カラミティ=ジェーン
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2部分:第二章
第二章
「今もあれだろ?いい奴がいるだろ」
「ああ、あいつとか」
「あいつと付き合ってだな」
「ビルとか」
男の名前が出て来た。
「ワイルド=ビル=ヒコックな」
「あの男前と付き合ってるのかよ」
「まあお似合いだよな」
二人の仲はだ。彼等の中では肯定されていた。
「確かにとんでもなく気の強い女さ」
「銃も撃てば酒も煙草もやって博打もする」
今もカウンターでバーボンをやり煙草を手にしている。それを見れば誰も否定できない。
「そんな女だけれどな」
「けれど女は女だしな」
「それなら男と付き合ってもな」
「いいしな」
それはいいというのだった。そしてだ。
彼等はだ。そのジェーンを見ながらさらに話すのだった。
「外見はあれでもな」
「中身は確かに女さ」
「いい女だよ」
「性格はな」
「それじゃあビルと付き合ってもな」
「いいってことさ」
そんな話をする彼等だった。そしてだ。
当のジェーンだだ。カウンターでだ。マスターにこう言うのだった。
「バーボンだけれどね」
低い声だ。女にしてはやけにだ。
しかも砂塵で荒れた感じがある。その彼女が言うのだ。
「もう一杯貰えるかしら」
「バーボンだね」
「ええ、もう一杯ね」
煙草を片手にまた言った。
「今日は機嫌がいいから。もう一杯ね」
「機嫌がいいのかい」
「いいわ」
「博打に勝ったのかい?」
マスターは笑いながら彼女にこう問うた。
「それでかい?」
「博打じゃないわ」
「違うのかい」
「今日はこれからデートなのよ」
くすりと笑ってだ。そのうえでの言葉だった。
「それでなのよ」
「デートねえ」
「少し行って来るわ」
「ビルとかい?」
マスターは笑顔のままでジェーンに言った。
「あいつとは上手くいってるんだね」
「詮索かしら」
「だとしたらどうするんだい?」
「別に何も」
不敵に笑ってみせてだ。ジェーンはマスターに話すのだった。
「何もないわ」
「ないのかい」
「それであれこれ行ったりはしないわ。それじゃあね」
「ああ、楽しんで来いよ」
「そうさせてもらうわ」
こんなやり取りをしてだった。ジェーンはバーを後にするのだった。彼女はビルと二人でいることを楽しんでいた。しかしだ。その彼女の耳にだ。
不意にだ。こんな話が入ったのだった。
「あの村やばいらしいな」
「ああ、天然痘な」
「それでえらいことになってるんだって?」
「そうらしいな」
こんな話がだ。バーで話されていたのだ。ジェーンはこの日もカウンターに座ってバーボンを飲みながらだ。その話を聞いていた。
男達はだ。そのジェーンに気付かずにテーブルを囲んでポーカーをやりながら話をしている。そこからもバーボンの香りが漂っている。
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