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ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~

作者:akamine0806
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第2章 戦地赴任

 私は 宇宙歴789年4月10日 
「ヘンシェル星系区第91方面軍 カーラ=テーベ2-1衛星駐屯軍第100空挺白兵戦連隊戦闘団」に着任した。
私は到着直後カーラ=テーベ2-1衛星駐屯軍司令部の司令官オフィスに出頭を命じられた。ここの駐屯軍司令官はケイン・ラッセル准将だった。
彼は45歳の准将で、歴戦の装甲白兵科将校でもあった。彼の経歴について軽く触れておきたいと思う。
彼は私と同様同盟軍一般志願兵訓練課程を経て1等兵に任官し、その後あのローゼンリッターには及ばないものの精鋭中の精鋭で「死神連隊」と呼ばれた「第21即応装甲白兵戦連隊」に所属し幾多もの戦場を駆け抜け、18歳の時に専科下士官学校を経ることなく伍長に任官し1年後の19歳の時に年に先任下士官20名しか選抜されない「下士官選抜士官候補生課程」を経て20歳で同盟軍最年少の少尉になった。その後も激戦地を転戦し、大佐の時に右腕を帝国軍の擲弾装甲兵部隊との交戦で失うも、止血、緊急手術のちに1日後には戦線に復帰、指揮していた連隊の指揮を執り、その戦闘で輝かしい勝利を収めた。
その後、36歳で准将に昇進。この時同時に同盟軍最高勲章の自由戦士勲章を授与された。通常将官に昇進するには「指揮幕僚課程」か「同盟軍第1軍事大学校」を卒業していることが必須とされており、それを経ていない上に、下士官選抜士官候補生出で30代で将官昇進は異例なことであった。
こういう准将のもとにしょっぱなから赴任できたことは私にとって幸運であったといえる。
准将は一兵卒であっても、必ず新着任者には自分で面会することがこの駐屯軍では定常化されていた。
ケイン准将は
「君か! あの2歳年を偽装してさらに空挺資格まで取った噂の新兵くんは!」
とさも親しそうに、歩み寄ってきた。握手をするが、違和感。
すると准将は
「ああこれかね? これは間抜けなことにやっつけたと思っ擲弾装甲兵に後ろから切りつけられてね、油断してしまったのさ あははは」
と思い出話のように自分のことを語る准将。
彼はなかなか豪快な性格で、指揮官としてもとてつもなく豪快な指揮であった。
それから、1時間近く公私いろんな話をした。
その後准将に予定が入ってしまったので、会話は中断したが彼の実戦での話や新兵時代の話を多く聞くことができ、どんな教練よりも面白かったと今でも思っている。
その後、第100空挺白兵戦連隊戦闘団駐屯地に向かった。
外の風景はとても殺風景だった。岩と石と砂だけ。
これに関しては、カーラ=テーベ2-1衛星について話さなくてはいけないだろう。
カーラ=テーベ衛星群の第2星域に属するカーラ=テーベ2-1衛星は衛星としては珍しく大気が存在し、外見は茶色の不毛な土地に見えるが、軍艦の装甲版などに使われる多岐にわたる岩石の原産地で、採掘業務従事者の民間人が約400人滞在しており、最新鋭の機械化された採掘現場から首都星ハイネセンへ向けて毎日のように鉱石が搬出されていた。しかし、ここは帝国軍との境界線であったのでケイン准将指揮下のカーラ=テーベ2-1衛星を中心とした駐屯軍が配備されている。
駐屯軍には第100空挺白兵戦連隊戦闘団を主部隊とした約4000名の地上軍と第122・124巡洋艦群、第223・14駆逐艦群 合計2000隻を主艦隊とした駐留艦隊がこの小さな衛星群を防衛するために配置されている。
私の赴任先である第100空挺白兵戦連隊戦闘団の駐屯地はカーラ=テーベ2-1の3-1B補給基地内にある。もともと、カーラ=テーベ2-1自体が今でこそ最前線だが昔はそこまで前線になかったため地上防御部隊駐屯地が必要なかったので、防御部隊駐屯地がないため、しょうがなく補給基地を駐屯地として使っているのであった。
第100空挺白兵戦連帯戦闘団の指揮官はレスラー・メッケル大佐であった。
彼は帝国亡命者2世で、私のような帝国亡命者子弟に対してもかなり好意的であった。
到着当初はレスラー大佐は不在だったので、副官のジェシカ・ヒューズ少尉に伝言をして、宿舎に向かった。
私以外に3名の1等兵と4名の下士官と2名の中尉が着任していて、そのうちのミッキー・モレッティ1等兵とオスカー・アルント1等兵は訓練同期でそれなりに親しい仲であった。また、ロイ・アーロン予備役中尉は行きの船の中でたまたま朝食を相席で食べてから、親しくなった士官であった。ロイ予備役中尉はハイネセン国立大学の応用物理学科を出た秀才で、大学在学中に予備役将校訓練課程を経て予備役士官になって、ハイネセン首都駐屯防衛軍の情報士官を務めていたが物足りなくなって前線行きを希望したなかなか尊敬できる士官でもあった。
私たちは警備兵に宿舎の棟番号を指定されそこへ向かった。
宿舎は中隊ごとに棟分けされていて私とロイ予備役中尉は第2大隊第3中隊の宿舎に向かうよう言われた。
そして、棟に入ると誰もいないかのように真っ暗で指定された部屋に向かおうとしたとき
「敵襲!敵襲!
ただちに、第2小隊1階のひよこ2匹を調理してやれ!」
という意味不明なアナウンスと同時に目の前に、銀色の見慣れた筒が投げ込まれた。
「フラッシュパン(閃光手榴弾)だ!」
急いで、目と耳を抑えたが抑える前に爆発したのだ!
「バン!」
そのあとの目もくらむような閃光と「キーン」という耳鳴りを覚悟したが、なかなか来ないので目の前を見たら、フラッシュパンは割れていて、中から紙が飛び出していた。それを見ようとした瞬間!
目の前が真っ暗に! 何が起きたのかを瞬時に判断しようとしたが、パニックになり、わからないでいた。そのあと椅子に座らされるのが分かった。
そして、目の前が急に明るくなった。 その時わかったことであったが、私とロイ予備役中尉は袋をかぶせられていたのだった。そのあと私が見たものは
「ロイ中尉!シュナイダー1等兵!
入隊おめでとう!!!」
と書かれた大きな布だった。
そして、その下には100人ほどの筋肉質な男たちが立っていて、一人が私たちに近寄って
「貴君らの入隊を歓迎する!
私はこの中隊の指揮官ケン・モトハシ大尉だよろしく!」
と言って、こののちの私の士官候補生時代の主任教官は図太い手を差し出してきた。
私も筋肉には少しは自信があったもののこの大男には到底かないそうになかった。
その後、歓迎パーティーが始まり朝の3時まで続いた。
その翌朝朝8時の中隊朝礼時に正式に私とロイ予備役中尉はこの第3中隊に配属された。ロイ予備役中尉は中隊幕僚兼中隊機関銃小隊指揮官任命され、私は第1小隊第2分隊に配属された。
ここでの実戦演習は訓練生時代の比ではなかった。
朝起きてから昼までひたすらトレーニングそして、昼から中隊対抗で模擬戦闘訓練に明け暮れた。
第1小隊指揮官であるレナ・アボット准尉は女性ではあるが、上級白兵戦資格を持ち体力検定も男性隊員でも厳しいといわれる特級を保持し続けるとんでもないスーパーマッチョな上官だった。
中隊対抗模擬戦闘訓練では常にトマホークを持ち最前線へ真っ先に攻撃を仕掛けに行くのは第1小隊の任務であった。
あるとき、模擬訓練中の出来事である。
第1小隊は味方中隊が陽動作戦を行い、敵の防御陣の攻撃が味方陽動部隊に集中している隙をついて敵の陣地の奪取を図るのが任務であった時。
敵の防御塹壕まで匍匐前進で前進、接近しあと敵陣まで100メートルというところであった。そのとき彼女は
「第3分隊はライフルないし機関銃を使って側面援護
第1分隊、第2分隊は私についてこい」
といった。これは戦術的にはあまりよろしくないものであった。
というのも、我々の使っているライフルは通常のM11 6.5㎜レーザーライフルではなく擲弾装甲兵の装甲服をいとも簡単にぶち破ることのできるM15 7.5㎜レーザーライフルだった。このライフルは発射音がM11に比べると圧倒的に大きく敵に狙撃されているということにきずかれてしまう可能性が大いにあった。このことから、移動していない側面援護の第3分隊がやられる可能性があるのである。しかし、全員を一発で仕留めることができれば話は別だが。
しかし、彼女は自分の部下に絶対的信頼を置いていた。
部下の誰一人も射撃を外さないということを。
彼女自身元々狙撃手出身で、この第1小隊もいわゆる「特級射手(マークスマン)」の割合は実に7割以上。という射撃優秀小隊であった。
私は、白兵戦も好きであったが射撃も好きであった。しかし、白兵戦のほうに重きを置いていた私としてはいささか、不満でもあったが彼女の部下を絶対的に信頼するというのには感銘を受けたといってもいいだろう。
結果として、私たち第1小隊はその任務を完遂した。
私とリリー・ボールドウィン1等兵が先鋒で最初に敵塹壕に侵入をはかり、私は敵の機関銃射手をトマホークの一撃でドロップアウト(訓練中戦死判定)させ、隣にいたやつも逆胴でやっつけた。
その次に敵の塹壕陣地指揮所に踏み入った。その途中で、何人もの装甲兵がいたが、向かってくるたびに面だったり、抜き胴だったりの流れ技でやっつけた。
敵の塹壕陣地指揮所には敵役の中隊長がいたが、フラッシュパン投擲後に彼を一撃で仕留めた。
「想定終了」
機械音がヘッドセットから聞こえ、ヘルメットを外した。
その後宿舎に帰って、シャワーののちに反省ミーティングが行われた。
作戦はどんなに成功しても、やはりどこかにミスがある。
これはとても大切なことだ。会議にはいつも士官の出席が義務付けられているが、第2中隊の下士官は全員見に来るし、兵士も歩哨任務がなければ必ず見に来る。
とても意識の高い中隊であったし、何よりもアットホームな中隊だった。
ケン大尉は良きおやじといった感じでレナ准尉は面倒見のいい姉貴といった感じで、階級、年齢を超えてお互いを尊敬し、切磋琢磨していける最高の中隊だった。
私は入隊から1か月後宇宙歴789年5月1日付を持って上等兵に昇進し、演習成績抜群および、基地内での帝国軍潜伏工作員逮捕の功績ということで、第2級功労章と辺境地勤務従軍章を授与された。
この基地内での潜伏工作員逮捕というのが、これがたまたま司令部前を通りかかた時に一人の民間人がコンピューター制御室のカギを壊そうとしていたところをたまたま、私に見られてしまったという何とも間抜けな話であるが、彼は見られたことに気づき私に襲い掛かってきたが、そんな間抜けな奴にやられるほど私は軟ではなかったので一発で投げ飛ばして取り押さえてやった。
その後の憲兵隊の取り調べで、彼は自分から工作員であることを自白しさらにこのヘンシェル星系区の隣のオリオン星系区に対する帝国軍による大規模な攻勢があることまで自白したのだった。これはこのヘンシェル星系区の憲兵隊がかなり強引なやり方ではかせたものらしく、彼はその後首をつって死んでしまった。
この「帝国軍来襲か」という情報はオリオン星系区にすぐさま伝えられ、カーラ=テーベの第122巡洋艦群・第14駆逐艦群の増援派遣を星系区司令部は命じたが、ラッセル准将は
「敵の陽動の可能性あり」としてこれを拒んだが、星系区司令部はこれを退け増援としてこの2個巡洋・駆逐艦群はオリオン星系区に向かった。
これにより、衛星群を宇宙空間で防衛する能力の半分をそがれたカーラ=テーベに
「帝国軍来襲」の報が入ったのは、増援艦隊がオリオン星系区に向かった14日後の宇宙歴789年6月3日のことである。 
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