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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第十八話 守る、という心

全は聖と対面するようにシンを構える。

「シン、今の状態であれを防げると思うか?」

『無理に決まっているでしょう!?私に武器以外の能力などありません!』

シンにはデバイスとしての武器という役割しかない。他にも全の身体チェックなどもしているが、魔法を物理的にどうこうできる程の力はないのだ。

「だったら……誰かの能力を使えば?」

『ま、まさか……彼の能力の試運転をこんな状況の中行う気ですか!?無茶苦茶です!』

シンは全の言いたい事がわかっているのかそれを咎める。

「シン、わかってくれ。彼らの能力の中でも一番攻撃力のある力なんだ。あれは既に魔力を充填させてるし、「グレン・レーダス」の力は通用しない」

グレン・レーダス。能力名、愚者の世界。それは魔力の使用を完全封殺するという物。

しかし、これは発動前の状態に限られており、既に発動してしまった魔法には効果は適応されない。

だからこそ、この中でも今、一番攻撃力のある人物の能力を使う他ないのだ。

『わ、わかりました……し、しかしそれなら今の内に!?』

「今攻撃をして溜めている魔力が暴発してみろ。アースラ自体にダメージが及ぶ可能性だってある」

全はそう言ってシンを嗜める。

全の言うとおり、聖の溜めている魔力はそれ程なのだ。

「グダグダ言っている暇はない、行くぞ……!」

『ああ、もう!本当、マイスターはこれと決めたら譲りませんね!わかりました、私も頑張りましょう!』

ありがとうなシン、と心の中で自身のデバイスに感謝する。

「これで、終わりだ……踏み台の分際で……僕に、指図するなぁ!!エクス、カリバーァァァァァァァァ!!!!!!!」

聖が自身の最強と自負している魔法「エクスカリバー」が全に向けて放たれた。

「俺が…………守る、守ってみせるっ!」

『ダウンロード、完了!反映!』

シンのそんな声と共に全の隣に飄々とした感じを出している青年の姿がホログラムとして出てくる。

彼の名前はカナタ・エイジ。「空戦魔導士候補生の教官」という作品の主人公であり、作中において『黒の剣聖(クロノス)』という二つ名で呼ばれている青年である。

カナタは少しだけ笑みを浮かべると、全と重なるように消えていく。

そして、全の持つシンが形状を変化させていく。使用している能力に応じてシンはその形状を変化させるのだ。

今回使用されている人物はカナタなので、彼の愛剣である漆黒の魔砲剣「グラディウス」に変化する。

その間にも聖の放ったエクスカリバーが全に迫る。

全はゆっくりとグラディウスに変化したシンを振り上げる。

「力を貸してくれ――――――カナタ・エイジ!!」

魔砲剣戦技――――絶空剣

振り下ろされる全のグラディウス。そこから真空の斬撃がエクスカリバーとぶつかり合う。

「くぅぅぅぅぅ……!!」

全の考えた理論はこうだ。普通に破ったのであれば、そこかしこに被害が及ぶ。

ならば、被害が出ないようにするにはどうすればいいか。簡単な事だ、まったく同じ質量の正反対の位相の魔力を出して相殺すればいいだけ。

しかし、全の技量を以ってしてもそれはかなり過酷な物だった。

「ぐ、ぐぉ……!」

全の顔に苦悶の表情が表れ始める。

そんな光景を観戦室からるいは心配そうに見つめる。

「全……なんで、避けなかったの?」

るいの疑問に答える人物はここに誰もいなかった。

「聖く~ん、橘君なんかやっつけろ~!」

「聖~!負けるな~!」

「聖、頑張って!」

「聖君、気張りや~!」

なのは達は聖へ応援を送っている。

そんな中、るいは何で避けなかったのかを考える。

(最初全は避ける気だった。それは動いたからわかる。でも、すぐに踏み止まって迎撃した。何か理由がある筈……そういえば、全の後姿がはっきりと見える……全は目の前からの攻撃に対して迎撃している……)

そこまで考えてるいははっ、と気づいた。

(もしかして……全、私達の為に動かなかったの?多分、聖は意識は戻ってない、さっき聖の目を見たけど、焦点が合ってなかった……あのまま、避けてたらあの魔力砲撃がそのままここに直撃する……!)

るいはそこまで考えて、窓際で応援しているなのは達の前まで駆け寄る。

「ちょっと、どいて!」

「きゃ!?ど、どうしたのるいちゃん?」

「お願い、ファフニール!エアロシールド!」

『エアロシールド!』

私のデバイス「ファフニール」に頼んで観戦室の前にエアロシールドを張る。

「る、るいちゃん?」

「るい?何をして……」

「全っ!!観戦室は私が守るから……そこから突破口を見つけるのは難しいけど……でも、頑張って!!」

全の背中に向かって、るいは叫んだ。

そして

「ふっ……結構な無理難題を……だけど、やるしかないかっ」

全はそう言うと振り切ったシンの鍔元にあるシリンダーを動かす。

すると、ガシャコンッという音が四回、鳴る。鳴る度に、全の魔力が増大していく。

これはカートリッジシステムと同じような物で術者の魔力を爆発的に高める。

その高めた魔力を剣の切っ先に集中させる。

「悪ぃけど……俺は、負ける訳にはいかないでなっ。俺の全てにそう、誓ったんだ!!」

そう叫び、自らの強い思いを込めて鍔にある引き金を絞る。

魔砲剣戦技―――収束魔砲(ストライクブラスター)

収束された砲撃が聖の放つエクスカリバーを貫いていく。

貫かれていくエクスカリバーは四方八方に飛び散り、訓練室に大きな傷跡を作っていく。

「くっ!?な、なんて力……そうか、橘はこれを恐れて……!?」

クロノはそこまで言って気づいた。あのまま全が避けていればこの威力の数倍の威力の砲撃がこの観戦室を襲うという事を。

そして、貫いていく砲撃がそのまま……聖に直撃する。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!????」

砲撃に飲み込まれ、吹っ飛んでいく聖。

そして、倒れ伏した彼は起き上がる事はなかった。

「こ、今度こそ、終わったか……?」

『完全な気絶を確認しました。それよりもっ、マイスター急いで手当てを!』

「手当て……?」

虚ろな表情を浮かべたまま、全はシンに問いかける。

『自身の手のひらを見てください!火傷している場所しかないんですよ!?』

全はゆっくりと左手の平を見る。そこは確かに、赤く焼け爛れていた。

「はは、当分は……何も、出来ないな……」

全はそう呟いたまま、うつ伏せに倒れた。

『マイスター、マイスター!?』

全を心配するシンの声と

「……ん!し……し…て!全!」

大声で叫びながら近づいてくるるいの存在を感じ取りながら、全はゆっくりと意識を手放した。 
 

 
後書き
今回、最後に全君が倒れましたが単なる魔力不足です。

まあ、収束魔砲(ストライクブラスター)を撃ったんですから、仕方がないんですけどね。他にも絶空剣も使ってますし。体への負担が半端ないですから。 
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