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カラミティ=ジェーン

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4部分:第四章


第四章

「それじゃあ少しでも元気な奴が来るのが当然だろ?」
「しかし相手は天然痘だぜ」
「自分がなったらどうするんだ」
 村人達は今度はこんなことを言う。言うまでもなく天然痘は伝染病だ。だからこそ余計に恐ろしいのである。
「あんたがかかってもいいのかよ」
「そうなっても怖くないのかよ」
「怖い?あたしはそんな言葉は知らないよ」
 ここではだ。まさにカラミティ=ジェーンだった。
「あたしを誰だと思ってるんだい。カラミティ=ジェーンだよ」
「だからか。天然痘もか」
「怖くないっていうんだな」
「そうだよ。じゃあいいね」
 有無を言わさぬ口調だった。かなり強引な。
「倒れてる奴等のところに案内しな」
「あ、ああ。それじゃあな」
「そうさせてもらうからな」
 こうしてだった。ジェーンはだ。
 天然痘の患者達のところに向かいだ。そうしてだった。
 寝食を忘れて看病をするのだった。そしてもう一つのことも忘れなかった。
「こんなことで寝込むんじゃないよ!」
 いつもの悪態も忘れなかった。
「天然痘位でね!」
「天然痘位ってな」
「死ぬ病気だぞ」
「よくそんなことが言えるな」
 周りはそんなジェーンの言葉に引く。しかしだ。
 ジェーンはだ。看病を続けながらだ。こう返すのだった。
「ここは西部だよ」
「西部ならどうだってんだよ」
「天然痘で死んだら駄目だってのかよ」
「西部で死ぬのは銃で死ぬんだよ」
 まさにだ。アウトローの世界に生きる彼女の言葉だった。
「それが西部だろ?天然痘で死ぬ世界じゃないんだよ」
「死ぬのは鉛の弾で死ねってか」
「そういうことか」
「そうだよ。死ぬのはあたしが許さないよ」
 今の言葉がだ。ジェーンの言いたいことの核だった。
「絶対にね。いいね」
「ああ、わかったよ」
「じゃあ俺達もな」
「手伝うぜ」
「いいかい、寝る暇はないよ」
 ジェーンは協力を申し出る男達にも言う。
「そして飯はね。適当だよ」
「パンでも干し肉でもか」
「適当に食えってか」
「食いたくなかったら食わなくていいよ」
 こんなことを言うのもだ。ジェーンならではだった。
「今は倒れてる奴等を一人でも多く助けるんだよ」
「わかったぜ。じゃあな」
「そうするか」
 こうしてだ。彼等もジェーンと共に患者達の看病をするのだった。
 そしてだ。患者の中にはだ。
 子供達もいた。彼等もだ。病に臥せっていた。
 ジェーンはその彼等も看病する。その中でだ。
 こんなことをだ。苦い口で言うのだった。
「子供はね」
「絶対に死なせたくないっていうのか?」
「まさかあんたがそう言うのかよ」
「カラミティ=ジェーンが」
「死ぬのは歳取ってからでいいんだよ」
 子供の看病をしてだ。毛布を替えながらの言葉だった。
「それからでいいんだよ」
「じゃあ子供が死ぬのはかよ」
「絶対に嫌か」
「そう言うんだな」
「そうだよ。だから子供は絶対にだよ」
 そのだ。やつれが見られてきた顔での言葉だ。
 
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