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カラミティ=ジェーン

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3部分:第三章


第三章

「結構な人数が倒れててな」
「死んだ奴もいるんだな」
「あの病気だけはどうしようもないな」
「全くだよ」
 牛痘が西部にまで来るかというとだ。それは難しかった。西部は無法地帯だ。そこに牛痘を届けられる人間も少ないのである。
 それがわかっているからだ。彼等も困った顔で話すのだった。
「小さな子供だっているだろうしな」
「ああいう病気は子供から死ぬからな」
「嫌な話だぜ」
「本当にな」
 彼等はこんな話をしていた。その彼等のところにだ。
 ジェーンは行ってだ。そのうえで彼等にこう声をかけたのである。
「いいかしら」
「あっ、ジェーンかよ」
「カラミティ=ジェーンじゃないか」
 男達は彼女の顔を見てだ。すぐにこの名前を出した。
「今日はこの店に来ていたのかよ」
「何だ?また飲んでるのか?」
「今までは飲んでたわ」
 時間を区切った言葉だった。
「今まではね」
「じゃあこれからは違うか」
「そう言うんだな」
「そうよ。その話だけれど」
 彼等に対してだ。真剣な顔で尋ねるのだった。そうしてだ。 
 ジェーンはその村に向かった。馬を飛ばしてだ。そして村に着くとだ。
 すぐにだ。村人達に怒鳴るのだった。
「ちょっと、何処にいるんだい!」
「おいおい、いきなり何だ?」
「カラミティ=ジェーンじゃないか」
「まさかこの村にあんたを怒らせた奴がいるのか?」
「そうなのか?」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ。ジェーンは村人達に言うのだった。小さな村だった。家々は粗末なものばかりだ。荒野の中にぽつんとある村だ。
 その村に入ってだ。ジェーンは言うのだった。
「とぎきりの奴がいるのよ」
「じゃあそれは誰なんだい?」
「この村にいるのなら」
「誰なんだよ」
「とびきりの悪い奴でね」
 笑っていなかった。むしろ目を怒らせていた。
 その目でだ。彼女は問うのだった。
「そいつをどうにかする為にここに来たのよ」
「で、そいつは誰なんだい?」
「それは」
「天然痘よ」
 まさにだ。それが今の彼女の相手だというのである。
「ここでかなりの人が倒れたそうね」
「それで困ってるんだけれどな」
「実際にな」
 村人達はジェーンの今の言葉に戸惑いながらだった。こう彼女に答えた。
「俺達はまだ元気だけれどな」
「一体どうなるやら」
「もう結構倒れてるしな」
「子供だってな」
「手伝うわ」
 ジェーンはその彼等にすぐに告げた。
「今からね」
「手伝う!?あんたがかい!?」
「カラミティ=ジェーンがかい」
「病気の介抱をするって」
「嘘だろ」
「あたしは嘘なんて言わないよ」
 ジェーンは驚く彼等にこう返した。目の光は相変わらずだ。
「絶対にね」
「じゃあやっぱりか」
「本当にか」
「天然痘で倒れてる奴等の介抱をしてくれるのか」
「そうしてくれるんだな」
「西部には医者は少ないんだよ」
 いるのは無法者ばかりだ。それが西部だ。
 
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