の前に現れるか普通!? 相手は六歳ぐらいの少女(ガキ)なんだぞ!? いきなりそんな風に現れたら、怖がって逆になんか起こるかもしんねぇだろーが!」
「だからと言って何かあった時の対処が…!」
「どわぁ!? おま、デバイス持ったまま来んな! 双剣の刃が目の前まで来るだろうが!」
「今はそんな話どうでも―――」


「ちょっといいかな、二人共?」


 ―――瞬間、俺の身体に寒気が襲ってきた。
 いつもより低く、冷たささえも感じられる、いつも聞きなれている筈の幼馴染の声が耳に入り、俺の身体は固まった。どうやら目の前にいるシャッハも、同様らしい。

 ギギギ、と錆びたおもちゃのように首を動かしてみると、そこには両手を腰に当てて仁王立ちするなのはの姿があった。


「とりあえず…少し静かにしていてくれる? 私はこの子とお話があるから」
「………(コクコク)」
「で、ですが…!」


 黒い笑みを浮かべながら言うなのはに、俺は素直に頷く。しかしシャッハは愚かしくも反論しようとして……


「〝オハナシ〟…します?」
「―――いえ、結構です…」


 呆気なくなのはを目の前にして首(こうべ)を垂れた。バカだな、ここは素直に退くべき場面だぞ騎士様よぉ…退き際を見極めるのも大事なことだぞ?
 なのはに恐怖するシャッハを見ながらそう思っていると、なのはは早速件の少女の下へ行き、同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。


「大丈夫? ちょっとビックリさせちゃったかな?」
「ふぇ…?」
「初めまして、高町なのはって言います。お名前、言えるかな?」
「………〝ヴィヴィオ〟」


 少し泣き目になっていたが、なのはの質問には素直に答えた。中々できた子だな。
 なのはが件の少女―――ヴィヴィオの名前を可愛いと言っている間に、後ろからシグナムが走ってきた。なのはの方を確認した後、こちらを向くとなんだか複雑な表情をした。仕方あるまい、シャッハのこの姿を見れば。


「ヴィヴィオ、どこか行きたかった?」
「ママ…居ないの…」


 またも素直に答えてくれたヴィヴィオの言葉に、そこにいる全員がハッと息を飲むような表情をする。
 当然だ、魔導士素体として〝作られた〟彼女に、母親などいる筈がないのだから。


「―――あぁ、それは大変。それじゃあ、一緒に探そうか」
「……うん…」


 しかしそんな事実を言える筈もなく、なのははすぐに表情を笑顔に変えてそう言った。
 まぁなのはがこう言ってしまうと、やはり六課(こちら)が受け取る形になりそうだな。そう思ってシャッハに目くばせをすると、向こうも察したようで頷いてくれた。

 結果、ヴィヴィオは六課が預かる事になり、俺達三人にヴィヴィオを加えた四人は、車で六課へと戻っていった。





  
 

 
後書き
 
久々にドライブの感想でも。

タイプ・トライドロン、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか!?えぇ!?
なにあのベルトさん人格!すげぇじゃん!前にも見たような感じがするけど、そこは気にしない方向で。

そんで遂にブレンが…ブレンが報われる日が来るのか!?
そして超進化体と約束の数との関係は?ドライブの結末は?映画版の方もかなり気になってきましたし、すんげぇ楽しみです!

―――っとまぁ、そんな感じですかね。はい。

次回はおそらく、七月頭を目標に。
ではまた次回まで、さようなら~(^_^)ノシ
  
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