戦国異伝
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第二百十話 夜の戦その四
「織田は必ず仕掛けてきます」
「夜にか」
「考えられることはです」
ここで片倉は己の読みを言った。
「まずは正面から渡るふりをして」
「そしてじゃな」
「その間に騎馬隊に密かに遠くから川を渡らせ」
「そしてじゃな」
「横から攻めてです」
そうしてというのだ。
「我等を崩し一気に川を渡るかと」
「織田はそうしたことをよくやるからのう」
「ですから殿がです」
その政宗自身がというのだ。
「鉄砲騎馬隊を率いられ」
「そしてじゃな」
「こちらから仕掛けるおつもりなのです」
「やられる前にじゃな」
「やれということです」
こう成実に話すのだった。
「ですから」
「ふむ。ではな」
「ここはです」
「我等二人がここで敵を防ぎ」
「川を渡らせず」
「そして殿がです」
その政宗がというのだ。
「川を渡られ」
「来るな」
「そうかと、そして織田の兵は十万です」
ここでだ、片倉は織田のその兵の数についても述べた。
「十万の兵ならばです」
「警戒すればじゃな」
「防げます」
彼等の率いる軍勢が川辺で守っていればというのだ。
「それで」
「十万でもじゃな」
「防げます」
「そうじゃな、しかし」
「はい、十万以上になりますと」
それ以上の数になると、というのだ。
「難しいです」
「そうなるな」
「織田は十万の兵をここに向け」
そして、というのだ。
「残り十万の兵を関東に置いていますが」
「その十万も来るとな」
「到底です」
それこそ、というのだ。
「敵いませぬ」
「そうじゃな、二十万ともなるとな」
「十万を超えれば」
二十万でなくとも、というのだ。
「それだけ多くなれば」
「勝てぬな」
「とても」
「そういうことじゃな」
「ですから」
それで、というのだ。
「この十万の相手を倒しましょう」
「そうなるな」
「はい、では」
片倉は成実にこう言いだ、二人で軍の川岸を守ろうとしていた。そうして実際にそこに広く布陣して政宗が動くのを待っていた。
その夜になるとだ、暗闇の中に無数の火が出た、それは織田の陣地に出た。
河の向こう岸のその篝火を見てだ、片倉は目を瞠って言った。
「これは」
「はい、これは」
片倉が応えた。
「十万、いや」
「十五万はおるか」
「既に援軍を呼んでいたのでしょうか」
「そうやも知れぬな」
成実も目を瞠ったまま片倉に答えた。
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