エターナルトラベラー
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第四十話【sts編】
「ソラ!なのは!フェイト!」
俺は吸い込まれながらも瞬時に辺りにある空気を操りソラ達を引き寄せそのまま全員を覆うように空気のボールを形成する。
「皆無事?」
「うん」
「な、なんとか」
「大丈夫」
どうやら皆無事らしい。
「ビックリしたー。一体何が起こったのかな?」
「いや、なのは。今はそんな事よりここが何処かと言う事が問題なのだが…」
「…アオ」
「ああ」
ソラも今居る空間に思い至ったらしい。
今俺達がいる空間は、周りの総てが歪み、何処とも無く流されていく。
以前俺達が流されたあの空間。
何処と無く虚数空間にも似ているような気がする。
以前は運良く亀裂を見つけ飛び込んでジンさんに拾ってもらった事で九死に一生を得たあの空間に酷似している。
「…帰れる…よね?」
なのはが少しトーンを落とした声で聞いてきた。
「………わかんない」
さて、どうするか。と考えていたら俺達を包むバリアボールが何かに吸い寄せられるかのように引っ張られている。
「な、なんだ?」
「吸い寄せられてる?」
「あ、あれ!」
そう言ってなのはが指差した方向には何やら亀裂のような物が。
それに向って俺達は吸い寄せられているようだ。
「出口?」
「だったら良いな」
とは言えかなり強い力で吸い寄せられているので進路変更は出来そうに無い。
そして俺達はそのままその亀裂をくぐり、
「きゃ」
「にゃ」
「くちゅん」
「ごほっごほっ」
亀裂を潜ると何故か爆煙。
「けほっ」
「こほっ」
目がしぱしぱする。
「皆無事か?」
「煙たいけど大丈夫」
「わたしも」
「私も平気」
煙が晴れると目に入ってくるのは反り立つ崖と新緑。
自分の位置を確認するとなにやら鉄板のような物の上に居るようだ。
辺りを確認しているとわずかながら攻撃的な意思を感じて俺達はすぐさまその場を移動してその攻撃をかわす。
「あなたたち何者ですか」
何か拘束の意図を持った攻撃は対象を失いその場で収縮しているのを確認、その後その攻撃をして来たであろう人物に目をやる。
「よ…」
「よ?」
「妖精さんだ!お兄ちゃん、妖精さんがいるよ!すごーい、かわいーね」
「なのは…今はそんな所に感心している場合じゃないと思うよ?」
ソラがなのはに突っ込む。
「でも、でもー」
なのはのトンチンカンな物言いに少し空気が緩む。
「わ、私は妖精じゃありません!こう見えてもユニゾンデバイスです!」
「ユニゾン?」
「デバイス?」
ソラとなのはが何の事か解らないと首をかしげる。
そんなやり取りをしている内に周りをすっかり囲まれてしまったらしい。
前方に赤い髪の子供とピンクの髪の子供。
後ろに青髪の少女とオレンジ色した髪の少女。
更に上から二十歳ほどの茶髪と金髪の女性が降りてくる。
皆一様にその手に持った武器を此方に向けている。
『リイン』
『あ、なのはさん』
『彼らは?』
『それが行き成りあのガジェットの爆発の中から現れたんですぅ』
『爆発の中から?』
金髪の女の人が会話にまざる。
『そうなんです』
そんなやり取りの後金髪の女性が此方に数歩歩み寄り話しかけてくる。
『私は管理局機動六課のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。現在このエリアは立ち入り禁止区域に指定されています、出来ればどういった理由でここに立ち入ったのか理由を聞きたいのですが』
は?フェイト・テスタロッサ・ハラオウン?
俺は隣に居たフェイトへと視線を移す。
「へ?私?」
少々混乱しているとこちらのなのはが俺の袖をひいて言葉を発する。
「ねえ、お兄ちゃん。あの人たち何て言っているの?」
「ああ、そう言えばなのははミッド語を教えていなかったっけ?」
さて、基本的な事だが、ミッドの公用語は(この作品の扱いとしては)日本語ではない。
まあ、地球上ですら数多くの言語がるのだ、異世界の言葉が日本語だなんて事はあるはずも無い。
恐らくアニメなどは意思疎通の魔法でも使っていたのだろう。
とは言っても俺はズルして覚えたんだけど。
「ミッド語?それってどこの言葉?」
俺達の会話を聞いて今度は慌てるのはあちらの番。
「え?日本語?あなた達日本人なの?」
「ええ、まあ」
「じゃああなた達はどうしてこんな所に?」
「こんな所と言われてもここが何処か解らないんですが、ちょっとした手違いを起こして気が付いたらここに居たんだ」
「え?じゃああなた達は次元漂流者?」
「さて?それはどうなんでしょう?まあ、ここが日本じゃないと言うのはわかりました」
その言葉を聞いてフェイトさんは後ろにいる大きななのは…なのはさんとなにやら打ち合わせをするともう一度此方に向き直った。
「あの、ここじゃ何だし、隊舎の方に場所を移して話を聞きたいんだけど」
フェイトさんの申し出に俺達は三人で話し合う。
「アオ」
「お兄ちゃん」
「…取り合えず招待を受けよう。ここが何処だか解らないと帰りようがない」
「そうだね」
「わかった」
「アオに任せるよ」
3人の了承を得る。
「それじゃバリアジャケット解除してもらって、後を付いてきてもらえる?」
余談だが、俺達は基本的に頭部の防具だけはヘルメット型ではなく、目元だけを隠すバイザー型で、防御力は劣るが、戦闘時の視野確保をするためにあえてそちらを採用している。
ヘルメット型だとどうしても背後からの攻撃への目視がその重量とヘルメットそのものに阻害されて一瞬遅れてしまう。
それは高速戦闘を行う場合致命傷になる事もある。
これを回避するためのバイザーだったのだが、視線の動きで敵に手の内を読ませない効果も期待できるし、まあ、俺とソラはその眼の存在の秘匿に使っているのだが。
しかし、その意匠をなのはとフェイトが気に入って自身のバリアジャケットにも同様にセットされている。
「あ、はい」
なのはとフェイトが了承したと、自身のデバイスがバリアジャケットを解除する。
「「えーーーーーーー!?」」
「?」
「な、なのは?」
「はい?」
「フェイトちゃん?」
「はい」
「なのは…なの?」
「そうですけど?」
「フェイトちゃんだよね?」
「はい」
「な、なのは」
と、フェイトさんは自分の隣りにいる栗色の髪の女性に向って話しかけるが。
「何ですか?」
と、応えたのはこちらのなのは。
「ふぇ、フェイトちゃん…あれってどう見ても小さい時のわたしだよね」
「うん。見間違えるわけ無いよ!私が最初に出会った頃のなのはにそっくりだよ。それにあっちは…」
「フェイトちゃんのちっちゃな頃にそっくりだよ」
さて、カオスになった状況に収拾が着かなくなっていた俺達は、他の隊員の手引きで迎えに来たヘリコプターに乗り込み機動六課隊舎の隊長室へと案内された。
一応そのヘリコプターの中でこの世界が地球ではなく、ミッドチルダのクラナガンと言う首都の近郊であると言う情報は得られた。
異世界だがあのままあの空間で漂流するよりはマシだろう。
その間未来のフェイトさんと茶髪の女性は混乱のきわみで放心状態であったためこちらに質問する機会を得られないまま隊舎の応接室へと移動した。
勧められるままソファに座る。
その対面に隊長であるはやてさん、その両隣にフェイトさん達が座る。
そして入り口を封鎖するようにピンクの髪をポニーテルで纏めた女性、後でシグナムという名前を聞いた。
「さて、こんな所まで呼び寄せてしまってごめんな。私は八神はやていいます。先ずは名前を教えてもらってもええか?」
「御神蒼」
「高町なのはです」
「不破穹」
「御神フェイトです」
「やっぱりあなた達はなのはちゃんとフェイトちゃんて言うんやね」
「さっきから何なんですか?わたしの名前がどうかしましたか?」
「いや、あんな。こっちのお姉さんの名前もなのはって言うんよ」
「へえ、偶然ですね」
「苗字も高町って言うんやけど…」
「え?」
今度はなのはが驚く番だ。
「始めまして、高町なのはです」
そう言ってなのはさんは自己紹介をした。
「同姓同名!?」
「それだけやったら問題はないんや。ただ…」
「ただ?」
「コレ見てくれへん?」
そう言って俺達の前に一つのウィンドウが現れる。
そこには楽しそうにクリスマスパーティーに参加しているなのはの姿。
そこに一緒に映っているアリサとすずか。
この二人のほかにもう一人。
五人仲良くカメラに向ってポーズを取っている。
「これってわたしですか?アリサちゃんとすずかちゃんと…お兄ちゃんソラちゃん、この人知ってる?」
「知らない」
ソラがそう答えた。
「だよね、それにわたしこんな写真取った覚えないんだけど」
「そりゃそうや。だってそれは私らの子供の頃の写真やし」
「え?」
「それじゃあなたは」
フェイトが大きいフェイトさんに向かって名前を問うた。
「さっきも一応言ったと思うけれど。フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」
「ハラオウンって確か」
と、ソラが一生懸命思い出そうと首をかしげる。
「クロノとリンディさんの苗字」
「そうだよね」
「今の言葉でさらによう分からんなったわ。同姓同名のなのはちゃんと、苗字の違うフェイトちゃん。あんたら一体何者や」
そう問いかけるはやてさん。
「その問いかけに答える前に、今西暦何年ですか?」
質問に質問で返した俺。
「西暦?いまは2015年位だったっけ?私らこっちに来てそれなりに長いからいまいち忘れてしもうたけど」
「え?それって本当ですか?」
「どないしたんや?」
「え?だって今年は2005年だよね?」
なのはがそう答える。
「は?まさか過去から来たとか言わないわな?」
「さて、それは分かりません。が、ここが俺達の居た世界の未来じゃないのだけは確かだと思います」
「どう言うことや?」
「さて、なのはさん、幾つか質問があります」
「あ、はい」
行き成り俺に声を掛けられて少し驚いて返事をするなのはさん。
「高町なのは。高町士郎と高町桃子の第一子。兄弟は恭也、美由希の三人兄弟の末っ子、で合ってる?」
「ちょお待ってや。末っ子なのに第一子っておかしない?」
「ううん。 合ってるよはやてちゃん」
「士郎さんの旧姓は知ってる?」
「確か…不破」
「「不破!?」」
ここでソラの苗字が出てきて驚いたのだろう、はやてさんとフェイトさんが声を上げた。
「士郎さんの方の親戚に会ったことはある?」
「……一人だけ」
「御神美沙斗さん?」
「はい」
「「御神…」」
「他の親戚の人たちがどうしているか聞いたことある?」
「わたしが生まれる前に爆弾テロで一族全員死んだって、生き残ったのはお父さんとお兄ちゃん、お姉ちゃん、叔母さんだけだって」
「最後の質問。なのはさんは御神蒼と不破穹と言う名前を聞いたことは?」
「…ありません」
さて、簡単な質問だったけど十分な確証が持てた。
俺は推察から纏めた自分の意見を発する。
「おそらくパラレルワールドと言う奴だと思う」
「「「「パラレルワールド?」」」」
「どういう事?お兄ちゃん」
「つまりここに居るなのはさんはなのはの未来の姿ではなく別の世界の違う可能性のなのはとフェイトだと言うことだよ」
「うん?」
「ここは俺達にとってはもしもの世界。俺やソラが生まれなかった世界の未来、もしくは出会わなかった、か?」
チンプンカンプンな様子のなのは。
どちらかと言えば正史かもしれない。
「まあ、二人が別人だって言う話」
「うにゃー、よくわからない」
「分からなくてもいいよ。そちらの方々は理解しました?」
「一応な、そういうSF小説は読んだ事はあるしな。ただ、そういった事象を確認した事があるかと言われればNOや」
「そうですか。まあ、そんなことはどうでも良いんです。そんな事よりも切羽詰った問題がありますから」
「どんな問題や?」
「突発的な事故だったために帰る手段が無いと言うことです」
「……なるほど、確かにそれは問題や」
「更に言えば保護者も居ない収入すら無い身としてはこの世界でも生きていくのが難しいという事ですね」
「…ああ、そうやね」
さて、どうしたもんかね。
「さて、俺達について大体の事情を理解した上で聞きますが、俺達はこれからどうなるんでしょう?故意で有った訳ではありませんが不法入国してしまったわけで」
「その事やけどな。次元漂流者なら元の世界に送り届けてあげる事も可能や。ただ…パラレルワールドとなると…」
「送り届けられても俺達に頼る伝は無いってわけですね」
この世界の技術でも帰れる手段がない。
それを確認して俺はソラ達に念話を送る。
【どうする?地球には帰れるらしいけどそこは俺達が居た地球ではない。と言うことは地球に戻っても生活する術が無い。最悪孤児院ってなるね】
【ママ達は?】
【母さんは恐らくテロで亡くなってる。士郎さんや桃子さんは居るだろうけど…別人だよ】
【そっか】
【アオはどうしたら良いと思っているの?】
ソラが問いかける。
【様子を伺うにどうやら魔導師の就業年齢は低いらしいからこの世界で魔法を生かせば生活する事は出来そうだ】
【帰ることは諦めるの?】
フェイトが少し声のトーンを落として聞いてくる。
そんな事は出来ない。
久遠やアルフの問題もある。
一応久遠は魔力を自己生成出来るから、久遠から分けてもらえば最悪アルフが干からびる事は無いだろうが…
二人が暴走しなければいいんだけどね…
【いや、そんなことは無い。俺だって帰りたい、そうするにも地球に居るよりはこの世界に居る方が情報が得られそうだ】
そう言った俺の言葉に3人は少し考えてから。
【アオに任せる】
【わたしも】
【私はどうしたら良いか分らないから。アオが決めて】
ソラ、なのは、フェイトがそれぞれ返答した。
【そっか。わかった】
念話での打ち合わせを終了させてはやてさんに話しかける。
「出来ればで良いんですが」
「何や?」
「この世界に戸籍なんて物が有るかどうかは分からないんですが、そういった物を用意して頂ける事は可能ですか?」
「戸籍…ね。まあ、私もそこそこのコネがある。可能と言えば可能や」
「そうですか。ならそれを用意してもらって、何処か就職斡旋してもらえる事も?」
「職業の種類にもよるが可能や。でもそれってこの世界で生活する言う事なんか?」
「ええ。お願いしても良いですか?」
少し考えたあとはやてさんが了承の言葉を発した。
「了解や。身元引受人は私がなるわ」
「はやて!?」
「はやてちゃん!?」
「なのはちゃんフェイトちゃんちょっと落ち着き。何故地球に戻さへんのとか思っているかも知れへんけど、言うて見たらその地球かてあの子達からしてみたら別世界や、そんな所に無一文で送り届けたかて孤児院の世話になれへんかったら野垂れ死にやよ?」
「それは…そう、だね」
「…うん」
「取り合えず、保護と言った形で一時的に六課であずかるよ」
それはありがたい。ここに居れば帰還の可能性がぐっと上がるだろう。
しかし…それ以上に原作メンバーに関わるとどんなイレギュラーが起こるかわかったものではない。
そんな事を考えていると。
【アオ】
【ソラ?】
【また、難しい事を考えてる?】
【まあね、未来は決まってはいないとはよく言うけれど、もし決まった形の筋書きが存在するなら?この世界に関わるはずの無かった俺達というイレギュラーが混在した事でその調和を乱してしまうんじゃないかと】
【それでトリステインみたいに成ってしまうんじゃないかって?】
【まあ…ね】
【ねえ、アオ。そろそろ私達もちゃんとそこで生きているって自覚してもいい頃だと思う。例えどんな世界へと渡ったとしても】
【ソラ?】
【私達が関わることで変化したとしても、それを受け入れて責任を持って生きていかないと…じゃないといつまでたっても私達はそこに居て、でも生きていない存在になってしまう】
【そう…かな】
【そう】
【そうかもね、でも俺にはまだ何が最善か分らないよ。…でも、ありがとう。ソラ】
「ソラ、なのは。フェイトはそれでいい?」
「いいと思う。先ずは生活できなければ何も出来ないし」
「わたしは良くわかんないからお兄ちゃんに任せる」
「ねえ、さっきからアオ君の事お兄ちゃんって言ってるけど、それは?」
なのはが過去の自分とも言うべき存在が俺のことをそう呼んでいるのに疑問を感じたようだ。
「にゃ?お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ?」
「いや、そうではなくて」
「家が隣同士なんです、赤ちゃんの頃からたびたび家に預けられていたせいかいつの間にか定着しちゃって」
「そ、そうなんだ」
なんか複雑そうな表情を浮かべるなのはさん。
その後この機動六課の隊舎に一時保護という名目で部屋を貰った。
貰った…んだけど…
「なんで大部屋!?しかも全員一緒!?」
「私がはやてさんに頼んだ」
「ま、まあ百歩譲って全員一緒は別に良いとしよう。だが何故ベッドがキングサイズのダブルベッドが一つしか置いて無いんだ!?」
「良くわからないけれど他の大部屋のベッドも相部屋なのに一つしか無いらしいよ?」
なんと…
「うわー、おっきーねーフェイトちゃん」
「うん」
なのははそう言うとベッドにダイブ。その上でポンポン跳ねている。
「なら新しくベッドをいれ…」
「そんなの買うお金ないよ」
「…そうでした」
「それに私達は大丈夫かもしれないけどなのはとフェイトは…ね」
「そうだな。まだ9歳だもんな」
「そうだよ」
嬉しそうにベッドで遊んでいるけど、それ以上に不安もあるだろう。
一緒に居る事でその不安を和らげられるならば…まあ、いいか。
後書き
アオの原作知識はA’sまでです。
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