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エターナルトラベラー

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第三十九話

 
前書き
今回からまた世界の移動がはじまります。今後かなりのご都合主義的展開が乱舞してしまうかもしれません。その事を了承していただけると幸いです。  

 
さて、ジュエルシード事件での俺たちの役目も終わり海鳴へと帰ってきた。

まあ、そこでフェイトの件などで少し管理局側とひと悶着あったけれど…

一応プロジェクトフェイトの生きた成功例であるフェイトの取り扱いには少々もめた。

しかし、実験資料は時の庭園と共に消え、記録上プレシアの娘はアリシアのみ。それも死亡と認定されている。

当然フェイトの戸籍なんかは管理世界には無く、権利問題があやふやになってしまった。

当のフェイトも管理世界での犯罪などは犯しておらず、逮捕される謂れも無い。

管理局で保護をと言う提案を母さんが一蹴。

もう少しでアースラ最後の日(母さんが切れて暴れそうだった)になってしまう所をリンディさんが折れて緘口令を敷いた。

プロジェクトフェイトは他言無用。

さらに俺たちのことも詮索は禁止。

これがさらにもめた。

魔法至上主義の連中に魔法以外の何らかの力で空を飛び、魔道アーマーすら寄せ付けない母さんの力は恐れるに足る存在だったのだろう。

しかし、俺たちにはそれを教える気は無い。

最後は面倒になったので万華鏡写輪眼『思兼』で思考誘導。

そのまま洗脳…もとい、言質をとって部下への詮索を禁止を徹底させた。

いや、便利だね、思兼。

使いすぎると人間としては最低にまで落ちて行きそうだけど。


そんな訳で略式の表彰状をもらい俺たちはアースラから海鳴へと帰ってきたのだ。

つか、殆ど無償奉仕かよ!

死地へと赴いて世界の危機を救ってみれば表彰状のみとかね。

まさしくやってられん。

まあ、一応フェイトの身柄と親権はゲット出来たからいいんだけど。

親権と言えば、フェイトの戸籍なんかは此方の世界には無かったはずなのだが、母さんがこれから造るそうだ。

何でも御神家が存続していたときのコネがまだ有るとの事。

要人護衛の仕事は、なかなかそういった機会が豊富だったらしい。

数日で『御神フェイト』が誕生するだろう。


「そう言えばなのは、あの時海で何か拾ってなかった?」

九尾を打ち倒したときに、なのはが何やら海面から拾い物をしていたような…

「あー、アレね。えっと、ジュエルシードに取り込まれていたイタチが海に浮かんでいたから、見捨てるのもアレだったから取り合えず拾ったの」

ああ、取り込まれていた原生生物か。

「それで?そいつは大丈夫なのか?」

「うん…なんか管理局の人が言うには変身魔法でイタチに変化していた管理世界の人なんだって」

なんだと!?

まさかユーノか!?

「そ、それで。そいつの名前とかは分ったのか?」

ユーノだとして何であんな状況に?俺たちが転生した所為か?

「えっと…エルなんとかって聞いたような」

「エルグラントだよ、なのは。エルグラント・スクライア」

フェイトが訂正する。どうやらフェイトと一緒にアースラ滞在中にちょくちょく出てたのは医務室に通うためか。

っていうか!ユーノじゃない!?

「そ、そうなんだ。…それで?怪我とかは大丈夫だったのか?」

「怪我は大丈夫そうだったの。ただ、記憶に混乱が見られるって言ってた」

記憶に混乱か…原因は幾つか思い浮かぶな。魔力ダメージの後遺症。ジュエルシードの融合による弊害。後は酸欠による脳細胞の壊死とか。

そんな状態でどうやって個人情報の特定出来たかと言うと、その首に掛けられていたデバイスに聞いたらしい。

うーむ。

ユーノの代わりに居たエルグラントと言うイタチ。

こいつはもしかして転生者か?

スクライア一族に転生して、ユーノと同年代。

原作介入がしたかったら俺ならユーノを押しのけてユーノポジションを得るな。

まあ、記憶が混乱しているそうだし、もう会う事も無いだろうから実際の所は解らないのだけれども。

もしこいつが闇の書事件でしゃしゃり出てきたら転生者確定か。

それはもう少し経たないと分らない事。

今はどうも出来ないか。

しかし、闇の書をどうするか…

この際自身のエゴ全開で闇の書の時間を巻き戻してしまえば面倒が無くていい。

その際なのは達との友達フラグなどがすべて折られてしまうが、世界崩壊よりはましか?

ジュエルシードと違い、今度は受身ではなくて攻めていける選択肢が存在する。

闇の書機動は確か6月始め。

まだ時間はある。

俺は考えを放棄して久しぶりの我が家えと向かった。


それから数週間。

フェイトの戸籍の作成や聖祥大学付属小学校への転入と慌ただしい日々が過ぎるとようやく騒がしかった日々も落ち着きを取り戻した。

そんなある日の早朝。

俺達は海鳴の沖合いで修行と言う名のレジャーを堪能している。

「ヒット!」

グッとしなるロッド。

グググっと勢い良く海中へと走る魚を、負けじとロッドを構え、リールを巻く。

フックが外れないように慎重に巻き上がる。

「フィッシュ!」

終に海面へと現れた青物。

少し時期は早いかもしれないがイナダ(ブリの幼名)のシーズンが到来している海鳴の沖合い。

「アオ、また釣れた…っきゃあっ!?」

ドボン

盛大な水しぶきを上げながら水中に沈んでいくフェイト。

今日はまだ日は昇りきってないが、波も穏やかで少し気温が高い日。俺達は水面歩行の行をおこないつつ、ついでに沖合いでルアーフィッシング。

念の修行を始めたばかりのフェイトは竿は持たずに修行に集中している。フェイトはまだ水面に長時間立っていることは出来ず。さらには意識を反らした隙に調整がうまく行かなくなって海に落ちている。

ザバッ

待機状態のバルディッシュが飛行魔法を行使して水中から上がってきた。

「ぷはっ…けほっ」

「大丈夫か?」

「……海水が凄く冷たかった…」

だろうね。

「ソル」

俺は胸元のソルにお願いする。

『風よ』

ソルが操る魔法が暖風を送り、フェイトの衣服を乾かし、ついでに塩気も抜いていく。

その隙に俺はストリンガーにイナダを通して海中へ。

今ので今日2匹目だ。

「ありがとう。アオ、ソル」

「あいよ。だが大丈夫か?辛かったらゴムボートで休んでいてもいいんだけど」

「ううん。大丈夫。みんな使えるんだから頑張らないと!」

そこまで頑張らなくてもいいと思うけれど。


今までジュエルシードの封印と言う事もあって修行の内容は魔法の方面へと傾いていた。

しかし事件も片付いた今、修行の内容は剣術と念も含まれる。

魔法修行だと思っていたフェイトの考えは初日から覆される事になった。

そこで念を習得していないフェイトが疎外感を持つのはある意味仕方が無い。

彼女からしてみれば、目の前で繰り広げられる模擬戦の攻防の半分は分らないのだから。

そして泣きつかれた。私にもその何かを教えてと。

まあ、泣かれると弱いのは俺達家族の弱い所か。母さんに命令されてその日のうちにフェイトの精孔を開きましたよ。

そんな訳で魔法修行と平行して念の修行も始まった訳だ。

そして今は水面歩行の行。

「ううー。どうしたらアオみたいに出来るのかな…」

「そんなに直ぐは出来ないさ。地道に一歩ずつ修行あるのみ」

「うう…」

念を覚えてから30年近く、昨日今日で覚えた奴が俺と同じレベルで出来たらそれはそれで泣くよ?

「お兄ちゃーん」

左手にはストリンガーに括られたイナダを持ち、右手に持った釣竿をぶんぶんと左右に振って水面を掛けてくるなのは。

その後ろにソラが少し遅れて歩いてくる。

「おう、釣れたか?」

「うん、3匹釣れたよ」

う…負けた。

「私は2匹」

ソラとは引き分けたようで少し安心。

「俺が2匹だから合計7匹か。晩御飯には多いな」

「ご近所さんに配ればいいんじゃないかな」

一歩遅れて後方から歩いてきたソラが提案する。

一家族2匹も居れば事足りる。

御神家と高町家で4匹。後はご近所に配るか。

訓練も終了といった時、空間を裂きクロノからの通信ウィンドウが展開された。

『すまない、急な事で悪いんだが』

「どうした?何かあったようだが」

『ああ、エルグランドと言う少年の事は知っているか?』

なのは達から聞いたな。ユーノもどきだろう。

「ああ。そいつがどうかしたのか?」

『そうだな、経緯を省いて説明すると、ジュエルシードを持ってアースラを脱走した。そっちに行った可能性が高い』

はぁ!?

何それ?どういう事?

「と言うか、もっと早く言ってくれない!?」

上空から巨大な魔力反応。

バッと全員が空を見上げる。

光り輝く球体が視界に移る。

それは一筋の閃光となりこちらへと撃ちだされた。

直撃はされずに海面へと叩きつけられて海水が宙を舞う。

『プロテクション』

周りをみるとそれぞれにバリアを張るなり避けるなりしたようだ。

俺は攻撃をしてきた相手を見上げる。

年齢は9歳ほどの男児。

青色の騎士甲冑を纏い、その手には装飾の施された西洋剣。

足元に浮かぶ魔法陣は剣十字。

『すまない。彼が行った破壊活動でアースラは混乱していた』

左様で。

「なんでっ!そのポジションは俺のもののはずだったのにっ!」

確実にまだ錯乱している。

自己の欲望と現実の区別があやふやだ。

暴言を吐きつつ手に持ったデバイスを振り上げては、八つ当たりをするようにその圧倒的な魔力量でシューターを無数に放ってくる。

繰り出されるシューターの数は膨大だが、誘導性の無い弾に当たるような俺達ではない。

どうやら狙いはなのはとフェイト以外のイレギュラー二人。つまり俺とソラだ。

この弾幕を避ける事がまだ出来ないであろうフェイトへの攻撃は牽制程度になっている。

しかし、なのはにしてみれば絶好の反撃のチャンス。

この機を逃すような教育はしていない。

「ディバイーーーーーンバスターーーー」

ドウッっとピンクの奔流が少年に迫る。

弾幕を止めて、シールドを展開してなのはのバスターの直撃をガードする。

俺たちなんかとは桁違いの魔力量。

だけど、その技術は未熟で、ただ強大な魔力による力押しでしかない相手に後れを取る訳は無い。

弾幕が止めばあとは此方のワンサイドゲームだった。

前世を含めるならおそらく成人を迎えているだろう彼。

しかし、俺と同じであるならば、現代日本人だった彼に戦闘の経験があっただろうか?

俺は無かった。

それ故に初めてトロールと戦ったときは足も震えたし、その命を奪ったときは心が締め付けられた。

生き物の命を奪ってしまった事実がかなり堪えた。

いっぱしに戦えるようになったのなんて転生してから15年を過ぎた辺りからだ。

それも偶然手に入れた眼に頼った物だったが…

しかし今の俺達には不断の努力によりつちかった経験がある。

彼も自主訓練は積んできただろうが未だ子供。たかが知れる。

攻撃を誘導すれば読みやすく、かわしやすい。

魔力量を除けば負ける要素が無かった。

「くそっ!くそっ!何でだよ!俺がそこに居るはずなのに!なぜっ」

防戦一方になった彼の口からそんな言葉がこぼれる。

「なぜだっ!なんでなんでなんでなんでなんで」

錯乱がひどい。

そろそろ気絶してもらって、クロノに引き取ってもらおう。

「…そうだ。奴らが居なければ良いんだ。そうだ、簡単なことじゃないか」

懐から何かを取り出すとそれを掲げた。

「あははっあははははははははっ」

不気味に笑う少年に皆の攻撃が一時ストップする。

少年の手のひらから青い光がこぼれだす。

ヤバイ、あれはジェルシード!?

そう言えばクロノがジュエルシードを強奪したとか言っていたっけ。

「はーーっはっは」

ジュエルシードの光はどんどん輝きを増す。

「何?」
「ヤバイ!」
「あれは?」

なのは、ソラ、フェイトも三者三様に驚きの声を上げる。

「………消えちゃえ」

そういった瞬間にジュエルシードから瞬間的に光が円状に広がり俺達を包み込んだかと思うと一気に収束する。

「っく」
「「「きゃあああ」」」

俺たちは何かに引っ張られる力に抗う事も出来ずに光の中に吸い込まれた。 
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