魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第二十話 東馬の過去、ミサキの前世
「……え?」
その名前を聞いた瞬間、思考が停止してしまった。
今、目の前の人は何と言った?東馬?
(もしかして……ミサキさんも、転生者……?)
でも、それを確かめる手段はない。いや、手段ならある。でも、それは直接聞くしかない。
そして、それは同時に私も転生者だと分かってしまうという事。
この人の事だから他言とかはしないと思う。でも、やっぱり躊躇われる。
それはだって……騙していたんだって言われているような物だから。
「み、ミサキさん……?全が、どうかしたんですか……?」
私は努めて普通な感じでミサキさんに話しかける。
「ん、いや……知っている人のやっている事に随分と似た行動をしているからな。ちょっと……昔を思い出していたんだ」
昔って……もしかして、前世での知り合い?
でも、私の知っている範囲ではミサキさんのような感じの人と知り合いだった記憶はない。
という事は、前世で全が私の前から消えた後に出来た知り合いという事になる。
でも……銃や刀とか、そんな人殺しに使われる物を扱う時……。
「あの……」
私は意を決して、聞く事にした。
「ミサキさんには、その……前世の記憶とかあるんですか?」
どんな顔をされるのだろう、私はミサキさんの顔を見る。
「うん?あるぞ」
しかし、その返事はあっけらかんとしており、表情も変わらなかった。
「……え?そんな簡単に認めるんですか?」
「認めるも何も、事実だしな。それで?そんな質問をするって事は君にも?」
「はい……あの、この事は!」
「大丈夫だ、こんな突拍子もない話。誰も信じはしないさ」
た、確かにそうだろうけど……あっけらかんとしすぎじゃないのかな?
「そうか……私以外にもいるとは聞いていたが……まさか、君だったとはな」
「は、はい……あ、あの、それで全の事を東馬って呼んでましたけど……」
「ああ、名前は上月東馬。私達の仲間さ」
「っ……」
ミサキさんの口から出てきた名前は私に「ああ、やっぱり……」という納得させる物だった。
なぜならば、目の前にいる全はその東馬本人なのだから。
でも……多分、この人は私の知らない東馬を知っている。だから、私は知りたくなった。
「あの……私、前世では東馬と知り合い、いや幼馴染だったんです」
「……君が、か?」
「はい。それで、その……小学校四年……今くらいの時に東馬は突然いなくなったんですけど……どこで、何をしていたんですか?」
「……聞いたら、きっと後悔すると思うが?」
「後悔はしません。だって、私が傷付けたのかもしれないんですから」
あの時、私は東馬の事を忘れてしまっていた。そのせいで、東馬は私の前からいなくなってしまったのかもしれないから。
「そうか……わかった。私は東馬の事を知ったのは、ある事件があって日本に帰国した時だったんだが……」
「え?外国にいたんですか?」
「ああ、それで……母が死んだと連絡を受けてな。それでその葬式で東馬と出会ったんだ」
葬式であったんだ。でもミサキさんのお母さんと東馬ってどんな関係だったんだろ?
「東馬は所謂お母さんの弟子でな。それで母なんだが……暗殺者をしていた」
「……え?あん…………さつしゃ……?」
その言葉を聴いて私は声が出なかった。
それはつまり……東馬自身も暗殺者だったという事……。
「……聞いて、後悔したか?」
「……いえ、続けて後悔しません」
正直、後悔はしている……と、思う。でも、それでも私は聞かないといけない。東馬の事を。
「最初にあった時、東馬の目には光が、なかった。母さんの仲間に東馬の事を聞いてみたら同じ事を言われた……「今の状態は、ボスが連れてきた頃によく似ている、というか同じだ」ってね」
「連れてこられた時……?」
「何でも、十二月の寒空に倒れている所を母さんが拾ってきたらしくてな。その時の状態はひどかったらしい。体のあちこちに裂傷、火傷、あげくの果てには右腕の骨は罅だらけ。正直、生きているのは奇跡だと言われていた」
「そ、そんなにひどい怪我を……」
聞いて、想像したくなかった。そこまでひどい怪我をしていたんだ。
でも、おかしい。東馬の両親はそんな虐待みたいな事する人じゃなかった。むしろ、物凄く溺愛してた。
「そんな怪我を負わせた連中なんだが……普通に母さんがいってフルボッコにしたって言ってたから安心していいよ」
「そ、そうなんですか……」
フルボッコって……嫌な予感しかしないんですけど。
「まあ、それからは……酷かったらしくてね。誰とも関わらない、食事も取らない、睡眠も取らないはで……母さんが頑張って介護してから、少しずつ感情を出すようになったらしい」
「そうなんですか……」
私はほっとした。
「だけど……そんな幸せは続かなかった」
「え?「東馬の前で……母さんが死んだんだ」っ!?」
口を思わず塞いでしまう。そんな事が……。
「東馬の最初の任務で、へまをやらかしたらしい。それで、撃たれそうになった東馬を」
「ミサキさんのお母さんが、庇った……」
「…………(コクッ)」
小さく、首を縦に振った。
「私は恨んだよ。「お前がへまをしなければ、母さんは死なずに済んだっ!」ってね……そして、東馬は私からの恨みの言葉に対して一言も反論もしなかった」
「自分が受けるべき言葉だと思ったから……」
「ああ、母から電話で聞いていた東馬の人となりを思い出していればわかる事だったんだ」
そう、全は……東馬は、自分が悪いと分かっている時には何も言わない。
それは自分が受けるべき罰だという事を理解しているから。
でも、あの年でそれは常軌を逸していたから他の人は畏怖していた。
「そしてそれからというもの……東馬はより一層、訓練に没頭するようになった。私が誘拐された際にも東馬は助けにきてくれた「師匠の娘さんだから」というたったそれだけの理由だけで」
「やっぱり変わってないんですね……助ける理由が一つだけでもあれば、どれだけ罵倒されようが必ず助ける……ホント、変わってない」
「ああ。それからは私も気に掛けるようになって……あの事件が起こった」
「あの事件って?」
「君も知っているだろう?君が直接関わっており……君と東馬が死んでしまった事件なんだから」
「っ!?」
そっか、そこからあの事件に繋がるんだ……。
「ま、私が知っているのはこの位。その後は普通に暮らして、天寿を全うして……この世界に転生を果たして、今に至るって訳さ」
「そうなんですか……」
私はベッドの上で眠っている全を見る。
「私は東馬の秘密を知っている……」
「えっ?」
ミサキさんは突然、そう言った。
「それは、君が東馬の事を忘れてしまった事にも関係している」
「っ、教えてください!何なんですか、それって!?」
「……教える事は出来ない。私が教えても意味はないからな。大丈夫だ、信じてさえいれば、東馬の方から教えてもらえるよ」
「ミサキさん……はい、待ちます」
絶対に、話してくれるよね?全……?
私とミサキさんは、あまり長居するのは失礼だと思った為、全の家を後にした。
SIDE OUT
自身の体の深奥にて、全は自身に宿る神、真耶と話をしていた。
「全、あまり心配させるな。危うく運命を操作しそうになったぞ」
「んな事で簡単に運命を書き換えようとするなよ……」
真耶にそんな呆れた言葉をかける全。
「全、私はお前が心配なんだ。お前の身に何かがあったらと思うと……」
「大丈夫だ。お前だって俺の全てを見てきたんだから分かるだろ?」
笑顔でそう言う全。
しかし、それでも真耶は心配でならなかった。
それは神・真耶としてではない、一個人としての心配だった。
「うん、あれ……?」
全は、いつの間にか起きていた。
「いつもは、もっと話をしていた筈なのに……」
そこまで言って気づいた。もう、自分は真耶に対して負の感情は持っていない。
彼女の行動は全て全の事を思っての事だったと知っているから。
最初に記憶を奪ったのだって全の事を思っての事。この世界に来てからの事だって一刻も早く力を蓄えて全の力になる為。
苦渋の決断だったのだろうが、それでも真耶はやった。
全ては、全の為に。
「感謝しても、したりないよな……」
全はこれから、真耶に対する態度を変えてみようかと考えた。
「痛っ……」
ベッドに手をかけると全の手に痛みが走る。
手のひらを見てみると、そこはひどく焼け爛れていた。
「ああ、やっぱりこうなってたか……」
何日かは包帯生活が続くな、とそんな事を考えながら全はベッドから起き上がりこれからどうしようかと思案するのだった。
後書き
えぇっと……これから他の四人の方々の記憶を戻そうと思っているのですが……それが終わった後、ちょっと凄い展開になるので、皆さんに報告しておこうかと思います。
多分、皆さんの中で賛否両論あるかと思いますが、それでもやらないとちょっとね……あの屑宮君が消えてくれないので……。
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