ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~
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第1章 卒業そして、前線へ
私たち第12同盟軍基礎訓練所第75期生の2等兵たちは宇宙歴789年3月に
「同盟軍一般志願兵訓練課程」を修了した。
この年、私は16歳であった。
これをもって我々は全員が一律に1等兵に昇進し前線へ送り出されることとなる。
同盟軍のみならず軍隊には戦闘に直接従事する戦艦・巡洋艦・駆逐艦・小型戦闘艇等の搭乗員や、地上作戦を行う陸戦部隊員などの「戦闘職種」と補給・衛生・経理などを扱う「後方支援職種」の2種が存在する。
私は迷うことなく「戦闘職種」を選択した。
やはりここまで、ほぼ自力で這い上がってきたのだからやはり自分から前に行ってマシュンゴ軍曹のような歴戦の戦士になりたいと思ったためである。
「戦闘職種」の中でも砲術士や航法士などの戦闘艦艇に乗り込むものから、星系制圧の際に地上作戦を行う隊員や、変わったものではその中から選抜され、敵の艦隊旗艦など指揮艦艇を直接陸戦部隊を持って強襲し、敵の指令力をそぐ部隊など多岐にわたる種類が存在する。
私は白兵戦が得意であること、地上作戦に興味があること、そして亡き父が帝国軍とはいえ、装甲擲弾兵であったこともあり「装甲白兵科」という職種を選んだ。
この「装甲白兵科」というのは簡単に言えば「地上または敵艦艇内でトマホークをふるって敵をなぎ倒す部隊」である。
「装甲白兵科」の兵士は一般歩兵と違い、大型レーザーライフル以上の破壊力を持つ火器でなければ貫通が不可能な「防弾白兵装甲服」という装甲服を着用し、長さ1m弱で、頑丈かつとてつもない殺傷力を持つ戦斧「トマホーク」をメインウェポンとしており、同盟軍ではこの兵科のみで編成された師団は実に175個師団。ゼッフル粒子と呼ばれる指向性爆薬は火器を発砲すると粒子の散布範囲すべてを焼き尽くすものが発明されてから地上戦は銃撃戦のみならず原始的な白兵戦が頻発した。
このため帝国、同盟両国はこの兵科を非常に重んじ攻撃時、守備時いつでもこの部隊を投入できるように地上部隊を編制したのであった。
「同盟軍一般志願兵訓練課程」は全課程2年で
前半1年は軍事基礎を教育するが、後半1年は職種訓練に明け暮れる。
その後半1年の中では私は地上作戦演習や小隊、中隊による部隊作戦行動等を学んだ。また、私はこの時「空挺降下資格」を得た。
というのもこの第12同盟軍基礎訓練所に隣接する
「ハイネセン第1方面軍第12空挺降下学校」で志願するとここで空挺降下訓練が受けることができ、私はここでこの資格を取った。
この金色のパラシュートの両側に羽があしらわれた「空挺降下記章」は陸戦部隊ではある一つの到達点であり、私の目指している「第442特殊強襲揚陸白兵戦連隊 通称:
ローゼンリッター連隊」はこの資格と「レンジャー資格」と「特殊作戦従事資格」の3つが必要であったのだ。
このローゼンリッター連隊とは
「帝国亡命者の子弟のみで編成された強襲揚陸白兵戦専門部隊」である。
この連隊は同盟軍最強の白兵戦部隊と言われていて、銀河帝国軍でも右に出る部隊がいないといわれている部隊である。この部隊についてはまた後々話すこととしたい。
そんなこんなで私は「同盟軍一般志願兵訓練課程」を終え、1週間の休暇ののちに着任地である、「ヘンシェル星系区第91方面軍 カーラ=テーベ2-1衛星駐屯軍第100空挺白兵戦連隊戦闘団」に旅立つこととなっている。
そして私の恩師である、マシュンゴ軍曹は私たちの卒業半年前に曹長に昇進し、ヘンシェル星系区第92方面軍第2白兵戦師団に転属になってしまった。
行く前に曹長は
「同盟軍1最強の白兵戦兵士になってください。そして、私があなたたちに教えたことがあなたたちを守ることを祈ってます。」と言われた。
私の友人である、リスナー・ウィリスは私と同じヘンシェル星系区第91方面軍駐留艦隊第14駆逐艦群の駆逐艦オデッセイの砲術士になった。
彼には白兵戦よりそっちのほうが似合っていた。
最後まで地上戦科にしようか迷っていたみたいだが、
「地上で首がなくなって見つかって死ぬのはダサい。だったら、宇宙の塵になってしまったほうがいい。」
というブラックジョークをこいて砲術士になった。
こうして我々は晴れて、れっきとした「同盟軍兵士」になった。
これから自分たちがとてつもない地獄を見るとも知らずに今は、卒業のウキウキでそれすらをも予測だにしていない。
そして、
私は「装甲白兵科記章」、「空挺降下記章」を胸につけ、1等兵の階級章を襟につけて
「第12同盟軍基礎訓練所」を後にした。
宇宙歴789年3月1日のことである。
あの同盟軍兵士生存率わずかに3.8%と言われた血みどろの「ヘンシェル星系攻防戦」の死神の足音が近づいていた。
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