魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
96話:Dの破壊者vs終わりのD
前書き
遂に通算100話目、そして100話目にして一年前の構想を実現する事ができました。
と、言う訳なんですけど……
実際、今回の戦闘描写は少ないです。期待していた方、本当にすいません。
引き金が引かれ、ディエンドライバーが火を噴く。
一回の引き金で放たれた弾丸は三発程、連射ではなく散弾銃のように飛び出し、士に向かって襲い掛かる。
しかし士もディエンドの事をよく知る人物、その武器から放たれるものはわかっていた。
弾丸に対し、組みなおしたデンガッシャーを振るう。すると先程まで短かったデンガッシャーがいきなりフリーエネルギーを纏い巨大化、その姿を〝デンガッシャー・ロッドモード〟へと変える。
振るわれた巨大な竿は、目の前の弾丸の一発を弾き飛ばす。振るった勢いのまま竿を背中に回すと、士はそのまま回転しながら前に進み、もう一発を躱す。
その後正面に向き直った士に、最後の一発が迫る。しかし士はなんら焦る事もなく、その一発を竿で弾いた。
「…やはりこれぐらいは楽に躱すか、なら」
ディエンドはそう言うと走る士に再び銃口を向け、引き金を引いた。
今度は六発の弾丸がディエンドライバーの銃口から放たれ、士に迫る。
「はッ! なんどやっても同じだろうが!」
士はそう叫ぶと先程と同じように、竿で弾丸を弾きながら他の弾丸も躱していく。彼の言った通り、先程と変わらない状況。
そして六発全てを弾くか躱すかした士は、一直線にディエンドの下へと駆ける。竿の攻撃範囲に入ったと判断し、動かないディエンドに向けて竿を振り上げた、その時。
「―――ッ!」
視界の端に先程ディエンドが放った弾丸が写った。それも数発、自分を囲うように。
(さっき弾いたのを誘導して囲ったのか…!)
そう、先程士が対処した弾丸全てが、士を囲うように迫っていたのだ。
ディエンドが放った弾丸は、実は最初の弾丸とは違い二重構造の弾丸。先程士が弾いた際に外側の殻だけが割れるように仕向け、全ての弾丸を壊さずに残しておいたのだ。
そして士が迫りくる間に、六発全てを誘導し士の周りに迫るようにしたのだ。
士はそれを理解した瞬間、ディエンドを飛び越えるように跳躍をする。標的をなくした弾丸はそのままディエンドの少し前でぶつかり合い、ディエンドを煙で隠した。
「なら今度は、これでどうだ!」
振り返りながらそう叫んだ士は、頭上で竿を振り回した後、その勢いを利用して鋭い突きを放った。
煙でディエンドの影しか見えないが、それだけ見えていれば上々、そこへ向けて竿を突き出した。
〈 ――― ATACK RIDE・BLUST 〉
「なッ!? ―――ぐあああぁぁぁぁ!?」
しかし突きが命中する前に爆煙の中から出てきたのは、シアンの無数の弾丸。煙を突き抜けたそれらは士へと飛来し、見事に命中した。
その弾丸は先程までのものとは違い、弾速も速く威力も高い。それらをほぼ全て受けた士は吹き飛ばされ、地面に転がった。
爆煙の中から歩き出てきたディエンド。すぐに士は膝立ちになり、仮面の下でディエンドを睨みつける。
だがディエンドの方は士の睨みなど何処吹く風、悠然とした態度で歩み寄ってくる。
士はそれを見てすぐに立ち上がり、竿をゆっくりと構える。対しディエンドは立ち止まり、銃口を向ける。その距離約10メートル程。
すぐに士はディエンドに向かって飛び出す。直進してくる士に向け、ディエンドは引き金を引き弾丸を放つ。
「同じ手を、何度も食らうか!」
ディエンドの意思により誘導された数発の弾丸、士はそれを竿を振るって対処する。
だが先程とは違い、デンガッシャーに魔力から変換したフリーエネルギーを纏わせ、一撃で確実に弾丸を破壊し、先程のように誘導されるのを阻止した。
「……流石に、学習するか」
そう呟くディエンド、全ての弾丸を破壊した士はそのまま直進し、ディエンドに一撃を浴びせるべく竿を握る手に力を込める。
だが、と言うディエンドは、左腰にある小型のカードケースを開きカードを取り出した。それを見た士はディエンドの能力を発動させまいと歩を速める。
その行動が功を奏してか、ディエンドがカードをディエンドライバーに装填する前に士がディエンドの下へ駆けつける。そして力を込めた竿を振り上げ、一気に振り下ろす。
ディエンドはそれに対し、ディエンドライバーを逆手に持ち替え竿を受け止めた。これでディエンドの召喚能力は使えない。そう士は思った。
しかし、ディエンドの狙いは士の考える事とは〝別の行動〟だった。
ディエンドが取り出したカード、彼はそれをディエンドライバーへ運ばずに腰に身に付けている自らの紋章があしらわれているベルトの付近まで持っていく。
そして―――〝ベルトの上部にある〟カードリーダーのようなスロットにカードを通した。
〈 WEPON RIDE・G3 ――― SCORPION 〉
「は…?」
〝訳のわからない事〟が起こった。士の脳は目の前の現象を見てそう思考した。
カードリーダーに通されたカードは光に包まれ、ディエンドの左手に収まった。そしてその光が次第に形を成していき、鏡が割れるように光が砕けると……
そこには、銃身が黒く上部にスコープの付いた突撃銃が握られていた。
突然のことに動揺を隠せない士だったが、ディエンドはお構いなしにそれを士の腹部に向け、引き金を引いた。
「ぐッ、がぁぁぁッ!!」
士の体からは火花が散り、苦痛と共に悲鳴を上げる。衝撃に耐えきれずディエンドから離れるが、それはディエンドにとっては〝己の距離〟なのだ。
逆手に持っていたディエンドライバーを正面に構え直し、左手に持つ突撃銃と同時に引き金を引いた。
突撃銃から放たれる弾丸と、ディエンドライバーから放たれるエネルギー弾。士はすぐさま竿で防ごうとするが、それはある意味無意味だと知る。
弾丸とエネルギー弾、この二つの違いは何も実弾かエネルギーかだけではない。
〝操作できるか否か〟。そう、直線的に来る実弾とディエンドによって操作されたエネルギー弾、この二つがディエンドの意思によってうまく配置され、目の前の弾丸を容易に弾こうものならエネルギー弾が、そしてエネルギー弾を弾こうものなら実弾が次々と迫るように仕組まれていたのだ。
それにより、一発弾いても別の弾丸が体に命中し、そのダメージで体が鈍ったところで更に一発が、そしてもう一発……といったような悪循環に陥り、士の体にダメージが蓄積されていく。
そして遂に、士はディエンドの弾幕の前に吹き飛ばされ、地面に倒れた。
しかしいつまでも倒れてもいられない。すぐに士は竿を支えにし、自分を見下すディエンドを睨みつけながら立ち上がる。
士が倒れたのに対しディエンドは弾丸を放つのを止め、銃を下ろしていた。その手には先程まであった黒い銃身の突撃銃はなく、一枚のカードのみだった。
(なんだったんだ、今のは…?)
体中を駆け巡る苦痛に耐えながら、先程の現象に対し考察していた。
先程ディエンドが行ったもの、それは士の知識にない行動だった。本来のディエンドにはない、新たな能力。おそらくベルト上部のカードリーダーで読み込んだライダーの、任意の武器が使えるのだろう。
しかし何故そんな能力が、ディエンド(かれ)に存在するのだろうか? 士が思考を巡らせるが結局は答えに行きつくことなく、その思考は外部から停止させられた。
「―――そろそろ時間だ、終わりにしようか」
そう言ってディエンドは腰にあるカードケースからカードを取り出し、表面を士に見せた。
そこには金色に輝く彼のエンブレムが描かれていた。
それを確認した士はすぐさま立ち上がり、ライドブッカーからカードを引き抜く。このままではディエンドの攻撃に対抗できない。そう判断した士は取り出したカードをトリスに差し込んだ。
〈 FORM RIDE・DEN-O GUN 〉
三度士が身に纏うオーラアーマーが、一旦士の身から離れ変形する。そして別の形となって再び装着された後、顔部分に龍を模した電仮面が現れ装着される。
電王第四のフォーム〝電王・ガンフォーム〟である。
変身を終えた士はすぐさまデンガッシャーを組み直し、〝デンガッシャー・ガンモード〟を作り上げる。
そしてライドブッカーからカードを取り出し、デンガッシャーを正面に構えながらトリスに挿入した。
士のその行動と共に、ディエンドも取り出したカードをディエンドライバーへ差し込み、銃身を前へスライドさせる。
〈〈 FINAL ATACK RIDE ――― 〉〉
〈 de de de DEN-O ! 〉〈フルチャージ〉
〈 di di di DI-END 〉
二人のカードが発動されたと同時に、それぞれの正面に変化が訪れる。
前に構えたディエンドライバーの前には、ホログラム状となった無数のカードが銃口を中心に配置され、照準となって士を捕捉した。
対する士は、正面に構えたデンガッシャーにフリーエネルギーを集中させ、更には両肩にある水晶のようなもの―――〝ドラゴンジェム〟からもエネルギーを供給し、紫色のエネルギー球を作り出していく。
それぞれがエネルギーを最大まで溜めていき、そして遂に両者の指が引き金にかかる。
「「―――ッ!!」」
〈 Wild shot ! 〉
〈 Dimenstion shoot 〉
ほぼ同じタイミングで、引き金が引かれる。
ディエンドライバーから放たれる巨大なビーム砲―――〝ディメンションシュート〟、デンガッシャーから放たれる紫色のエネルギー球―――〝ワイルドショット〟。
両者の必殺技が放たれ、互いに迫り合う。しかしその間に、新たな行動を始める者がいた。
―――士だ。
彼はワイルドショットを発射してすぐ、電王の変身を解きディケイドに戻ったのだ。そして予めライドブッカーから取り出していた〝自身の紋章の描かれた〟カードをトリスに差し込み、発動する。
〈 FINAL ATACK RIDE・de de de DECADE ! 〉
同時にホログラム状のカードが数枚士の目の前に現れる。
実はディエンドの必殺技を知る士は、もしかしたらワイルドショットでは撃ち抜けないのではないかと懸念したのだ。
だからディケイドに戻り、自身の必殺技―――〝ディメンションブラスト〟を上乗せしようと考えたのだ。
そして先に放たれた二つの必殺技が衝突すると同時に、士はライドブッカーの引き金を引いた。ディメンションブラストはワイルドショットを巻き込み、ディメンションシュートと拮抗した。
これならいける、そう確信のような物を感じた士。しかし……
「〝甘く見られた〟ものだな…そんな単純な足し算で打ち破れるとでも?」
その一言―――小さく、しかし明らかに苛立ちが込められた低い声による、たった一言で。
二つの必殺技を合わせた士の攻撃が…〝押され始めた〟のだ。
「なッ! くぅぅぅッ!」
慌てて力を込めるディケイド、しかしそれでもディメンションシュートの進行は止まらない。
更に力を込める為銃を両手で握り、雄叫びを上げる。しかしそれに合わせるようにディエンドも威力を上げる。
「ぐぅぅッ―――ぐあああぁぁぁぁッ!!」
そして遂にディメンションシュートは士の攻撃を突き破り、士の体に命中した。
その威力に吹き飛ばされる士。廃墟となっているビルの壁に衝突し落下すると、ディケイドの変身も解け生身の体を晒した。
くッ、と歯を食いしばりながら両腕に力を込め立ち上がろうとする。だが中々立ち上がる事が出来ず、ディエンドを睨みつける。
ディエンドはというと、別段士に攻撃を加える訳でも、その場を去る訳でもなく、彼自身も変身を解き生身の体を士に見せつけるかのように晒した。
「な、なんのマネだ…?」
「言っただろ、これは君が僕を下すか、この場に残るかの戦いだと」
ディエンドだった彼は手に持つ銃を指で数回回すと、自らの腰にあるベルトの一部に、ディエンドライバーを取り付けた。
「今回は君が僕を倒せず、僕は時間を稼いだ。よって今回の勝負は、僕の勝ちだ」
「なん…だとぉ…!?」
「また会うことになるだろう、その時は……どうなるかわからないぞ?」
また会えるのを楽しみにしている。
そう言ってディエンドは振り返り、その場から歩き去っていく。士はそれを地に伏しながら、悔しそうに歯ぎしりをさせて見ていた。
一方、なのは達の方の戦況は以下の通りだ。
地下道を走っていたⅠ型・Ⅲ型は、フォワード陣四人に陸士108部隊の捜査官―――ギンガ・ナカジマを加えた五人の手によって全て破壊された。
だがその後レリックを見つけた場所で、別の敵と遭遇。紫髪の少女と赤髪の―――リインと同じサイズの少女の二人と戦闘となった。
紫髪の少女の召喚虫―――ガリューを加えた三人との戦闘の末、ガジェット殲滅を終えたヴィータ達を加えた七人は、最終的に敵の捕縛に成功した。
その間、空を埋め尽くすⅡ型ガジェットは、空に上がったはやての手によって一掃された。
そして地上付近では、エリオが見つけたブラウン色の髪を持つ少女を乗せたヘリに、物理破壊設定を施された砲撃が放たれてしまう。
砲撃の爆煙が起こり、命中したかに見えたが、直前で限定解除した〝エクシードモード〟を発動したなのはによって防ぐことに成功。
ヘリを狙った砲撃を放った犯人とその共犯を、同じく限定解除したフェイトが捕捉。なのはとフェイトの二人は、はやてと共に追跡と迎撃を開始したが、結局は別の人物によって犯人は逃走してしまう。
そしてその間に少女の仲間か、別の人物によって紫髪の少女は救出され、結果レリックのケースと共に消え去ってしまった。
事件を起こした犯人を取り逃がし、レリックは奪われてしまった。ヴィータがはやてに、そうやって報告しようとすると、フォワード陣が止めに入った。
レリックを探し出した時、ティアナの案でレリックの厳重封印と場所の移動をしておき、本物はキャロが持つようにした。
結果敵が持ち去ったのはレリックのケースのみ、レリック本体は守り通すことに成功したのだ。
確かに敵は逃したが、今回の戦闘は〝レリック争奪戦〟としてはこちらの勝利で終わったのだ。
そして六課が保護した少女は、聖王協会の敷地内にある聖王医療院へと送られ、検査の結果大きな問題がなさそうとの話だ。
エリオやキャロも、戦闘中に負傷したがそれも軽症なものだった。シャマルの軽い手当ですぐに行動できるようになり、既に他のフォワード陣と共に報告書を書いているそうだ。
そして残る人物―――門寺士はというと……
「いや~、やられたやられた。面目ないね~、すまん!」
「「………」」
「……あ、あの~…ほんとすいません」
ただ一人、敗戦となった士に、フェイトとはやては冷ややかな目線を注ぎ、士はバツが悪そうに謝罪した。
しかし二人が聞きたいのはそのことではない、いやその件にも関与することなのだが、本命は……
「ライダーが相手だったっていうのは、どういうことなんや?」
「あ、あぁ…そのことね」
二人が不機嫌な理由がなんとなくわかった士は、フェイトとはやてに向かって現状の推測を口にする。
「おそらく、あいつはショッカーが生み出した〝俺〟対策の一つだろう。まぁそれがなんで、レリック争奪戦に関わってくるのかわからないが、とにかく奴はお前らが戦闘した輩と協力関係にあるのは確かだ」
「…強かったの、相手。士が負けるぐらい」
「そうだな…少なくとも二段階解除の状態でも押し切られた。実力としてはかなりのものだと言えるだろうな」
そう言って目の前に映し出される、数時間前の己とディエンドの戦いを見ながら顎に手を当てた。
ディエンドライバーを使った銃撃戦、放った弾丸一つ一つを任意で操作できる能力。そしてライダーを召喚する能力は勿論、士の知らない〝ライダーの武器〟を召喚する能力。
銃撃戦に関しては士の―――ディケイドのレベルをはるかに凌駕し、ライダーに関しても〝士の知らない〟ライダーを召喚し、更には武器を召喚するという能力まで見せた。
正直にいえば、彼に対する直接的な対策は今すぐに立てることができないのだ。とにかくやれることと言えば、次に彼と対峙したときに全力で当たるしかない。
そう思いながら、士は手元にあったカップを手に取り中のコーヒーを啜る。
「なんや呑気にコーヒー啜っとるけど、えぇんかこのままで?」
「いいんだよ。とりあえずは、な」
余裕そうにコーヒーを啜る士を見て、フェイトとはやての二人は顔を見合わせて肩を落とした。
「そういえば、なのはは?」
「え、知らんの? 今聖王医療院の方に行ってて、保護したあの子の事について聞いてきてくれてるところやで?」
「あぁ、そうか。だからここら辺で見なかったのか」
そう言うと、士を見ていたフェイトは呆れたような表情になる。
「なのは、士が負けたのを聞いて結構怒ってたよ?」
「……フェイトさん、今なんと?」
「なのはが怒ってたって言ったの。もしかしたら、お叱りを受けるかもよ?」
「……それは早く言って欲しかった…!」
フェイトにそう言われ、苦悶の表情でイスの背もたれに体を預けた。
碌な休みもなく戦闘の続く今日、士の一日はまだまだ波乱にまみれているようだ。
後書き
『宇宙刑事 next generation』、『トッキュウジャーvsキョウリュウジャー』、『movie大戦フルスロットル』、『鎧武外伝』……いい世の中になったものだ……
実写版『るろうに剣心』も、アクション面での殺陣が凄くて参考にしたいのですが…難しいですねぇ。
さて、今回でようやくディエンド&ヴィヴィオを登場させる事ができました。
これから先は、本編とサウンドステージを使ったほのぼの話が続くと思います。戦闘はしばらくお預けになるかと。
ではまた次回。いつになるかな~…まぁまた首を長くして待っていてください。
ご意見ご感想、待ちしております。ではまた~(^^)ノシ
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