魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第十九話 もう一人のイレギュラー
るいSIDE
「全!全、大丈夫!?」
私は観戦室から飛び出して倒れた全に駆け寄る。
全の顔には明らかに疲労の色が見えて、その手は酷く焼け爛れている。
恐らくというか見たまんまで火傷が酷いのだろう。
だとしたら、今この手に触れるのはいけない。
「シン、全の容態は?」
『この場では応急手当位しか出来ません。家に帰ればきちんとした治療用の道具などはありますが……』
「じゃあ、私がするから」
そう言って私は治癒の魔法を全の体に当てる。
でも、私の治癒魔法の腕はお世辞にもいいとは言えない。
せめて、私よりもいい人……シャマルさんとかいればいいんだけど。多分、無理よね。シャマルさん、結構神楽院の事、嫌ってたし。
まあ、それも神楽院の思惑通りなんだろうけど。
「聖!大丈夫?」
フェイトやアリシア、はやては聖に駆け寄る。
「………………」
だけど、なぜかなのはだけは訓練室に入って全の姿を見てからその場から動かない。
でも、すぐに首を振って聖に駆け寄る。
「るい。橘は、大丈夫か?」
クロノが気づいたように駆けつける。
「クロノ。あんた……」
「彼には感謝しているんだ。僕は気づかなかった。聖が犯そうとした愚考を。それを止めてくれた橘に、僕は感謝しているんだ」
「クロノ……そうね、私も最初は気づかなかったんだし」
なのは達はまだ、気づいていないのかもしれない。あのまま全が避けていれば私達はこうやって普通にはいられないのかもしれなかった事を。
「騒がしいよ。どうしたって言うんだい?」
と、訓練室に声が響き渡る。
声の聞こえた方を見る。
入り口にいたのは、赤色の瞳に青色の髪をポニーテールにしている美少女だ。もう一回言おうと思う。美少女だ。私も結構綺麗な方だとは思うけど、彼女の方が綺麗だと思ってしまう。
「あ、ミサキ執務官!もう来られたんですか?」
「ミサキ執務官?」
聞いた事のない名前に首を傾げる。
「ああ、僕に次ぐ記録を持っている執務官だ。僕よりも幼い、若干十歳で執務官の資格を取った人だ」
「じゅ、十歳で!?」
十歳って、私達と同い年じゃない!?そんな若さで……。
「それで?どうしたんだい……というか、結構壊れてるね。誰がしたんだい?」
「あ、ああ……えっと……」
クロノはしどろもどろになってしまう。
多分だけど、結構聖の事を良い人材だと言っていたけれど、これをした張本人が聖だから言おうにも言えないって感じなんだろう。
「ああ、大体は察した。さてと……そちらの男子は?」
「ああ、彼は橘全。えっと……」
「ふぅむ……いや、説明は不要だ。彼が治めたという事だろう」
そう言ってミサキ執務官が全に近寄ってくる。
「む……?」
と、全の顔を見てミサキ執務官は何か考え込む。
「あ、あの……どうか、したんですか?」
「ん?いや、何でもない。さて、彼の治癒が最優先事項みたいだね。あちらの少年は彼女達が介護しているみたいだし」
そう言うと、ミサキ執務官は全の体に手を当てる。
「ふむ……擦過傷が数箇所、火傷が重いのは手の平、足に軽いのが数箇所。後は……足の筋肉が結構張ってるな。無理に行使し過ぎたのか?」
「っ!?わ、わかるんですか!?」
「ああ。私は救命師というレアスキルを持っていてね。触れた相手の怪我の具合を瞬時に理解、そしてどのように対処すればいいのかが瞬時に分かるという物でね」
そ、そんなレアスキルがあったんだ。知らなかった……。
「いや、それも仕方ないさ。このようなレアスキルは本当にレアなんでね。理由としては戦闘向きではないから、徹底的に隠してしまう人が大概なのさ」
あ、あれ?私、声に出してたっけ?
「声に出してはいないよ」
「って、また!?」
「ミサキ執務官は人の表情を見るだけで相手がどのような事を考えているかが手に取るようにわかるんだ。ミサキ執務官が執務官の資格を取れたのはこの能力にある所が大きい、戦闘面でも優秀だけれどね」
クロノの言葉に私はとても驚愕する。う、迂闊な事を考えられない……!
「とりあえず、足のマッサージから入ろう。君はそのまま治癒魔法を当ててくれ、無いよりはマシだ」
「わ、わかりました。あ、あの聖の方は……?」
「ああ、あっちは見ただけでもわかる。重症なのはこちらの方だしね。あっちはここ付きの医師にでも任せればいいだろう。さて、彼を家に連れて行こう。今出来るのは応急手当位だしね、家に連れて行けばもっときちんとした治療が出来るだろうしね」
そう言ったので私もついていく、というと快く承諾してくれた。
家に関してはシンに教えてもらったので難なく家に到着した。
全の部屋に入り、必要な処置が終わる。
「これでよし……手の火傷に関してはこの軟膏を塗り続ければいいと思うよ。この軟膏は火傷にとても効く薬でね。シンとやら、頼むよ」
『ああ、わかったよ』
「さて、これで彼はいいとして……にしても、この部屋の内装……これは、まるで……」
部屋の内装を見ながらミサキさん(ミサキ執務官と呼んでいたら「ミサキでいいよ」って言ってくれたから)がそう呟く。
「どうかしたんですか?」
「……いや、何でもない。それよりも……」
ミサキさんはそう言うと、部屋を物色し始めた。
「ちょちょちょ!?何してるんですか!?」
「いや、恐らくだけど、多分ここら辺りに……やっぱりな」
ミサキさんはベッドの枕元……そこにある引き出しを開ける。そこには……
「え、これって……銃?」
銃だけではない。小さな刀……多分、小太刀?それとコンバットナイフまで……。
「これらを枕元に置いておく……注意深い暗殺者によく見られる傾向……それにあの足の筋肉の……」
「み、ミサキさん……?」
「やっぱり、そうなのか……君が、そうなのか……?」
その後に言った言葉に、私は驚いて声を上げる事も出来なかった。
「東馬……」
後書き
以前にも言っていた通り、彼女の登場です。
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